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【獣医師解説】猫が水を飲まない理由: 水分補給を促す方法と注意点

愛猫が水をあまり飲まないと、つい心配になりますよね。

確かに、猫は砂漠地帯をルーツに持ち、水分を節約する体に進化しています。

しかし、水は猫の命のライフラインともいえる大切なものです。そのため少量の水でも平気なこともありますが、飲水量が全く足りないと脱水症状や病気のリスクが高まります。

本記事では、猫が水を飲まない一般的な理由や脱水のサイン、すぐにできる対策や食事の工夫などを詳しく解説します。

猫が水を飲まない一般的な理由

猫が水を飲まない場合、主に生理的要因、環境要因、そして健康上の要因が考えられます。それぞれのポイントを押さえ、原因を見極めましょう。

生理的な理由

猫は祖先が砂漠地帯にいたため、水分を節約する体に進化しています。体重1kgあたり1日約30~50ml程度で足りるとも言われており、ウェットフードを食べる猫はフードからも多く水分を摂るため、飲水量が少なくても問題ないことがあります。

環境的な理由

次に、住環境に由来する理由です。猫は水の質や置き場所、容器に敏感な生き物です。猫にとって水を飲む場所はまさにオアシスのようなものです。水が汚れていたりカルキ臭が残っていたりすると飲みたがらないことがありますし、プラスチック製の器では素材の匂いが嫌われがちです。

  • 容器や水質: ステンレスや陶器の広口で浅めの器がおすすめです。洗いやすく清潔に保ちやすい素材を選びましょう。
  • 置き場所: トイレや掃除機の近くなど騒音がある場所は避け、静かで落ち着ける場所に水を置きます。1匹につき複数の水飲み場を用意すると安心です。
  • 多頭飼育: 他の猫と暮らしている場合、遠慮して水を飲まないことがあります。猫の数だけ水飲み場を用意し、いつでも飲めるようにしましょう。
  • 季節・気温: 冬は暖房で室内が乾燥しやすく脱水リスクが高まります。夏も冬もこまめに飲水量を確認し、季節ごとに配慮しましょう。

健康上の理由

病気や体調不良も飲水量減少の大きな要因です。特に、口腔・歯のトラブル(歯周病や口内炎)があると、水を含んだり飲み込んだりする時に痛みが生じて飲みたがらなくなります。また、関節炎などで首をかしげるのがつらい場合も、飲水がおっくうになります。

  • 口腔・歯のトラブル: 歯肉炎や口内炎で口が痛いと、水を飲むこと自体が辛くなります。
  • 関節や筋肉の問題: 関節炎や腰痛で首を傾ける姿勢がつらいと、飲水を避ける場合があります。
  • 体調不良・内臓疾患: 腎臓病や肝臓病で体調を崩すと食欲も落ち、水も摂らなくなりがちです。嘔吐や下痢が続くと脱水がさらに進みやすくなります。

これらの健康問題が疑われる場合は早めに動物病院で相談しましょう。特に元気がなくなったり食欲不振が続くときは要注意です。

猫の脱水症状のサインと危険性

水をあまり飲まない状態が続くと脱水症状を起こすリスクがあります。脱水の初期サインには以下のようなものがありますので、日頃から愛猫の様子を観察しましょう。

  • ぐったりして元気がない
  • 食欲が落ちる
  • 体重が減る
  • 皮膚の弾力が失われる(首の後ろをつまみ、すぐ戻らない)
  • 口や目の周りが乾燥している(粘膜が乾いている)
  • 尿の量が減り、色が濃い

これらの症状が見られた場合は早急に対策が必要です。脱水が進行すると腎臓や心臓に負担がかかり、場合によっては命に関わる危険性があります。特に子猫や高齢猫は脱水リスクが高いので、少しでも異変を感じたら獣医師に相談しましょう。

すぐにできる日常的な対策と環境改善

毎日の生活の中でできる工夫を紹介します。猫が自然に水を飲みたくなる環境を整えてあげましょう。

  • 新鮮な水を常に用意する:水はこまめに交換し、清潔な状態を保つことが大切です。
  • 飲みやすい容器を選ぶ:ステンレスや陶器の広口で浅めの器がおすすめです。毎日洗浄して清潔に保ちましょう。
  • 適切な置き場所に設置する:騒音がある場所は避け、静かな落ち着ける場所に水を置きます。1匹につき複数の水飲み場を用意すると安心です。
  • 自動給水器を使う:水が循環して常に新鮮な状態になる器具も有効です。猫が興味を示しやすいので、試してみましょう。
  • 興味をひく工夫:水に氷を数個入れたり無塩のチキンスープを混ぜたりすると、飲んでくれる猫もいます。

