- 愛犬が突然何度も吐いてしまった
- 食欲がなく、ぐったりしている
- 祈りのポーズをしている
- 膵炎と診断されたけど、どのような食事をあげたら良いかわからない
といったことはありませんか??上記のような症状を患っている場合は急性膵炎を発症しているかもしれません!
膵炎は様々な消化器症状(嘔吐・下痢・血便など)を発症し、シニア期以降のわんちゃん・肥満のわんちゃんに多いと言われている病気ですが、
原因が分からない特発性と呼ばれる急性膵炎が非常に多いです。
ですので急性膵炎は若齢であっても高齢であっても、どのようなワンちゃんにでも発症する可能性のある疾患なのです。
急性膵炎の死亡率は後述しますが、非常に高く、早く治療を開始しなければ亡くなってしまうことのある怖い消化器疾患と報告されています。
膵炎では様々な治療法を組み合わせる必要がありますが、
中でも重要な治療は食事療法(低脂肪食)と点滴(脱水の改善)です。
低脂肪と聞いて、まず思い浮かぶ食材はささみでしょう。ささみは低脂肪・高タンパク食ですので、膵炎を含めた幅広い消化器疾患に対してオススメの食材になります。
ささみ以外の低脂肪の食材としては、馬肉や鹿肉がオススメです!
またタンパク質だけでは栄養が偏ってしまいますので、ささみに加えてビタミンやミネラルを豊富に含んでいるさつまいもなどのイモ類を加熱調理して与えるとよいでしょう。
では、ささみやさつまいもはいったいどのくらい与えればよいのでしょうか??
本記事ではささみとさつまいもの手作りごはんのレシピや1日に与える必要のある食事量について獣医師とペット栄養管理士が詳しく徹底解説しておりますので、
膵炎のような症状を患っていたり、膵炎の治療中・治療後のわんちゃんを飼っている飼い主様は一読する価値が大いにあります。
膵臓ってどんな臓器?
膵臓は消化器官の1つで、主なはたらきは2つあり、ホルモンを血液中に送る内分泌と消化酵素を腸へ送る外分泌といった機能があります。
膵臓がおこなう内分泌のはたらきを簡単に説明すると、血液中の糖分の量を調節するホルモンであるインスリンやグルカゴン、ソマトスタチンといったホルモンを分泌します。
インスリンは血糖値を一定濃度に保つはたらきがあります。
そして外分泌としてのはたらきは、様々な消化酵素を含む"膵液"を分泌することです。
膵液の中にはリパーゼ、アミラーゼ、トリプシンといった様々な消化酵素が含まれています。
膵液はアルカリ性で胃液に含まれる酸を中和し、小腸のはたらきを助ける消化液としてはたらきます。
また、タンパク質、炭水化物、脂肪など生きていくには欠かすことのできない三大栄養素を消化するために必要な消化酵素が膵液には含まれており、重要な役割を担っています。
この膵液を分泌する際に起きる病気として膵炎があります。
以下で膵炎について詳しく説明していきましょう。
膵炎とは?
