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【獣医師監修|猫の糖尿病】治療しない選択はアリ?初期・末期症状・寿命について解説

愛猫が糖尿病と診断されたけど、元気でごはんもよく食べてるし、無治療でも大丈夫かしら?

猫の糖尿病は放っておくとケトアシドーシスという末期状態になるため、早期発見・治療が重要です。 
糖尿病は初期状態では元気食欲がありますが、進行すると神経症状が出ることもあり、失明や命の危険があります。

早期発見・治療が重要なのはわかったけど、
ちゃんと治療を受けた糖尿病の猫の余命はどれくらいなの?

早期診断や適切なインスリン投与量での治療、食事や生活習慣の管理を行えば、その寿命はさらに延びることがあります。
実際に、多くの猫は糖尿病の診断を受けてから3~8年以上生きています。

糖尿病は、多飲多尿などの初期症状に注意し、適切な治療を行えば数年の余命ですが、治療が遅れると数日から数ヶ月で命を落とすこともあるのです。

糖尿病の症状の初期から末期(ケトアシドーシス)までの変化を正しく理解し、適切な対策を行えば寿命を延ばすことが可能です。

今回は獣医師監修のもと、糖尿病の症状や原因、寿命、オススメのフードや食事管理について詳しく解説します。

治療しない選択はアリ?

猫ちゃんの糖尿病を治療せずに放置する選択肢は、残念ながらおすすめできません

糖尿病とは、体が血液中の糖分をうまく処理できない状態を指します。

放置すると、猫ちゃんの体内に糖分が溜まり、健康に様々な問題を引き起こす可能性があります。

たとえば、体調不良、体重減少、または重篤な場合は、意識が朦朧とするなどの症状が見られることがあります。

さらに、糖尿病が進行すると、心臓病や腎臓病などの深刻な合併症を引き起こすこともあります。これらの合併症は命に関わるものもありますから、治療を選択しないことは、猫ちゃんの健康と幸せを守るためには良くありません。

糖尿病の治療は、最初は難しく感じるかもしれませんが、適切なケアを行うことで、猫ちゃんは健康で快適な生活を送ることができます。

糖尿病の猫にチュールはあげても良い?

なるべくチュールはあげないようにしましょう、糖尿病をさらに悪化させる可能性が高いです。

チュールやおやつ、セミモイストフードには血糖値を上昇させるような成分が多く含まれているため、オススメできません。

あげるのであれば、チュールの代わりに調理したささみなどをあげるようにしましょう。

糖尿病の初期・末期症状

猫の糖尿病の初期症状は、多尿や多飲が一般的ですが、なかなかそれらの初期症状に気づきにくことは難しいです。

多飲多尿が起こる理由は、糖尿病では糖分を処理する能力が落ちてしまうので、体の余分な糖分をおしっこから排泄する必要があります。そのため水分をたくさん摂り、おしっこから糖分を排泄する必要があるのです。

病気が進行し、糖尿病性ケトアシドーシスの状態に陥ると、脱水や電解質の異常、アシドーシスによる嘔吐、食欲不振、昏睡などの末期症状が現れることがあります。

この末期の段階では、果物が腐ったようなケトン臭の呼気やゆっくりと深いクスマール呼吸が観察されることもあります。

また削痩、筋肉量減少、重度脱水、艶の無い被毛、低体温などが現れることがあります。

さらに、猫の場合は後ろ足を引きずったり、踵をつけたり(糖尿病性神経症の症状)などの糖尿病で特徴的な所見が見られることもあるでしょう。

猫の糖尿病の初期および末期の症状を見極め、適切な治療と管理を行うことが極めて重要です。

ケトアシドーシス(DKA)について

猫の糖尿病の末期状態である糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、インスリンの不足やインスリンが効きにくくなる抵抗性により、体の細胞がエネルギーとして糖を利用できなくなる病態です。

この状態では、猫の体は糖ではなく、脂肪をエネルギー源に変え、脂肪が分解されることでケトン体が過剰に生成されるため、血液のpHが酸性に傾くアシドーシスが発生します。

原因としては、長期間糖尿病が治療されず、高血糖が持続したり、糖尿病のコントロールが不安定である場合、DKAへと発展することがあります。

また、すでにインスリン療法を受けている猫であっても、感染症や膵炎、心臓疾患、外傷、歯周病、ストレス、ホルモン病、性別などが原因でインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる)が生じ、DKAを発症することがあります。

猫の糖尿病の原因

猫ちゃんが糖尿病になる原因はいくつかあります。

遺伝

これは、ある種の猫ちゃんが糖尿病になりやすいということです。親から子に病気が伝わることがあります。


肥満

猫ちゃんが体重が重すぎると、体内で糖分をうまく処理する力が弱まってしまうことがあります。それが糖尿病につながることがあるんです。


食事

猫ちゃんが食べるものも大切です。特に炭水化物が多いと、体が糖分をうまく処理できなくなることがあります。

通常猫は低炭水化物•高タンパク質の食事が適しているといわれています。チュールやクリスピータイプの美味しいおやつばかりあげていると、栄養バランスが崩れたり、肥満になってしまい、糖尿病を誘発してしまいます。


運動不足

適度な運動をしないと、糖分をうまく処理できる力が弱まることがあります。

年齢と性別

年を取った猫ちゃんや、去勢されたオスの猫ちゃんは、特に糖尿病になりやすいと言われています。

以上が猫ちゃんが糖尿病になる主な原因です。これらを頭に入れて、愛猫の健康に気をつけてあげましょう。

猫の糖尿病は治るって本当?

