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【獣医師解説】猫の多飲多尿が心配: 考えられる原因と動物病院への相談目安

猫ちゃんが急にたくさん水を飲むようになり、心配になったことはありませんか?

飲水量が増える「多飲」と、尿の量や回数が増える「多尿」が同時に起こる「多飲多尿」は、体の異常を示すサインとなることがあります。

多飲多尿は病気ではありませんが、様々な原因が考えられるため、早めに受診することが大切です。

特に高齢猫や体調不良の猫では多飲多尿が顕著に現れることがあり、飼い主さんは日頃から愛猫の変化に気を配りましょう。この記事では、猫の多飲多尿について基礎知識から症状、診断・治療まで詳しく解説します。

猫の多飲多尿とは

猫の多飲多尿とは、1日に飲む水の量や排尿量、排尿頻度が通常より増加した状態を指します。一般的に猫の1日の飲水量は体重1kgあたり約50ml程度と言われており、これを大きく上回る量を飲む場合に多飲と考えられます。同様に、オシッコの量が多く、多くの回数トイレに行く、尿の色が薄いなどの変化が見られれば多尿が疑われます。

多飲多尿は病気そのものではなく症状の一つですが、体の異常を示すサインになることがあります。熱中症や暑さの影響で一時的に多飲になることもありますが、長期間続く場合は内科的な疾患の可能性が高いと考えられます。

猫の多飲多尿の原因

糖尿病

猫の糖尿病はインスリン不足によって血糖値が高くなる病気です。血糖が尿に排出される際に多くの水分も失われるため、多飲多尿があらわれます。糖尿病の猫は体重減少や食欲増加、元気消失なども同時に見られることが多いです。

慢性腎臓病(腎不全)

高齢猫に多い慢性腎臓病では、腎機能低下により尿を濃縮できなくなり、水分の多い尿が出ます。体は尿で失われた水分を補おうとして水を大量に欲しがり、多飲につながります。腎臓病の猫は嘔吐、下痢、口臭、食欲不振などを伴うこともあります。

甲状腺機能亢進症

高齢猫に多い甲状腺機能亢進症では、新陳代謝が活発になるため食欲は増えますが体重は減りがちです。同時に水の消費量も増え、多飲多尿があらわれます。他に嘔吐や下痢、攻撃性の増加といった症状が見られることもあります。

尿路疾患・感染症

尿路結石や感染症では排尿時の頻度増加や血尿が見られます。これらが続くと飲水量が増えることがあります。炎症でトイレの不快感が増すと、代償的に多く水を飲むことがあるため注意が必要です。

その他の原因

ステロイド剤や利尿剤の影響で多飲多尿になる場合があります。また、まれにホルモン異常(尿崩症、副腎疾患など)が関与することもあります。長期的に続く場合は獣医師の診断が必要です。

症状のチェックポイント

愛猫の多飲多尿を疑う時は、以下のような症状がないかチェックしましょう。

  • 飲水量が増えた:明らかに水をよく飲むようになっている。
  • 排尿回数や量が増えた:トイレの回数が多くなったり、一回の尿量が増えている。
  • 尿の見た目が変化:尿の色が薄くなり、匂いが少なくなる。
  • 体重減少や食欲の変化:食欲はあるのに痩せてきた、または食欲が落ちて元気がない。
  • 元気の低下:以前より遊ばなくなるなど、活力が落ちている。
  • その他:嘔吐や口臭、被毛のパサつきなどが見られることもあります。

検査と診断方法

多飲多尿の疑いがある場合は、早めに獣医師に相談しましょう。獣医師は身体検査で脱水や臓器の異常を確認するとともに、以下のような検査で原因を探ります。

  • 血液検査:血糖値、尿素窒素(BUN)やクレアチニン、甲状腺ホルモン(T4)などを測定します。
  • 尿検査:尿比重(濃縮能)、尿糖、尿蛋白、潜血などを調べます。糖尿病の場合、尿に糖が出ているか確認します。
  • 画像検査:超音波検査やレントゲン検査で腎臓や膀胱の異常、甲状腺の腫大などをチェックします。
  • 血圧測定:高血圧は腎疾患や甲状腺機能亢進症で起こりやすいため、血圧測定でリスクを評価します。
  • ホルモン検査・追加検査:必要に応じて副腎機能検査や脳下垂体ホルモン、水分制限試験(尿崩症の評価)などが行われることがあります。

