猫ちゃんが下痢をしてしまうと、飼い主さんはとても心配になりますよね。
特に下痢が1日以上続く場合や何度も繰り返す場合には、原因や対策をしっかり知っておきたいものです。
猫は言葉で訴えられない分、飼い主さんがいつも以上に注意を払わなくてはなりません。本記事では獣医師の立場から猫の下痢が続くときに考えられる原因と、飼い主さんができる対処法をわかりやすく解説していきます。
猫の下痢の基礎知識
まずは基本的に猫の下痢とはどのような状態か確認しましょう。
正常な猫の便は形がしっかりして固めですが、下痢の場合は水分量が多くトイレですぐに広がってしまうような状態を指します。下痢が続くと、水分や栄養分が十分に吸収されず、脱水や体力低下につながる恐れがあります。特に仔猫やシニア猫は体力や免疫力が弱いため、下痢による体調の変化が早く現れやすいです。
猫の下痢が続く主な原因
寄生虫や感染症
猫の下痢の原因としてまず挙げられるのは、寄生虫やウイルス・細菌感染などによるものです。例えば仔猫は免疫が未発達なため、回虫やコクシジウム、ジアルジアなどの寄生虫が腸内で増殖すると下痢になることがあります。また猫パルボウイルスやカリシウイルスといったウイルス感染、細菌性の胃腸炎でも激しい下痢が起こる場合があります。感染症が原因の場合、しばしば血便や嘔吐、元気消失などの症状を伴うことがあるため、異常に気づいたらすぐに検査を検討しましょう。定期的なワクチン接種や駆虫で、多くの感染症・寄生虫は予防できます。
食事の急な変化や誤飲
食事内容の急な変更も猫の消化器に大きなストレスとなり下痢を引き起こす原因になります。いつもと違うフードに急に切り替えたり、人間の食べ物(特に脂っこいものや味付けの濃いもの)を与えたりすると、猫のお腹は驚いて下痢になることがあります。また、腐った食べ物や賞味期限切れのフードを食べると細菌が繁殖して胃腸炎になることもあります。猫は草や小さな物を口に入れがちなので、誤って毒性のある植物(ユリ科の花など)や小さな異物を飲み込んでしまうと、腸が刺激されて下痢につながることがあります。
食物アレルギーや消化不良
食物アレルギーや消化しにくいものも猫の下痢原因です。例えば乳糖不耐症の猫は、牛乳や乳製品に含まれる乳糖を分解できないため、少量でも下痢することがあります。また、鶏肉・牛肉・大豆・トウモロコシなどの食材にアレルギーを持つ猫もいます。こうしたアレルギー性の下痢は、原因食材を避けることで改善します。さらに、高脂肪の食事や脂っこいおやつは腸を刺激して消化不良を起こしやすく、下痢につながることがあります。新しい食材を試す際は少量から始め、何か異常がないか様子を見ましょう。
消化管の病気や疾患
慢性的に下痢が続く場合、消化器系の病気が隠れていることもあります。代表的なものに炎症性腸疾患(IBD)や腸の腫瘍、膵炎(すいえん)などがあります。これらの場合、しつこい下痢だけでなく体重減少や食欲低下など全身症状が見られることがあります。また、高齢猫では甲状腺機能亢進症や慢性腎臓病、肝臓病など内臓の病気に伴って下痢が起こることがあります。これらの病気は専門的な治療が必要なため、早期発見のためにも異常に気づいたら早めに獣医師に相談しましょう。
ストレスや環境の変化
猫は環境の変化にとても敏感な生き物です。引っ越しや模様替え、新しい家族(赤ちゃんやペット)の登場などでストレスを感じると、お腹の調子を崩し下痢になることがあります。また、トイレの場所を変えたり数が足りなかったり、掃除の頻度が減ることでストレスが増える猫もいます。特に多頭飼いの場合はトイレの数を猫の頭数+1個にするなどストレスを減らす工夫も有効です。ストレス性の下痢は改善に時間がかかることが多いので、普段から愛猫の生活環境に気を配りましょう。
薬の副作用や毒物誤食
