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【獣医師監修】犬の膵炎と食事管理の重要ポイント – 胃腸炎・肝炎・糖尿病との違いも解説

愛犬が膵炎と診断されたら、何よりも「食事管理」が鍵となります。

膵炎では与えて良い物・悪い物が明確にあり、飼い主による徹底した食事コントロールが求められます 。本記事では、膵炎の犬に適した食事内容や療法食の選び方、調理方法、手作り食の注意点といった“食事の役割”を詳しく解説します。

また、膵炎と症状が似ている胃腸炎や肝疾患、糖尿病などの場合の食事管理との違いについても比較形式で紹介します。

膵炎における食事管理が重要な理由

膵炎(すい炎)は、膵臓に強い炎症が起きる病気です。急性膵炎では激しい嘔吐や腹痛・下痢などの消化器症状が突然現れ、命に関わる重篤なケースもあります 。慢性膵炎では長期にわたる下痢・嘔吐、食欲不振などが続き、膵臓への負担が蓄積すると糖尿病を併発することも報告されています 。いずれの場合も治療と予後管理の両面で「食事」が極めて重要です。

  • 高脂肪食との深い関連: 膵炎の明確な原因は未解明な部分もありますが、脂肪分の多い食事が膵炎発症リスクを高め症状悪化にも繋がることが知られています 。膵臓は脂肪を消化する酵素を出す臓器のため、高脂肪の食事は膵臓を過剰に働かせてしまうのです 。その結果、膵液が膵臓内で活性化して自己消化を起こし、膵炎が生じると考えられます 。特に発症前に脂っこいお肉や揚げ物を与えていた場合に急性膵炎になるケースがよく見られ 、食事内容との関連は深刻です。
  • 治療中の栄養管理: かつて膵炎治療では「絶食」が原則とされましたが、現在はできるだけ早期に少量から給餌を再開する経腸栄養が推奨されています 。絶食が長引くと腸の粘膜が萎縮し、かえって回復が遅れるためです。嘔吐が治まり次第、水分や消化に良い食事を少量ずつ与え、腸を動かすことが大切とされています 。ただし与える食事は低脂肪であることが必須で、食事内容によって膵炎を誘発・悪化させないよう注意します 。
  • 再発予防と膵臓の保護: 膵炎は一度治っても再発しやすく、慢性化しやすい病気です  。膵炎を繰り返すと膵臓の消化酵素分泌機能が衰え、糖尿病など他の疾患リスクも高まります 。再発防止のためには、寛解後も継続した食事管理が欠かせません 。実際、「一度膵炎になった犬には、できるだけ低脂肪の食事を続けるよう勧める」と述べる獣医師も多く、膵臓への負担軽減を図ることが大切です 。膵炎歴がある愛犬では、生涯にわたって脂肪分を抑えた食生活を送るくらいの意識で管理しましょう 。

以上の理由から、膵炎の治療中および治療後の食事管理は、愛犬の回復と生命を守る上で極めて重要です。次章から、具体的な食事内容のポイントを解説していきます。

膵炎の犬に適した食事内容と管理ポイント

膵炎と診断された犬には、「低脂肪」「高消化性」「適切な栄養バランス」を満たす食事が求められます。ここでは、膵炎の犬に適した食事の具体的なポイントを整理します。

低脂肪食の徹底 – 脂質管理が最優先

膵炎の食事管理で最優先すべきは「脂肪の制限」です 。膵炎になると膵臓の消化酵素分泌が低下し、脂肪の消化・代謝がうまくできなくなるため、高脂肪のフードは膵臓に大きな負担をかけてしまいます 。具体的なポイントは以下の通りです。