治療方法

糖尿病の治療

糖尿病が原因の場合は、インスリン投与と食事療法で血糖値をコントロールします。獣医師の指導のもと、猫用糖尿病療法食(低炭水化物・高タンパク質)に切り替え、朝晩のインスリン注射で血糖値を安定させます。

腎臓病の治療

慢性腎臓病の場合は、腎臓に負担をかけない療法食(低タンパク質・低リン食)への変更や水分補給が重要です。食欲が落ちた猫にはウェットフードを活用し、水分摂取量を増やします。点滴や皮下補液で体を潤わせ、吐き気止めなどで症状を緩和します。

甲状腺機能亢進症の治療

甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンの分泌を抑える治療が行われます。主な方法は投薬(メチマゾールなど)でホルモン値を管理することです。また、外科手術や放射性ヨウ素治療(I-131治療)で過剰な甲状腺組織を取り除くこともあります。

尿路疾患・その他の治療

尿路結石や感染症が原因の場合は、抗生物質による感染症治療や、結石の種類に応じた食事療法が行われます。ストレス性の下部尿路疾患(FLUTD)では、ストレス軽減と十分な水分摂取が重要です。

日常ケア・予防法

多飲多尿にならないよう、日頃から健康管理に気をつけましょう。

  • 常に新鮮な水を用意:いつでも水が飲める環境を整えます。
  • バランスの良い食事と体重管理:適正体重を維持し、肥満にならないようにします。
  • 清潔なトイレ環境:トイレを清潔に保ち、猫が気持ちよく排泄できるようにします。
  • 定期検診と健康チェック:年1回程度は健康診断を受け、血液や尿検査で早期に異常を発見しましょう。

おすすめフード・サプリメント

多飲多尿の猫には、状態に合ったフードやサプリメントの活用が効果的です。獣医師と相談しながら検討してみましょう。

推奨フード

  • 腎臓サポートフード:慢性腎臓病の場合は、低リン・低タンパクの療法食で腎臓の負担を軽減します。
  • 糖尿病用療法食:糖尿病の場合は炭水化物を抑えたフードで血糖値を安定させます。

サプリメント

  • オメガ3脂肪酸:魚由来のオメガ3は抗炎症作用があり、腎臓や心血管の健康維持に役立ちます。
  • L-カルニチン:肥満気味の猫や糖尿病の猫で脂肪代謝を助けるサプリメントとして使われることがあります。

よくある質問

Q: 猫の飲水量が通常よりどれくらい多いと、多飲多尿と判断できますか?

A: 目安として、猫の1日の飲水量が体重1kgあたり約50mlを大きく超える場合、多飲が疑われます。尿量やトイレ回数の増加も合わせて観察しましょう。短期間だけでなく、数日以上続く増加傾向があれば注意が必要です。

Q: 多飲多尿の疑いがある場合、病院ではどのような検査を受けますか?

A: 獣医師はまず身体検査で脱水や健康状態を確認し、血液検査(血糖値、腎機能、甲状腺ホルモンなど)や尿検査(尿比重、尿糖など)を行います。さらに超音波やレントゲンで臓器の状態を調べることもあります。

Q: 自宅でできるケアや予防のポイントは何ですか?

A: 常に新鮮な水を用意し、清潔なトイレ環境を整えましょう。バランスの良い食事で適正体重を維持し、定期的な健康診断で早期に異常を発見しましょう。

まとめ

猫の多飲多尿は病気のサインになることが多いため、飲水量や排尿頻度の変化に注意しましょう。

異変を感じたら獣医師に相談し、対処して健康管理をしましょう。

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DrVets

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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