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【獣医師解説】猫のうんちが黒いとき疑われる病気は?黒色便の原因と受診の目安

愛猫のうんちの色がいつもと違うと、ドキッとして心配になりますよね。特にそれが黒っぽい場合、「何かの病気では?」と不安になる飼い主さんも多いでしょう。

猫のうんちが黒いとき、一体何が起きているのでしょうか?本記事では、獣医師である筆者が猫の黒い便について、健康な便との違いから考えられる原因、対処法や予防策まで優しく解説しますので、初心者の方も安心してお読みいただけます。ぜひ最後までお付き合いくださいね。

猫のうんちが黒いとはどういうこと?

健康な猫の便とは

まず、健康な猫の便がどのようなものか知っておきましょう。一般的に健康な猫の便は、黄土色からこげ茶色の間の色調で、適度な硬さと形を保っています。多少の臭いはありますが、極端に強い悪臭はしません。食事内容によって若干の違いは出ますが、この範囲内であれば心配いりません。

一方、明らかに真っ黒に近いうんちや、タールのように黒光りする便が出た場合は要注意です。普段の茶色い便とはかけ離れた色調であるなら、何らかの異常が隠れている可能性があります。

黒くなるメカニズム

猫の便が黒くなる背景には、消化管内での「血液」の混入が関係しています。上部消化管(胃や小腸など)で出血が起こると、血液が消化液で分解・変色し、便に混ざって黒く排泄されます。このような消化された血液を含む黒い便は、獣医師の間ではメレナ(黒色便)タール便と呼ばれます。逆に、大腸や肛門に近い場所で出血した場合は、消化される時間が短い分、便に赤い血が混ざる血便として出ることが多いです。つまり黒いうんちは、消化管内で出血が起きている可能性を示唆するサインと言えます。ただし、一部の食べ物や薬剤でも便が黒っぽくなることがあるため、次の章で詳しく説明します。

黒い便の主な原因とは?

猫のうんちが黒くなる原因としては、大きく分けて以下のようなものが考えられます。それぞれの原因について詳しく解説していきます。

消化管からの出血

猫の便が黒くなる最も深刻な原因は、消化管からの出血です。胃や小腸などで出血が起これば、血液が消化されて黒い便(メレナ)となって現れます。原因としては、胃潰瘍腫瘍重度の胃腸炎異物誤飲による消化管の傷など様々です。また、重い寄生虫症感染症でも消化管から出血することがあります。

このような消化管出血が原因の場合、黒い便以外に猫の元気消失や歯ぐきが白っぽくなるといった貧血症状が見られることが多いです。命に関わる病気が潜んでいる可能性が高いため、黒いタール状の便を確認したら早急に動物病院で診察を受けましょう。

食事内容による影響

猫が食べたものによって、一時的に便が黒っぽくなることもあります。例えば、肉類やレバーを多く食べた場合、また市販の活性炭(薬用炭)鉄分を含むサプリメントを摂取した場合などは、便が通常より黒く変色することがあります。

このような摂取物による便の色変化は一時的なもので、猫の体調が普段と変わらなければ過度に心配する必要はありません。猫が元気・食欲ともに普段通りで、黒っぽい便が1回だけ出た場合には、直近に与えたフードやサプリメントを思い返してみましょう。ただし、明らかに真っ黒に近かったり、何度も連続して黒い便が出る場合は注意が必要です。

ストレスによる影響

猫にとってストレスは消化器の不調を招く原因になりえます。環境の変化や多頭飼育による緊張、人の留守などで強いストレスを受けると、胃酸の分泌が過剰になったり胃腸の粘膜が荒れたりして、ストレス性の胃炎・腸炎から軽い出血を起こすこともあります。ストレスが直接黒い便の原因となるケースは多くはありませんが、長期的なストレスは消化管の健康を損ねる可能性があるため、普段から猫のストレスサインに注意し、適切に緩和してあげることが大切です。

薬の副作用や誤飲

お薬の副作用有害物質の誤飲も、猫の便が黒くなる原因となりえます。例えば、人間用の鎮痛剤(NSAIDs)を誤って与えたり、殺鼠剤を誤食した場合などは、胃潰瘍や体内出血を引き起こし、黒色便の原因になることがあります。

一方で、薬自体の色素や成分が便を黒く見せるケースもあります。活性炭鉄剤がその代表例で、この場合は猫の体調に影響はありません。現在投薬中の薬やサプリメントがあれば、副作用や成分について獣医師に確認してみると安心です。

黒い便に気づいたときのチェックポイント

もし愛猫の排泄物が黒いと感じたら、次のようなポイントをチェックしてみましょう。飼い主さん自身で観察できる範囲で構いませんので、猫の様子や環境を一通り確認することが大切です。

  • 食欲はあるか:いつも通りご飯を食べていますか?食欲不振がある場合は体調不良のサインかもしれません。
  • 元気・活発さは普段通りか:遊んだり歩き回ったりする元気はありますか?ぐったりしている場合は要注意です。
  • 便の形状や匂い:黒い便はタール状で粘つくことが多いですが、形は崩れていませんか?また、普段より鉄錆のような強い臭いがしないか確認しましょう。
  • 嘔吐はしていないか:吐いた形跡はありませんか?特にコーヒーのような色の吐瀉物(消化された血液を含む嘔吐)がある場合は緊急度が上がります。
  • 最近の食事や誤食:直近で変わったものを食べていないか、思い当たるものはありますか?新しいフードやおやつ、誤って何かを飲み込んだ形跡がないか確認しましょう。
  • 服用中の薬やサプリ:現在与えている薬やサプリメントがあれば、その影響で便が黒くなる可能性がないかチェックします。
  • 黒い便が続いている期間:黒いうんちは今回限りでしょうか?それとも何日も連続していますか?頻度が高いほど注意が必要です。

以上のポイントをメモしておくと、いざ病院に連れて行く際に獣医師への説明がスムーズになります。また、可能であれば黒い便そのものを写真に撮ったり一部を持参したりすると、診断の助けになるでしょう。

動物病院に行くべきサインとは?