  • 総脂肪量を大幅カット: 一般にドッグフードの脂質含有量は10~20%以上のものもありますが、膵炎ケアには粗脂肪5~10%程度の「低脂肪フード」が適しています(製品によっては「脂質オフ」「低脂肪」「消化器サポート(低脂肪)」などの表示あり)。脂肪分の多い肉類(牛・豚のバラ肉、ラム肉の脂身など)は絶対に避けましょう 。家庭で調理する場合も油やバターは使わず、茹でる・蒸すなど脂を落とす調理法を徹底します。
  • 脂肪の「質」にも配慮: 同じ脂肪でも質によって影響が異なります。酸化した古い脂肪(揚げ油や酸化臭のする油脂)は有害で、膵炎の犬には厳禁です 。一方で魚油に含まれるオメガ3脂肪酸などは抗炎症作用が期待でき、適量であればプラスになります 。膵炎の犬には**新鮮で酸化していない良質な脂肪(フィッシュオイルなど)**を必要に応じて補うと良いでしょう 。ただし脂肪である以上カロリーは高いので、与えすぎには注意し、獣医師の指導のもとで取り入れてください。
  • おやつも低脂肪: 膵炎治療中はおやつを極力控えるべきですが、どうしても与える場合は野菜スティック(茹でニンジン等)や低脂肪のビスケットなど脂質含有量の少ないものを少量だけ与えます 。高脂肪のジャーキーやチーズ系おやつは厳禁です 。「急におやつ禁止」は犬にストレスを与えるので、低脂肪のおやつを1日数粒以内に抑えるなど工夫し、心配な場合は獣医師に相談しましょう 。

低脂肪食の徹底により、膵臓への負担を最小限に抑えられます。「脂肪分カット」は膵炎管理の基本中の基本と心得ましょう。

消化に良い食事を与える工夫 – 食材選びと調理方法

膵炎の影響で犬の消化能力は低下しがちです 。そのためできるだけ消化吸収の良い食事を与えることが大切になります。以下に具体的なポイントをまとめます。

  • 消化しやすい主食とタンパク源: 炭水化物なら白米やじゃがいもがおすすめです。水分多めに炊いた白米はエネルギー源の糖質と水分を同時に補給でき、脂質をほとんど含まないため膵臓に優しい主食になります 。じゃがいもも犬にとって消化の良い炭水化物で、脂肪ゼロの上にエネルギー(糖質)補給ができる優秀な食材です 。タンパク源は脂肪の少ない良質なものを選びます。例えば鶏ささみ肉は低脂質かつ嗜好性も高く、膵炎の犬には理想的なお肉です 。他にも白身魚(タラ等)や脂肪抜きした鹿肉・馬肉なども有効でしょう。高タンパク過ぎず適量を心掛け、消化に負担をかけない範囲で良質タンパクを供給します。
  • 野菜や食物繊維の扱い: 膵炎の食事では食物繊維を適度に含め腸の健康に配慮することも大切ですが、一方で繊維質の種類と量に注意が必要です 。特に不溶性食物繊維(キノコ類、トウモロコシ、ゴボウなどに多い硬い繊維)は腸を刺激してぜん動運動を促進します 。便秘には良いのですが、膵炎で消化管が弱っている時に腸が過剰に動くと腹痛を誘発する恐れがあります 。したがって膵炎の子には不溶性繊維の多い食品は避けるか減らすことが推奨されます  。野菜を与えるなら、水溶性食物繊維を含み消化に優しいかぼちゃ、にんじん、キャベツなどが適量であれば適しています。特にキャベツは低カロリーでビタミン類も豊富な上、ビタミンUによる胃粘膜保護作用があるとされ、胃腸に良い野菜です 。生では消化しづらいので柔らかく加熱し細かく刻んで与えてください  。
  • 調理法と形状の工夫: 「大きな塊」や生のままの食材は消化が悪いため、細かく刻む・加熱することで消化しやすくします 。例えば肉や野菜は茹でて細かくほぐす、フードプロセッサーでペースト状にする、など形状を工夫しましょう。ドライフードを利用する場合も、そのまま与えるよりぬるま湯でふやかして柔らかくすると消化を助けられます 。また、人肌程度に食事を温めると香りが立って食欲を刺激し、食べ進みが良くなります 。食欲不振で固形物を嫌がる場合には、ミキサーで流動食状にしてシリンジで少しずつ与える方法もあります 。
  • 少量頻回の給餌: 膵炎の犬には一度に大量に与えず、1日数回に小分けして与えるのが基本です。空腹時間を長くしすぎないことで吐き気を抑え、血糖の安定にも役立ちます。特に回復期は胃腸が敏感なので、1回あたりはいつもの半量以下を目安に、様子を見ながら徐々に量を増やしていきます。

