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【獣医師監修|犬の去勢】6ヶ月齢がベストな時期|メリットや費用、去勢後のケアついても解説

あなたの愛犬は家族の一員です、だから飼い主様が愛犬の健康と幸せを守るための最善の手段を知りたいのは当然です。

犬の去勢手術は早めにした方がいいという話を聞いた事があるかもしれませんが、実は去勢手術は6ヶ月齢がベストだということを知っていましたか?

何でそうなのか、そのメリットは何か、費用はどれくらいか、去勢した後のケアはどうすればいいのか、そんなあなたの疑問を、本記事で獣医師がわかりやすくお答えします。

去勢について

去勢とは、雄犬の生殖能力を除去する手術のことを指します。具体的には、睾丸(精子を生成する器官)を取り除くことで行われます。

この手術は、犬の性行動を制御し、性ホルモンによる特定の病気のリスクを減らす目的で行われます。

しかし、これは犬にとって大きな生体的変化を引き起こすものであり、慎重に考慮する必要があります。

去勢は犬の行動や健康に多大な影響を及ぼしますが、それは全ての犬が同じ影響を受けるわけではありません。犬種、個体差、生活環境など、さまざまな要素が影響を及ぼします。

去勢の最適な時期は6ヶ月齢

去勢の最適な時期は6ヶ月齢とされています。

この時期に去勢を行うと、性的な行動が発現する前に手術が可能となり、その結果として犬のマーキング行動や攻撩性を予防することができます。

また、6ヶ月齢での去勢は、前立腺疾患や睾丸腫瘍のリスクを著しく減少させることが可能です。

ただし、全ての犬がこの時期に去勢すべきというわけではありません。

特に大型犬の場合、成長が終わるまで去勢を遅らせることを考慮することもあります。

これは、成長板(骨の成長を司る部分)が閉じるまでの期間、性ホルモンが骨の成長に影響を及ぼすからです。

これらの犬種では、早期の去勢が関節疾患のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。

 去勢のメリット

去勢は多くのメリットを持っています。

去勢のメリット

✔︎ マーキングの予防

✔︎ 性格が大人しくなる

✔︎ 前立腺疾患など病気の予防

まず、性的な行動を抑制することで、マーキング(縄張りを主張するための尿の付け方)や、同種の他の犬に対する攻撃性、さらには家からの逃亡といった行動を減少させることが可能です。

これらの行動は雄犬のテストステロン(男性ホルモン)の影響を大いに受けますので、去勢によってホルモンの影響を低減することができます。

また、健康面においても、前立腺疾患や睾丸腫瘍といった、雄犬特有の一部の病気のリスクを著しく減少させることが可能です。

特に前立腺疾患は中高齢の雄犬に頻繁に見られ、尿の通り道を圧迫するなど重篤な症状を引き起こすことがあります。去勢はこれらのリスクを大きく低下させる効果があります。

去勢のデメリット

一方、去勢にはいくつかのデメリットも存在します。

去勢のデメリット

✔︎ 太りやすくなる

✔︎ 大型犬は骨の病気になりやすくなる

✔︎ ガンができやすくなることがある

性ホルモンの減少は犬の体型や体重に影響を及ぼし、体重が増えやすくなる可能性があります。

これは、性ホルモンがエネルギー消費を調節する役割を果たしているためで、このホルモンが減少するとエネルギー消費が減少し、食事量の調節が不適切な場合、体重増加につながります。

また、若い時期の去勢は骨成長に影響を与える可能性があり、特に大型犬では股関節形成異常(股関節形成不全や股関節脱臼)のリスクが増えることが報告されています。

加えて、一部の研究では、去勢犬は非去勢犬に比べて特定のがん(骨肉腫)のリスクが高いことが示唆されています。

しかし、これらのリスクは全ての犬に当てはまるわけではなく、犬種や個体差など、他の多くの要素が関与しますので、去勢を実施する際には獣医師と詳細に相談することが重要です。

 去勢前の注意点

去勢手術前には、いくつかの重要な注意点があります。

去勢前のポイント

✔︎ 愛犬が健康であること

✔︎ 絶食を行うこと

✔︎ 絶水を行うこと

まず、手術前の愛犬のは健康状態は重要です。

獣医師は手術前に全身麻酔を安全に施すために犬の健康状態を評価します。具体的には、血液検査、心電図、胸部レントゲンなどが行われ、先天的な病気がないかを確認します。

また、手術の前夜から食事を制限し(絶食)、手術当日は水分も与えないことが一般的です。

これは全身麻酔中に嘔吐を引き起こし、それが誤嚥性肺炎を引き起こすリスクを減らすためです。

手術のリスクやメリット、デメリット、その後のケアについて、しっかりと獣医師と相談しましょう。

去勢をしないという選択肢

去勢を行うかどうかは飼い主様の自由であり、またすべての犬に適しているというわけではありません。

飼い主としては、犬の健康や行動にどのような影響を及ぼすか、手術のリスク、その後のケアなど、全てを考慮した上で最善の選択をする必要があります。

去勢にかかる費用

去勢の費用は、犬の大きさ、年齢、健康状態、または地域や病院によって大きく異なります。

一般的には10,000円〜50,000円の範囲となりますが、これは手術費用のみであり、手術前後の診察費、検査費、薬代などは別途必要となります。

注意: 去勢は保険適応にならない

去勢手術は、一般的にペット保険の適応範囲外となります。

というのも、去勢が予防的な手術であり、治療目的ではないためです。

ただし、前立腺肥大や精巣腫瘍の治療のために去勢を行うなど治療を目的とした場合には、保険適応となるケースもあります。

去勢後の適切なケア

去勢手術後、適切なケアは非常に重要です。

去勢後のポイント

✔︎ 傷口を舐めさせないようにする

✔︎ 安静にして、ストレスをかけないようにする

✔︎ 太らないようフードに気をつける

傷口を舐めさせないようにする

まず、傷口を舐めないようにすることが重要です。舐めると傷口が開いたり、感染するリスクが高まります。これを防ぐためには、「エリザベスカラー」などの特殊なカラーを使用します。

ストレスをかけない

ストレスをかけないことも大切です。

手術は犬にとって負担をかけるものであり、安静に過ごす時間が必要です。適度に安らげて静かな環境を用意しましょう。

太らないようにフードを与える

そして、去勢手術後の犬は肥満になりやすくなるため、食事の管理が重要となります。

手術後は適度にエネルギーを制限したフードに切り替えることを検討しましょう。

必要に応じて、獣医師と相談して適切な食事プランを立てると良いでしょう。

本記事のまとめ

去勢手術は犬の行動や健康に大きな影響を与えます。

6ヶ月齢が最適な時期であり、行動の改善や特定の疾患の予防といったメリットがありますが、一方で手術リスクや体重増加といったデメリットも存在します。去

勢をしない選択肢もあり、犬によってはそれが最善かもしれません。費用面では自己負担となるため、事前の準備が必要です。

また、手術後の適切なケアが犬の回復と健康にとって重要です。最終的な決定は、獣医師との相談を基に飼い主が行うべきです。

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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