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【獣医師解説】犬が血を吐いた!吐血の原因となる病気と受診の目安を獣医師が解説

大切なわんちゃんが血を吐くという事態は、飼い主さんにとってとても不安で怖い経験です。

突然血を吐く姿を見て、不安や恐怖で胸がいっぱいになったかもしれません。吐血は命にかかわるサインでもあるため、飼い主さんの冷静な対応が愛犬の命を救う力になります。まずは落ち着いて原因と対策を確認しましょう。

本記事では、犬が血を吐いたときに考えられる原因や症状、対処法、治療法、予防策、おすすめのフード・サプリメントについて、やさしく丁寧に解説します。

初心者の方にもわかりやすく、具体的な行動例やチェックリストを交えてお伝えするので、いざというときの参考にしてくださいね。

原因:犬が血を吐く主な理由

犬が血を吐く原因にはさまざまなものがあります。原因を知ることで、適切な対処がしやすくなります。以下では、よくある原因をご紹介します。

  • 胃腸の疾患や潰瘍:胃炎や胃潰瘍などで胃粘膜が傷つくと、血が混ざって嘔吐することがあります。
  • 口やのどのケガ・疾患:歯茎の腫れや歯周病、口の中の傷で出血し、それを飲み込んで吐く場合があります。
  • 異物の誤飲:おもちゃや異物、調理した骨などを飲み込み、消化管を傷つけて出血することがあります。
  • 消化管の腫瘍:胃や腸に腫瘍ができると、内部で出血しやすくなり、嘔吐に血が混じることがあります。
  • 感染症の影響:細菌やウイルスの感染で体調が急変し、内臓に負担がかかると、吐血する場合があります。
  • 毒物や有害物質の摂取:農薬、殺鼠剤、腐敗物、薬物などを誤って摂取すると、嘔吐や下血を引き起こします。
  • 出血傾向の病気:肝臓疾患や血液疾患で血が止まりにくくなると、少しの刺激で出血しやすくなります。
  • 外傷:高い所からの落下や他の動物との喧嘩でケガをすると、胃腸内や口腔内で出血して嘔吐することがあります。

症状:犬に見られるサイン

犬が血を吐くとき、ただ血の混じった嘔吐だけでなく、以下のような症状が見られることがあります。これらのサインに気づいたら、早めの対処が必要です。

  • 嘔吐回数の増加:短時間に何度も嘔吐を繰り返すことがあります。
  • 元気の低下:ぐったりして動かない、遊びたがらないなど、いつもと様子が違います。
  • 食欲不振:普段好んで食べているフードを口にしなくなったり、水もあまり飲まなくなることがあります。
  • お腹の痛み:お腹を触ると嫌がる、きゅうきゅう鳴くなどのサインが出ることがあります。
  • 血尿や下血:嘔吐だけでなく、尿や便に血が混じる場合もあります。
  • 歯茎の変化:歯茎の色が薄くなったり、口臭がきつくなることがあります。
  • その他の出血:耳や鼻から出血する場合もまれにあります。

対処法:血を吐いたときの緊急対応

わんちゃんが血を吐いたら、まずは飼い主さんが落ち着いて状況を把握することが大切です。以下のチェックリストを参考に、安全に対処しましょう。

  1. 動物の状態を確認:呼吸や意識がしっかりしているか確認します。口の中や歯茎の色が白っぽい場合はショック症状の可能性があります。
  2. 嘔吐物の状態をメモ:吐いたときの血の色や量を確認しましょう。鮮血(明るい赤色)か古血(暗い赤色や黒色)か、量は多いか少ないかを書き留めておくと、獣医師にも伝えやすい情報になります。
  3. 誤飲・誤食のチェック:自宅内や散歩コースに危険なもの(薬品、ゴミ、生肉の骨など)がないか確認します。直前に何を食べたか、飲んだかも思い出しましょう。
  4. 水分補給の管理:少量ずつ水を与えて、嘔吐が止まるか様子を見ます。ただし、嘔吐を繰り返している場合は無理に水分を与えず、すぐに動物病院に連れて行く準備をしましょう。
  5. 安静にする:わんちゃんを暖かく静かな場所に移して安静にさせます。ケージやクレートで落ち着ける場合もあります。
  6. 動物病院への連絡:可能な限り早く獣医師や緊急対応可能な動物病院に連絡を取り、状況を伝えましょう。夜間の場合や休診日でも、緊急対応の獣医や救急病院があります。
  7. 緊急持ち物の準備:健康手帳や問診票があれば持参します。嘔吐物のサンプルをビニール袋に入れるか、汚れたタオルも持参すると検査で役立つことがあります。