以上のように、「消化に良い食事」とは食材選びから調理法、与え方まで工夫した食事を指します。膵炎の愛犬には、柔らかく消化しやすい手作りの“おじや”やスープご飯のようなメニューが適しています。水分も同時に摂れるので脱水予防にもなり、一石二鳥です。

療法食(処方食)の活用と選び方

市販のドッグフードにも、膵炎や消化器疾患の犬向けに開発された「療法食(処方食)」があります。獣医師の指示のもと活用すれば、栄養バランスが取れ管理もしやすいため大いに助けになります。

  • 療法食の利点: 膵炎用に設計された療法食は、厳密に脂肪分が制限され、適切なタンパク質と炭水化物源、ビタミン・ミネラル類も強化されています 。例えばロイヤルカナンの「消化器サポート(低脂肪)」やヒルズの「i/d ローファット」などが代表的で、脂質含有量が通常フードより大幅に低く設定されています。療法食ならば膵炎の犬に必要な栄養素(低GIの炭水化物、良質タンパク、食物繊維など)を適切なバランスで含んでおり、手作りでは難しい精密な栄養管理が可能です  。
  • フード選びのチェックポイント: 療法食・一般フードを問わず、膵炎の犬用フードを選ぶ際は次の点を確認しましょう 。
    • 粗脂肪の割合: 「低脂肪」の明記があるもの(目安として粗脂肪10%以下)。加えて原材料中に動物性油脂が多く含まれていないかチェックします。
    • 炭水化物源: 米や馬鈴薯など消化の良い穀類・イモ類が使われているか 。小麦はグルテン含有で消化しにくいため避けられているのが望ましいです 。
    • タンパク質の質: 鶏肉・魚など良質で消化の良いタンパク源を使用し、過度な高タンパクでないもの。小麦グルテンなど消化の悪いタンパク質を含まないこと 。
    • 繊維・添加物: 適度な繊維を含み腸内環境に配慮しているか 。着色料や香料など不要な添加物が少ないことも望ましいです。総合栄養食であることも確認します。
  • フードの切り替え: 膵炎発症直後は急にフードを切り替えることも多いですが、嘔吐が治まり食欲が戻ってきたら徐々に新しいフードに移行します。いきなり100%新しい食事にせず、数日のかけて徐々に混ぜて切替えることで胃腸への負担を軽減できます。膵炎は再発しやすいため、むやみにフードを変更すること自体が膵臓へのストレスとなる場合があります 。そのためいったん安定した療法食が見つかったら、安易に別のフードに替えないこともポイントです 。

療法食はやや価格が高めですが、愛犬の健康を守る安心料と考えて積極的に活用しましょう。迷った場合は獣医師やペット栄養管理士に相談し、愛犬に合ったフードを選んでください。適切なフード選びは、膵炎の治療・予防の大きな助けになります。

手作り食のメリットと注意点

膵炎の食事管理では、手作り食にも関心が集まります。手作りであれば食材を細かく選べて新鮮なものを使え、愛犬の好みに合わせられるメリットがあります。しかし一方で栄養バランス管理の難しさや調理の手間といったデメリットもあります 。ここでは膵炎犬への手作りごはんについて、利点と注意点を整理します。