黒い便を見つけたとき、いつ病院に行くべきか迷うこともあるかもしれません。基本的には黒いタール状の便を確認したら早めに受診すべきですが、特に次のようなサインがある場合は一刻も早く獣医師に相談してください。

  • 猫がぐったりしている:元気がなく、呼びかけても反応が鈍い、いつもより寝てばかりいるなど、明らかに様子がおかしい場合。
  • 粘膜の色が蒼白:歯ぐきなどの粘膜をチェックして、ピンク色ではなく白っぽくなっている場合は貧血が疑われます(大量出血の可能性)。
  • 嘔吐や下痢を伴う:黒い便だけでなく、嘔吐(吐血が疑われるもの)や下痢が同時に起きている場合。
  • 腹痛を示唆する動作:お腹を触ると嫌がる、背中を丸めてうずくまる、鳴き声をあげるなど、お腹の痛みを感じていそうな様子がある場合。
  • 何度も黒い便をする:一回ではなく、複数回にわたって黒い便が出続ける場合や、時間をおいて繰り返し黒い便をする場合。

上記のような症状が見られる場合は緊急性が高いでしょう。迷わず動物病院に連絡し、指示を仰いでください。また、黒い便だけで猫が元気そうに見えても、電話で相談して獣医師の指示をもらうことをおすすめします。黒い便は「待って様子を見る」より「早めに対処」する方が安心です。

黒い便を予防するためにできること

日頃から次のようなケアを心がけることで、黒い便の原因となるトラブルを予防できる可能性があります。

  • 食生活の管理:質の良いキャットフードを与え、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。極端な偏食や突然のフード変更は消化器に負担をかけるため、フードを変えるときは徐々に慣らします。
  • 誤飲・誤食の防止:猫が誤って飲み込むと危険な小物や薬剤は猫の手の届かない場所に保管します。ヒモ状の物や薬品、観葉植物などは要注意です。
  • ストレスの軽減:静かで安心できる環境づくりや十分な遊び時間の確保など、猫のストレスを減らす工夫をしましょう。多頭飼育の場合は各猫に逃げ場や個別のリソース(トイレや食器)を用意することも大切です。
  • 定期的な健康チェック:日常的に猫の健康観察を行い、便の色や硬さ、食欲や元気に変化がないか注意深く見守ります。年に一度は健康診断を受け、必要に応じて便検査で寄生虫などのチェックをすると安心です。

おすすめのフード・サプリメント紹介

愛猫の消化器の健康を保ち、黒い便を予防するために、市販されている以下のようなフードやサプリメントを活用してみるのも良いでしょう。

  • 消化器サポート用フード:胃腸に負担をかけにくい原材料で作られており、消化吸収に優れています。胃腸が敏感な猫に適したフードです。
  • 食物繊維配合フード:食物繊維が豊富なフードは腸内環境を整え、便の調子を良くするのに役立ちます。適度な繊維質は腸の動きをスムーズにし、便秘や下痢の予防にもつながります。
  • プロバイオティクス(善玉菌)サプリ:乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が含まれたサプリメントは、腸内フローラのバランスを整え、消化管の健康維持に役立ちます。フードに混ぜるだけで手軽に与えられます。
  • 胃腸粘膜を保護するサプリ:グルタミンや生薬エキスなど、胃腸の粘膜を保護・修復する成分を含むサプリメントもあります。必要に応じて獣医師に相談して取り入れてみると良いでしょう。

これらのフードやサプリメントはあくまで補助的なものですが、日常的に活用することで猫の胃腸の健康をサポートしてくれます。ただし、どの商品も万能ではないため、猫の体質に合うか様子を見ながら与えてくださいね。

まとめ

猫の黒いうんちは、飼い主として見つけると不安になりますが、その背後には様々な原因があります。健康な便との違いや黒くなる仕組みを知ることで、慌てずに冷静に対処する助けになるでしょう。特に消化管からの出血による黒色便は重大な病気のサインであることが多いため、黒いタール状の便を見たら早めに動物病院に相談するようにしましょう。

日頃から愛猫の様子を注意深く観察し、食事や生活環境に気を配ることで黒い便の予防につなげることができます。また、いざという時に備えて早めに異常に気づけるよう、日常的なスキンシップと健康チェックを習慣にしておくと安心です。飼い主さんの「おかしいな?」という気づきが、愛猫の命を守る大きな力になります。大切な猫ちゃんが元気で過ごせるよう、これからも優しく見守ってあげてくださいね。

  • この記事を書いた人
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DrVets

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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