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猫の泌尿器疾患

【獣医師解説】猫の泌尿器疾患まとめ|FLUTD・膀胱炎・尿道閉塞・結石の症状・治療・食事管理

「猫がトイレに何度も行くけど尿が少ししか出ない」「おしっこに血が混じっている」「急に床でおしっこをするようになった」——猫の泌尿器トラブルは、命に直結する緊急疾患から慢性的な問題まで非常に多岐にわたります。

特にオス猫の尿道閉塞は24〜48時間以内に死亡することがある緊急疾患です。この記事では猫の泌尿器疾患全般を獣医師監修で解説し、緊急度の判断・治療・フード選びまで詳しくまとめます。

緊急!猫の泌尿器トラブルの緊急度マップ

症状緊急度対応
排尿が全くできない(特にオス猫)★★★ 今すぐ救急即時受診。2時間以内に病院へ
苦しそうに鳴きながらトイレに座っている★★★ 今すぐ救急尿道閉塞の可能性。救急病院へ
血尿+ぐったりしている★★ 今日中に受診午前中に動物病院へ
頻尿だが少量は出ている★★ 本日中当日〜翌日に受診
尿の色が濃い・臭いが強い★ 2〜3日以内早めに受診

FLUTD(猫下部尿路疾患)とは

FLUTD(Feline Lower Urinary Tract Disease)は猫の下部尿路(膀胱・尿道)に関わる症状の総称です。頻尿・血尿・排尿困難・トイレ以外での排尿が主な症状です。

FLUTDの主な原因

原因割合特徴
特発性膀胱炎(FIC)約60%ストレスが主因。検査で異常なし
尿路結石約15〜25%ストルバイト・シュウ酸カルシウム
尿道プラグ約10〜15%(オス)結晶・タンパクが混じった栓
細菌性膀胱炎約1〜3%若い猫では少なく、シニア猫に多い
腫瘍・解剖学的異常約1〜2%シニア猫・繰り返す症例

特発性膀胱炎(FIC):ストレスが最大の原因

猫の膀胱炎の約60%は細菌や結石がない「特発性」です。ストレスが主な誘因で、引越し・新しいペット・トイレの変化・天候の急変なども発症のきっかけになります。

特発性膀胱炎の管理

  • 水分摂取を増やす:ウエットフードへの変更・複数の水飲み場・流れる水(循環式ウォーターファウンテン)
  • ストレス軽減:フェリウェイ(フェロモン製品)・隠れる場所を増やす・1頭に1つのトイレ(+予備1つ)
  • 環境エンリッチメント:キャットタワー・窓から外を見られる場所・遊びの時間を増やす
  • 鎮痛・消炎:メロキシカムなど。痛みが強い場合は短期投与

猫の尿路結石

猫の尿路結石はストルバイト(55%)とシュウ酸カルシウム(35%)が二大主流です。

結石の種類pH傾向溶解食多い猫
ストルバイトアルカリ尿(pH 7以上)◎ 可能(Hills c/d等)若いメス猫・肥満猫
シュウ酸カルシウム酸性尿(pH 6以下)✕ 不可(手術・砕石術)シニアオス猫・ペルシャ

尿道閉塞(オス猫の緊急疾患)

オス猫は尿道が細く長いため、結晶・プラグ・痙攣で簡単に閉塞します。24〜48時間排尿できないと腎不全・高カリウム血症・心停止で死亡します。

尿道閉塞の緊急サイン

  • トイレに何度も行くが全く尿が出ない
  • 苦しそうに鳴いている
  • 腹部が張っている
  • ぐったりして動かない(末期サイン)

治療はカテーテルによる尿道通過・入院輸液が中心です。再発を繰り返す場合は会陰部尿道造口術(PU手術)で尿道を太くする外科手術が根本治療になります。

猫の泌尿器疾患の食事管理

猫の泌尿器疾患に最も重要な食事ポイントは水分摂取量を増やすことです。

  • ドライフード→ウエットフードへ変更:水分含有量75%以上のウエットフードが理想
  • 水飲み場を増やす:部屋の数+1個の水飲み場を設置。猫は流れる水が好きな場合も多い
  • 尿路疾患用処方食:ロイヤルカナン猫下部尿路疾患ケア・Hills c/d Multicare・Prescription Dietなど
  • ブロス(肉汁)を水に混ぜる:水分摂取量を自然に増やす工夫

各疾患の詳細記事

よくある質問(FAQ)

Q. 猫が何度もトイレに行くのに尿が出ていません。どうすれば?

A. 今すぐ動物病院(救急)に連れて行ってください。特にオス猫の場合は尿道閉塞の可能性が高く、数時間の放置が命取りになります。深夜でも救急動物病院を探して受診してください。

Q. 猫の特発性膀胱炎はどうすれば再発を防げますか?

A. ①ウエットフードで水分摂取増加、②フェリウェイなどでストレス軽減、③トイレの清潔維持(毎日掃除)、④環境エンリッチメント(遊び・キャットタワー)が再発予防の柱です。特に多頭飼い・室内専用猫でストレスが多い環境では積極的な管理が必要です。