動物病院でもらった薬の中には、副作用で下痢が出るものがあります。抗生物質や消化器の薬、心臓病・高血圧の薬などが腸内のバランスを崩し、下痢を引き起こすことがあります。また、室内の観葉植物をかじったり、漂白剤など洗剤を舐めてしまうと体に有害な物質が入り下痢が急に始まることもあります。最近新しく薬を始めた場合や、誤飲が疑われる場合は、使用を中止して早めに獣医師に相談してください。
猫の下痢が続くときの対処法
水分補給をしっかり行う
まず最初に行いたいのは水分補給を徹底することです。下痢が続くと体が脱水状態になりやすいため、新鮮な水をいつでも飲めるようにしてあげましょう。シリンジやスポイトで少量ずつ与えたり、味付きウォーターや液状のキャットフードを利用するなど、無理なく水分摂取できる工夫も有効です。水分不足は体力低下につながるので、早めに対策を取ることが大切です。
食事管理と食事療法
次に、食事の管理を見直しましょう。まずは普段のフードを通常の半量ほどにして様子を見ます。消化に良い食事に切り替えることがポイントです。具体的には、鶏ささみを茹でて細かく裂いたものや、白ごはんを薄いスープでゆっくり煮たものなどがおすすめです。ペット用の消化器サポートフードや処方食を獣医師から提案してもらうのも良いでしょう。食事の量が多すぎると胃腸に負担がかかるので、少量ずつ回数を増やして与えることも効果的です。
整腸剤やサプリメントの使用
市販の猫用整腸剤(プロバイオティクス)を使う方法もあります。整腸剤には腸内の善玉菌をサポートして下痢を改善しやすくするものが多くあります。また、市販の乳酸菌サプリメントやオリゴ糖などを試してみても良いでしょう。人間用のヨーグルトは乳糖が多く猫には向かない場合があるので、必ず猫専用のサポート品を使用してください。また、必要に応じてビタミン・ミネラルのサプリメントで体力維持を助けるのもおすすめです。
ストレスケアと環境の整備
ストレスが原因と考えられる場合は、愛猫がリラックスできる環境を整えてあげましょう。猫は清潔で静かなトイレで排泄したい生き物なので、トイレはいつも清潔に保ち、落ち着ける場所に設置してあげます。キャットタワーや隠れられる箱を用意することで、猫が自分だけの安心スペースを持つことができます。また、フェロモンスプレーや猫用ハーブ(キャットニップ)を利用して気分を落ち着けるのも一つの手です。家族が不規則に外出している場合は、毎日のスケジュールをなるべく一定に保ってあげると安心感につながります。
獣医師への相談
家庭でできる対処を行っても2〜3日様子を見て改善しない場合や、血便が出た・元気がなくなった・嘔吐を伴うといった症状が見られる場合は、早めに獣医師に相談しましょう。特に仔猫や高齢猫は体力が少ないため、診察を先延ばしにせずに診てもらうことが大切です。動物病院では血液検査や便検査、レントゲン・超音波検査などで原因を調べ、必要に応じて点滴や薬剤投与で治療を行います。あなたが愛猫の小さな変化にも気づいてあげられれば、より早く適切なケアを受けさせてあげることができます。
まとめ:愛猫を支えるために
愛猫の下痢が続くと飼い主さんは不安になりますが、落ち着いて対処することで改善することがほとんどです。今回ご紹介したポイントを参考に、愛猫の様子をよく観察してあげましょう。毎日の便の状態や食欲、元気の有無をチェックする習慣は、重大な病気を早期発見する手助けになります。
- 水分補給を十分に行い、少量ずつ消化に良い食事を与える
- 整腸剤や消化サポートフードで腸内環境を整える
- 清潔なトイレ環境と安定した生活リズムでストレスを軽減する
- 血便や嘔吐、元気消失などがあれば早めに獣医師に相談する
適切なケアや治療を行えば、猫ちゃんはきっと元気を取り戻します。飼い主さんの優しい気持ちは猫にも伝わりますので、愛情を持ってゆっくりサポートしてあげてください。一人で悩まず、少しでも不安を感じたら動物病院で相談することも大切です。愛猫と一緒に穏やかな毎日を過ごせるよう、焦らずに取り組んでいきましょう。