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【獣医師解説】猫の避妊・去勢手術はいつする?適切な時期と手術前後の注意点を解説

1. はじめに

猫を飼い始めると、ペットとしてのかわいさだけでなく、避妊・去勢手術に関する大切な決断も考えなくてはなりません。

この手術は一部の飼い主にとって心配なテーマかもしれませんが、愛猫の健康や家族の暮らしに大きな影響を与えます。

本記事では、避妊・去勢手術のメリット・デメリットから適切な手術時期、術前術後のケア方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。はじめての方も、プロ志向の方も安心して読める内容を目指しています。

2. 避妊・去勢手術の必要性

メリット

  • 健康面のメリット: メス猫の避妊手術は子宮や卵巣の病気(子宮蓄膿症、卵巣腫瘍など)や乳がんのリスクを減らします。オス猫の去勢手術は精巣や前立腺の病気、マーキング(スプレー行為)や縄張り争い、発情期のストレスを軽減します。

  • 行動面のメリット: オス猫は去勢することで攻撃性や遠出の頻度が減り、メス猫は発情期の鳴き声やそわそわした行動がなくなります。これにより飼い主さんの負担が軽くなり、猫と過ごす生活が穏やかになります。

  • 望まない繁殖を防ぐ: 外での事故による望まない子猫の誕生を防ぎ、飼育放棄や野良猫問題の改善にもつながります。ペットとして迎えた猫が赤ちゃんを産む予定がない場合は、これも重要な理由です。

デメリット

  • 麻酔や手術リスク: 全身麻酔による手術なので、わずかながら麻酔事故や術後感染などのリスクがあります。しかし、動物病院の技術向上と術前検査でリスクは最小限に抑えられています。

  • 費用がかかる: 手術費用や入院費用、術後に必要な薬代などがかかります。動物病院や地域によって差はありますが、経済的な負担も考慮が必要です。

  • 肥満のリスク: ホルモンバランスの変化で食欲が増しやすく、運動量が落ちることもあります。そのため、術後は肥満に気をつける必要があります。

  • 生殖能力の喪失: 子猫を産ませたい、血統を残したいという希望がある場合には、術後はできなくなります。

3. 適切な手術時期とその理由

一般的には、生後5~6ヶ月頃までに避妊・去勢手術を済ませることが推奨されます。

この時期は体格がある程度発達し、手術のリスクも低いタイミングだからです。メス猫は初めての発情期(おおむね生後6ヶ月前後)前に避妊手術を受けると、将来的な病気のリスク(乳がんなど)を大幅に減らせます。

オス猫は早めに去勢することで、縄張りを守ろうとする行動や攻撃性が本格的になる前に抑えることができます。ただし、個体差や健康状態により適切な時期は異なるため、かかりつけの獣医師と相談することをおすすめします。

4. 手術前後の具体的なケア方法

手術前の準備

手術前の数時間は、猫に食事を与えないよう指示されることが一般的です(獣医師の指示に従って下さい)。

手術当日は朝から絶食させ、お水も控えめにすると安全です。また、手術前に猫の毛づくろいや爪切りを済ませておくと術後のケアが楽になります。緊張を軽減するために、リラックスできる環境(お気に入りのベッドやタオル)を用意しておきましょう。移動用のキャリーケースには清潔なタオルやブランケットを敷いて、猫が安心して移動できるようにしてください。

手術当日~術後すぐのケア

手術当日は、猫が病院から戻った後はゆっくり休ませてあげましょう。

麻酔から覚めた直後はぼんやりしていたり食欲がないことがありますが、無理に食べさせず、体温と意識が安定するまで見守ります。獣医師から渡された薬(痛み止めや抗生剤など)があれば指示通りに与えます。傷口が気になる場合はエリザベスカラー(保護用カラー)をつけて、舐めたり噛んだりしないようにします。

術後のケア

  • 安静な環境の確保: 術後数日は激しい運動を避け、静かで暖かい場所で休ませます。高いところから飛び降りないように注意してください。

  • 傷口の観察: 毎日傷口をチェックして、赤み、腫れ、出血、膿の有無を確認します。異常があればすぐに動物病院に連絡しましょう。

  • 食事管理: 麻酔の影響で食欲が落ちることもあるため、最初は消化しやすいウェットフードや少量のドライフードを与えます。徐々に通常の食事に戻しましょう。

  • お世話とサポート: 術後は飼い主さんの優しい声掛けや撫でるなどで安心させ、ストレスを減らしてあげます。トイレの掃除や水の交換もこまめに行い、猫が快適に過ごせるよう気を配りましょう。