Q. 猫の膀胱炎に抗生物質は必要ですか?

A. 若い猫の膀胱炎の多くは特発性(細菌なし)のため、抗生物質は不要なことが多いです。ただし尿培養で細菌が確認された場合・シニア猫・免疫抑制状態では必要です。自己判断で人間用の抗生物質を与えることは絶対にやめてください。

Q. 猫に水をたくさん飲ませるには?

A. ①ウエットフードへの切り替えまたはドライフードへ水を混ぜる、②複数の水飲み場を設置(水飲み場は食器から離れた場所に)、③循環式ウォーターファウンテン使用、④スープタイプのおやつを追加が効果的です。猫は冷たい水が苦手な場合もあるため、常温の水を好む子もいます。

参考文献: Buffington CA et al. Pandora Syndrome in Cats(J Vet Internal Medicine 2011)/ Lulich JP. ACVIM Consensus Recommendations on Urolithiasis(2016)/ Westropp JL. Feline Lower Urinary Tract Disorders(Vet Clinics 2019)

猫の泌尿器疾患 緊急サイン|尿閉(おしっこが出ない)は超緊急

猫の泌尿器疾患の中で最も緊急性が高いのが「尿閉(尿道閉塞)」です。「おしっこが出ない」状態は数時間〜1日以内に命に関わる可能性があり、絶対に様子を見てはいけません。

尿閉の主な症状:①トイレに何度も行くのにおしっこが全く出ない、またはほんの数滴しか出ない。②トイレで長時間いきんでいる(便秘と間違えやすいため注意)。③トイレの外でうずくまる・鳴く。④お腹(膀胱部位)を触られるのを嫌がる。⑤元気消失・食欲不振・嘔吐。⑥尿毒症が進むとふらつき・意識混濁が起きます。なぜ超緊急なのか:排尿できないと体内に尿が貯まり続け、カリウムが急上昇します。高カリウム血症は心臓に深刻な影響を与え、不整脈・心停止を引き起こします。また尿素・クレアチニンなど毒素が体内に蓄積する尿毒症により、24〜48時間以内に死亡するケースもあります。特にリスクが高い猫:去勢手術済みのオス猫は尿道が細く閉塞しやすいため最もリスクが高いです。FLUTDの既往がある猫、ストルバイト結晶が出たことがある猫も要注意です。「おしっこが出ていないかも」と感じたら、夜間・休日でも救急動物病院に迷わず連れて行きましょう。

FLUTDの猫に適した食事と水分補給のコツ

FLUTD(猫下部尿路疾患)の管理において、食事と水分摂取の改善は薬物療法と同じくらい重要です。日常の食事管理で再発リスクを大幅に下げることができます。

ウェットフードへの切り替え:猫はもともと砂漠出身の動物で、飲み水から水分を積極的に取ろうとしない傾向があります。ドライフードの水分量は約10%ですが、ウェットフードは70〜80%と大きな差があります。FLUTDの猫には可能な限りウェットフードを主食にすることが推奨されます。完全移行が難しい場合は、ドライフードをぬるま湯でふやかす、またはドライとウェットを半々にするだけでも水分摂取量は大幅に増えます。水分摂取を増やすコツ:常に新鮮な水を用意し、水の容器をフードから離した場所にも置きましょう。循環式の自動給水器(ウォーターファウンテン)が効果的な猫もいます。ぬるま湯を好む猫も多いため試してみてください。pHコントロール療法食:ストルバイト結晶が原因のFLUTDには、尿を酸性に保つ療法食(ロイヤルカナン「ユリナリーS/O」、ヒルズ「c/d マルチケア」など)が効果的です。ただし長期使用は必ず獣医師と相談の上で行ってください。マグネシウム・リン・タンパク質のバランスにも注意が必要です。

猫の泌尿器疾患 ストレス管理と環境改善

猫の泌尿器疾患のうち、特に若い猫に多い「特発性膀胱炎(FIC)」はストレスが主な原因とされています。身体的な治療と並んで環境改善・ストレス軽減が再発防止の鍵です。

ストレスが特発性膀胱炎を引き起こすメカニズム:猫はストレスを受けると自律神経が乱れ、膀胱の神経ペプチドが過剰に分泌されることで膀胱粘膜に炎症が起きると考えられています。原因となるストレスには、引越し・リフォーム・新しいペット・家族の増減・生活リズムの変化などがあります。トイレ環境の整備:猫のトイレは「頭数+1個」が基本ルールです(2匹なら3個)。トイレが汚れていると使用を嫌がり、膀胱に尿をためてしまう原因になります。1日1〜2回は砂を取り除き、週1回は丸洗いしましょう。トイレのサイズは猫の体長の1.5倍以上が理想で、蓋付きトイレが苦手な猫も多いです。生活環境の改善:高い場所に登れるキャットタワー、隠れられるスペース、窓から外が見える場所を確保することで猫の満足度が上がります。フェリウェイ(フェロモン製品)の使用も環境ストレスの軽減に有効です。複数頭飼育の場合は食事場所・水場・トイレを各猫が独立して使えるよう配置しましょう。

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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