除去食試験は犬の食物アレルギーを診断する唯一の信頼できる方法です。しかし「何を与えればよいか」「何週間続けるか」「おやつはどうするか」など、実際の手順で迷う飼い主様は少なくありません。本記事では除去食試験の8週間プロトコルを獣医師監修のもとステップごとに詳しく解説します。
除去食試験とは何か
除去食試験とは、現在与えているフードを一切やめ、アレルギーを引き起こす可能性がない食事のみを一定期間与えることで、症状の変化から食物アレルギーの有無を診断する方法です。
血液検査によるIgE検査は食物アレルギーに対して感度・特異度が低いため、除去食試験が診断のゴールドスタンダードとされています(Purina Institute、世界小動物獣医師会ガイドライン)。
除去食試験で使うフードの2つの選択肢
1. 加水分解タンパクフード(加水分解食)
タンパク質を酵素によって非常に小さな分子(ペプチド・アミノ酸)まで分解したフードです。分子が小さすぎて免疫系に「アレルゲン」として認識されにくくなるため、アレルギー反応が起こりにくいとされています。
- 代表製品:ロイヤルカナン低分子プロテイン、ヒルズz/dなど(処方食)
- 原材料の種類を問わず使用できる
- 動物病院での処方が推奨される
2. 新奇タンパクフード
これまでその犬が食べたことがない(または食べた量が極めて少ない)タンパク質を使ったフードです。過去に食べた経験がないタンパク質に対しては感作が起きていないため、アレルギー反応が起こりにくいとされています。
- 代表的な新奇タンパク:鹿肉・カンガルー肉・馬肉・ウサギ肉・アリゲーター肉など
- ただし、過去の食歴を正確に把握している必要がある
- 多くのフードを食べてきた犬には新奇タンパクの選択が難しい場合がある
8週間プロトコルの具体的な手順
STEP 1(開始前):現在の食歴を整理する
これまで与えてきたフード・おやつ・サプリメント・フレーバー付き投薬の原材料を全て書き出します。除去食で使うタンパク質がこの中に含まれていないことを確認するために必要です。
STEP 2(開始前):獣医師に相談して除去食を選定する
食歴をもとに、加水分解タンパクフードまたは新奇タンパクフードを獣医師と相談して選定します。市販フードを使用する場合でも、製造工程での他アレルゲンの混入(コンタミネーション)がないか確認することが重要です。
STEP 3(1〜2週目):段階的に移行する
急激なフード変更は消化器症状(下痢・嘔吐)を引き起こすことがあります。1週間かけて以下の割合で元のフードと除去食を混合しながら切り替えます。
- 1〜2日目:現フード75%・除去食25%
- 3〜4日目:現フード50%・除去食50%
- 5〜6日目:現フード25%・除去食75%
- 7日目以降:除去食100%
STEP 4(2〜8週目):除去食のみを徹底して与える
この期間中は以下の点を厳守します。
- 指定された除去食以外は一切与えない
- おやつ・ガム・デンタルチュウも禁止(除去食対応品以外)
- チュアブルタイプのサプリメント・ノミ予防薬も要確認
- 家族全員が同じルールを守る(特に子どもへの注意)
- 散歩中に食べ物を拾い食いしないよう注意する
この「徹底性」が除去食試験の成否を決める最大のポイントです。1回でも原因アレルゲンが入ると試験期間がリセットされる可能性があります。
STEP 5(8週目終了時):症状の評価
8週間後に症状が50%以上改善していれば、食物アレルギーの存在が強く示唆されます。改善の程度を獣医師と評価します。
- 症状が80〜100%改善:食物アレルギーの可能性が高い
- 症状が50〜79%改善:食物アレルギーが関与している可能性あり
- 改善なし:食物アレルギーよりも環境アレルギーの影響が大きい可能性
STEP 6(任意):再チャレンジ試験で確定診断
元のフードを再開(再チャレンジ)して2週間以内に症状が再燃すれば、食物アレルギーの確定診断となります。再チャレンジは飼い主様の判断で行わず、必ず獣医師の指示のもとで実施してください。
除去食試験がうまくいかない主な理由
- 家族の誰かが知らずにおやつを与えていた
- 市販フードの製造工程でのコンタミネーション
- フレーバー付き投薬(フィラリア予防薬など)を続けていた
- 拾い食い・他のペットのフードを食べていた
- アトピー性皮膚炎が合併していて食事変更だけでは改善しない
アレルギー検査の詳細については犬のアレルギー検査の種類と費用もご参照ください。
除去食試験中の注意事項まとめ
| 項目 | 対応 |
|---|---|
| おやつ・ガム | 除去食対応品のみ使用可 |
| フレーバー錠剤・チュアブル薬 | 獣医師に相談の上代替品を検討 |
| サプリメント | 試験期間中は原則中止(獣医師に相談) |
| 複数ペットの管理 | 他のペットのフードを食べないよう別々に与える |
| 散歩の管理 | 拾い食いを防止する |
適切なアレルギー対応フードの選び方はアレルギー対応フードランキングで詳しく紹介しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 除去食は手作り食でも行えますか?
可能ですが、栄養バランスが偏るリスクがあります。手作りの場合は、食材の種類を1〜2種に絞り(新奇タンパク1種+新奇炭水化物1種など)、短期間(8〜12週)に限定することが基本です。長期の手作り食は獣医師または栄養専門家への相談が必要です。
Q2. 除去食試験中に症状が悪化した場合はどうすればよいですか?
試験開始後に症状が悪化する場合があります。特に炭水化物源に対してアレルギーがある場合や、除去食フード自体の成分への反応が考えられます。悪化が見られた場合は直ちに獣医師に連絡し、除去食の変更・試験の中断を相談してください。
Q3. 8週間の試験で改善がなかった場合、食物アレルギーはないと確定しますか?
除去食の徹底が完全でなかった可能性や、アトピー性皮膚炎との合併の可能性があります。1回の除去食試験で改善がなかったからといって食物アレルギーを完全に除外できるわけではなく、試験の実施状況と他のアレルギー因子を考慮した上で判断することが重要です。
Q. 除去食は手作り食でも行えますか?
可能ですが栄養バランスが偏るリスクがあります。食材の種類を1〜2種に絞り、短期間に限定することが基本です。長期の手作り食は獣医師または栄養専門家への相談が必要です。
Q. 除去食試験中に症状が悪化した場合はどうすればよいですか?
悪化が見られた場合は直ちに獣医師に連絡し、除去食の変更・試験の中断を相談してください。除去食フード自体の成分への反応も考えられます。
Q. 8週間の試験で改善がなかった場合、食物アレルギーはないと確定しますか?
除去食の徹底が完全でなかった可能性やアトピー性皮膚炎との合併の可能性があります。1回の試験で食物アレルギーを完全に除外できるわけではなく、試験の実施状況と他のアレルギー因子を考慮した判断が必要です。