国際腎臓病研究会2023年版準拠 · 獣医師監修レベル · 2026年最新

食事を変えれば、
予後が変わる。

腎臓病と診断された犬でも、処方食に切り替えることで生存期間が約3倍延びたと報告されています(Jacob et al. 2002)。ステージを正確に把握し、今日から始められるケアをお伝えします。

594日
処方食群 中央生存期間
(診断後50%が生存した期間の目安)
約3倍
一般食群比の生存延長
10%
10歳以上犬の推定罹患率
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腎臓病と診断されたら、
まずここから

突然「腎臓病」と言われたとき、何から始めればいいか戸惑う飼い主さんは多いです。このガイドの読み方と、今すぐやるべきことをお伝えします。

緊急サイン:今すぐ病院へ

以下のサインが見られた場合は、時間を置かずに動物病院へ連絡してください。腎臓病の急性増悪や他の緊急疾患のサインである可能性があります。

24時間以上まったく食事をしない

腎臓病の犬での食欲消失は尿毒症(腎臓が老廃物を排出できなくなった状態)や他の合併症のサインである可能性があります。

嘔吐が1日3回以上 / 血が混じっている

頻繁な嘔吐は尿毒症が進んでいる可能性があります。血が混じる場合は特に緊急です。

ふらつき・立てない・意識がぼんやりしている

尿毒症性脳症(尿毒素が脳に影響を与えた状態)や低血糖・電解質異常のサインの可能性があります。

丸1日以上おしっこが出ない

急性腎不全や尿路閉塞(尿の通り道が塞がった状態)の可能性があります。特に雄犬では緊急性が高いです。

!
急に水を大量に飲み始めた / 急に体重が落ちた

腎機能の急激な悪化のサインである可能性があります。今すぐではなくとも早めの受診が必要です。

!
口の中が白っぽい / 口臭がアンモニア臭

貧血や尿毒症のサインである可能性があります。次回の受診前でも早めに病院へ連絡してください。

うちの子はどのステージ?

国際腎臓病研究会ガイドラインに基づく慢性腎臓病4段階分類。担当医から告げられたステージ、またはクレアチニン値(Cre:腎臓が老廃物を排出できているかを示す血液検査値)を参考に選んでください。

IRISステージ別:症状・治療・食事まとめ

国際腎臓病研究会(IRIS:International Renal Interest Society)が定める4段階の分類。血液検査の値と照らし合わせながら、今のステージの管理方針を確認してください。

ステージ クレアチニン値
(Cre)
主な症状 治療・管理の方針 食事管理のポイント 生存期間の目安
ステージ1
早期・無症状
< 1.4 mg/dL
  • ほぼ無症状
  • 定期検査でのみ発見
  • 尿比重の低下
  • タンパク尿
  • 3〜6ヶ月ごとの定期検査
  • 高血圧の管理(必要に応じて)
  • タンパク尿がある場合はACE阻害薬
  • 適切な水分摂取の促進
  • リン制限を意識した食事開始を検討
  • 水分補給を増やす(ウェット食・水皿増設)
  • 処方食の開始を獣医師と相談
  • 塩分の過剰摂取を避ける
  • 早期管理で数年以上の安定も可能
  • 適切な管理で進行を遅らせられる
ステージ2
軽度・管理開始
1.4〜2.8 mg/dL
  • 多飲多尿が始まる
  • 食欲の軽度低下
  • 軽度の体重減少
  • 活動量の低下
  • 3ヶ月ごとの定期検査(尿・血液)
  • 血圧のコントロール開始
  • リン吸着剤の投与を検討
  • タンパク尿の管理(ACE阻害薬など)
  • リン制限食への切り替えを強く推奨
  • 腎臓病用処方食(ロイヤルカナン腎臓サポートなど)
  • 水分摂取を増やす(最優先)
  • タンパク質は過剰でなければ維持
  • 処方食群の中央生存期間:594日(Jacob et al. 2002)
  • 適切な管理で1〜3年の安定も可能
ステージ3
中等度・本格管理
2.9〜5.0 mg/dL
  • 顕著な食欲低下
  • 体重の減少(筋肉量低下)
  • 嘔吐・口臭(アンモニア臭)
  • 元気消失・運動不耐性
  • 貧血のサイン(歯茎の白さ)
  • 1〜3ヶ月ごとの頻繁な検査
  • 皮下補液の導入を検討
  • 制吐剤・消化器サポート薬
  • 貧血管理(エリスロポエチン製剤)
  • リン吸着剤の投与
  • 高血圧管理の強化
  • 腎臓病用処方食を厳格に継続
  • タンパク質制限の開始を検討
  • リン制限の強化(リン吸着剤の追加も)
  • 水分補給を最優先(皮下補液も)
  • 食べられる量を確保することが最重要
  • 中央生存期間:数ヶ月〜1年程度
  • 管理の質によって大きく変動する
  • 食事管理が予後に直結するステージ
ステージ4
重度・QOL重視
> 5.0 mg/dL
  • 重度の食欲不振・体重減少
  • 頻繁な嘔吐・口内炎
  • けいれん・失神(重症例)
  • 高度の貧血・浮腫(むくみ)
  • 尿毒症症状の顕著化
  • QOL(生活の質)を最優先
  • 定期的な皮下補液または入院での点滴
  • 症状緩和のための薬物療法
  • 緩和ケアへの移行を家族で相談
  • 食べられるものを最優先(制限より摂取量を重視)
  • 好きなものを少量ずつ
  • 水分摂取は引き続き促す
  • 処方食を嫌がるなら一般食でもやむを得ない
  • 週〜数ヶ月単位での経過観察
  • 個体差が大きい
  • 緩和ケアでQOLを最大化することが目標