膵炎とは、膵臓に炎症が起こる病気のことです。
膵臓はトリプシノゲンと呼ばれる消化酵素を作ります。トリプシノゲンは、膵管を通って十二指腸に分泌され、トリプシンへと変化し、食べ物を消化します。
しかし大量のトリプシンが活性化されると膵臓自身を自己消化してしまい、炎症を引き起こします。その炎症が体全体に広がることで、嘔吐・下痢・腹痛・腰痛などの症状を引き起こします。
重症化すると腹膜炎や多臓器不全などを起こし、命に関わるケースもあります。
また膵炎は慢性膵炎と急性膵炎に分類されます。急性膵炎は、突然発症し進行も早いのが特徴です。
慢性膵炎は急性膵炎を繰り返すことで、膵臓の線維化・萎縮などにより膵臓が硬くなり、膵臓の機能が低下していく病気です。
また膵炎により、膵臓に負担がかかり続けることによって糖尿病を併発するリスクが上がります。
命にかかわるリスク
重度の急性膵炎の場合は急性腎障害など、命にかかわる合併症が引き起こされます。
膵炎の原因
膵炎は突然発症することが多いですが、膵炎を引き起こす原因や危険因子はいくつもあります。
膵炎の原因・危険因子として指摘されるのは、
- 肥満
- 過食
- 低タンパク、高脂肪なごはん
- ストレス
- 人間の食物をあげている
- ゴミ漁りをする
- 遺伝的要因
- 怪我などによる外的要因
- ホルモン疾患などの膵炎を引き起こす基礎疾患がある
- 薬剤の投与(フェノバルビタール、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、利尿剤など)
- 低血圧
- 去勢・避妊手術以外の手術歴がある
- 蜂などの虫に刺された
などといった様々なものが挙げられます。
特に脂肪分の多いフードを大量に食べている場合は、注意が必要です。
高脂肪なドッグフードだけでなく、人間の食べ物も犬にとって高脂肪である場合が多いので、普段から人間の食べ物をあげているわんちゃんは膵炎のリスクが高いです。
また、添加物の多いごはんやおやつといった、低品質な食事が原因だという意見もあります。
そして膵炎になりやすいとされる基礎疾患もたくさん存在します。
- 高脂血症
- 甲状腺機能低下症
- クッシング症候群
- 副腎皮質機能亢進症
- 糖尿病などの内分泌疾患
- 心臓病
- 腎臓病との併発
- 高リポ蛋白血症
- 無菌性結節性脂肪織炎
上記で様々な膵炎の原因についてお話ししましたが実際のところ臨床の現場では、膵炎の原因を突き止めることはできない事が多いのです。(これを特発性といいます)
とある報告では、膵炎のわんちゃんの90%では、原因を特定することはできなかったといわれています。
膵炎の初期症状・末期症状
膵炎は急性膵炎と慢性膵炎の2種類があります。
急性膵炎は重度になるとショック症状や多臓器不全を引き起こし、死に至ることがあります。慢性膵炎は急性膵炎が慢性化すると慢性膵炎になりますが、症状は急性膵炎と比べると軽度です。
膵炎の初期症状
膵炎では初期症状として、頻回の嘔吐や下痢・血便が起こります。また常に気持ちが悪い状態が続くため、よだれをダラダラ垂らすこともあります。
膵炎の初期症状は具体的には以下の通りです。
- 激しい腹痛
- 頻回の嘔吐・下痢・血便
- 多量のよだれが出る
- 食欲不振
- 発熱・脱水
- 黄色い液状の便
- 元気がない、無気力
- 浅速呼吸
- 脱水
- 腹痛・腰痛
- 祈りの姿勢
膵炎の末期症状
膵炎が進行すると、末期症状が起こります。
末期症状としては、低体温、腹膜炎、腹水、血栓塞栓症があります。
血栓塞栓症とは
血栓と呼ばれる血の塊が肺などの血管に詰まってしまう事があり、これを血栓塞栓症と呼びます。
血栓塞栓症になってしまうと、多臓器不全を引き起こし、亡くなってしまう事があります。
その他の末期症状としては、ビリルビンと呼ばれる色素により、体が黄色くなってしまう黄疸が出る事などがあります。
重症化すると低循環性のショック、尿毒症(腎不全)、黄疸、凝固異常(点状出血)、呼吸困難やショック症状、多臓器不全などが起こり命に関わります。
腹痛のサイン(祈りのポーズ)ってどんなもの??
膵炎が発症すると、腹部の強い痛みを伴います。
痛みを誤魔化すために、わんちゃんは伏せの姿勢でお尻を上げる祈りのポーズ(姿勢)を行うことがあります。
膵炎の好発犬種
- ミニチュアシュナウザー
- ヨークシャーテリア
- イングリッシュコッカースパニエル
- コリー
- ボクサー
- シェットランドシープドッグ
- ウェスティ
などが発症リスクが高いと言われています。
特にミニチュアシュナウザーは遺伝的に脂肪代謝異常があるため膵炎になりやすいと言われており、血中中性脂肪値が高くなりやすいため、発症しやすい犬種と考えられています。
また、免疫介在性疾患を引き起こしやすいと報告されているイングリッシュコッカースパニエルも膵炎の好発犬種です。
もちろん上記の犬種だけ膵炎が起こる物ではなく、すべてのわんちゃんにおいて膵炎の発症リスクがあります。
膵炎の診断
膵炎の診断は複数の検査結果を基に行います。
急性膵炎では血液検査でCRPと呼ばれる炎症の数値や白血球の数値などが著しく上昇しますが、それだけでは急性膵炎と診断してはいけません。
診断するためには以下の検査を行う必要があります。
- SNAPcPL(膵特異的リパーゼ)で陽性を示すこと
- リパーゼの数値が高くなっている
- 白血球やCRPといった炎症の数値が著しく上昇すること
- 消化器症状を伴うこと(嘔吐・下痢・血便など)
- 超音波検査で膵臓が腫大している、低エコー(暗くなっている)になっている、周囲の脂肪が高エコー(明るくなっている)など膵炎を示唆する所見があること
- 超音波検索・レントゲン検査などで異物、腸閉塞、腫瘍を除外できていること
膵炎以外でリパーゼが高くなる原因は?
