この記事は獣医師の監修のもと、愛犬の目が白く濁る「白内障」について原因から治療法・予防策まで、やさしく丁寧に解説します。
愛犬が白内障と診断された飼い主さんはもちろん、症状や対応策を詳しく知りたい方もぜひ参考にしてください。
愛犬の様子に戸惑いや不安があるかもしれませんが、適切なケアを知ることで愛犬をしっかり守ってあげましょう。
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犬の白内障とは?
白内障とは、カメラのレンズにあたる目の「水晶体」が白く濁る病気です。
一度白く濁ると元に戻せず、徐々に視界がぼやけて見えにくくなります。犬の場合、若いころに発症する「若齢性白内障」と、加齢が原因で発症する「加齢性白内障」に大別されます。特に遺伝しやすい犬種では若い年齢での発症が多いとされています。
原因
犬の白内障には先天性(遺伝性)と続発性の2種類があります。
- 先天性(遺伝性): 生まれつき水晶体が濁っているもの。若いうち(6歳未満)に発症することが多く、親や兄弟に同じ病歴がある場合があります。
- 加齢性: 老化現象の一つで、年齢を重ねるごとに白内障のリスクが高まります。
- 外傷性: 目を引っかいたりぶつけたりした際に水晶体に傷が付き、白内障を引き起こします。
- 糖尿病性: 糖尿病の合併症として発症します。犬の糖尿病ではほぼ100%の確率で白内障になるといわれています。
犬の白内障の症状
白内障によって視力が低下すると、愛犬には次のような変化が現れることがあります。
- 愛犬の目が白く濁って見える(特に暗い場所で目立ちます)
- これまで喜んでいた散歩を嫌がる
- 壁伝いに歩くようになる
- つまずいたり物にぶつかる
- 暗い場所を避ける
これらのサインに気付いたら、早めに獣医師に相談してあげましょう。ただし、目が白っぽく見えても白内障とは限りません。加齢によりレンズの中心が白くなる「核硬化症」の可能性もあるため、自己判断せず検査を受けてください。
白内障の進行段階
白内障は進行とともに症状が変化します。一般的な段階は次の通りです。
- 初期: 水晶体がわずかに濁り始める段階。まだ見た目にわからず、視力への影響もほとんどありません。
- 未熟白内障: 白く濁った部分が広がり、視野がかすんできて、散歩を嫌がったり、壁伝いに歩くなど行動に変化が出始めます。
- 成熟白内障: 水晶体全体が白く濁り、視力はほとんど失われます。ぶつかる、階段で戸惑うなどの様子が見られます。
- 過熟白内障: 濁った水晶体が溶けて眼の中で炎症を起こす危険な状態です。この段階になると痛みを伴い、ブドウ膜炎や緑内障を併発しやすくなります。
犬は人間ほど視覚に頼らないため、多少見えにくくても慣れてしまうことがあります。しかし合併症が起きる前に早めに対処してあげることが大切です。
犬の白内障を放置すると…
治療せずに白内障が進行すると、水晶体のタンパク質が眼内に漏れ出して炎症(ブドウ膜炎)を引き起こしたり、眼圧が上がる緑内障になったりするリスクがあります。
- ブドウ膜炎: 白内障により溶けた水晶体から流れ出た成分が眼の中で炎症を起こし、目の充血や痛みを伴います。
- 緑内障: 眼圧が急上昇して視神経が障害される病気です。激しい痛みとともに失明に至る危険があります。
特に若年性の場合は進行が早い傾向があります。愛犬に異変を感じたら、すぐに動物病院で検査を受けましょう。
犬の白内障の治療方法
白内障の治療には、症状の進行を遅らせる内科的治療と、濁った水晶体を取り除いて視力を回復させる外科的治療(手術)の2種類があります。
内科的治療(目薬やサプリメント)
内科的治療では点眼薬やサプリメント、食事療法で進行を遅らせます。点眼薬はステロイド系や抗酸化作用のあるものを使い、炎症を抑えながら症状の悪化を防ぎます。完治はできませんが、早期であれば視力を長持ちさせる効果が期待できます。
- サプリメント: ルテインやアスタキサンチン、ビタミンC・Eなど、目の健康に良い成分を含むものを活用しましょう。
- 目に良い食材: ブルーベリー(アントシアニン)や鮭(オメガ3脂肪酸、アスタキサンチン)、緑黄色野菜(ルテイン)を取り入れた食事にしてあげるのもおすすめです。
外科的治療(手術)
外科手術は、超音波で水晶体を砕いて吸い出し、人工レンズ(眼内レンズ)を挿入して視力を回復させる方法です。高度な技術と設備が必要なため、眼科手術に経験豊富な獣医師のいる動物病院で受けることが大切です。
手術前には眼圧や網膜の検査を行い、視力回復の可能性を判断します。適切な時期(白濁が進みすぎる前)に受けることで成功率は95%以上ともいわれていますが、絶対ではありません。担当獣医師とよく相談して納得したうえで治療を進めましょう。
手術費用と成功率
白内障手術は保険が適用されないことが多く、費用は片目で約25万円が目安です。検査料や入院費、麻酔料などは別途かかるため、病院で見積もりを確認してください。両目手術する場合は倍の費用が必要になります。
成功率は高いですが万全ではありません。術前の検査で手術適応を厳しく判断し、合併症リスクが高い場合は他の方法で経過観察することもあります。
術後のケア
手術後は愛犬の目に細心の注意を払い、獣医師の指示を守ってください。主なケアは以下の通りです。
- 点眼薬: 抗菌薬や抗炎症薬の点眼薬を術後数週間から数ヶ月続けます。時間通りにしっかり点眼して感染や炎症を防ぎましょう。
- 安静: 目をこすらないようにエリザベスカラーを装着することがあります。また、ソファーなど高い所へのジャンプは控えてください。
- 定期検診: 術後は定期的に動物病院で目の検査を受け、眼圧や炎症の状態を確認します。獣医師の指示通りに通院しましょう。
- 食事と休養: 体力が回復するよう、消化の良い食事と十分な休養を与えてあげてください。水分補給も大切です。
日常のケアと予防策
白内障の発症自体を完全に防ぐことは難しいですが、以下のような日常ケアで進行リスクを下げることが期待できます。
- 爪のケア: 爪が伸びていると誤って目を傷つけることがあるため、こまめに切って滑らかにしておきましょう。
- 環境整備: 家の中で障害物を減らし、滑りにくい床材にするなどして、視力低下時でも愛犬が安全に移動できるよう配慮しましょう。
- 健康管理: 糖尿病など全身疾患の予防のため、体重管理や定期検診を行いましょう。健康な体は目の健康にもつながります。
- 目に良い食事: ビタミンA・C・E、オメガ3脂肪酸、ルテインなどを含む栄養バランスの良いフードを選び、サプリメントで補助するのも有効です。
- 定期チェック: シニア犬は年に1回以上は目の検診を受け、早期発見に努めましょう。
まとめ(獣医師監修)
この記事は獣医師監修のもと、犬の白内障について原因から治療、日常ケアまでまとめました。愛犬の目に白い濁りや異変を感じたら早めに相談し、適切な治療とケアで失明を防ぎましょう。愛犬の目を守るために、日頃からできるケアを心がけてあげてください。