猫の血便を発見したときはどうすればいい?
猫のうんちに血が混じっていることに気づいたら、まずは驚かず落ち着いて愛猫の様子を観察しましょう。急に慌てると猫もストレスを感じてしまうので、冷静に対応することが大切です。具体的には以下の点を確認します
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便の状態: 便の量や色をチェックし、鮮血か黒っぽいか、粘液や下痢の有無を見ます。
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猫の体調: 元気や食欲、嘔吐、吐き気、飲水量、尿の様子などを確認します。
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排泄環境: トイレを清潔に保ち、血の付いた便のサンプルをビニール袋などに取っておきます(動物病院で検査に使えます)。
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応急処置: 水分補給をしっかりさせ、室温を快適に保ちます。血便だからといって慌てて市販の薬を与えず、症状の悪化が見られる場合はすぐに獣医師に相談しましょう。
血便の主な原因
消化器系の病気
消化器のどこかに炎症や傷ができると血便が発生します。胃腸炎(ウイルス性・細菌性・寄生虫性)では下痢や嘔吐を伴い、粘膜が損傷して血が混ざることがあります。大腸炎や炎症性腸疾患(IBD)、食物過敏性腸炎など慢性的な炎症が続く病気では、粘膜が弱くなり出血しやすくなります。
また、腫瘍(リンパ腫や良性ポリープ)が粘膜を侵して血便の原因になることもあります。便秘が長引くと肛門周辺が切れて出血する場合もあります。さらに、毛づくろいで飲み込んだ毛玉が大腸に詰まる「毛球症」も腸を刺激し、炎症と出血を引き起こす原因となります。
食物アレルギー・不耐症
猫は特定の食材に過敏なことがあります。鶏肉や魚、乳製品(乳糖)、食品添加物などがアレルゲンになることが多く、これらに反応して腸の粘膜が炎症を起こし、血便や慢性的な軟便、皮膚症状を引き起こすことがあります。食物アレルギーが疑われる場合は、獣医師の指導のもとで食事内容を制限・変更し、アレルゲンの除去食を試す必要があります。
寄生虫感染
腸管内に寄生する回虫・鉤虫・鞭虫などは腸壁を傷つけて出血を引き起こします。特に子猫ではこれら寄生虫が原因で血便をすることがあります。トキソプラズマやコクシジウムなどの原虫感染でも腸炎が起こり、血便になる場合があります。駆虫薬による治療が必要ですし、室内飼いでも生肉やノミが感染源になることがあります。
肛門腺のトラブル
猫の肛門両脇にある肛門腺(肛門嚢)に炎症が起きると内部で血液を含む分泌物が出ます。肛門腺炎や肛門嚢破裂では、お尻をしきりに舐めたり腫れや痛みを伴う兆候が見られ、分泌物に血が混ざることがあります。便そのものへの血便というよりは、お尻周りに血が付いているケースですが、便に血が付着して見えることもあります。気になる場合は獣医師に相談して肛門腺を診てもらいましょう。
その他(ストレス・有害物質・誤飲など)
急激な環境変化やストレスも胃腸の調子を崩す原因になります。引っ越しや来客、飼い主の長期不在などがきっかけで血便が出ることがあるため、愛猫のストレスサイン(食欲不振、過剰なグルーミング、トイレの失敗など)を見逃さないようにしましょう。加えて、有害な植物(ユリ科植物や観葉植物)や殺鼠剤・薬品を誤飲すると、全身の出血を招くことがあります。心当たりがあればすぐに動物病院に連れて行ってください。
血便に伴うその他の症状と見分け方
血便のほかにどんな症状が出ているかで原因を推測できます。下痢や嘔吐を伴う場合は胃腸炎や感染症、元気や食欲の低下が目立つ場合は腫瘍や全身性の病気も疑われます。逆に血便以外は普段通りなら、軽いストレス性の腸炎や肛門付近の傷かもしれません。
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鮮血の混じった便: 大腸以降からの出血が疑われます。ゼリー状の粘液が混ざることが多く、大腸炎や直腸炎が原因となります。
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黒いタール状の便(メレナ): 胃や小腸など上部消化管で出血しているサインです。胃潰瘍や腸管腫瘍が原因のことがあります。
便の硬さや血便の量、トイレで何度もいきむ様子なども、原因を探るヒントになります。
獣医師による診断方法と治療の流れ
動物病院ではまず問診と全身の触診で症状の経緯や猫の状態(脱水、貧血の有無など)を確認します。
できれば便のサンプルを持参して糞便検査を行い、寄生虫や血液の有無を調べてもらいます。