リパーゼまたは cPL が上昇する疾患には、
- 腹膜炎
- 消化管異物
- 胃拡張
- 胃腸炎
- 肝臓疾患
- 心疾患
- 糖尿病
- 肥満
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
などがあります。そのためリパーゼが高いから膵炎と決めつけて診断することは安易です。
膵炎を発症すると、超音波検査で膵臓が腫大・浮腫を引き起こしていたり、白く濁って見えることがあります。
具体的には、わんちゃんの膵臓の厚さが1.3〜1.5cm以上であれば、膵臓は腫大しているといえます。(通常の膵臓は5〜8mmくらい)
重度の膵炎では、腹膜炎や腹水が認められることがありますが、腸閉塞や腫瘍でもそのような所見は認められます。
そのため、膵炎以外の疾患を画像検査などにより除外することが、膵炎の診断には重要なのです。
膵炎の治療法
膵炎の治療は様々な治療を組み合わせて行います。
具体的には
- 制吐剤
- 制酸薬
- 静脈点滴
- 疼痛(痛み)管理
- 早急に低脂肪食の給餌を行う
- ステロイド
- フザプラジブナトリウム水和物(ブレンダZ )
といった治療を組み合わせて行います。
- 制吐剤(吐き気止め)
膵炎を引き起こすと、上述しましたように連続する頻回な嘔吐を引き起こします。そして度重なる嘔吐により、脱水や食欲不振はより悪化してしまいます。
そのため嘔吐の管理は膵炎の治療にとって、非常に重要となります。
嘔吐の管理には一般的に制吐剤が使用されます。特にマロピタント(セレニア)と呼ばれる制吐剤を使用します。
NK₁受容体拮抗薬であるマロピタントは、中枢(嘔吐中枢)および末梢(消化管)の両方に作用する制吐薬です。
- 制酸薬
膵炎を発症すると、胃酸過多になってしまう場合があります。胃酸過多になると、胃びらんや潰瘍を引き起こしてしまい、食欲がなくなってしまいます。
プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール、パントプラゾールなど)やヒスタミン2型(H2)受容体拮抗薬(ファモチジン、ラニチジンなど)は胃酸の分泌を抑える制酸薬で、胃・腸の潰瘍や食道炎のリスクを減少させる効果があります。
- 静脈点滴
膵炎で来院されるわんちゃんの全てが脱水を引き起こしています。
というのも、膵炎の炎症が様々な臓器へ広がっていくことにより、全身の血管内の水分が減少してしまうのです。
このような重度の脱水を引き起こしている場合には、皮下点滴ではなく、静脈点滴を行います。
膵炎のような重度脱水を引き起こしている場合には、数日以上の静脈点滴を行う必要があります。
- 疼痛管理
上述しましたように、膵炎になってしまうと腹部に強い痛みを伴います。
痛みの管理としては、ブプレノルフィンやフェンタニルを使用します。
- 早急に低脂肪食の給餌を行う
昔の獣医療では膵炎の場合、1日から2日以上の絶食指示を出すことがほとんどでした。というのも人間の膵炎で、絶食治療が支持されていたためです。
しかし現在、犬や猫では絶食によって、胃腸の免疫を逆に弱めてしまうため、今では推奨されておりません。
膵炎になってしまった場合は、基本的に自らフードを食べる事はありませんから、強制的に給餌を行います。
- ステロイド
ステロイドは犬の急性膵炎に有効であるとの報告があります。具体的にはステロイド使用により、急性膵炎による症状・CRPの改善が認められたとのことです。
ただし、ステロイドを長期に使用すると、副作用として血栓ができやすくなることがあるため、投与には注意が必要です。
- フザプラジブナトリウム水和物(ブレンダZ)
ブレンダZは、サイトカインによるLFA-1と呼ばれる物質の活性化を抑制し、白血球の接着・遊走を阻害することで、抗炎症作用を示す新しいタイプの膵炎治療薬です。
ブレンダZに副作用はある??