また、猫の糖尿病は、大部分がⅡ型糖尿病であり、寛解することが可能です。

ただし、寛解を目指すためには必ずインスリン療法と食事療法の両方を行う必要があります。

Ⅱ型糖尿病とは

膵臓のインスリン分泌能力はまだ残っているが 十分に血糖値を下げることが出来ない状態、あるいは体の 組織がインスリンを十分に利用出来なくて,血糖値をコントロール出来ない状態です。

猫の糖尿病のほとんどはII型糖尿病で、肥満が原因とされており、初期治療は必ずインスリン療法が必要です。

ただしⅡ型糖尿病は寛解することもあります。

猫の糖尿病は寛解するの?

はい、実際に猫の糖尿病は寛解する可能性があります。

この寛解という言葉は、インスリン治療と食事管理によって血糖値が安定し、インスリン治療が必要なくなる状態を指します。

ただし、これはすべての猫に当てはまるわけではなく、寛解するかどうかは個々の猫の健康状態や既存の疾患、糖尿病が発見された時点での進行度によります。

また、寛解が起こったとしても、再発する可能性があるため、定期的な健康チェックと血糖値のモニタリングは必要となります。

糖尿病の診断について

猫の糖尿病の診断は、比較的簡単で、持続的な高血糖と尿糖の確認によって行われます。

多飲多尿や体重減少が見られる場合、糖尿病の疑いがあるため検査が必要です。

血液検査では高血糖が認められ、尿検査では尿糖が陽性になることが確認されます。これで糖尿病の診断ができる場合が多いですが、確定できない場合はフルクトサミン値を測定し、過去2週間の血糖値の平均値を調べます。

糖尿病が確認されたら、インスリン抵抗性の有無を調べるため、レントゲン検査やエコー検査で肝臓や副腎、膵臓、腎臓などを確認します。

糖尿病の余命・寿命〜治療しないという選択肢〜

猫の糖尿病は適切な治療を受けることで寿命が延び、充実した生活を送ることができます。

寿命については個々の状況により異なりますが、猫の糖尿病が進行し、腎不全や糖尿病性ケトアシドーシスが発症すると、命を落とすこともあります。特に神経症状が現れた場合は、余命が短いことがあります。

治療を受けない選択もありますが、糖尿病が自然に治ることはほとんどありません。

治療を受けない状態が続くと、確実に病状が進行し、最終的には命を落とすことになります。
ある報告では、治療を受けていない猫の糖尿病の余命は平均で約60日と言われています。
ですので、治療しないという選択肢はないでしょう。

一方、適切な治療を受けた猫の糖尿病の平均余命は約2年とされており、早期診断や適切なインスリン投与量での治療、食事や生活習慣の管理を行えば、その寿命はさらに延びることがあります。実際に、多くの猫は糖尿病の診断を受けてから3~8年以上生きています。

愛猫の健康と長寿のために、早期診断と早期治療が重要です。

糖尿病の治療法


猫の糖尿病治療には、インスリン注射や食事療法による血糖値の管理と合併症の予防が重要です。

食事療法では、良質なタンパク質と食物繊維が豊富な療法食を与えることで、血糖値の急激な上昇を防ぎます。また適度な運動も続けることで、血糖値を安定させる効果があります。

そして、猫の糖尿病ではインスリン注射が欠かせません。まず飼い主の方は注射を打つ方法を学び、愛猫に適切なタイミングで投与する必要があります。

インスリン注射の回数について

インスリン注射は通常1日2回行います。

インスリンを打つ前に食事を必ず食べさせ、その30分後くらいに血糖値を測り、注射を打つことがベストです。ただし、血糖値の測定が家で出来ない場合には、かかりつけの獣医師が決めた用量を守ってインスリンを打つことになります。

インスリンが効きすぎたり、あるいは寛解の直前になると、低血糖になることがあります。その場合は、コーヒーに使用するガムシロップや砂糖水などを適量飲ませることで低血糖を改善することができます。

食事療法と糖尿病に食べ物について

猫の糖尿病管理に最適なフードは、高タンパク質で低炭水化物、低~中程度の脂肪、そして中~高繊維を含むものです。

食物繊維の多い食事は血糖値の安定に役立ち、食後の血糖上昇を抑制します。

また、チュールやセミモイストフードは血糖値を上昇させる成分が含まれているため避けた方が良いでしょう。

嗜好性の高い食事を選ぶことが大切で、給餌は12時間隔で行い、新鮮な水をいつでも飲めるようにしておくことが重要です。

糖尿病で獣医師がオススメするフードについて

糖コントロール

糖尿病用のおすすめフードとして、ロイヤルカナンの糖コントロールがあります。

このフードでは、糖吸収速度の遅い大麦を炭水化物源として使用し、食後の血糖値の急激な上昇を抑える工夫がされています。

また、糖の吸収を緩やかにする食物繊維や犬の筋肉を健康に保つために、タンパク質が増強されています。

さらに、猫の自然な免疫力を維持しサポートするため、いくつかの抗酸化物質も含まれています。

このように、ロイヤルカナンの糖コントロールは、糖尿病の猫に適した栄養バランスが整ったキャットフードです。

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まとめ

糖尿病の初期症状には、多飲多尿、多食、体重減少などがあります。
末期にはケトアシドーシスと呼ばれる状態となり、命の危険性があります。また、後ろ足を引きずったり、踵を地面につけるといった特徴的な異常が見られることもあります。

糖尿病は早期発見が重要で、血糖値の検査や尿検査が診断の鍵となります。

治療法には、インスリン注射や食事療法があり、適切なケアを行うことで猫の生活の質が維持できます。

予防策として、適正な体重の維持や適度な運動が重要です。

愛猫の健康を守るために、糖尿病に関する知識を持ち、適切なケアを行いましょう。

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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