猫の食欲は健康のバロメーターとも言われます。愛猫がご飯を食べないと、「どこか具合が悪いのでは?」と心配になりますよね。
実際、猫がご飯を食べない(猫の食欲不振)背景には体調不良から環境のストレスまで様々な原因があります。
本記事では、猫がご飯を食べなくなる原因と、猫がご飯を食べないときの対処法(試すべき工夫)、そして注意点について詳しく解説します。初心者の飼い主さんからベテランの飼い主さんまで、愛猫の食欲不振に適切に対応できるよう参考にしてください。
猫がご飯を食べないのはなぜ?考えられる主な原因
まず、猫が急にご飯を食べなくなる原因として考えられるものを確認しましょう。食欲不振=即病気とは限りませんが、何らかの理由があって食べられなくなっています。
- 病気や体調不良: 消化器系や腎臓、口腔内など、さまざまな病気で猫は食欲不振になります。病気が進行するにつれ徐々に食べなくなる場合もあれば、ある日突然食べなくなる場合もあります。普段から猫の様子を観察し、他に元気消失や嘔吐・下痢などの異常症状がないかチェックしましょう。
- 食べ物(フード)に関する問題: 猫にも好みや好き嫌いがあり、空腹でも気に入らないご飯には見向きしないことがあります。また、いつも同じキャットフードでは飽きてしまい、食べなくなるケースも考えられます。フードが古く酸化して風味が落ちていたり、急に別のフードに切り替えたりした場合も食べなくなる原因になります。
- 環境の変化・ストレス: 環境要因によっても食欲は影響を受けます。例えば引っ越し、新しいペットの導入、家族構成の変化(赤ちゃんが生まれた等)、ご飯の場所が猫のトイレに近い、といったケースです。暑い夏場に食欲が落ちる、ワクチン接種や動物病院の受診後に一時的に食べなくなる場合もあります。多頭飼いの場合は先住猫との関係性がストレスになることもあるため、各猫が安心して食事できる空間を用意しましょう。
- 年齢やライフステージ: 高齢の猫は活動量の低下に伴い食欲も落ち気味になります。加えて嗅覚や消化機能の衰え、持病の発生などで食が細くなる傾向があります。一方、子猫は一度に食べられる量が限られますが、数時間おきにエネルギー補給が必要です。特に生後間もない子猫の場合、1回の食事抜きでも低血糖を起こすことがあるため注意が必要です。
【チェックリスト】猫が食欲不振になったとき最初に確認すること
愛猫がご飯を食べないと気づいたら、以下のポイントをチェックして状況を把握しましょう。
- 他に症状はありませんか? 元気がない、嘔吐・下痢をしている、発熱している、といった場合は病気が原因の可能性が高いです。
- 水は飲めていますか? 水分を取れているか確認しましょう。加えて、尿や便は普段どおり出ていますか? 水すら飲めない、排尿排便がない場合は緊急性が高いです。
- 最後に普通にご飯を食べたのはいつですか? 丸1日以上全く食べない状態が続いていないか確認します。食べた量が普段の半分以下の日が2〜3日続く場合も食欲不振と言えます。
- 環境の変化やストレス要因は? 引っ越し、ペットや人の出入り、生活リズムの変化など思い当たる出来事が最近ありませんでしたか?