ブレンダZの使用によって、重篤な副作用が起こる可能性はほとんどないでしょう。ただし、以下の場合はブレンダZの有効性・安全性は確認されておりませんので、注意が必要です。
- 妊娠中あるいは授乳中の犬
- 3か月齢未満の犬
- 膵炎急性期以外の症例
ブレンダZはこれまで犬の急性膵炎のみに使用されてきましたが、国内の最新の報告では様々な急性炎症を引き起こす疾患で使用された事例があり、効果を示しています。
急性膵炎の治療期間は??
急性膵炎の場合は、2~4日間入院して積極的な治療を行う必要があります。退院した後も低脂肪食や内服薬を与えて、急性膵炎が完治するまでに1〜2週間かかります。
急性膵炎を放っておくと、ショック状態に陥り、死に至る可能性があります。また、繰り返し急性膵炎を発症していると、消化酵素を生成する膵臓の細胞が破壊されてしまい、慢性膵炎を引き起こすこともあります。慢性膵炎は不可逆的な疾患で、完治することはありません。
獣医師オススメの低脂肪食
なかなか膵臓に良い低脂肪フードが見つからない...
低脂肪フードの食いつきが悪い...
フードを食べても膵炎が再発してしまう...
といったお悩みを多くの飼い主さんが持っていらっしゃることでしょう。
良い低脂肪フードと巡り会えると、
あなたの愛犬の膵炎が良くなるのはもちろんのこと、
フードの食いつきがいいのでおやつをあげなくても大満足で、さらには愛犬の体質が膵炎になりにくい体質へと変わっていくので、膵炎が繰り返し再発することがなくなります!
どうすればそんなことが可能になるのでしょうか。
そのためには、体質を改善しながら膵炎をしっかり治してくれる低脂肪フードを選ぶ必要があります!
具体的に私が提案する良い低脂肪のフードは
- 膵臓に負担をかけないレベルで低脂肪であること
- 膵炎になりにくい体質へと改善する作用がある
- 嗜好性が高く、食いつきが良い
といった3つの条件を満たしている療法食です。
これらの条件を満たしている低脂肪フードを獣医師である私が厳選して、ご紹介しましょう!
和漢みらいのドッグフード
和漢みらいのドッグフードは漢方を導入した特別療法食
和漢みらいのドッグフードって何がすごいの??
和漢みらいのドッグフード【特別療法(膵臓用)】は、製薬会社が開発した高性能ドッグフードで、
- 膵臓に良い漢方含有(89種類)
- 高品質な鹿肉使用
- 腸内環境を意識したマクロビ発酵素材配合
- オメガ3脂肪酸含有
- ファイトケミカル含有
など他のドッグフードには含まれていない愛犬の体に良い成分がたくさん配合されています。
和漢みらいのドッグフードには漢方を中心に、
鹿肉などの良質なタンパク質や腸内環境を意識したマクロビ発酵素材が使用されています。
漢方によって、膵臓のケアだけでなく、根本となっている体質を改善することができます。
漢方を導入した特別療法食
和漢みらいのドッグフードって何がすごいの??
和漢みらいのドッグフード【特別療法(膵臓用)】は、製薬会社が開発した高性能ドッグフードで、
- 膵臓に良い漢方含有(89種類)
- 高品質な鹿肉使用
- 腸内環境を意識したマクロビ発酵素材配合
- オメガ3脂肪酸含有
- ファイトケミカル含有
など他のドッグフードには含まれていない愛犬の体に良い成分がたくさん配合されています。
和漢みらいのドッグフードには漢方を中心に、
鹿肉などの良質なタンパク質や腸内環境を意識したマクロビ発酵素材が使用されています。
漢方によって、膵臓のケアだけでなく、根本となっている体質を改善することができます。
食いつきがとても良い
和漢みらいのドッグフード【特別療法食(膵臓用)】は療法食だし、和漢が入っているけど、美味しいの??
