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【獣医師解説】愛犬が腎臓病と診断されたら?症状・原因・治療法・対処法を徹底解説

愛犬が腎臓病と診断されたとき、頭が真っ白になる飼い主さんは多いです。
腎臓病は慢性疾患の中でも進行が静かで、気づいたときにはステージが進んでいることも少なくありません。
この記事では、診断直後に知るべき基礎知識から、日常のケアまでわかりやすく解説します。

愛犬が腎臓病と診断されたとき、最初に知っておくべきこと

💡 ポイント

腎臓病の診断は衝撃的ですが、適切な管理で進行を大幅に遅らせることができます。焦らず獣医師と二人三脚で治療計画を立てましょう。「何をすればいいか」が分かれば、毎日の不安が行動に変わります。

「腎臓病です」という獣医師の言葉を聞いたとき、頭が真っ白になった飼い主さんは少なくありません。
「どれくらい生きられるの?」「治るの?」「何をすればいいの?」――一度にたくさんの不安が押し寄せてきます。
まず深呼吸してください。
腎臓病は確かに完治しない病気ですが、適切な管理によって進行を大幅に遅らせ、愛犬と穏やかな時間を長く過ごすことができます。
この記事では、診断直後の飼い主さんが知っておくべき基本知識から、今日からできる具体的なアクションまでをわかりやすく解説します。

腎臓はどんな働きをしているのか

⚠️ 注意

腎臓は全身の健康を支える臓器です。腎機能が低下すると老廃物の蓄積・貧血・高血圧・電解質異常など全身に影響が出ます。腎臓のサインを見逃さないために、7歳以上の犬は半年〜1年に1回の定期検査を欠かさないようにしましょう。

腎臓を「ただのろ過装置」と思っている方も多いですが、実際にはもっと多くの重要な役割を担っています。
腎臓の主な5つの働きを理解しておくことで、なぜ腎臓が悪くなると全身に影響が出るのかがわかります。

①老廃物のろ過・排泄

血液中のタンパク質が分解されると「尿素窒素(BUN)」などの老廃物が生まれます。
腎臓はこれを尿として体外に排出します。
腎機能が低下するとこの老廃物が血液中に蓄積し、尿毒症を引き起こします。

②水分・電解質バランスの調整

体内のナトリウム・カリウム・リンなどの電解質バランスを一定に保つのも腎臓の仕事です。
腎機能が落ちるとリンが排出されにくくなり、副甲状腺ホルモンが過剰分泌されて骨が弱くなったり、心臓に負担がかかったりします。

③血圧調節

腎臓はレニンというホルモンを分泌し、血圧を調節しています。
腎機能低下→血圧上昇→さらに腎臓にダメージという悪循環が生じます。

④赤血球産生の補助

エリスロポエチンというホルモンを産生し、骨髄に「赤血球を作れ」という指令を出します。
腎臓が悪くなると貧血になりやすくなるのはこのためです。

⑤体液のpH調整

血液が酸性に傾きすぎないよう重炭酸イオンを調整し、体液のpHを安定させます。
腎機能低下では代謝性アシドーシスが起きやすくなります。

ポイント
腎臓は老廃物ろ過・電解質調整・血圧調節・赤血球産生・pH調整という5つの重要な役割を担っています。腎機能が低下すると全身にさまざまな影響が出るのはこのためです。

急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)の違い

💡 ポイント

AKI(急性腎障害)とCKD(慢性腎臓病)は全く異なる疾患です。AKIは早期治療で回復の可能性がある一方、CKDは進行を遅らせることが目標となります。今愛犬がどちらの状態なのかを獣医師に明確に確認しておきましょう。

腎臓病には大きく分けて「急性」と「慢性」の2種類があり、治療方針が大きく異なります。

急性腎障害(AKI)

数時間〜数日で急激に腎機能が低下する状態です。
主な原因は中毒(ユリ・ブドウ・不凍液など)、感染症(レプトスピラ症など)、尿路閉塞、脱水・ショックなどです。
急性腎障害は早期治療で回復できる可能性があります。
元気消失・嘔吐・急激な食欲不振が見られたらすぐに動物病院を受診してください。

⚠️ 注意
急性腎障害は数時間〜数日で急激に腎機能が低下します。ユリ・ブドウ・不凍液などの誤食後に元気消失・嘔吐が見られたら今すぐ動物病院へ。早期治療で回復できる可能性があります。

慢性腎臓病(CKD)

数ヶ月〜数年にわたってゆっくりと腎機能が低下する状態です。
一度失われた腎機能は回復しませんが、進行を遅らせることは十分可能です。
犬の腎臓病の多くはこのCKDです。
初期はほとんど症状がなく、気づいたときにはある程度進行していることも珍しくありません。

IRISステージ分類:今どの段階にいるのか

💡 ポイント

IRISステージはCKDの進行度を1〜4で示す国際基準です。現在のステージを把握することで、食事管理・投薬・検査頻度など具体的な管理方針が決まります。次の通院時に「うちの子は今IRISステージいくつですか?」と確認してみましょう。