※上記は国際腎臓病研究会2023年版ガイドライン、Jacob et al. 2002などの文献に基づく参考値です。個々の犬の状態により管理方針は大きく異なります。必ず担当獣医師の指示を優先してください。

全ガイド一覧

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食事管理の基本:
何を減らし、何を増やすか

腎臓病の食事管理は「ただ量を減らす」ことではありません。何をどう変えるかを理解することで、愛犬のQOLを維持しながら腎機能を守れます。

減らすもの

リン(最重要)

腎臓病管理においてリン制限は最も根拠のある食事介入です。腎機能が低下するとリンを尿から排出できなくなり、血中リン濃度が上昇します。高リン血症は腎機能をさらに悪化させる悪循環(腎性骨異栄養症・二次性副甲状腺機能亢進症)を引き起こします。

実践的なリン制限の方法

  • 腎臓病用処方食(乾物換算リン 0.2〜0.5%目安)に切り替える
  • リンを多く含む食材(乳製品・加工肉・動物の内臓)を避ける
  • 骨が入った食材・骨粉系おやつは高リンのため禁止
  • ステージ3以降はリン吸着剤の使用も検討(獣医師と相談)
減らすもの

タンパク質(ステージ3以降)

タンパク質の代謝産物(尿素窒素・クレアチニンなど)は腎臓から排出されます。腎機能が低下すると、これらの老廃物が蓄積して尿毒症(老廃物が体内に溜まり様々な症状を引き起こす状態)を引き起こします。ただし、タンパク質を減らしすぎると筋肉量の低下・体重減少が生じるため、過剰な制限は禁物です。

タンパク質管理のポイント

  • ステージ1〜2では積極的なタンパク制限は不要な場合が多い
  • ステージ3〜でBUN(尿素窒素)が高い場合に制限を開始
  • 「質の良いタンパク質を適量」が基本方針
  • 筋肉量(BCS・MCS)を定期的にチェックして制限しすぎを防ぐ
増やすもの

水分(最優先)

腎臓病の犬では水分摂取量を増やすことが、フードの切り替えと同じくらい重要です。十分な水分摂取は腎臓への血流を維持し、老廃物の排出を助けます。多尿傾向のある腎臓病の犬は脱水になりやすいため、特に注意が必要です。

水分摂取を増やす実践方法

  • ウェットフードまたはドライ+水のトッピングに切り替える
  • 水皿を複数箇所・複数の高さに設置する
  • 流れる水が好きな犬にはウォーターファウンテン(給水器)を検討
  • ドライフードをぬるま湯でふやかして与える
  • 無塩・低リンのだし汁(昆布だしなど)を水に少量加える
  • 1日の飲水量を計量カップで記録する習慣をつける
選び方

処方食(腎臓病用)の選び方

腎臓病用の処方食は「低リン・タンパク質調整・高カロリー・高消化率」という4点が設計されています。これらを一般食で全て再現することは非常に難しく、特にステージ2以降は処方食への切り替えが強く推奨されます。