5. 術後の生活管理

食事管理と肥満対策

手術後は代謝が変化し、太りやすくなるため食事管理が重要です。低カロリー・高タンパクなキャットフードに切り替える、与える量を適切に調節する、間食を控えるなどで体重増加を防ぎます。また、一度にたくさん与えるのではなく、回数を分けて少量ずつ与えると猫の満足感を得ながらカロリーを抑えることができます。必要に応じて獣医師と相談し、体重や体型を定期的にチェックして健康的な状態を維持しましょう。

運動・遊び

運動不足になりがちなので、毎日の遊びや散歩(キャットウォーク)で適度に運動させることが大切です。おもちゃやキャットタワーを活用して遊びながら体を動かし、肥満予防だけでなくストレス解消にもつなげます。部屋を増やしたりキャットウォークを設けたりして、室内でも運動できる環境を整えましょう。

健康チェック

定期的に動物病院で健康診断を受けることをおすすめします。歯や耳、爪、皮膚の状態もこまめにチェックし、気になることがあれば早めに相談しましょう。トイレの回数や食欲、元気の様子などを日々観察し、変化がないか注意します。これらの日常的なチェックで、小さな異変にいち早く気づくことができます。

6. 推奨されるフードやサプリメントの特徴

  • 高タンパク・低カロリー: 適切な体重管理のため、良質なたんぱく質が豊富で、脂質・カロリーを控えめにしたフードを選びます。筋肉量を維持しながら体重増加を防ぐことができます。

  • バランスのとれた栄養: 必須アミノ酸(タウリンなど)やビタミン、ミネラルがバランスよく含まれていることが重要です。成長期・成猫・シニアと年齢に合った総合栄養食を選びましょう。

  • 消化吸収性: 手術のストレスで胃腸が敏感になることもあるため、消化に優しい素材やプレバイオティクス(食物繊維)を含むフードでお腹の調子を整えます。

  • 関節・骨サポート: 運動量が減った場合に備え、グルコサミンやコンドロイチンなど、関節や骨の健康をサポートする成分が入ったものも検討すると安心です。

  • オメガ3脂肪酸: 皮膚や毛並みの健康を維持し、関節炎予防にも役立つ不飽和脂肪酸です。魚由来のオメガ3が含まれるフードやサプリメントが有効です。

  • プロバイオティクス(腸内環境サポート): 抗生物質使用後やストレスで乱れがちな腸内環境を整える乳酸菌やビフィズス菌などのサプリメントで、消化と免疫力を助けます。

  • クランベリーエキス: 特にメス猫は尿路結石や膀胱炎のリスクがあるため、クランベリーの成分は膀胱の健康維持に役立ちます。フードやサプリの形で取り入れると良いでしょう。

7. 手術に対する不安へのフォローやメッセージ

愛猫の手術を前にすると不安になるのは当然のことです。

手術や麻酔のリスクを心配される方も多いですが、獣医師は麻酔管理や手術技術のトレーニングを受けており、万全の体制で臨んでくれます。多くの猫が無事に手術を終え、元気に回復している事例は数えきれません。心配な点は事前に獣医師に相談し、納得してから手術に臨みましょう。

手術後はしばらく見守る必要がありますが、飼い主さんの愛情深いケアがあれば猫は安心して回復します。

「こんなに心配している」という気持ちが猫にも伝わるので、明るい声で声掛けし、いつも通り話しかけてあげましょう。専門家のアドバイスを聞きながら、愛猫の健康を守るための大切なステップと前向きにとらえてください。

8. まとめ

猫の避妊・去勢手術は飼い主さんと愛猫にとって大切な決断ですが、正しい情報と事前準備があれば安心して臨むことができます。手術には健康上・行動上のメリットが多く、将来の病気予防や安定した生活につながります。

一方で、麻酔や術後ケアには注意が必要ですので、獣医師との相談や術後のサポートをしっかり行いましょう。

術後は食事や運動管理を心がけ、定期的な健康チェックで愛猫の状態を見守ることが長生きの秘訣です。

フード選びやサプリメントで栄養面をサポートしつつ、何か不安があれば専門家に相談してください。

大切なのは、飼い主さんが愛猫の幸せを第一に考え、十分なケアを続けることです。手術は一時的なものですが、その先には穏やかで健康な毎日が待っています。

  • この記事を書いた人
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DrVets

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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