これらの対策はすぐに始められます。愛猫の好みに合わせて工夫し、ストレスなく水を飲める環境を整えてあげましょう。

フード選びと水分補助の工夫

食事内容を見直すことも水分補給のサポートになります。食事から水分を摂る習慣をつけましょう。

  • ウェットフードを活用する:ウェットフードは約70~80%が水分なので、ドライフードよりも効率的に水分補給できます。缶詰の汁やスープも無駄にせず与えましょう。
  • ドライフードに水を加える:ドライフードに少量のぬるま湯をかけると、水分補給になります。食べる直前にかけて雑菌の繁殖を防ぎましょう。
  • 手作りスープやゼリー:鶏ガラや煮干しで作った無塩スープを冷蔵庫で保存し、毎日の水に少し混ぜると喜ぶ猫がいます。
  • 猫用サプリメント・おやつ:市販の水分補給サプリや乳糖カットの猫用ミルクもありますが、あくまで補助的に少量にとどめ、基本は新鮮な水で補給しましょう。

これらの工夫で食事からの水分摂取量が増え、自然に必要な水分を補えます。

動物病院に連れていくべきタイミング

ここまでの対策を行っても、以下のような状況が続く場合は動物病院を受診してください。

  • まったく水を飲まず、ぐったりして元気がない
  • 食欲が急に落ち、嘔吐や下痢が続く
  • 口の中や歯茎が痛そうで、水を嫌がる仕草がある
  • 急激に体重が減っている

これらの症状が見られる場合は早めに受診し、適切な治療を受けましょう。

水分補給におすすめのグッズ紹介

猫の水飲みをサポートする便利アイテムをいくつか紹介します。

  • 自動給水器:水が循環して常に新鮮な水を供給するタイプ。流水音や動きで猫の興味を引きやすいです。
  • 広口・浅型の食器:ヒゲが当たりにくい広口の器がおすすめです。陶器やステンレス製は水を清潔に保ちやすく、臭いもつきにくいです。
  • 給水台:床から少し高い位置で飲めるスタンド付きの器。関節や腰に負担がある猫でも楽な姿勢で飲めます。
  • 水受けトレーや吸水マット:水をこぼしても安心なトレーや、周囲を拭き取りやすいマットを敷くと、床の汚れを防げます。

これらのグッズは、水を飲みやすい環境作りに役立ちます。

よくある質問 Q&A

猫は1日にどれくらい水を飲めば正常?

一般的に、猫の1日の飲水量は体重1kgあたり約50ml程度といわれています。ただし、ウェットフードの割合や気温、活動量によって必要量は変わります。尿が薄い黄色であれば十分な水分摂取ができているサインです。

子猫や高齢猫はもっと水が必要?

子猫や老猫は通常の猫よりこまめな水分補給が必要な場合があります。子猫は体が小さく水分量が少ないため何度も飲ませましょう。高齢猫は腎機能が低下しやすく脱水になりやすいので、いつでも新鮮な水が飲める環境を整えてあげてください。

猫用ミルクや牛乳を与えてもいい?

多くの猫は牛乳の乳糖を分解できず、牛乳は下痢の原因になります。猫用ミルクや無糖のチキンスープで補給する方法もありますが、あくまで補助的に少量にとどめ、基本は新鮮な水で補給しましょう。

水は常温と冷たいどちらが飲みやすい?

一般的に、猫は常温の水を好む傾向があります。暑い時期は少し冷たい水を好む場合もありますが、冷たすぎるとお腹を壊す猫もいるため注意が必要です。基本は常温の新鮮な水を用意しましょう。

ドライフードに水をかけても大丈夫?

はい、ドライフードに少量の水やぬるま湯をかけると、猫は水分を含んだフードを食べることで自然に水分補給できます。ただし、フードに水分を含ませたまま放置すると雑菌が増えるため、食べる直前にかけて与えてください。

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DrVets

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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