処方食を選ぶポイント

  • 乾物換算でリン含量が低いことを確認(目安:0.2〜0.5%以下)
  • カロリーが高めに設定されているか(筋肉量の維持に重要)
  • まず複数を試してみて、食いつきの良い方を選ぶ
  • ドライより食いつきが良ければウェットの活用も検討
  • 切り替えは2〜4週間かけて段階的に行う
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よくある飼い主の悩みQ&A

腎臓病の犬と暮らす飼い主さんから実際に寄せられた質問に答えます。

腎臓病の管理に必要な薬(降圧剤・リン吸着剤・制吐剤など)を飲ませることに苦労している飼い主さんはとても多いです。以下の方法を試してみてください:

  • 少量のウェットフードに包む:薬を嫌いなフードに混ぜると食べないことが多いですが、好きなウェットフードに包むと食べてくれることが多いです
  • 専用のピルポケット(おやつ)を使う:薬を隠せるやわらかいおやつが市販されています(腎臓病用の低リンタイプを選ぶこと)
  • 液剤・粉剤への変更を相談する:錠剤を嫌がる場合、同じ成分の液剤や粉剤に変更できることもあります
  • 「後出しトリック」を使う:まず好きな食事を少し与え、「もっとある」と期待させた状態で薬入りのフードを差し出す
  • 動物病院で投与してもらう:どうしても無理な場合、月1〜2回通院して投薬してもらうことも一つの選択肢です

薬の服用タイミング(食前/食後/食事と一緒)を変えることで改善することもあります。担当獣医師に相談してみてください。

腎臓病用処方食は「腎臓に良い食材で設計している」ため、嗜好性(おいしさ)が一般食より低いことがあります。また、腎臓病の犬は食欲不振自体を抱えていることも多いです。

食いつきを改善するための方法:

  • ウェット缶タイプの処方食に切り替える(香りが高く食いつきやすい)
  • ドライ処方食をぬるま湯でふやかしてから与える
  • 複数のメーカーを試す(ロイヤルカナン・ヒルズ・purinaなど、好みが違うことが多い)
  • 少量に盛りつけて「完食できた」経験を積ませる
  • 食器を変える・高さを変える(頸部痛・嚥下不快感の軽減)

「まったく食べない日が2日以上続く」場合は、食欲増進薬(ミルタザピン・カプロモレリンなど)の投与を獣医師に相談してください。食べないことで筋肉量・体重が落ちることの方が、短期的には危険です。

皮下補液(皮下点滴)は腎臓病の管理において非常に重要なケアです。一般的にはステージ3以降で検討されますが、脱水傾向・食欲低下・BUN/Creの急上昇がある場合はより早期から導入されることもあります。

皮下補液が必要なサイン:

  • 脱水のサイン(首の皮膚を軽くつまんで放したとき戻りが遅い・歯茎が乾燥している)
  • 飲水量が減っている(多飲傾向が突然なくなった場合も注意)
  • 食欲不振が続いている(食事からの水分補給が減る)
  • 担当獣医師から「そろそろ補液を始めましょう」と言われた

自宅での皮下補液は習得すれば日常的に行えます。詳しい方法は皮下補液ガイドをご参照ください。最初は動物病院で練習してから自宅で始めることをおすすめします。

「余命」は非常に個体差が大きく、ステージ・年齢・合併症・管理の質によって大きく変わります。数字だけを一人歩きさせることは正確ではないため、あくまで参考値として考えてください。

文献的な目安(Jacob et al. 2002などより):

  • ステージ1〜2(処方食管理あり):数年単位の安定が期待できることも多い
  • ステージ2(処方食群の中央生存期間):594日(約1.6年)と報告されている
  • ステージ3〜4:数ヶ月〜1年程度が多いが、管理次第で延長も可能

重要なのは「数字」よりも「今日何ができるか」です。適切な食事管理・水分補給・定期検査の継続が予後を変えます。詳しくは余命・予後についてのページをご覧ください。

手作り食は完全に禁止されているわけではありませんが、腎臓病の犬の手作り食は難易度が非常に高いです。低リン・適切なタンパク質量・十分なカロリー・ビタミン・ミネラルバランスを手作りで維持することは、専門知識なしには困難です。

手作り食を取り入れたい場合は、以下の点を守ってください:

  • 獣医師または動物栄養士の指導のもとでレシピを設計する
  • リンを多く含む食材(乳製品・骨・内臓・加工食品)を避ける
  • 炭水化物(ご飯・うどん・かぼちゃ)を中心にして低リン・低タンパクにする
  • 手作り食のみにするのではなく、処方食と組み合わせることも検討する

「食欲がない犬に少しでも食べさせたい」という思いで手作り食を始める場合は、まず担当獣医師に相談してください。

腎臓病自体は散歩・適度な運動を禁止しません。むしろ適度な運動は筋肉量の維持・QOL向上・食欲改善に役立ちます。ただし、疲れやすさ・元気消失が見られる場合は運動量を減らすべきです。

運動に関する判断基準:

  • ステージ1〜2:通常の散歩・遊びを継続してOK
  • ステージ3:短時間・低強度の散歩を継続。疲れを見せたらすぐ休ませる
  • ステージ4:愛犬のペースに合わせて。外に出たがれば出る。強制はしない

夏場の散歩は脱水リスクがあるため、早朝・夕方の涼しい時間帯を選んでください。水を持参して随時補給させることも重要です。

定期検査の頻度は国際腎臓病研究会ガイドラインでも推奨されており、ステージによって異なります:

  • ステージ1:3〜6ヶ月に1回(血液・尿検査・血圧)
  • ステージ2:3ヶ月に1回(血液・尿・血圧・体重)
  • ステージ3:1〜3ヶ月に1回(血液・尿・血圧・体重・BCS)
  • ステージ4:1ヶ月に1回またはそれ以上(状態に応じて)

「元気そうだから検査しなくていい」は危険です。腎臓病は症状が出にくい病気であり、定期検査で初めてわかる変化が多くあります。検査頻度について迷う場合は担当獣医師に確認してください。

腎臓病の犬に使用されることがあるサプリメントとして、以下のものが獣医学的に検討されています:

  • リン吸着剤(炭酸ランタン・水酸化アルミニウムなど):食事中のリンを腸で吸着して吸収を抑える。ステージ3以降で特に重要
  • オメガ3脂肪酸(EPA・DHA):腎臓の血流改善・抗炎症作用が期待される。ただし腎機能への直接効果は限定的
  • プロバイオティクス:腸内細菌が尿毒素を分解することで腎臓への負担を軽減する可能性がある
  • ACE阻害薬(獣医師処方):厳密にはサプリではなく薬だが、タンパク尿・高血圧の管理に有効

注意:リン・カリウムを多く含むサプリ(カルシウムサプリ・一部の総合ビタミンなど)は腎臓病の犬には逆効果になる可能性があります。新しいサプリを始める前に必ず担当獣医師に確認してください。

詳しくはサプリメントランキングもご参照ください。

おやつを完全に禁止する必要はありませんが、腎臓病の犬では低リン・低ナトリウム・低タンパクのものを選ぶことが重要です。

比較的与えやすいおやつ:

  • 茹でた白身の鶏胸肉(皮なし)少量
  • ゆでたご飯・うどん(炭水化物は比較的低リン)
  • かぼちゃ・さつまいも(少量)
  • 腎臓病用の専用おやつ(市販品)

避けるべきおやつ:

  • 乳製品(チーズ・牛乳):高リン
  • 加工食品・塩分が多いもの
  • 骨・骨粉入りのジャーキー:高リン
  • 大豆製品(豆腐・枝豆):比較的高リン

詳しくは腎臓病の犬に与えられるおやつのページをご覧ください。

在宅でのケアは腎臓病の管理において非常に重要です。毎日の小さな観察と記録が、病院での診断・治療方針の改善に役立ちます。

在宅で毎日できること:

  • 飲水量を計量カップで記録する(水皿に入れた量と残量を毎日メモ)
  • 食事量・食欲の変化を記録する
  • 尿の量・回数・色の変化を観察する
  • 嘔吐・下痢の有無を記録する

週1回やること:

  • 体重測定(同じ時間・同じ条件で測る)
  • 肋骨の触れ具合でBCS(ボディコンディションスコア)を評価する

これらの記録を動物病院受診時に持参することで、より精密な診断・治療方針の調整が可能になります。

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腎臓病の犬に毎日できること
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毎日

毎日のチェック項目

週1回

週1回のチェック項目

月1回

月1回のチェック項目

受診時

動物病院に持っていくもの・伝えること

処方食に切り替えた犬の生存期間は
一般食の約3倍と報告されています

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関連ページ

腎臓病フードランキング → 症状チェック → ステージ1 → ステージ2 → ステージ3 → ステージ4 → サプリメント → 予後・余命 →

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在宅ケアをより上手に行うために
飼い主が知っておくべきこと