  • 手作り食のメリット:
    • 柔軟な食材選択: 愛犬のアレルギーや嗜好に合わせて食材を選べます。例えば「鶏肉より魚が好き」なら白身魚主体にする等、犬ごとにカスタマイズ可能です。
    • 鮮度と思いやり: 飼い主の手で調理することで鮮度の高い食事を提供できます。愛情もたっぷり込められるため、食の細い子でも食べてくれることがあります。実際、煮汁ごと与えるささみや柔らかく煮込んだおじやは香りが良く食欲増進に効果があります 。
  • 手作り食の注意点:
    • 栄養バランス: 独自の手作りでは栄養素の過不足が起こりがちです。特に膵炎ケアでは低脂肪・適正タンパクに加え、ビタミンやミネラルも不足なく含める必要があります。カルシウム源(卵殻パウダーなど)やビタミンサプリの追加など、獣医師と相談しながら栄養バランスを整えましょう。市販の総合栄養食トッピングを活用するのも一案です。
    • 調理と保存: 油を使わない蒸し煮調理が基本になります。大量に作り置きする場合は小分け冷凍し、与える際は人肌に温めます。痛みやすい夏場は特に注意が必要です。
    • 手間と継続性: 毎日手作りする負担は小さくありません。最初は頑張れても、長期にわたり継続できなければ意味がないので、無理のない範囲で取り入れましょう。ドライ療法食に一部手作りトッピングを混ぜるなどハイブリッド方式も検討できます。

手作り食は飼い主の知識と努力が要求されますが、愛犬に最適化できる点が魅力です。膵炎の再発予防には食事管理を長く続けることが重要なので、無理なく続けられる形で取り入れてください。適切なレシピ本や栄養計算ツールも活用し、「低脂肪で消化に良い」という大前提は絶対に守りましょう。

食事管理の継続と再発予防の重要性

膵炎の治療がひと段落しても、油断は禁物です。再発防止のための食事管理は一生涯続くくらいの気持ちで臨みましょう 。膵炎は完治したように見えても再発や慢性化が多い病気であり、油断すると命に関わるケースもあります 。最後に、長期管理のポイントをまとめます。

  • 獣医師の指示に従う: 膵炎治療後は定期的に獣医のチェックを受け、膵臓の数値や体重の推移を見ながら食事内容を調整します。自己判断で高脂肪な元の食事に戻すことは避け、「今後も基本は低脂肪食」であるべきと心得ましょう 。どうしても変更したい場合も必ず獣医師と相談し、少しずつ段階的に移行します。
  • 体調の変化に注意: 食事管理中も、もし嘔吐や下痢、食欲不振などの兆候が見られたら早めに対処します。膵炎が再燃している可能性もありますし、他の消化器疾患の可能性もあります。早期発見・早期治療が命を守るため、気になる症状はすぐ受診しましょう。
  • 家族全員でルール遵守: 飼い主以外の家族にも膵炎の怖さと食事制限の必要性を理解してもらい、人の食べ物を絶対に与えないなど全員でルールを守ります。実際に「家族の食事中にお裾分けした肉が引き金で膵炎になった」例は珍しくありません 。犬に安全な食べ物かどうか常に意識し、テーブルフードは厳禁です。
  • サプリメントの活用(必要に応じて): 膵炎が慢性化している場合、補助的に消化酵素サプリやオメガ3系オイルのサプリを使うこともあります 。消化酵素サプリは食事と併用することで膵臓の負担を軽減し、オメガ3脂肪酸サプリは抗炎症作用で膵臓の炎症軽減を期待できます 。もっとも、これらはあくまで補助であり主役はあくまで食事療法です。サプリ使用も獣医師と相談の上、安全な製品を適切な量だけ用いましょう。

膵炎は一度の過ちで数日で命を落とすこともある恐ろしい病気です 。だからこそ、「食事=治療の一環」という意識で、再発を防ぐ食生活を続けてください 。愛犬の長生きのため、正しい知識に基づいてケアしていきましょう。