和漢みらいのドッグフード【特別療法(膵臓用)】は原材料にもとことんこだわっているので、
高品質なタンパク源を摂取できるだけでなく、
食いつきも非常に良いドッグフードですので、
あまり食べないわんちゃんにもオススメです!
膵臓にやさしい低脂肪
和漢みらいのドッグフード【特別療法(膵臓用)】は膵臓に優しい設計がされており、
にこだわったヒューマングレードのドッグフードです!
和漢のフードの口コミ
和漢のフードの気になる口コミを以下でご紹介します。
イヤイヤが多い我家の老犬も色々試しました。和漢のフードは飽きずに食べてくれてます。やっと継続して食べてくれるフードにたどり着きました!血液検査も横ばいで悪化はしていません。ありがとうございます。
40代女性
低脂肪のフードを色々試しましたが、1番食いつきがいいです。他のは食べないかしぶしぶ食べるような子ですが、がっついて食べます。
高齢犬にもぴったり
60代女性
19才なので膵臓の機能も低下しており、食べやすいフードはないか探していました。フードを変えて食べないことかないよう、いつものフードに(小粒なので)ふりかけのようにしたところ気にせず食べてくれました。めざせ20才!
膵炎に悩む愛犬とその飼い主さんに、心から和漢のフードをオススメします。
膵炎は再発する事が多い
膵炎を1回でも発症したことのあるわんちゃんは、膵臓に瘢痕を形成してしまう事があり、今後膵炎が再発する傾向にあります。
また急性膵炎を再発するだけでなく、前項でお話しした慢性膵炎のリスクも高くなります。
慢性膵炎は膵外分泌不全と呼ばれる疾患を引き起こす事があり、膵液に含まれる膵酵素の量が減少した状態を指します。
膵外分泌不全により、消化酵素の量が減少することで、食事を十分に消化・吸収できず、脂肪便が大量に出ることがあります。
その結果、体重減少や低栄養を引き起こしてしまいます。
以下の記事で慢性膵炎について総まとめしています。
膵炎の予防
膵炎の予防には以下の3つの項目が、予防につながると考えられます。
- 体重管理
- 食事管理(低脂肪食)
- 基礎疾患の管理
おうちでできる体重管理と食事管理について説明していきます。
体重管理
肥満は膵炎との関わりが深いとされています。
肥満と診断されている場合は、獣医師と相談しながら無理のない健康的なダイエットをします。
健康的な体重であっても、わんちゃんも人間と同じように歳を重ねるごとに代謝が落ちていきます。きちんと体重を維持できるよう、サポートしていきましょう。
また、健康の維持には適度な運動やサプリメントの投与もかかせません。
たくさんお散歩したり、お散歩がきらいな子であればおうちでボールなどを使って遊んでみたり、わんちゃんも家族も楽しみながら取り組めるものを探すのもいいでしょう。
膵炎は適切な食事管理によって予防、対策できる病気である反面、膵炎の後に高脂肪食などを与えすぎると再発や慢性化するリスクがあります。
膵炎の食事について
膵炎は食事療法がとても大切です。
絶食
嘔吐などの症状が強く出ている場合、絶食が行われることがあります。
絶食により膵臓から消化酵素が出にくくさせることで、膵臓を休めるためです。
絶食は、脱水や低血糖などのリスクもあるため獣医師の判断の下、行動しましょう。
わんちゃんの膵炎時における絶食については長い間、長期の絶食がよしとされてきましたが、
近年の動物栄養学では、嘔吐などの症状を吐き気止め(セレニア)によってコントロールし、早急に給餌を開始しする治療方針に変わりつつあります。
以前は、膵炎の犬に対して短期間の絶食が推奨されていました。
その理由は、食事を摂ることが膵臓にさらなるストレスを加え、炎症を悪化させる可能性があるとされていたからです。
しかし、近年の研究では、軽度から中等度の膵炎の犬に対する絶食が必ずしも明確でないことが示唆されています。
最近のガイドラインでは、膵炎の犬に対する早期の栄養補給が推奨されています。これは、栄養が膵炎の治療を促し、病状の悪化を防ぐと考えられているためです。
ただし、重要なのはその食事が低脂肪で消化しやすいものであることです。また、食事は小分けにして、一日に数回に分けて与えるのが理想的です。
低脂肪食
ドッグフードを食べることができる状態であれば、低脂肪食を与えます。
なぜ膵炎で低脂肪食を与える必要があるのかというと、低脂肪食は膵臓に刺激を与えにくいためです。
また注意としては、普段から与えている大好きなおやつやトッピング、ミルクやスープなどは治療期間や食事療法中は控えるように心がけましょう。
膵炎になった場合、ヨーグルトはあげてもいいの??
