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【獣医師解説】猫の口内炎・歯周病|口が痛くてご飯を食べない原因と治療を徹底解説

「口を開けて食べていたのに急にご飯を食べなくなった」「よだれが垂れている」「口が臭い」「口元を触ると怒る」——これらは猫の口腔疾患のサインです。猫の口内炎・歯周病は非常に多い疾患で、特に慢性歯肉口内炎(FCGS)は痛みが強く、猫の生活の質を著しく低下させます。

猫の口内炎・歯周病の種類|FCGS(慢性歯肉口内炎)とは

猫の口腔疾患にはいくつかの種類があります。

歯周病(歯肉炎・歯周炎)は最も一般的な口腔疾患で、3歳以上の猫の70%以上が何らかの歯周病を持つとも言われています。歯垢・歯石の蓄積により歯肉が炎症を起こし(歯肉炎)、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が溶けて歯が抜けます(歯周炎)。

猫の慢性歯肉口内炎(Feline Chronic Gingivostomatitis:FCGS)は、歯肉炎・歯周炎とは異なる免疫介在性(免疫が過剰反応する)の口腔炎症疾患です。口の奥(咽頭弓)や口蓋にも及ぶ広範な炎症が特徴で、「尾側口内炎(caudal stomatitis)」とも呼ばれます。プラーク(細菌)や猫カリシウイルス(FCV)・ヘルペスウイルス(FHV)に対する過剰な免疫反応が関与すると考えられていますが、完全な原因解明はされていません。

吸収病巣(TR病変:歯根吸収病変)は、歯頸部から歯を溶かしていく病変で、猫に特有の疾患です。X線検査ではじめて発見されることが多く、非常に強い痛みを伴います。20〜60%の猫に見られるとされています。

症状|よだれ・口臭・ご飯を食べない・口を触らせない

猫の口腔疾患は痛みが強く、食事への影響が顕著です。以下の症状が見られたら早めに受診しましょう。

  • ご飯を食べない・食べにくそうにする:食欲はあるのに近づいて引き返す、ドライフードが食べられずウエットフードなら食べる、食べながら痛そうにする(首を振る・急に離れる)
  • よだれが多い・口周りが濡れている:痛みによる過剰なよだれ分泌
  • 口臭がひどい:細菌繁殖・壊死組織による腐敗臭
  • 口を触られるのを嫌がる・攻撃する:口が痛いために防御反応が強くなる
  • グルーミングをしなくなる:口が痛くて毛づくろいできない
  • 体重減少・筋肉萎縮:十分に食べられないための栄養不足
  • 前足で口を触る:口の不快感・痒みから

FCGSは特に症状が強く、口の奥(咽頭・口蓋)に及ぶ炎症・潰瘍が非常に強い痛みを引き起こします。外見上、歯肉が赤く腫れ上がり、白い偽膜(炎症性膜)が形成されることもあります。

治療法|全抜歯・ステロイド・インターフェロン

猫の口内炎・歯周病の治療は疾患の種類・重症度に応じて選択します。

歯科処置(スケーリング・ポリッシング)は歯周病の基本治療です。麻酔下で歯垢・歯石を除去し、歯面を磨いて細菌が付着しにくくします。定期的に行うことで歯周病の進行を遅らせられます。

抜歯(部分抜歯または全抜歯)はFCGSの最も有効な治療法です。

  • 全抜歯(全ての歯を抜く):FCGSの60〜80%で完全寛解または大幅な改善が得られるとされています。歯がなくなることで口腔内細菌・プラークの蓄積源がなくなり、免疫の過剰反応が落ち着きます。残念ながら20〜40%では全抜歯後も治療が必要です
  • 部分抜歯(後臼歯のみ):前歯を残す方法で、全抜歯より侵襲が小さいですが効果はやや劣ります

ステロイド(プレドニゾロン・デポメドロル注射)は炎症・免疫反応を抑えてFCGSの症状を緩和します。短期間の使用で症状が改善しますが、長期使用では糖尿病・感染症リスクが上がります。根本治療ではなく、症状緩和や抜歯前の待機期間中の管理に使われます。

インターフェロン(組換えネコインターフェロンオメガ)はウイルス感染関連のFCGSや難治性症例に使われます。免疫調節作用があり、FCVやFHVが関与するケースで有効なことがあります。

抗生物質(アモキシシリン・クラブラン酸など)は二次細菌感染がある場合や歯科処置前後に使われますが、FCGSの根本治療にはなりません。

全抜歯後の回復と食事管理

「歯を全部抜いたら食べられなくなるのでは?」と心配される飼い主の方が多いですが、実際には多くの猫が全抜歯後も問題なく食事をとることができます。

歯のない猫は歯肉(ぐき)と舌を使ってフードをすくい取るように食べます。ウエットフード(缶詰・パウチ)は飲み込みやすいためスムーズに食べられます。ドライフードも多くの猫が丸飲みして食べることができますが、食べにくそうな場合はドライフードをぬるま湯でふやかす、ウエットフードに切り替えるなどの工夫をします。

全抜歯後の回復期間は約2〜4週間です。術後は鎮痛薬(メロキシカムなどのNSAIDs)と軟らかいフードで管理します。多くの猫は術後1〜2週間で食欲が改善し、疼痛から解放されて活発さが戻ってくるのが見られます。

全抜歯後も、口腔内の清潔を保つために定期的に口の中を確認し、異常(残根・炎症)がないか確認することが推奨されます。

口内炎予防|歯磨き・デンタルケア用品

歯周病予防の最も効果的な方法は毎日の歯磨きです。できれば子猫のうちから口を触ることに慣れさせ、歯磨きを習慣化しましょう。

歯ブラシの使い方:指に巻く歯磨きシートや小さな指歯ブラシから始め、徐々に歯ブラシに移行します。歯磨きジェル(猫用・肉や魚味)を使うと受け入れやすくなります。人間用の歯磨き粉はキシリトール(犬猫に有害)が含まれることがあるため使わないようにしましょう。

歯磨きが難しい場合の代替ケアとして、VETSのデンタルケア認定(VOHC認定)を受けた歯磨きシート・デンタルジェル・デンタルフード・デンタルガム(猫用)を活用することができます。ただしこれらは歯磨きの代替にはなっても代替にはなりません(補助的)。定期的な動物病院でのデンタルチェックと必要に応じたスケーリングを組み合わせることが重要です。

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院長

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国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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