必要に応じて血液検査や尿検査で内臓機能や炎症反応をチェックし、X線や超音波検査で腸に異常がないか詳しく診断します。症状が重い場合や検査結果が不明瞭な場合は、内視鏡検査など精密検査で原因を特定します。
治療は原因に応じて進められます:
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脱水がある場合: 点滴で水分・電解質を補給します。
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寄生虫感染: 駆虫薬を投与します。
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細菌感染や重度の炎症: 抗生物質や消炎剤が処方されます。
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食物アレルギー: アレルゲンを除去した食事(除去食)に切り替えます。
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炎症性腸疾患(IBD): 免疫抑制薬やステロイドで炎症を抑えることがあります。
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腫瘍や異物誤飲: 必要に応じて外科手術が検討されます。
治療中は便の変化や体重、元気などを観察し、徐々に改善しているかを確認します。
家庭でできる応急処置や観察ポイント
動物病院へ連れて行くまでに家庭でできるケアもあります。まず、水分補給を徹底して脱水を防ぎましょう。次に、以下の点に注意してください:
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消化に良い食事: 一時的に消化の良いフードに切り替え、絶食は6時間以内に抑えましょう(猫は絶食しすぎると低血糖になるため注意)。白米に茹で鶏肉などを混ぜて与えると胃腸に優しいです。
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排泄の様子: トイレで何度もいきんでいないか、便や血液の量・色に異常がないかを観察します。便や嘔吐物の写真を撮っておくと獣医師への説明に役立ちます。
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お尻周りのケア: お尻を清潔に保ち、温かいタオルで優しく拭いて皮膚炎を防ぎましょう。
血便を予防するための日常ケア
日頃からできるケアで血便のリスクを減らすことができます。
食事管理では、良質で消化に優しいキャットフードを与え、急な切り替えや人の食べ物の与えすぎを避けます。水分補給を促すため、新鮮な水を常に飲める環境を整えましょう。
運動や遊びで適度に体を動かし、ストレス発散と腸の働きを促進します。また、清潔なトイレ環境を維持し、トイレで失敗しても叱らずに環境改善を心がけましょう。
最後に、定期健診で糞便検査や健康チェックを受けることも早期発見につながりますので、年に1回以上は獣医師の健康診断をおすすめします。詳しくは猫の健康管理に関する別記事も参考にしてください。
消化器サポートにおすすめのフード・サプリ
腸に優しいフードやサプリメントも活用しましょう。
消化器サポート用のキャットフードには高消化性タンパク質や食物繊維(オオバコやセルロース)、腸内細菌のエサになるプレバイオティクスが含まれており、腸内環境を整える効果が期待できます。
また、乳酸菌・ビフィズス菌などのプロバイオティクスサプリメントは善玉菌を増やして腸内フローラを安定させます。オメガ-3脂肪酸や消化酵素サプリは腸粘膜の修復や炎症軽減をサポートすると言われています。新しいフードやサプリを試すときは、少量から与えて猫の様子をよく観察するようにしましょう。
まとめ
猫のうんちに血が混じるのはショックですが、落ち着いて対処すれば安心につながります。まず冷静に猫の様子を観察し、以下の点を心がけましょう:
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水分補給と休養 – 脱水を防ぎ、腸を休ませます。
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適切な食事管理 – 消化の良いフードに切り替え、急な変更や過剰な量を避けます。
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早めの動物病院受診 – 症状が重い場合や改善しない場合はすぐに獣医師に相談しましょう。
血便は早期発見・治療が重要です。日々の健康チェックと愛猫への気配りで小さな変化にも気づけるよう心がけ、安心感を持って迅速に対処してあげてください。