加糖で高脂肪なヨーグルトは控えるようにしましょう!膵臓に大きな負担をかけることになります。
あげるのであれば、無糖で無脂肪のヨーグルトがよいでしょう。
膵炎時の手作り食レシピ(ささみとおいものごはん)
- 食欲がなくて、療法食を食べてくれない。
- アレルギーがあって療法食を与えられない。
- 元々グルメな子だから好き嫌いが激しい。
そんな時に役立つ手作り食レシピをご紹介します。
ささみとイモのごはん
膵炎の際に自宅でできる食事管理としてよく使用されるのが、"ささみとイモ"を使ったごはんです。
このメニューはとても認知度が高く、手作り超低脂肪食(Ultra Low Fat Diet、略してULF)とも呼ばれています。
ささみはお肉の中でも脂質をほとんど含んでおらず、またタンパク質を多く含む食材であり、消化器疾患を抱えているわんちゃんにとって最適な食材であるためです。
以下にささみと他の部位のお肉を比較した表をまとめています。
食材 | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 炭水化物(g) | カロリー(kcal) |
ささみ | 23.9 | 0.8 | 0 | 109 |
皮なし胸肉 | 23.3 | 1.9 | 0.1 | 116 |
皮あり胸肉 | 21.3 | 5.9 | 0.1 | 145 |
レバー | 18.9 | 3.1 | 0.6 | 111 |
皮なしもも肉 | 19.0 | 5.0 | 0 | 127 |
皮ありもも肉 | 16.6 | 14.2 | 0 | 204 |
ささみ100gに含まれる脂質は0.8gと非常に少なく、膵臓に負担の少ない食材と言えるでしょう。
また、手作り超低脂肪食は膵炎のみならず、わんちゃんでリンパ管拡張を伴う慢性腸症や消化器型リンパ腫といった疾患でも使用されています。
ささみは低脂質なため、低脂肪食にはもってこいの食材です。さつまいも・じゃがいもといったイモ類は血糖値が比較的おだやかに上がっていく食材なので、膵炎の時、一緒に悪くなりやすい腎臓に対しても配慮されています。
もし腎臓病も一緒に併発している場合は、カリウムを多く含むさつまいもを避け、比較的カリウムの少ないじゃがいもを与えた方がよい場合もあります。
さつまいもの栄養素
さつまいもには様々なビタミンが含まれており、わんちゃんの身体にとって大きなメリットがあります。
さつまいもに含まれる具体的な栄養素は以下のとおりです。
食物繊維
さつまいもに多く含まれる食物繊維には、腸内細菌を増やし、アンモニアの発生を抑えるはたらきがあるため、血液中の有害物質を減少させます。
また食物繊維には消化を助ける機能があるため、膵炎により下気味の際にさつまいもをあげると良いでしょう。
肥満のわんちゃんは、食物繊維の多い食事を給餌することで、満腹感を長引かせるため、ダイエットに効果的です。
抗酸化物質
サツマイモには抗酸化物質が含まれています。抗酸化物質はストレス・病気などで発生し、細胞を損傷させるフリーラジカルを除去します。紫色のサツマイモは抗酸化物質であるアントシアニンが多く含まれており、オレンジ色のサツマイモはβカロテンを多く含んでいます。
ビタミン
- ビタミンC:強力な抗酸化物質であるビタミンCは、犬の免疫力を維持する役割があります。また、高齢犬の認知機能障害を軽減することも報告されています。 さつまいもに多く含まれているビタミンCは熱に強いと言われており、調理してもほとんど問題になりません。
- ビタミンA:ビタミンAは、目、筋肉、神経、皮膚の健康を維持するために不可欠な栄養素であり、さつまいもに多く含まれています。
- ビタミンB郡:さつまいもにはビタミンB1/B6といったビタミンB郡も多く含まれており、B1にはエネルギー源であるブドウ糖をエネルギーへと変化させる役割、B6にはアミノ酸を合成する役割があります。
- ビタミンE:ビタミンEにも抗酸化作用があり、さつまいもに多く含まれています。
ミネラル
- カルシウム
- カリウム
- 鉄
さつまいもは皮ごとあげていいの??
