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犬のアジソン病

犬のアジソン病の検査・診断:血液検査の見方とコルチゾール刺激試験

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)は、診断が難しい病気の一つです。症状が他の消化器疾患や感染症と似ているため、的確な検査を受けることが確定診断への近道となります。本記事では、アジソン病の診断に用いられる血液検査の見方と、確定診断に欠かせない副腎皮質刺激ホルモン刺激試験(コルチゾール刺激試験)について詳しく解説します。

アジソン病の診断が難しい理由

症状の多様性と非特異性

食欲不振・嘔吐・元気消失・体重減少といったアジソン病の主な症状は、消化器疾患・感染症・寄生虫感染・腎疾患など多くの病気でも見られます。このため、アジソン病の可能性が考慮されないまま他の疾患として治療が進むことも珍しくありません。「波のある経過」「ストレス時の悪化」といった特徴を踏まえたうえで積極的に疑うことが診断への第一歩です。

一般的な身体検査では確定できない

身体検査(触診・聴診など)だけではアジソン病を診断することはできません。心拍数の低下(徐脈)・脱水・筋肉の張りの低下などが見られることはありますが、これらも非特異的な所見です。診断には特定の血液検査と専門的な刺激試験が必要となります。

非定型アジソン病という存在

電解質異常を伴わない「非定型アジソン病」も存在し、典型的な血液検査の異常が見られない場合があります。非定型では糖質コルチコイドだけが不足するため、鉱質コルチコイド欠乏によるナトリウム低下・カリウム上昇が現れません。この場合も刺激試験によってコルチゾールの反応を確認することが診断に必要です。

血液検査で見るべき異常値

電解質異常(ナトリウム・カリウム)

典型的なアジソン病の血液検査では、低ナトリウム血症(ナトリウムの低下)と高カリウム血症(カリウムの上昇)が見られます。ナトリウムとカリウムの比率(Na/K比)が27以下であればアジソン病を強く疑う根拠となります(正常値の目安は27〜40程度)。この電解質異常が心臓への負担や神経・筋肉への影響を引き起こします。

その他の血液検査所見

アジソン病では電解質異常のほかにも、低血糖・貧血(軽度)・血中尿素窒素(腎前性の上昇)・アルブミン低下・好酸球・リンパ球の増多なども認められることがあります。これらの所見が複数見られる場合は、アジソン病の可能性を積極的に検討する材料となります。

尿検査・画像検査の補助的役割

尿検査では薄い尿(低比重尿)が見られることがあります。また超音波検査では、副腎が正常より小さく萎縮していることが確認できる場合があります。これらは補助的な所見であり、確定診断には刺激試験が必要です。

副腎皮質刺激ホルモン刺激試験(コルチゾール刺激試験)

試験の仕組みと目的

副腎皮質刺激ホルモン(脳の下垂体から分泌されるホルモン)を合成したものを注射し、副腎がどれだけコルチゾールを分泌できるかを確認する検査です。アジソン病では副腎機能が低下しているため、刺激を与えてもコルチゾールが十分に分泌されません。この反応の有無を数値化することで、アジソン病の確定診断が可能になります。

検査の手順

検査は次の手順で行われます。まず投与前の血液を採取してベースのコルチゾール値を測定します。その後、合成された副腎皮質刺激ホルモンを静脈注射または筋肉注射します。1時間後に再度採血を行い、コルチゾール値の変化を確認します。この検査は通常1〜2時間程度で完了します。

検査結果の判定

刺激後のコルチゾール値が基準値(目安として5〜18μg/dL程度)を下回る場合、特に2μg/dL未満であれば副腎皮質機能低下症(アジソン病)と診断されます。正常な犬では刺激によってコルチゾール値が上昇しますが、アジソン病の犬ではほとんど変化しないか、ごくわずかな上昇にとどまります。

診断後の確認事項

典型型と非定型の判別

刺激試験でアジソン病と診断された後、電解質異常がある場合は「典型型」、電解質は正常でコルチゾールだけが低下している場合は「非定型」と分類されます。非定型は経過とともに典型型へ移行することがあるため、定期的な電解質のモニタリングが必要です。

治療開始前に受けておくべき検査

治療開始前には、全血球計算・血液生化学検査(電解質・肝臓・腎臓の指標)・尿検査・超音波検査などをまとめて行うことが一般的です。これにより合併症の有無を確認し、治療計画を適切に組み立てることができます。

定期検査の重要性

診断・治療開始後も、電解質バランスの確認と投薬量の調整のために定期的な血液検査が必要です。治療開始から1〜2か月後に最初の確認検査を行い、安定してきたら3か月に1回程度の頻度で継続することが推奨されます。

まとめ

犬のアジソン病の診断には、電解質異常(低ナトリウム・高カリウム)を含む血液検査と、副腎皮質刺激ホルモン刺激試験が不可欠です。「波のある体調不良」「ストレスで悪化」「電解質の異常」がそろっている場合は積極的に疑い、早めに刺激試験を受けることをお勧めします。早期診断が早期治療につながり、愛犬のQOLを守ることになります。

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