国際腎臓病研究会 腎臓病 ステージ2

犬の腎臓病ステージ2 完全管理ガイド

ステージ2の今から始める食事管理が、予後を大きく変えます

クレアチニン 1.4〜2.8 mg/dL。症状がまだ軽いこのステージこそ、早期の食事管理で予後を最大化できる最重要期です。エビデンスが証明した「食事管理で寿命が延びる」事実を今すぐ実践しましょう。

血清クレアチニン
1.4〜2.8
mg/dL
SDMA
18〜35
μg/dL
リン目標(%DM)
0.2〜0.5
%(乾物換算)
症状の程度
軽度
無症状〜多飲多尿
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国際腎臓病研究会準拠・リン量(%DM乾物換算)を一覧比較

腎臓病 ステージ2 管理ガイド

1. ステージ2とは何か

国際腎臓病研究会の分類では、腎臓病ステージ2は血清クレアチニンが1.4〜2.8 mg/dL、SDMAが18〜35 μg/dLの範囲を指します。腎機能の約50〜75%が失われていますが、残存機能がまだ代償的に働いている「代償期」です。

このステージの最大の特徴は、症状が軽微または無症状であることです。飼い主が気づきにくい反面、腎臓の損傷は静かに進行しています。複数の臨床研究では、このステージでの食事管理が予後改善に最も大きな効果をもたらすことが証明されています。

国際腎臓病研究会2023年版 ガイドライン準拠

ステージ2は「最も予後改善できる」ステージです

腎機能がまだ残っているこの段階での食事管理・リン制限は、ステージ3以降で始めるよりもはるかに高い効果が期待できます。今日からの食事管理が、腎臓への負担を減らす最初の一歩になります。

2. ステージ2に気づくサイン

当てはまる症状をタップしてチェックしてください。3個以上が受診の目安です。

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3. なぜ今が最重要なのか — 早期介入のエビデンス

2002年にJacob et al. がJAVMAに発表した研究は、食事管理の有無が犬の腎臓病の予後を決定的に変えることを証明しました。

0日
腎臓病用処方食グループの中央生存期間
0日
通常食グループの中央生存期間
0倍
食事管理によって延びる生存期間の差

生存期間の比較(Jacob et al. 2002 JAVMA)

処方腎臓食グループ594日
594日
通常食グループ188日
188日

出典: Jacob F et al. (2002) JAVMA, 220(8): 1163–1170.

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4. 食事管理

ステージ2の食事管理は3つの柱から成ります。リン制限・水分確保・タンパク質の質管理です。

① リン制限(最重要)

国際腎臓病研究会2023年版準拠:目標 0.2〜0.5%DM(乾物換算)

腎臓病では尿中へのリン排泄能力が低下し、血中リン濃度が上昇します。これが腎臓の線維化を促進する最大の要因です。一般フードのリン含量は0.6〜1.2%DM程度で、腎臓病専用フードへの切り替えが事実上必須となります。

② 水分摂取(積極的に増やす)

目標:体重1kgあたり 50〜80mL/日以上

十分な水分摂取は残存腎臓の濾過効率を維持し、尿毒素の排泄を助けます。ウェットフードへの切り替え・複数の水皿設置・循環式ウォーターファウンテンの導入が効果的です。

③ タンパク質(量より質を重視)

目標:16〜22%DM(高消化性・高品質なタンパク源)

タンパク質の代謝産物(BUN・尿毒素)が腎臓に負荷をかけますが、過度な制限は筋肉量低下を招きます。ステージ2では「量を減らして質を上げる」が原則です。

④ ナトリウム制限(高血圧予防)

目標:0.1〜0.3%DM(急激な制限は避ける)

腎臓病では高血圧を合併しやすく、高血圧が腎機能悪化を加速します。塩分を適度に制限することで血圧コントロールを補助できます。

5. 推奨フードTOP3

国際腎臓病研究会2023年版基準(リン0.2〜0.5%DM)を満たす製品から選定。詳細はフードランキングページで確認できます。

1
ステージ2対応・高嗜好性
yumyumyum 腎臓ケア
リン: 0.38%DM(乾物換算)
国産素材・低リン・高嗜好性。ステージ2からの食事療法スタートに最適。食欲が落ちにくく長期継続しやすい第一選択。
2
次点推奨
和漢みらい 腎臓用J
リン: 0.56〜0.78%DM(ステージ2基準0.2〜0.5%を超えるため注意)
和漢植物エキスで抗酸化・腎臓保護をサポート。嗜好性も高く、yumyumyumが合わなかった場合の第二選択。
3
高水分型
ヒルズ k/d 缶詰(ウェット)
リン: 0.18〜0.22%DM
水分含量75%以上のウェット形態。多飲多尿が始まったステージ2後半の水分補給対策に特に適する。
yumyumyum 公式サイトで購入する(PR)→ 全5商品の比較表を見る