- 与えているフードの状態は? 開封後時間が経ち酸化したフードや賞味期限切れのものを与えていないか確認します。猫は鮮度の落ちたご飯を嫌う傾向があります。また、ここ数日でフードの銘柄や種類を急に変更していれば、それが原因かもしれません。
上記を確認しつつ、猫の様子を注意深く観察してください。原因の心当たりがない場合でも、次章のような対処法を試すことで食べてくれるケースもあります。
猫がご飯を食べないときに試すべき工夫・対処法
猫に大きな不調の兆候がなければ、以下のような工夫をすることで食欲が戻る場合があります。
- 食事環境を整える: 猫が落ち着いて食事できる環境を用意しましょう。人通りの少ない静かな場所でご飯を与えると、安心して食べられる場合があります。可能であれば別室で食べさせる、仕切りを使って周囲が見えないようにするなど工夫します。一方で、飼い主さんの手からフードを与えると食べてくれる猫もいます。
- フードを温めて香りをアップ: ウェットフードは人肌程度(約40℃)に温めると香りが立ち、風味が増して食欲を刺激しやすくなります。電子レンジで数秒温めてから与えてみてください。ただし熱くしすぎると猫が食べにくくなるため注意しましょう。
- フードの種類・食感を変えてみる: いつもと違う風味のご飯を試すのも効果的です。例えば魚味中心ならお肉系のフードに変えて様子を見てみましょう。普段ドライフード中心であれば、ぬるま湯や無塩の出汁でふやかしてみたり、思い切ってウェットフードに切り替えてみるのも一つの手です。ウェットフードでもゼリー状・パテ状など種類があるので、食感の好みを探ってみましょう。ただし急な切り替えは猫のお腹に負担をかけるため、少しずつ混ぜながら慣らしてください。
- いつものご飯にトッピングを加える: 普段のフードに、猫用ふりかけや液状のペーストおやつ(例: ちゅーる)を少量トッピングしてみるのも手です。いつものご飯の風味が増し、興味を引くことで食べてくれることがあります。トッピング分のカロリー過多に注意しつつ試してみましょう。
- 食事の出し方を工夫する: 一度に大量に出すよりも、少量ずつ小分けにして与えてみましょう。猫によっては常にご飯が出しっぱなしだと「いつでも食べられる」と思い、すぐには食べないことがあります。その場合、食べない分は10分ほどで下げてしまい、時間をおいてまた新しいものを出すようにすると、「出されたときに食べる」習慣が付きやすくなります。また、フードの風味を落とさないよう少量包装のものを選ぶ、開封後は密閉容器で保存するなどしていつでも新鮮な状態で与えましょう。
- 適度に遊んで刺激を与える: 猫じゃらしなどおもちゃで遊んで軽く運動させると、その後食欲が増して食べてくれることがあります。1日数回、5分程度でも良いので遊びの時間を設けてみましょう。適度な運動はストレス発散にもなり、一石二鳥です。
- 水分補給も忘れずに: 食事が進まない猫は脱水にも陥りやすいので注意が必要です。ウェットフードは水分含有量が多く香りも強いため興味を引きやすく、水分補給源としても役立ちます。可能であれば総合栄養食のウェットフードを利用し、不足しがちな水分と栄養を同時に補給できると理想的です。
以上のような工夫を試しても猫がどうしてもご飯を食べない場合、何らかの病気が隠れているおそれがあります。早めに動物病院で相談し、専門的な対処を仰ぎましょう。
猫がご飯を食べないときの注意点
愛猫の食欲不振に対処する際、以下の点に注意してください。
- 人間の食べ物を安易に与えない: 飼い主さんが食べているおかずなど、人間用の食べ物を「食べるなら…」と与えたくなるかもしれません。しかし味付けの濃いものに慣れると、あとで猫用フードを食べなくなる可能性があります。また、持病によっては塩分などを制限する必要があり、人間の食べ物が症状を悪化させる危険もあります。与えてよい食品もありますが、必ず獣医師に相談してからにしましょう。