腎臓病の進行度を評価する国際基準がIRISステージ分類です。
血液検査のクレアチニン値とSDMA(対称性ジメチルアルギニン)値をもとに1〜4の4段階に分類されます。

ステージ1(早期)

クレアチニン値は正常範囲内ですが、SDMAや尿検査に異常が見られる段階です。
症状はほぼありません。
この段階で発見できれば、食事管理と定期検査だけで長期間安定させられるケースも多くあります。

ステージ2(軽度)

クレアチニン値がわずかに上昇し始める段階です。
多飲多尿が現れることがあります。
療法食への切り替えを始める重要なタイミングです。

ステージ3(中等度)

クレアチニン値が明らかに上昇し、食欲低下・体重減少・嘔吐などの症状が出始めます。
血圧管理・リン管理・貧血対策など積極的な治療が必要です。
定期的な通院が欠かせません。

ステージ4(重度)

腎機能が著しく低下し、尿毒素が全身に影響を及ぼします。
口臭(アンモニア臭)・神経症状・尿毒症が現れます。
積極的な支持療法とQOL(生活の質)の維持が治療の中心になります。

ポイント
IRISステージは血液検査のクレアチニン値とSDMAをもとに1〜4段階で評価されます。ステージが低いほど管理の選択肢が多く、早期発見・早期対応が予後を大きく左右します。担当獣医師に自分の犬の現在のステージを必ず確認しましょう。

⚠️ 注意

嘔吐が止まらない・一日以上何も食べない・立ち上がれない・ぐったりしているなどの症状は腎臓病の急性悪化(急性増悪)のサインです。このような状態は緊急事態で、翌日まで様子を見ることなく今すぐ動物病院に連絡してください。

腎臓病は「完治しない」――でも「管理できる」

💡 ポイント

腎臓病は完治しませんが、食事管理・水分補給・定期検査・適切な投薬によって進行を大幅に遅らせることができます。ステージ1〜2で発見・管理を始めた犬が数年以上元気に過ごす事例は珍しくありません。諦めずに継続的なケアを続けましょう。

正直にお伝えします。
慢性腎臓病は、現在の獣医学では完治させることができません。
これはとても辛い事実ですが、同時に知っておいてほしいことがあります。
腎臓病は「死に直結する病気」ではなく、「長く付き合っていく病気」です。
適切な管理をしている犬が、診断後3年・5年と穏やかに生活しているケースは珍しくありません。
大切なのは「治す」ことではなく「進行を遅らせ、QOLを維持する」ことです。

腎臓病の主な治療・管理の方向性

腎臓病の治療は「腎臓を守ること」と「症状をコントロールすること」の2本柱です。
具体的には以下のような管理が行われます。

  • 療法食への切り替え:タンパク質・リン・塩分を制限した腎臓病用フードに変更します。
  • 水分補給の増加:脱水は腎臓に大きなダメージを与えるため、水分摂取量を増やします。必要に応じて皮下点滴も行います。
  • 血圧管理:高血圧は腎臓への二次的ダメージを引き起こすため、降圧薬を使用します。
  • リン吸着剤の使用:食事からのリン吸収を抑えるサプリメントや薬を使用します。
  • 貧血の治療:必要に応じてエリスロポエチン製剤や鉄剤を使用します。
  • 定期的な血液・尿検査:3〜6ヶ月ごとに検査を行い、状態を把握します。
このセクションのまとめ
・慢性腎臓病は完治しないが、適切な管理で進行を大幅に遅らせることができる
・治療の柱は療法食・水分補給・血圧管理・リン管理・貧血治療・定期検査
・「治す」ではなく「進行を遅らせてQOLを維持する」ことが目標

診断直後に今日からできること5つ

💡 ポイント

①新鮮な水を常に複数箇所に用意する、②腎臓療法食への切り替えを検討する、③次回の血液・尿検査の予約を入れる、④薬・サプリは獣医師に確認してから与える、⑤体重・飲水量・尿量を記録し始める。この5つが診断直後から始められる最重要アクションです。

「何かしなければ」という気持ちは行動に変えましょう。
以下の5つは、今日から始められる具体的なアクションです。

①療法食への切り替えを始める

腎臓病管理で最も効果が大きいのは食事管理です。
いきなり切り替えると食べなくなることがあるため、1〜2週間かけて徐々に混ぜながら移行しましょう。
おすすめはロイヤルカナン「腎臓サポート」やヒルズ「k/d」などです。

②新鮮な水を常に用意する

腎臓病の犬は多飲多尿になりやすく、脱水リスクが高いです。
水飲み場を複数設置し、こまめに水を替えてください。
ウォーターファウンテン(循環式給水器)を使うと飲水量が増えることがあります。

③体重・食欲・飲水量を毎日記録する

日々の変化を記録しておくと、獣医師への報告が正確になり、治療方針の調整に役立ちます。
スマートフォンのメモアプリで十分です。

④市販おやつ・人間の食べ物を即中止する

塩分・リン・タンパク質が多いおやつや人間の食べ物は、腎臓に直接ダメージを与えます。
今日から与えるのをやめてください。

⚠️ 注意
市販のおやつ・人間の食べ物・煮干し・チーズなどリンや塩分が多い食品は腎臓病の犬には即刻中止が必要です。「少しくらい大丈夫」の積み重ねが腎臓へのダメージになります。