6. 定期検査スケジュール

ステージ2の基本は3ヶ月に1回の定期検査です。食事管理の効果を確認し、ステージ移行を早期に察知するために欠かせません。

検査項目推奨頻度確認ポイント
血液検査(腎機能・電解質)3ヶ月に1回クレアチニン、BUN、SDMA、リン、カリウム
尿検査(比重・タンパク尿)3ヶ月に1回UPC比(目標 <0.5)、尿比重
血圧測定毎回受診時目標:収縮期血圧 <140〜160 mmHg
体重・BCSチェック毎回受診時BCS 4〜5/9を維持。減少傾向に注意
腹部超音波6〜12ヶ月に1回腎臓の形態変化・石灰化スクリーニング
フード切り替え後の確認タイミング:新しい腎臓病フードに切り替えた場合は、4〜6週後に血液検査で効果を確認することを推奨します。血中リン値が2.5〜4.5 mg/dLに収まっているか確認してください。

7. サプリメント(EPA/DHA優先)

ステージ2のサプリメントは「EPA/DHA優先」が原則です。食事管理を土台として、不足を補う形で追加します。すべてのサプリは獣医師の指示のもとで使用してください。
1
EPA/DHA(オメガ3脂肪酸)— 最優先
推奨量:40〜100 mg/kg/日(EPA+DHA合計)/ 魚油由来が推奨
RCTあり
2
リン吸着剤(処方品)
食事管理後も血中リン >4.5 mg/dL が続く場合に追加
国際腎臓病研究会推奨
3
カリウム補充(クエン酸カリウム等)
血清カリウム <3.5 mEq/L の低カリウム血症に対して補充
獣医師一致見解
4
ビタミンB複合体
多尿による水溶性ビタミン(B1・B6・葉酸)の損失を補う
補助的

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8. 生活管理

i

運動:「適度な継続」が原則

過度な運動はクレアチニン値を一時的に上昇させます。短時間の散歩(15〜20分)を1日2回など、体に無理のない範囲で継続してください。

i

ストレス軽減:免疫機能と腎機能を守る

慢性的なストレスはコルチゾール分泌を増加させ、腎血流を低下させます。引っ越し・大きな生活変化は最小限に。慣れた環境・ルーティンを維持することが基本です。

i

体重管理:BCS 4〜5/9を目標に

体重の急激な減少は筋肉量の喪失を示します。一方で肥満も腎臓への負荷を増大させます。毎週同じ時間・条件で体重を測定して記録しましょう。

NSAIDs・腎毒性薬物の回避

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は腎血流を大幅に低下させる可能性があります。腎臓病の犬に対してのNSAIDs使用は原則禁忌です。他の薬を処方される際は必ず腎臓病であることを告げてください。

9. ステージ3への移行を防ぐ5つのポイント

1
リン制限食への完全切り替え(最重要)

腎臓病専用フード(リン0.2〜0.5%DM)への切り替えは、ステージ3移行を防ぐ最大の介入です。

2
3ヶ月に1回の血液検査を欠かさない

クレアチニン・リン・SDMAの推移を継続的に把握し、悪化傾向を早期に察知します。

3
高血圧の早期発見・コントロール

高血圧は腎臓病悪化の主要因です。収縮期血圧が160 mmHgを超えていれば降圧治療を開始することが国際腎臓病研究会2023年版で推奨されています。

4
タンパク尿(UPC比)の管理

UPC比が0.5を超えた場合は、ACE阻害剤などの腎保護薬の使用を獣医師と相談してください。

5
EPA/DHA(オメガ3脂肪酸)の継続補充

魚油由来のEPA/DHAは腎臓の炎症を抑制し糸球体内圧を下げる効果が証明されています(Brown et al. 2000)。

ステージ2を適切に管理できれば、ステージ3への移行を数年単位で遅らせることも可能です。症状が軽い今こそ、食事管理を始めるのに最も適したタイミングです。
今日からできること

ステージ2、今日からできること

Jacob et al.(2002)のRCTでは、処方食に切り替えた犬の生存期間は一般食の約3倍でした。ステージ2の今は、食事管理が最も効果を発揮する時期です。何を食べさせるかを一緒に考えましょう。

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参考文献・エビデンス

  1. Jacob F et al. (2002) Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs. JAVMA, 220(8): 1163–1170.
  2. 国際腎臓病研究会 (International Renal Interest Society) 腎臓病 Staging and Treatment Recommendations 2023. www.iris-kidney.com
  3. Brown SA et al. (2000) Effects of dietary polyunsaturated fatty acid supplementation in early renal insufficiency in dogs. J Lab Clin Med, 135(3): 275–286.
  4. Polzin DJ (2011) Chronic kidney disease in small animals. Vet Clin North Am Small Anim Pract, 41(1): 15–30.
  5. Lees GE et al. (2005) Assessment and management of proteinuria in dogs and cats. J Vet Intern Med, 19(3): 377–385.

Supervised by

獣医師・動物病院院長

臨床15年以上

東京都内・動物病院院長

臨床歴15年以上、東京都内で動物病院を開業する院長。このステージは「食事を変えることが、最も大きな違いを生むタイミング」と日々の診療で実感している。リンの多い食べ物を減らしながら、愛犬がちゃんと食べ続けられる方法を飼い主と一緒に探すことを何より大切にしている。飼い主向けセミナーの講師も務め、ペット専門誌・Webメディアへの監修・寄稿実績あり。

飼い主向けセミナー講師 メディア監修実績あり

最終監修日: 2026年3月 | 本ページのステージ2診断基準・リン制限指導・フード推奨内容を監修

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