胃腸炎・肝疾患・糖尿病との違い – 食事管理の比較

嘔吐や下痢など消化器症状は膵炎以外の病気でも見られるため、胃腸炎や肝炎、糖尿病などと混同されがちです。それぞれ原因や病態が異なるため、適した食事管理の内容も異なります。膵炎と紛らわしい主な病気について、食事管理上の違いを比較してみましょう。

疾患適した食事内容・管理ポイント
犬の膵炎 (急性・慢性膵炎)低脂肪・高消化性が基本。 脂肪5~10%程度まで抑え、膵臓への負担を減らす 。高品質なたんぱく質を適量含み、糖質も控えめ(甘い物は厳禁) 。食物繊維は穀類や芋類由来の適量を与え、野菜の繊維は与えすぎない 。食事は少量頻回で温めて与え、嘔吐が治まったら早期に経口栄養を再開する(ただし内容は低脂肪に限る) 。
犬の胃腸炎 (嘔吐・下痢を伴う胃腸の炎症)まず胃腸を休めることが優先。 一般に12~24時間の絶食で消化管を休ませた後、水分と消化の良い食事を少量ずつ頻回に与え始める 。脂肪の厳格制限は膵炎ほど必要ないが、刺激物や過剰な脂質は避ける。ドライフードの場合はふやかして与え、低脂肪・高消化性の療法食(消化器サポート等)が処方されることもある 。症状が改善したら徐々に通常の食事に戻すが、原因(食べ過ぎ・急なフード変更・ストレスなど)に応じた再発予防も重要。
犬の肝疾患 (肝炎・肝硬変・胆管閉塞など)肝臓への負担軽減と栄養補給の両立が目標。 肝不全時はタンパク代謝異常でアンモニア蓄積が問題となるため、タンパク質は制限しつつ高品質にする 。十分なエネルギーは炭水化物で補給し(可消化性の炭水化物を全体の45~50%程度) 、体タンパクの異化を防ぐ 。脂肪は膵炎や高脂血症を併発していなければ必要十分に与えてOK(むしろエネルギー源として重要) 。ただし胆汁うっ滞がある場合は低脂肪にする 。加えて低ナトリウム(塩分制限)、銅の制限(銅蓄積症例)や亜鉛・抗酸化ビタミンの補給など肝臓病特有の配慮が必要 。個々の肝疾患の状態に応じて食事組成を細かく調整する点が膵炎との違い。
犬の糖尿病 (高血糖症、インスリン分泌・作用異常)血糖値の安定化が最優先。 糖質(炭水化物)の摂取を制限し、血糖値を急上昇させない低GI食品主体の食事にします 。食物繊維を多く含む食材を使い、糖の吸収をゆるやかにすることで血糖コントロールを改善 。カロリー過多を防ぐため脂肪も適度に抑え(減量不要なら中程度脂肪でも可とされる) 、筋肉維持のため高タンパク質の内容にします 。また毎日同じ時間に決まった量を与える規則正しい給餌が鉄則で、インスリン投与のタイミングと連動させます 。膵炎の食事が「脂肪制限重視」であるのに対し、糖尿病食は「炭水化物管理と繊維活用」がポイントとなります 。

※上記は一般的な比較であり、実際の食事管理は個々の病態や併発症、犬の状態によって異なります。各疾患とも獣医師の診断・指導のもと最適な食事プランを立てることが大切です。

膵炎の食事管理に関するQ&A

最後に、膵炎の食事管理について飼い主さんから寄せられがちな疑問にQ&A形式で回答します。現場でのよくある質問やケースを知っておくと、いざという時に役立つでしょう。