- 普段与えないフードやおやつは控える: 食べないからといって、今まで与えたことのないフードやおやつを急にあげるのは避けましょう。新しい食べ物が体質に合わず下痢や嘔吐など消化不良を起こすと、「病気が進行して症状が出たのか、新しく与えたものが原因なのか」判断がつかなくなってしまいます。逆に、以前食べたことがあり問題を起こさなかったものなら少量与えても構いません。
- 嫌がる猫に無理強いしない: 食べないからといって無理やり口を開けさせ、フードを押し込むのは逆効果です。食事そのものを嫌いになり、余計に食べなくなる可能性があります。痛みや吐き気がある状態で無理に食べさせると症状が悪化するおそれもあります。強制給餌の是非は獣医師が猫の状態を見て判断しますので、自己判断では行わないでください。
- 「食べない期間」を見極める: 猫が最後に食事をとってからどのくらい経過したか把握しておきましょう。完全に食事を絶った状態が36時間以上続いたら危険信号です。特に肥満気味の猫は36時間以上の絶食で脂肪肝(肝リピドーシス)を発症するリスクが高いとされています。少し食べる程度の食欲低下でも、72時間(3日)以上改善しない場合は受診を検討しましょう。子猫の場合は1食抜けただけでも低血糖発作のおそれがあるため注意が必要です。
- 早めの受診を検討する: 明らかに衰弱している、嘔吐や下痢などの症状を伴う、水も飲めない、といった場合は迷わず早急に動物病院へ連れて行ってください。そうでなくても、食欲不振が続くときは「水を飲んでいるから大丈夫」と油断せず、早めに獣医師に相談することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 猫は何日くらいご飯を食べなくても平気なのでしょうか?
A1. 基本的に猫は半日〜1日程度食べなくてもすぐ命に関わることはありません。しかし、絶食状態が丸1日以上続くのは非常に危険です。特に太り気味の猫では36時間以上食べないと肝リピドーシス(脂肪肝)を発症するリスクが高まります。健康な成猫でも、まったく食べない状態が2日以上続けば受診が必要と考えてください。子猫は半日〜1日食べないだけでも低血糖発作を起こしかねないため、少しでも食べない場合はすぐ病院へ連れて行きましょう。愛猫が全く食事を取らない状態が24時間以上続いたら、迷わず獣医師に相談することをおすすめします。
Q2. 水は飲んでいるのですが、ご飯を食べない場合は少し様子を見ても大丈夫ですか?
A2. 水を飲めているのは良い兆候ですが、水だけ飲んで食べない状態が続くのは問題です。猫は喉が渇けば体調が悪くても水を飲むことがあります。例えば慢性腎臓病では多飲多尿の症状が出やすく、「食欲不振だが水はよく飲む」という状態が見られます。「水を飲んでいるから大丈夫」とは限らないので、半日〜1日経っても食欲が戻らない場合は獣医師に相談してください。水分が取れていてもエネルギー不足が続けば体力が落ちていくため油断は禁物です。
Q3. 食欲がない猫に無理にでも食べさせるべきでしょうか?
A3. 無理強いは禁物です。猫が嫌がっているのに強制的に口に入れても、食事への嫌悪感を高めて逆効果です。喉に詰まらせたり誤嚥したりする危険もあります。どうしても食べない場合は栄養補給の方法について獣医師に相談しましょう。動物病院では必要に応じて強制給餌や点滴による栄養補給を行うこともありますが、猫の状態を見極めて実施されます。自宅では、前述の工夫を凝らして自発的に食べてもらうことを基本としましょう。
Q4. 猫がおやつ(ちゅーるなど)なら食べる場合、主食の代わりに与えても良いですか?
A4. おやつばかり食べて肝心のご飯を食べなくなる猫は珍しくありません。ちゅーるのようなペースト状おやつは嗜好性が高いぶん栄養バランスは総合栄養食に劣ります。おやつは1日の総カロリーの20%以内に留めるのが目安とも言われています。したがって主食の代用にはせず、どうしてもの時に少量与える程度にしましょう。おやつに頼らなくても食事をとってもらえるよう、遊びで食欲を刺激する、いつものご飯にトッピングを混ぜる等の工夫を重ねてみてください。それでも食べない場合は他に原因があるかもしれないので、動物病院に相談しましょう。
大切な愛猫の健康を守るため、心配なときは早めに動物病院に相談しましょう。