動物病院での治療と並行して、自宅での日々のケアが腎臓病の犬の予後を大きく左右します。

水分摂取量の増やし方:具体的な7つの方法

腎臓病の犬にとって水分摂取は最も重要なケアの一つです。しかし「水を飲ませる」ことは、思った以上に難しいことがあります。以下の方法を組み合わせて試してみてください。

  • ウェットフードに移行する(最も効果的):ドライフードを処方食のウェット缶やフードに水を加えたものに変えることで、食事から自然に水分を摂取させられます
  • 複数の水皿を置く:家の中の様々な場所に水皿を設置します。部屋ごと・フロアごとに置くと自然な飲水が増えます
  • 水の温度を変える:冷たい水を好む犬もいれば、常温が好きな犬もいます。また人肌程度に温めると飲みやすくなる犬もいます
  • 流れる水(ウォーターファウンテン)を試す:動く水を好む犬は多く、給水器(ペット用ウォーターファウンテン)で飲水量が増えることがあります
  • だしを少量加える:昆布だし(化学調味料不使用・無塩)を水に少量混ぜることで飲みやすくなる場合があります。ただしナトリウムに注意
  • フードをぬるま湯でふやかす:ドライフードにぬるま湯を加えてふやかすことで、水分摂取と食事を同時に行えます
  • 低ナトリウムの無塩スープを少量加える:鶏の茹で汁(塩なし・玉ねぎなし)などを水の代わりに少量使うことも選択肢の一つ

1日の目標飲水量の目安:体重1kgあたり約50〜80mL(ただし腎臓病の犬は多尿になるため、これより多く飲むことが多い)。計量カップで水皿に入れた量と残量の差を記録することで、1日の飲水量を把握できます。

食欲を維持・改善するための工夫

腎臓病が進行すると、尿毒症による吐き気・口内の不快感・食欲減退が起きます。「食べてもらうこと」は管理の中でも特に重要なテーマです。

  • 食事を少量・高頻度に分ける:1日2回を3〜4回に増やす。量が少ないと完食しやすく、食事への嫌悪感が生まれにくい
  • 食事の温度を調整する:人肌程度(35〜38度)に温めると香りが立ち、食欲が改善することがある
  • フードのブランドを変えてみる:同じ栄養設計でも、メーカーによって風味が異なる。複数試して食いつきの良い方を選ぶ
  • ウェット缶を少量加える:ドライフードにウェット缶の汁を少量かけるだけでも食いつきが改善することが多い
  • 食器の位置・高さを変える:老犬は首や関節の痛みで食べにくいことがある。食器を適切な高さに置くことで改善することがある
  • 別の犬や家族が近くにいる環境を作る:競争心で食欲が上がる犬もいる(ただし多頭の場合は食事管理に注意)

3日以上食欲がない場合は、食欲増進薬の処方を獣医師に相談してください。ミルタザピン(塗布タイプ・経口タイプ)やカプロモレリンが腎臓病犬の食欲増進に使われることがあります。

皮下補液の準備と心構え

ステージ3以降になると、動物病院での点滴だけでなく、自宅での皮下補液(皮下点滴)が必要になることがあります。最初は不安に感じる飼い主さんも多いですが、練習すれば多くの方が習得できます。

皮下補液の基本的な準備:

  • 補液剤(乳酸リンゲル液または酢酸リンゲル液)は獣医師から処方してもらう
  • 点滴セット(IV チューブ・翼状針 21〜23G)も病院で準備
  • 最初は必ず動物病院または動物看護師の指導のもとで実施方法を練習する
  • 1回の補液量・頻度は担当獣医師の指示に従う(一般的にはステージ3で週3〜7回・100〜200mL程度)

補液中の犬を落ち着かせるコツ:

  • 補液中は好きなおやつを少量与える(飼い主の手から)
  • マッサージしながら行う
  • テレビの音で気を逸らす
  • 同じ場所・同じ手順で行うことで「慣れ」が生まれる

詳しい方法は皮下補液ガイドのページで図解付きで解説しています。

体重・BCSの正しい測り方と記録の習慣

体重の変化は腎臓病の犬の管理で最も重要なモニタリング指標の一つです。「ちょっと痩せた気がする」という漠然とした感覚ではなく、定期的な計測で変化を把握することが重要です。