  • Q1: 「膵炎は治ったのですが、食事は今後もずっと低脂肪にすべきですか?以前のフードに戻しても良い?」
    A: 基本的には今後も低脂肪食を続けることをおすすめします。 前述の通り、一度膵炎を起こした膵臓は機能低下の可能性があり、再発リスクも高まります 。無理に元の高脂肪食に戻す必要はありません。愛犬の状態が安定していても、担当獣医師と相談しながら低脂肪食の継続を検討しましょう 。ただし極端に脂肪を恐れすぎるあまり、必要エネルギーまで不足させないよう注意が必要です。愛犬の体重や筋肉量を維持できる範囲で脂質以外の栄養を補い、バランスの良い食事を心がけてください。
  • Q2: 「膵炎の治療中だけど、おやつを全くあげないのは可哀想…少しなら与えてもいい?」
    A: 原則、治療中のおやつは控えるべきですが、状態が安定していれば低脂肪のものを少量だけ与えても良いでしょう。 犬は急に大好きなおやつがもらえなくなると大きなストレスを感じます 。ストレスも回復の妨げになるため、獣医師の許可の範囲で工夫しましょう。与える場合は脂質の量を必ず確認し、高脂肪のビスケットやチーズ、ジャーキーはNGです 。茹でた野菜(かぼちゃ・にんじん等)やリンゴ等の果物を一口など、繊維質中心で脂肪の少ないものに限ります 。量はごく少量に留め、「食べ過ぎていないか」「体調に変化はないか」を細心の注意で見守ってください。
  • Q3: 「膵炎の愛犬がご飯を食べてくれない時はどうすればいい?」
    A: まずは食事の形状や温度を工夫してみましょう。 膵炎の犬は腹痛や吐き気で固形物を嫌がることが多いです 。その場合、ドライフードならお湯でふやかして柔らかくし、ウェットフードや手作り食ならミキサーでポタージュ状にしてみてください 。シリンジ(注入器)で口元に入れてやると舐め取ってくれる子もいます。また軽く温めて匂いを立たせると食欲を刺激できます 。それでも食べない時は、嗜好性の高い療法食(市販のスペシャル缶など)をトッピングしても構いません 。この際もできるだけ低脂肪のものを選びましょう 。どうしても何も口にしない場合は点滴による補液・栄養補給が必要になるため、早めに獣医師に相談してください。無理強いは禁物ですが、少しでも口にしてくれる工夫を色々試してみましょう。
  • Q4: 「膵炎と胃腸炎は症状が似ていますが、見分け方や食事対応の違いは?」
    A: 症状だけでの判断は難しく、最終的には血液検査(膵特異的リパーゼ検査など)で診断します 。嘔吐や下痢が続く場合、軽い胃腸炎と思って様子を見ていると、実は膵炎だったというケースも少なくありません 。見分けとしては、膵炎の嘔吐は何度も繰り返し激しい傾向があり 、腹痛で背中を丸めるようなしぐさ(祈りのポーズ)をすることがあります。また発熱や脱水が見られることも。いずれにせよプロの診断が必要です。食事対応の違いは前述の比較表の通りですが、胃腸炎なら一時的絶食と徐々に元の食事へ戻すのに対し、膵炎では低脂肪食への切替と継続が必要という点がポイントになります。それぞれ適した食事内容が異なるため、やはり獣医師の指導のもと対応してください。

以上、膵炎の食事管理に関する疑問と回答でした。愛犬の状態は一頭一頭違いますから、「うちの子の場合はどうなのか?」と迷うことも多いでしょう。その際は自己判断せず必ず専門家に相談し、最善の食事プランを見つけてあげてください。

さいごに:食事を制する者が膵炎を制す

膵炎の治療・予防において、毎日の「ごはん」は欠かせない治療の柱です 。食事管理を怠れば再発の危険性が高まり、適切な管理を続ければ愛犬の快適な生活を取り戻すことができます。膵炎は増加傾向にある病気ですが、私たち飼い主が正しい知識を持って対策すれば恐れる必要はありません 。

愛犬の健康長寿を守るために、ぜひ本記事の内容を参考に今日から実践できる食事管理を始めてみてください。獣医師と二人三脚で取り組み、愛犬にとって最適で美味しい食事を提供してあげましょう。毎日の積み重ねが、きっと愛犬の膵臓を守り、笑顔につながるはずです。頑張る飼い主さんとワンちゃんを心から応援しています!

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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