サツマイモは十分に加熱し(調理せず、生のままあげてはいけません)、皮は必ず剥きましょう。
というのも、サツマイモの皮は犬にとって消化しにくく、栄養価もほとんどないためです。さつまいもを生で皮ごとあげてしまった場合にはお腹を壊してしまう事があります。
また、シュウ酸と呼ばれる尿路結石の原因となる成分も含まれていますので、必ずさつまいもの皮は取り除くようにしましょう。
超低脂肪食を作る前に...(1日量の計算)
まずは超低脂肪食を作る前に、1日に必要なエネルギー量・食事量を計算しましょう!
計算方法は以下の手順で行えば、非常に簡単です♪
安静時の消費エネルギーを計算
まずは安静時の消費カロリーを計算します。
計算法は
70 + 体重 × 30 (kcal)
で求めることができます。
1日に必要となるカロリー量を計算
次に1日に食事から摂取しなければならないカロリー量を計算します。
計算法は
①で求めた値 × 1.5
で求めることができます。
②のカロリー量に基づいて、食事量を決める
最後に②で求めたカロリー量をもとに、ささみといもの量を決めましょう!
方法としては
②で求めた総カロリー量の2/3がささみ、残りの1/3がさつまいも・じゃがいも・白米などといった炭水化物
となるようにします。
体重が3kgであった場合、1日に必要なささみ&イモの量は?
ではわんちゃんの体重が3kgであった場合のささみとイモ(今回はじゃがいも)の量を求めてみましょう!
①70 + 体重 × 30 (kcal)
体重が3kgの場合....
70 + 3 × 30 = 160(kcal)
② ①で求めた値 × 1.5(kcal)
体重が3kgの場合....
160 × 1.5 = 240(kcal)
③ ②で求めた総カロリー量の2/3がささみ、残りの1/3がじゃがいもとなるように計算します。
ささみ:240 × 2/3 = 160(kcal)
じゃがいも: 240 × 1/3 = 80(kcal)
つまり3kgであった場合は、ささみを1日160kcal分、じゃがいもを80kcal分、給餌すれば良いということになります。
茹でたささみは100gあたり110kcal、茹でたじゃがいもは100gあたり80kcalですので、上記の値をgに換算すると以下のようになります。
ささみ : 160 ÷ 110 × 100 = 145.45(g)
じゃがいも : 80 ÷ 80 × 100 = 100(g)
結論としては、3kgのわんちゃんは1日にささみを145g程度、じゃがいもを100g食べれば良いということです。
ささみとおいものごはん(超低脂肪食)のレシピ
レシピは簡単!
火を入れて柔らかくなったじゃがいもやさつまいもとゆでたささみをわんちゃんに与えます。飲水量が少なければ、ささみのゆで汁を合わせてもいいでしょう。
ささみの代わりにむね肉や、じゃがいもの代わりにさつまいもでも可です。
手作りごはんは、長い目で見ると栄養バランスはよくありません。長期にわたって給餌する場合は、カルシウムやビタミンDなどを含むサプリメントを共に与える必要があります。
鶏肉にアレルギーがある場合は?