⑤かかりつけ医と「次の受診計画」を立てる

腎臓病はステージに応じた定期的な検査が欠かせません。
次回の検査予定を具体的に決め、手帳やアプリに記録しておきましょう。

腎臓病の症状一覧:何に気をつけるべきか

💡 ポイント

腎臓病の症状は進行度によって変わります。初期は多飲多尿が主なサイン。中期になると食欲低下・体重減少が加わります。後期には嘔吐・口臭(アンモニア臭)・貧血・神経症状が現れることも。日常の変化を記録しておくと診察時に非常に役立ちます。

腎臓病の症状はステージが進むにつれて多様になります。
以下の症状が見られたら、すぐに獣医師に相談してください。

初期〜中期に現れやすい症状

  • 多飲多尿(水をよく飲む・尿の量が増える)
  • 食欲の低下
  • 体重減少
  • 元気がなくなる
  • 毛並みが悪くなる

中期〜後期に現れやすい症状

  • 嘔吐・下痢
  • 口臭(アンモニア・魚臭いような臭い)
  • 口内炎・口腔内潰瘍
  • 貧血(歯茎が白っぽくなる)
  • むくみ
  • けいれん・ふらつき(重度)

血液検査の結果を読み解く

💡 ポイント

血液検査でCKDを管理する主な指標はBUN・クレアチニン・SDMA・リン・カリウムです。これらの数値の推移を記録しておくと、進行速度を把握でき、治療効果の評価にも役立ちます。検査結果のコピーをもらって保管しておきましょう。

血液検査でよく出てくる数値と、その意味を覚えておきましょう。

BUN(血中尿素窒素)

タンパク質の代謝産物で、腎臓がどれだけ老廃物を排泄できているかの指標です。
正常値は犬で7〜27 mg/dL程度ですが、食事内容にも影響されます。

クレアチニン(Cre)

筋肉由来の老廃物で、腎機能のより正確な指標です。
犬の正常値は0.5〜1.5 mg/dL程度(体格や筋肉量によって異なります)。
IRISステージ分類の基準値として使われます。

SDMA(対称性ジメチルアルギニン)

クレアチニンより早期に腎機能低下を検出できる新しいマーカーです。
腎機能が25〜40%低下した段階で上昇し始めるため、早期発見に非常に有効です。

リン(P)

腎臓病が進むとリンが排泄されにくくなり血中濃度が上昇します。
高リン血症は腎臓病の進行を加速させるため、食事と投薬でコントロールします。

腎臓病の原因として多いもの

⚠️ 注意

ユリ科の植物・ブドウ・レーズン・不凍液(エチレングリコール)・特定の抗炎症薬などは腎臓に強い毒性を持ちます。これらを誤食した場合は緊急事態です。嘔吐・ぐったり・食欲廃絶などの症状が現れたら今すぐ動物病院へ連絡してください。

腎臓病が発症する原因はさまざまですが、代表的なものを知っておくことは予防にも役立ちます。

  • 加齢:高齢犬は腎機能が自然に低下します。7歳以上は年1回の腎機能検査を推奨します。
  • 遺伝的素因:コッカースパニエル・ゴールデンレトリーバー・ドーベルマンなどは遺伝性腎疾患のリスクが高めです。
  • 長年の高タンパク食:腎臓への負担が蓄積します。
  • 歯周病・慢性感染症:細菌が血流を介して腎臓にダメージを与えます。
  • 中毒・薬物:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の長期使用、ユリ・ブドウなどの植物毒。
  • 免疫介在性疾患:糸球体腎炎など免疫系の異常による腎炎。

よくある質問(FAQ)

Q1. 腎臓病と言われましたが、すぐに命に関わりますか?

ステージや進行速度によって大きく異なります。
ステージ1〜2であれば、適切な管理で数年間安定して過ごせるケースも多くあります。
担当獣医師に現在のステージと今後の見通しを具体的に確認してください。

Q2. 腎臓病は遺伝しますか?

一部の犬種では遺伝性腎疾患が知られています。
ただし、多くのCKDは加齢や生活習慣が主な原因です。
同じ犬種の兄弟犬がいる場合は、かかりつけ医に相談してみてください。

Q3. 療法食に切り替えたら元気がなくなりました。大丈夫ですか?

突然の食事変更は食欲低下を招くことがあります。
1〜2週間かけて徐々に切り替えてください。
食欲不振が3日以上続く場合は必ず獣医師に相談しましょう。

Q4. 腎臓病の犬にサプリメントは効きますか?

リン吸着剤やオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)には腎臓保護効果が期待されています。
ただし、全てのサプリが犬に安全なわけではありません。
必ず獣医師の指示のもとで使用してください。

獣医師解説

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📚 犬の腎臓病 専門情報サイトも参考に

より詳しい情報は、腎臓病に特化した専門情報サイト「犬の腎臓病ガイド」もご参照ください。ステージ別ケア・フードランキング・皮下点滴の方法など、実践的な情報を詳しく解説しています。

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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