体重測定の正しい方法:

  • 毎週同じ曜日・同じ時間(朝の食前が推奨)に測る
  • 小型犬はペット用の体重計、または自分が犬を抱っこして測り、そこから自分の体重を引く
  • 数値をノートまたはアプリに記録する(前回比・1ヶ月前比を計算する)
  • 1ヶ月で体重の5%以上減少した場合は速やかに獣医師に相談

BCS(ボディコンディションスコア)の評価方法:

BCSは体重計に現れない体脂肪・筋肉量の変化を評価する方法です。1〜9スケールが使われることが多く、4〜5が理想的な体型です。

  • BCS 1〜2(痩せすぎ):肋骨が目で見てわかる。背骨・腰骨が容易に触れる
  • BCS 3(やや痩せ):肋骨が簡単に触れる。腰のくびれが見える
  • BCS 4〜5(理想的):肋骨が少し触れる程度の脂肪。適度な腰のくびれあり
  • BCS 6〜7(太め):肋骨の触診に圧力が必要。脂肪の蓄積が見える

腎臓病の犬ではBCS 3以下への低下(筋肉量の低下)が問題になることが多く、タンパク質摂取量の見直しが必要なサインです。

腎臓病についての
よくある誤解と正しい知識

インターネット上には誤った情報も多く流れています。代表的な誤解を整理します。

誤解

「腎臓病になったら、できるだけタンパク質を減らすべき」

正しい知識

タンパク質制限が必要なのは主にステージ3以降で、BUNが高い場合です。ステージ1〜2では過剰なタンパク制限は逆に筋肉量の低下・免疫力の低下を招きます。「タンパク質を減らすことより、リンを減らすことが先決」というのが現在の獣医学のコンセンサスです。

誤解

「ウェットフードは腎臓に悪い。ドライの方がいい」

正しい知識

腎臓病の犬にとってウェットフードは水分補給ができるという大きなメリットがあります。水分摂取は腎臓への血流維持と老廃物排出を助けます。腎臓病用の処方食にはウェットタイプもあり、食欲が落ちている犬にとって特に重要な選択肢です。ドライよりウェットが推奨されることも多くあります。

誤解

「処方食を嫌がっているから、好きなものを自由に食べさせてあげたい」

正しい知識

気持ちは理解できますが、高リン・高タンパクな一般食を自由に与えることで腎機能の悪化が加速します。食いつきの問題は「処方食を別のメーカーに変える」「ウェットにする」「温める」などで改善できることが多いです。担当獣医師に食欲改善薬の処方も相談してください。

誤解

「高齢犬だから腎臓病は仕方ない。もう手遅れ」

正しい知識

腎臓病は進行性の疾患ですが、適切な管理で進行速度を大幅に遅らせることが可能です。食事を処方食に切り替えた犬の生存期間が一般食の約3倍というエビデンスが示すように、「診断されてから何をするか」で大きく変わります。診断された時点から始めることに遅すぎることはありません。

誤解

「水を多く飲んでいるから、水を制限した方がいいのでは?」

正しい知識

腎臓病の犬の多飲(水をたくさん飲む状態)は、腎臓が老廃物を十分に濃縮できないために起こる代償反応です。水を制限することは絶対に行ってはいけません。逆に積極的に水分を摂らせることが腎臓への血流維持・老廃物排出に必要です。常に新鮮な水が飲める環境を作ってください。

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犬の慢性腎臓病:
飼い主が知っておくべき基礎知識

「腎臓病」という診断を受けたとき、飼い主さんが感じる戸惑いや不安に寄り添いながら、必要な知識を整理します。

腎臓病はなぜ気づきにくいのか

犬の腎臓は、片方の機能が75%失われるまで明確な症状が現れないと言われています。つまり「症状が出たとき」にはすでに腎機能が大幅に低下していることが多いのです。

これが「慢性腎臓病は沈黙の病気」と呼ばれる理由です。年2回以上の定期血液検査が早期発見の唯一の方法であり、特に10歳を超えたシニア犬では積極的なスクリーニングが推奨されます。

早期(ステージ1〜2)に発見して適切な食事管理・治療を始めることで、進行を大幅に遅らせることができます。「腎臓病になったら終わり」ではありません。早期発見・早期対応が予後を変えます。

