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犬の尿路結石:種類・治療・食事管理の徹底解説

「血尿が出た」「頻繁にトイレに行く」「急に歩けなくなった」——犬の尿路結石は、排尿困難・血尿から命に関わる尿道閉塞まで、様々な症状を引き起こします。結石の種類(ストルバイト・シュウ酸カルシウム・尿酸塩・シスチンなど)によって治療法が根本的に異なるため、正確な診断が不可欠です。本記事では、各結石の特徴・診断・治療・食事管理・再発予防を詳しく解説します。

犬の尿路結石の種類と内訳

結石の種類 割合(目安) 好発犬種・条件
ストルバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム) 約40〜50% 雌犬・感染関連(犬のストルバイトの80〜90%は細菌性UTIに関連)
シュウ酸カルシウム 約35〜40% 高齢の小型犬(ミニチュアシュナウザー・ヨークシャーテリア・マルチーズ・ラサアプソ)・高Ca血症
尿酸塩(ウレート) 約5〜8% ダルメシアン(プリン代謝異常)・門脈体循環シャント(若い犬)・イングリッシュブルドッグ
シスチン 約1〜3% 雄犬(タービー・マスチフ・バセットハウンド・ダックスフンド)。腎尿細管のシスチン再吸収異常
リン酸カルシウム 約1〜3% 副甲状腺機能亢進症・アルカリ性尿
シリカ 約1% 植物性タンパクを多く含む食事

症状

膀胱結石

  • 血尿(最も多い):結石が膀胱壁を傷つける
  • 頻尿・排尿困難:少量しか出ない
  • 排尿時の疼痛
  • 無症状:偶然発見されることもある(定期健診のレントゲン・超音波で)

尿道結石(特に雄犬)——緊急

  • 尿が全く出ない(尿道閉塞)
  • ぐったり・嘔吐(尿毒症)
  • 膀胱の過拡張(腹部膨満)
  • 尿道閉塞は24〜48時間で命に関わる緊急事態

腎結石・尿管結石

  • 腰部・腹部の疼痛(腹痛として現れることも)
  • 水腎症(尿管閉塞→腎臓に尿が溜まる)
  • 腎機能低下(特に両側性の場合)
  • 多くは無症状で進行することもある

診断

画像診断

検査 特徴 どの結石が見えるか
腹部レントゲン 簡便・迅速・コスト低い シュウ酸カルシウム・ストルバイトは写る。尿酸塩・シスチンは写りにくい(X線透過性)
腹部超音波 軟部組織・膀胱壁・腎臓の状態も評価可能 全ての結石を検出可能。腎・尿管結石の評価に優れる
CT(造影) 最も詳細。尿管結石・腎結石の評価・手術計画に有用 全ての結石。位置・サイズ・数を正確に把握

尿検査

  • 尿沈渣の結晶観察:結石の種類を予測(ただし結晶と結石は必ずしも一致しない)
  • pH:アルカリ性→ストルバイト・リン酸Caが形成しやすい。酸性→尿酸塩・シスチン・シュウ酸Ca
  • 細菌培養:ストルバイト結石では細菌感染が関与

結石分析(最も重要)

取り出した結石・排出された結石・膀胱洗浄で得られた結石を赤外分光法または X線回折法で分析することが、確実な種類の特定に最も信頼性があります。治療法・再発予防食の選択に直結します。

血液検査

  • カルシウム値:高Ca血症(副甲状腺機能亢進症・悪性腫瘍等)→シュウ酸Ca結石の原因
  • 尿酸値(BUN):尿酸塩結石の評価
  • 肝機能:門脈シャント(尿酸塩結石の原因)の除外
  • 腎機能:水腎症・腎機能障害の評価

治療

結石の種類別治療戦略

結石の種類 食事療法による溶解 外科的治療 その他
ストルバイト 可能(数週間〜数ヶ月)。感染を伴う場合は同時に抗菌薬投与必須 大きな結石・閉塞時 感染の管理が必須
シュウ酸カルシウム 食事では溶けない 外科摘出・体外衝撃波砕石術(ESWL) 再発予防が重要
尿酸塩 可能(低プリン食・アロプリノール) 門脈シャント修復手術(原因治療) 遺伝性(ダルメシアン)
シスチン 可能(アルカリ化食・2-MPG) 効果不十分な場合 去勢手術で一部改善