治療法:獣医師による診断とケア

動物病院にかかると、獣医師は問診や身体検査を行い、必要に応じて血液検査や超音波検査、レントゲン、内視鏡検査などを提案します。検査結果やわんちゃんの状態に合わせて、以下のような治療が行われます。

  • 点滴・輸液治療:嘔吐や下痢で脱水状態になっている場合、点滴で水分や栄養を補給します。
  • 薬物療法:胃酸を抑える薬(胃酸分泌抑制薬)や胃粘膜を保護する薬、吐き気止め、抗生物質、駆虫薬などが処方されます。
  • 止血処置:出血傾向がみられる場合、ビタミンKや止血剤を投与することがあります。
  • 内視鏡・手術:誤飲した異物が胃や腸にある場合や、胃潰瘍・腫瘍が見つかった場合には、内視鏡での除去や外科手術が必要になることがあります。
  • 緊急輸血:重度の出血で貧血が進行した場合、輸血が行われることもあります。
  • 経過観察:すぐに命にかかわる緊急処置が不要な場合でも、入院して安静と経過観察が行われることがあります。

予防策:事前にできること

予防が最も大切です。日ごろから気をつけることで、嘔吐や吐血のリスクを減らしましょう。

  • 安全な環境づくり:誤飲しやすい小さなものや有害物質は犬の届かない場所に置く。おもちゃや食器は清潔に保つ。
  • バランスの良い食事:適切な栄養バランスのフードを与え、急な食事の変更を避けます。また、脂肪分や塩分の多い人間の食べ物を与えないようにしましょう。
  • 適度な運動:適度な運動で消化を促し、ストレスを溜めないようにする。運動直後に激しく遊ばないように注意しましょう。
  • 定期健康診断:早期発見・早期治療のために、年1回以上は健康診断を受けることをおすすめします。血液検査やレントゲン検査で内臓の状態をチェックしましょう。
  • ワクチンと予防薬:狂犬病・混合ワクチンの接種や、フィラリア・ノミ・ダニ予防薬の投与を定期的に行いましょう。
  • サプリでのサポート:腸内環境を整える乳酸菌や、胃腸の健康をサポートするビタミン・ミネラルのサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。

おすすめフード・サプリ:消化器をいたわる食事とサポート

消化器に負担をかけないフードやサプリを活用することで、胃腸の健康維持に役立てましょう。特に以下のような食品やサプリがおすすめです。

  • 消化に優しいフード:低脂肪で消化しやすい療法食や、消化サポート成分(イヌリンや善玉菌含む)が配合された総合栄養食がおすすめです。
  • 手作りおじややおかゆ:鶏むね肉や白身魚、かぼちゃやにんじんを煮込んだおじやは、胃腸に優しく栄養補給にもなります。
  • かぼちゃ・消化野菜:かぼちゃやさつまいもには食物繊維やビタミンが豊富で、腸内環境を整える助けになります。
  • 犬用ヨーグルト:無糖のヨーグルトには乳酸菌が豊富に含まれ、腸内環境をサポートします。
  • 乳酸菌サプリ:犬用の乳酸菌やビフィズス菌サプリメントで腸内フローラを整え、吐き気や下痢予防に役立ちます。
  • ビタミン・ミネラル:消化機能をサポートするために、ビタミンB群やビタミンC、亜鉛などのミネラルを含むサプリメントも有効です。
  • 水分補給を助けるフード:ウェットタイプの総合栄養食やスープタイプの缶詰フードで、脱水予防と栄養補給を両立させます。

まとめ

わんちゃんが血を吐くというのは決して軽視できないサインです。

原因は多岐にわたり、その中には早急な治療が必要なものもあります。飼い主さんはまず冷静になり、状況を把握することが大切です。上記のチェックリストや対処法を参考にしながら、すぐに動物病院で相談しましょう。

また、日頃から予防策を心がけ、安全な環境づくりやバランスの良い食事、定期的な健康診断で愛犬の健康を守りましょう。消化器に優しいフードやサプリメントの活用も、胃腸トラブルの予防につながります。

愛犬が元気に過ごす姿を見るために、飼い主さんの心配や不安は自然なことです。その気持ちを大切にしつつ、専門家のアドバイスを受けて早めの対応を心掛けましょう。大切なわんちゃんの健康を守るために、今日からできる対策を実践してみてくださいね。

小さな変化でも見逃さず、愛犬のSOSサインに気づいてあげましょう。どんなときも慌てず、わんちゃんへのやさしい気持ちを忘れずに対応してください。みなさんの愛情と日ごろのケアが、愛犬の幸せにつながります。

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DrVets

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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