慢性腎臓病を引き起こす主な原因

犬の慢性腎臓病(CKD)は、単一の原因ではなく複数の要因が絡み合って発症することが多いです:

加齢

最も一般的な原因。腎臓の細胞(ネフロン)は再生しないため、加齢とともに機能が低下する。10歳以上の犬の約10%が罹患しているという報告がある。

遺伝的素因

特定の犬種(コッカースパニエル・ジャーマンシェパード・ブルテリアなど)は遺伝的に腎臓病になりやすい。若い年齢での発症もある。

感染症・炎症

慢性的な歯周病・慢性尿路感染・ライム病などの感染症が長期にわたって腎臓にダメージを与える。口腔ケアが腎臓保護につながる理由の一つ。

中毒・薬物

ブドウ・レーズン・ユリ科の植物は犬に急性腎不全を引き起こす。NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)の長期使用も腎臓への負担になる。

高血圧

持続的な高血圧は腎臓の血管を傷つけ、腎機能低下を促進する。腎臓病と高血圧は相互に悪化させ合う悪循環が起きることがある。

免疫介在性疾患

免疫系が自分の腎臓を攻撃する自己免疫疾患。糸球体腎炎(腎臓のフィルター部分の炎症)が代表的。タンパク尿が特徴。

腎臓病の犬に現れる症状一覧

以下の症状は腎臓病に特有ではありませんが、複数が重なる場合や急に現れた場合は要注意です:

早期サイン(ステージ1〜2)

  • 飲水量の増加(多飲:体重1kgあたり100mL以上/日)
  • 尿量の増加(多尿:色が薄い尿が多い)
  • 体重の緩やかな減少
  • 毛並みのわずかな悪化
  • 尿比重の低下(検査でのみわかる)

中等度〜重度のサイン(ステージ3〜4)

  • 食欲不振・体重の顕著な減少
  • 嘔吐・下痢・口臭(アンモニア臭)
  • 歯茎が白っぽい(貧血)
  • 元気消失・運動したがらない
  • むくみ(特に四肢・腹部)
  • 下顎の潰瘍(尿毒症性口内炎)

血液検査の数値の見方:何に注目するか

腎臓病の管理で定期的に確認する主な血液検査項目と、その意味を整理します:

検査項目 正常値の目安 腎臓病での意味 注意が必要な値
クレアチニン(Cre) 0.5〜1.3 mg/dL 腎機能の主要マーカー。腎機能の75%が失われないと上昇しない 1.4以上→要精密検査
5.0以上→ステージ4
SDMA <14 μg/dL 腎機能が25〜40%失われた段階で上昇。クレアチニンより早期に検出可能 14以上→腎機能低下の疑い
BUN(尿素窒素) 8〜30 mg/dL タンパク質の代謝産物。腎機能低下・脱水・高タンパク食で上昇 40以上→尿毒症のリスク上昇
リン(P) 2.5〜5.0 mg/dL 腎機能低下で上昇。高リン血症は腎機能をさらに悪化させる 5.0以上→リン制限・吸着剤を強化
カリウム(K) 3.5〜5.5 mEq/L 腎臓病では低下(低カリウム血症)することが多い。心臓・筋肉に影響 3.5未満→補充を検討
6.0以上→高カリウム血症・緊急
HCT(ヘマトクリット) 37〜55% 貧血の指標。腎性貧血(エリスロポエチン産生低下)で低下 30%未満→貧血治療を検討

※正常値は検査機関・測定方法・年齢によって異なります。担当獣医師の判断を優先してください。

参考文献

  1. Jacob F et al. Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs. J Am Vet Med Assoc. 2002;220(8):1163-1170.
  2. IRIS (International Renal Interest Society) Canine CKD Staging Guidelines. 2023年版.
  3. Elliott J, Grauer GF. BSAVA Manual of Canine and Feline Nephrology and Urology. 2nd ed. 2007.
  4. Polzin DJ. Chronic kidney disease in small animals. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2011;41(1):15-30.
  5. Ross SJ et al. Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic kidney disease in cats. J Am Vet Med Assoc. 2006;229(6):949-957.
  6. Geddes RF et al. The role of phosphorus in the pathophysiology of chronic kidney disease. J Vet Emerg Crit Care. 2013;23(2):122-133.

※本ページは一般的な情報提供を目的としています。個々の犬の診断・治療については必ずかかりつけ獣医師にご相談ください。

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