鶏肉にアレルギーがある場合は低脂質である馬肉、鹿肉などで代用することができます。
しかし部位によっては脂質が多いこともあるので、脂質はなるべく与えないようできるだけ取り除いてから与えるようにしましょう。
わんちゃんは雑食ではあるものの、元は肉食です。
肉食に近い雑食であるわんちゃんはタンパク質の消化は得意ですが、野菜などに含まれる食物繊維の消化は苦手としています。
現役の肉食動物よりは野菜や穀物を消化できる雑食動物というイメージです。そのため人間のようにいろんなものを消化するのは苦手です。
療法食の段階では特に、いつもより消化に負担をかけてしまいます。
野菜を与える際はとても細かく切って水分と一緒に柔らかく煮たり、わんちゃんの特性を活かして低脂質のタンパク質をメインに与えたりするなど、工夫をして与えましょう。
膵炎から高脂血症の併発を防ぐためも"低脂肪"の食事が有効とされています。
ただ、膵炎のわんちゃんすべてに高脂血症が当てはまるわけではありません。
こういったケースの場合、高脂血症やそのような症状が出ていなければ適度な脂肪を摂取すべきという考え方もあります。
その時の状況によって判断が変わってくるため、獣医師の指導の下食事管理をしていきましょう。
膵炎の致死率・予後・寿命
予後は、膵炎の重症度によって決まりますが、一般的に急性膵炎の致死は27%~58%と報告されています。
重度の膵炎を患っているワンちゃんは、予後が悪く、死亡リスクが高く、具体的には膵炎の強い炎症が全身へ波及し、ショック・多臓器不全に陥ってしまうのです。
また、重症な膵炎の合併症として膵膿瘍や腹膜炎を引き起こしている場合には、死亡率はより高くなってしまいます
膵炎を早期発見できれば、死亡率は有意に低下しますので、初期症状などワンちゃんの些細な変化に気づいてあげる事が重要です。
家族だからできること
かわいいからいつも人間の食べているものを食べさせちゃうし、脂肪分の高いおやつをいっぱいあげちゃう!なんて方もいらっしゃると思います。
少しもダメ!絶対ダメ!とは言いません。気持ちも分かります。
ですが適正体重を維持できる範囲内、かつ、あくまで"たまに"にしてください。また、人間には問題なくてもわんちゃんにとっては有害なものもあります。注意してください。
後悔する頃に気づくのでは遅いのです。
日常生活に潜む膵炎のリスク因子は以下のとおりです。
- 殺虫剤、除草剤
- 治療薬
- お散歩中の拾い食い
- 異物の誤飲誤食
- テーブルに置いてあった揚げ物などの高脂質な食べ物を盗み食い
犬の膵炎のまとめ
以下が本記事のまとめになります。
- 膵炎とは膵臓と呼ばれる消化に大きく関わる臓器で起こる非常に強い炎症のことである。
- 膵炎のリスク因子は複数あるが、原因不明の特発性が最も多い。
- 膵炎は初期症状として頻回の嘔吐や下痢・血便、末期症状として低体温、腹膜炎、腹水、血栓塞栓症を引き起こし、死に至ることもある。
- 急性膵炎の死亡率は27%~58%と報告されている。
- 膵炎は静脈点滴などの内科療法や食事療法などを組み合わせて行う必要がある。
- 膵炎では低脂肪の食事がおすすめであり、中でもおいもとささみのごはんが良い。
- 逆に高脂肪の食事は膵臓に負荷をかけるため、給餌することは避けるべきである。
- 無糖で無脂肪のヨーグルトであればトッピングして良い。
- 手作りフードは新鮮で嗜好性も良いが、体に必要な栄養素が欠乏しているため長期で給餌する場合はビタミンDやカルシウムを含んだサプリメントを併用する事が重要。
膵炎は放っておくと死にいたる可能性のある非常に恐ろしい病気です。
頻回な嘔吐などの初期症状が認められた場合には、様子を見ずにすぐ動物病院へ受診することが何よりも大切です。
いつもと変わらない日常の中、普段はいたずらしないような子がまさかと思うようなものを口にしてしまうケースはたくさんあります。
膵炎やそれ以外の病気につながりかねない怖い事故にも関わらず、当たり前の毎日の中でいつ起こってもおかしくないものなのです。
一瞬目を離す時などは特に注意してくださいね。
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【参考文献】
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Harris JP, Parnell NK, Griffith EH, Saker KE. Retrospective evaluation of the impact of early enteral nutrition on clinical outcomes in dogs with pancreatitis: 34 cases (2010-2013). J Vet Emerg Crit Care (San Antonio) 2017;27(4):425-433.
飽きずに食べてくれてます。
20代女性