国際腎臓病研究会 腎臓病 ステージ1

まだ間に合います。
今が最も対策できる時期です

ステージ1はほぼ無症状で、クレアチニンも正常範囲内のことがほとんど。だからこそ、今から食事管理・定期検査・サプリを始めることで、ステージ2・3への移行を大幅に遅らせることができます。

血清クレアチニン
< 1.4
mg/dL(正常範囲内)
SDMA(早期指標)
≥ 18
μg/dL 以上で要注意
リン目標(%DM)
0.4〜0.6
%(乾物換算)
検査頻度
6ヶ月
に1回が目安
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腎臓病 ステージ1 早期管理ガイド

1ステージ1とは — なぜSDMAが重要なのか

国際腎臓病研究会のステージ1は、クレアチニンが正常範囲内(<1.4 mg/dL)でも腎臓病と診断される特殊な段階です。診断の根拠となるのは主に以下の3つです:

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SDMAはクレアチニンより40%早く腎機能低下を検出できる

IDEXX研究(Hall JA et al. 2014)によると、SDMAは腎機能が40%低下した時点で上昇し始めるのに対し、クレアチニンは75%低下しないと上昇しません。つまりSDMAは「見えなかった初期腎臓病」を表面化させる革命的なバイオマーカーです。

指標検出できる腎機能低下特徴
SDMA40%低下から上昇早期・高感度・筋肉量に影響されにくい
クレアチニン75%低下して初めて上昇長年使われてきた標準指標だが感度が低い
BUN(尿素窒素)50〜60%低下から上昇食事内容・水分量に大きく左右される

2無症状だからこそ危険 — 発見のきっかけ

ステージ1は自覚症状がほぼなく、多くの場合「たまたま受けた健康診断」「他の病気の検査中」に発見されます。発見のきっかけを知っておくことが、早期発見への第一歩です。

シニア健康診断(最多)
7歳以上から年1〜2回の健診が推奨。血液・尿検査でSDMA上昇やUPC上昇が発見される。
他の疾患の検査中に偶然発見
歯科処置前の術前検査、皮膚疾患・アレルギーの検査中などに腎臓マーカーの異常が見つかることが多い。
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遺伝的リスクによる早期スクリーニング
特定犬種(コッカースパニエル、ブルテリア、バセンジーなど)は腎臓病の遺伝的素因が高く、2〜3歳からの検査が推奨される。
i
超音波検査での腎臓形態異常
エコー検査で腎臓の大きさの左右差・表面の不整・囊胞などが見つかり、詳細検査でステージ1と確定。

3定期健診データの見方

ステージ1の管理で最も重要なのは、定期的な血液・尿検査で「変化のトレンド」を追うことです。1回の数値より、経時的な推移が重要です。

検査項目ステージ1の目安注意が必要な変化
SDMA18〜25 μg/dL(要注意範囲)26 μg/dL 以上 → ステージ2を示唆
血清クレアチニン< 1.4 mg/dL1.4 mg/dL 以上 → ステージ2移行
血清リン< 4.5 mg/dL が理想上昇トレンドは食事管理強化のサイン
BUN(血中尿素窒素)10〜28 mg/dL食事・水分量で変動大。クレアチニンとセットで評価
UPC比(尿)
尿中タンパク漏れの程度を示す検査値
< 0.2 が正常0.5 以上 → 積極的な治療介入が必要
血圧< 140 mmHg(収縮期)160 mmHg 以上で腎臓への二次障害が加速
i
「前回より悪化したか」を毎回確認する習慣を

検査結果は1枚にまとめた表にして時系列で管理しておくと、微妙な変化に気づきやすくなります。スマートフォンのメモアプリやスプレッドシートへの記録をお勧めします。

4予防的食事管理の始め方

国際腎臓病研究会2023年版ガイドラインでは、ステージ1からの食事管理開始を推奨しています。目標リン量(%DM:乾物換算)は0.4〜0.6%です。

① リン制限 0.4〜0.6%DM

一般的な市販フードのリン量は0.6〜1.2%DMが多い。ステージ1の時点から腎臓病対応フード(または低リン市販食)に切り替えることで、腎線維化の進行を抑制できます。

② 水分摂取を増やす

ウェットフードへの移行が最も効果的。飲水量の目標は体重1kgあたり50〜60mL/日。複数の水皿・ウォーターファウンテンの設置も有効です。

③ タンパク質は「質を上げて量を調整」

ステージ1では過度なタンパク制限は不要。18〜22%DM程度の高品質なタンパク源(鶏肉・魚)を選ぶことが基本です。

④ ナトリウム制限(高血圧合併時)

血圧が160 mmHg以上の場合は低ナトリウム食も考慮。処方食(Hill's k/d等)は低ナトリウムに設計されています。

i
エビデンス:処方食で寿命が約3倍に(Jacob et al. 2002)

腎臓病処方食を食べたグループの中央生存期間は594日、通常食グループは188日。この差はステージ2〜3の犬を対象としたものですが、ステージ1から食事管理を始めることで、さらに長い予防効果が期待できます。

5推奨フードTOP3(ステージ1)

