獣医師、ペット栄養管理士が犬と猫の病気と食事について徹底解説しています!

カテゴリー

サプリメント 犬の眼疾患 高齢犬の病気

【獣医師監修|白内障】犬の目が白い〜段階や初期症状•寿命・手術のリスクについて〜サプリメント・目薬についても獣医師が解説

老犬の過熟白内障の画像

愛犬の目が白く濁ってきたら、どのような対策が必要になるのでしょうか?

愛犬の目の健康を守るために、白内障の早期発見や適切なケアが重要です。

本記事をお読みいただくことで、白内障の初期症状や発症の段階、治療方法について獣医師の専門的な見解を得ることができます。

さらに、手術のリスクや適切なタイミング、白内障のケアに役立つサプリメントや目薬についても詳しく解説しています。

犬の眼について

犬の目が光を認識する仕組みは人間と同じです。

まず、光は目の表面にある透明な部分、角膜を通ります。角膜を通過した光は、目の中にある水晶体に到達します。水晶体は光を目の奥にある網膜に正確に伝える役割を担っています。

光が網膜に届くと、網膜の黄斑部にある感光細胞が光を受け取ります。光を受け取った感光細胞からの情報は、視神経を通じて脳に伝わります。

脳はその情報を解釈し、愛犬は光を認識して周囲の状況を把握できるようになります。このようにして、犬は目を使って光を感じ、周りの世界を見ることができます。

白内障について

白内障は水晶体が濁ってしまい、目の透明性が低下した状態です。

具体的には、水晶体に存在するクリスタリンタンパクとよばれるタンパク質が変化してしまうことで、白内障が起こり、水晶体が白く濁り、視力が低下してしまいます。

白内障の発生機序は明らかになっていませんが、水晶体の栄養、エネルギー代謝、タンパク代謝、浸透圧バランスなどの障害によるクリスタリンタンパクが変化してしまうと考えられています。

核硬化症と白内障の違い

同じく目が白くなってしまう核硬化症という疾患があります。

核硬化症は、老齢性変化により水晶体の中心部分に存在する核が白く混濁して見える状態のことをいいます。水晶体は生涯にわたり水晶体繊維を合成し、古い繊維を中心方向へ押しやるため、年齢とともに中心部の密度、硬度が増加していきます。

その結果、目が白内障と同様に白く濁ったように見えるのです。

核硬化症は6歳を超えた犬で多く認められますが、白内障との大きな違いは視力への影響はないということです。

白内障と核硬化症は見た目では区別がつきませんので、動物病院で適切な眼科検査を行い、診断する必要があります。そして核硬化症は、視力にも寿命にも大きな影響を与えませんので、基本的に治療する必要はありません。

白内障の原因と発症年齢について

若年白内障を発症した犬の画像

白内障は、先天白内障、若年白内障、加齢白内障の3つに分類されます。

先天白内障

先天白内障は1歳以下で発症し、先天性素因により水晶体が生来混濁していることが特徴です。

また、ほかの先天奇形(小水晶体、瞳孔膜遺残、小乳頭)を伴うことが多いです。

若年白内障

若年白内障は1歳から6歳までの間に発症し、外傷性や遺伝性であるほか、全身性疾患(糖尿病、代謝性疾患など)に伴い二次性に発生することがあります。

進行が速く、水晶体起因性ぶどう膜炎が続発しやすいため注意が必要です。

さらに、ぶどう膜炎から続発緑内障や網膜剥離が発生する可能性もあります。

加齢白内障

加齢白内障は、6歳以上で発症する白内障で、加齢に伴う水晶体変性や代謝性疾患、外傷、炎症(眼、全身)により発生します。

併発疾患・続発症としては、水晶体起因性ぶどう膜炎(さらに続発緑内障、網膜剥離)が続発しうることがあります。代謝性疾患の場合は両眼同時のことが多く、外傷性の場合は角膜障害、ぶどう膜炎、水晶体亜脱臼、網膜剥離を伴うことがあるため注意が必要です。

炎症性の場合はぶどう膜炎や続発緑内障を伴うことがあります。

白内障の初期症状

犬の白内障は、犬の目の水晶体が濁ることによって引き起こされ、視力障害や末期になると失明につながります。

犬の白内障の初期症状には、以下のようなものがあります。

  • 目の色が変化する
  • 瞳孔の大きさや形が変化する
  • 片目あるいは両目が白く濁っている
  • 薄暗い場所で見えにくそうにする
  • 目をこすったり、掻いたりする
  • 階段を登ったり、ジャンプすることを嫌がるようになる
  • 下を向いてよく歩くようになる
  • 物によくぶつかったり、方向感覚を失う