外科的治療

  • 膀胱切開術(Cystotomy):最も一般的。膀胱を切開して結石を直接除去
  • 尿道切開術(Urethrotomy):尿道閉塞時の緊急処置
  • 会陰部尿道造瘻術(PU手術):雄犬の再発性尿道閉塞に対して尿道を広げる手術
  • 腎切開術・尿管切開術:腎・尿管結石の除去
  • 尿管ステント・皮下尿管バイパス(SUB):尿管閉塞に対する低侵襲的選択肢

経尿道的処置

  • 尿道水圧造影法(Hydropulsion):尿道に詰まった小さな結石を膀胱に戻す処置(その後膀胱切開で摘出)
  • 膀胱鏡下結石破砕・採取:小さな結石の除去。麻酔下で膀胱鏡を用いて実施

食事療法によるストルバイト溶解の詳細

犬のストルバイト結石の約80〜90%は細菌性UTIに関連しています(これは猫のストルバイトとは異なります)。

  • 処方食(溶解食):ロイヤルカナン ユリナリーS/O犬用・ヒルズ プリスクリプション s/d。尿を酸性化・低マグネシウム・低リン設計
  • 抗菌薬の同時投与:原因菌(ウレアーゼ産生菌)の除去。培養に基づいた抗菌薬選択
  • 水分摂取の増加:尿量増加→結石の希釈・洗い流し
  • 治療モニタリング:4〜6週ごとのX線・超音波で溶解状態を確認。通常2〜3ヶ月で溶解

食事による再発予防

ストルバイト結石の再発予防

  • UTIの管理(尿培養による確認)
  • 水分摂取増加(ウェットフード・飲み水の充実)
  • 泌尿器ケア処方食(維持食)の長期継続
  • 尿pH 6.0〜6.5に維持

シュウ酸カルシウム結石の再発予防

  • 水分摂取の徹底的な増加(最重要):尿シュウ酸カルシウム過飽和度を低下
  • カルシウム制限をしすぎない:食事からのカルシウムがシュウ酸と腸内で結合して吸収を抑制する(カルシウム制限はシュウ酸の吸収増加につながる)
  • シュウ酸を多く含む食品を避ける:ほうれん草・ビーツ・ナッツ類
  • ビタミンCの過剰補給を避ける:シュウ酸に代謝される
  • ビタミンB6の適切な摂取:シュウ酸の代謝を正常化
  • 処方食(予防食):ロイヤルカナン ユリナリーS/O(シュウ酸Ca再発予防用)・ヒルズ u/d
  • 高Ca血症がある場合はその原因治療(副甲状腺機能亢進症手術等)

尿酸塩結石(ダルメシアン等)の再発予防

  • 低プリン食(ロイヤルカナン ユリナリーUC ローピュリン・ヒルズ u/d)
  • アロプリノール(キサンチンオキシダーゼ阻害薬):尿酸産生を抑制。長期投与が必要
  • 尿をアルカリ化(クエン酸カリウム・重炭酸カリウム)
  • 水分摂取の増加

定期モニタリング

  • 治療後・再発予防中は3〜6ヶ月ごとの超音波またはレントゲンで再発の早期発見
  • 尿検査(pH・結晶・細菌):1〜3ヶ月ごと
  • シュウ酸Ca結石では血清カルシウムの定期的な確認

まとめ

犬の尿路結石は「とりあえず手術で取ればよい」ではなく、結石の種類を正確に特定し、原因に応じた食事療法・内科療法・外科療法を組み合わせて管理する疾患です。食事管理と定期的なモニタリングにより再発率を大幅に下げることができます。

犬の尿路結石の治療・食事管理について個別に相談したい飼い主様は、獣医師への個別相談もご活用ください。

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