国際腎臓病研究会2023年版基準(リン0.4〜0.6%DM)を満たす製品から、嗜好性・入手しやすさも加味して選定。

1
低リン・高嗜好性
yumyumyum 腎臓ケア
リン: 0.38%DM(乾物換算)ステージ1基準(0.4〜0.6%DM)内
国産素材・低リン・高嗜好性。ステージ1からの導入例として評価が高い。鰹節だしの風味で食欲が落ちにくく継続しやすい。担当獣医師と相談のうえ選択を。
2
次点
和漢みらい 腎臓用J
リン: 0.56〜0.78%DM(ステージ1基準内・ステージ2以上は基準超)
和漢植物エキス配合で抗酸化・腎臓保護をサポート。yumyumyumが合わなかった場合の第二選択。
3
処方食
ロイヤルカナン 腎臓サポートS(ドライ)
リン: 0.15〜0.20%DM
超低リン処方食。かかりつけ医の処方のもと使用。嗜好性良好でウェット展開もあり水分管理に対応。
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6進行を遅らせる生活習慣

常に新鮮な水を複数箇所に
循環式ウォーターファウンテンは飲水量を20〜30%増やすという報告もある。毎日水量をチェックして記録。
体重
理想体重の維持
肥満は腎臓への血流負担を増やす。BCS(ボディコンディションスコア:体型を1〜9段階で評価する指標)4〜5/9を目標に。
運動
軽〜中程度の運動を継続
過激な運動は一時的にクレアチニンを上昇させることがある。日々の穏やかな散歩が理想的。
×
腎毒性物質を徹底排除
ブドウ・レーズン・タマネギ・ユリ科植物・NSAIDs(解熱鎮痛薬)・造影剤は腎臓に致命的な障害を与える。
感染
感染症・炎症の早期治療
尿路感染症(UTI)は腎臓病を急速に悪化させる。頻尿・血尿のサインがあれば即受診。
環境
ストレス最小化
慢性ストレスは血圧上昇を介して腎臓に悪影響を与える。環境変化・騒音・孤独を可能な限り減らす。

7サプリメント — EPA/DHAは早期開始が効果的

i
Brown SA et al. (2000) のエビデンス

初期の腎機能不全犬にEPA/DHAを補給したところ、腎内炎症が抑制され、腎機能の低下速度が有意に緩やかになることが示されました(J Lab Clin Med, 135(3): 275–286)。ステージ1から開始することで最大の予防効果が期待できます。

1
EPA/DHA(魚油)
推奨量:40〜100 mg/kg/日(EPA+DHA合計)。DHA比率が高い魚油(サーモンオイル等)が理想的。
2
プロバイオティクス
腸内細菌叢を整えることで、将来の尿毒素産生を抑制。腎臓への間接的保護効果が期待される。
3
抗酸化物質(ビタミンE・CoQ10)
酸化ストレスは腎臓細胞の炎症・線維化を促進する。ただし腎臓病専門フードには十分な量が含まれていることが多い。
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8モニタリングスケジュール

検査頻度(ステージ1)確認ポイント
血液検査(腎機能)6ヶ月に1回SDMA・クレアチニン・BUN・リン・カリウム
尿検査(比重・タンパク)6ヶ月に1回UPC比・尿比重・細菌培養(UTI除外)
血圧測定6ヶ月に1回目標:収縮期 <140 mmHg
体重・BCSチェック毎月体重の変化トレンドに注目
腹部超音波(腎臓の形態)年1回サイズ・エコー輝度・囊胞の有無
i
ステージ1は「異常がなくても定期受診」が鉄則

症状がないと受診を怠りがちですが、6ヶ月の間に急速に進行するケースがあります。「次回の予約日をその場で取る」習慣を持つことで、継続的なモニタリングが実現します。

9ステージ2への移行サイン

血清クレアチニンが1.4 mg/dLを超えた—国際腎臓病研究会分類上のステージ2移行
SDMAが26 μg/dLを超えた—ステージ2のSDMA基準に到達
水を飲む量が明らかに増えた・尿量が増えた—多飲多尿は腎機能低下のサイン
食欲がやや落ちてきた・体重が減り始めた—消化器症状の前兆
UPC比が0.5を超えた—タンパク尿の悪化は腎臓への負担増加を示す
血圧が継続して160 mmHgを超える—高血圧は腎機能低下を加速させる

上記のサインが見られたら、すぐに獣医師に相談し、ステージ2管理ガイドに移行してください。食事管理の強化とより頻繁なモニタリングが必要になります。

まとめ

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獣医師・動物病院院長

臨床15年以上

東京都内・動物病院院長

臨床歴15年以上、東京都内で動物病院を開業する院長。腎臓病の初期は症状が出にくいからこそ、「早めに知って、早めに動くことが愛犬のその後を大きく変える」と伝え続けている。不安を抱えた飼い主が一つひとつ納得できるよう、丁寧な説明を診療の核においている。飼い主向けセミナーの講師も務め、ペット専門誌・Webメディアへの監修・寄稿実績あり。

飼い主向けセミナー講師 メディア監修実績あり

最終監修日: 2026年3月 | 本ページのステージ1診断基準・食事管理方針・フード推奨内容を監修

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