これらの症状に気づいたら、すぐに獣医師に相談し、適切な診断と治療計画を立てることが重要です。

白内障の進行段階

白内障の進行段階は、初発白内障、未熟白内障、成熟白内障、過熟白内障という流れで進行していきます。

初発白内障

初発白内障は、水晶体のごく一部が混濁し始めた状態で、スリットランプ検査で水晶体の後嚢や後極に混濁が認められます。

未熟白内障

未熟白内障は、水晶体の10~15%以内の混濁が見られる段階で、水晶体皮質や縫線(Y字部分)が混濁しています。

この段階では、正常な領域と混濁した領域が存在し、水晶体の膨化が始まります。

スリットランプ検査では、水晶体の後嚢および後皮質の一部に広範囲の混濁が認められます。

成熟白内障

成熟白内障では、水晶体全体が混濁し、膨化しています。光が透過しないため、スリットランプ検査では水晶体の断面構造が確認できません。

過熟白内障

過熟白内障は、水晶体の核と皮質が融解し、透明度がやや回復する段階です。

この時、水晶体全体が縮小し、融解した部分は黒く抜けて透明度が回復し、水晶体の厚さも元に戻ります。

白内障になりやすい犬種

白内障になりやすい犬種は以下の通りです。

  • トイプードル
  • 柴犬
  • チワワ
  • ダックスフンド
  • ヨークシャテリア
  • フレンチブルドッグ
  • ボストンテリア
  • ジャックテッセル
  • パピヨン

白内障の続発症

白内障の続発症には、水晶体起因性ぶどう膜炎(LIU)、続発緑内障、網膜剥離などがあります。

水晶体起因性ぶどう膜炎(LIU)

水晶体起因性ぶどう膜炎(LIU)は、過熟白内障で融解した水晶体物質が水晶体嚢外に流出し、それに対して抗原抗体反応が起こり、ぶどう膜炎が発生する症状です。

続発緑内障

続発緑内障は、水晶体の膨化、脱臼、水晶体起因性ぶどう膜炎などにより、隅角と呼ばれる部分に閉塞が起こる症状です。

網膜剥離

網膜剥離は、ぶどう膜炎が網膜脈絡膜に波及し、網膜剥離が起こる症状です。

これらの続発症は白内障の進行に伴って発生することがありますので、注意が必要です。

白内障の寿命への影響

基本的に白内障のみを引き起こしている場合は、寿命に大きな影響はありません。

白内障は確かに視力障害を引き起こしますが、嗅覚や聴覚といった他の感覚に頼ることで、視力の変化に適応することができ、生活の質を保ち続けることができます。

ただし、基礎疾患により白内障を引き起こしている場合、基礎疾患の治療を正しく行うことができていない場合には寿命が短くなってしまうことがあります。

たとえば、糖尿病は白内障の原因となる基礎疾患ですが、糖尿病の犬は75%の確率で白内障になり、治療せずに放置すると6~12ヵ月以内に視力を失ってしまいます。

また当尿秒を放っておくとケトアシドーシスという危険な状態に陥り、命に関わります。

そのため、白内障を引き起こしている基礎疾患がないかどうかを診断で見極めることが重要なのです。

白内障の治療法〜手術について〜

白内障の治療法〜手術について〜

成熟〜過熟白内障の治療法として手術が行われます。(初発、未熟白内障は手術適応ではありません)

白内障手術は、白く混濁した水晶体の核・皮質を超音波で乳化吸引し、人工レンズに置き換える手術です。混濁した水晶体を人工レンズに置き換えることで視覚の回復が望めます。

注意点としては、若年白内障では好発犬種が多数報告されており、進行が非常に早いため、様子を見ていると合併症が発生し、視覚回復が望めない状態になる場合があります。

また高齢の場合には、基礎疾患として糖尿病などの全身性疾患がないかどうかを確認することが重要です。

手術後の注意点

白内障は手術後の注意点がいくつかあります。

まず、手術後は入院が必要です。症状や施設によって異なりますが、おおよそ5~7日間の入院が予想されます。また、長期間のエリザベスカラーの装着が必要となり、通常2週間以上が必要です。

さらに、術後の合併症により視力が無くなってしまう場合があることを理解しておく必要があります。具体的にはぶどう膜炎や緑内障などの合併症が原因で視覚が失われることがあります。

最後に、飼い主様自身が退院後に自宅で術後管理を行うことになります。例えば、1日4回以上の点眼や投薬など愛犬をケアする必要があります。

これらの注意点を踏まえて、愛犬の白内障手術後のケアを適切に行いましょう。

白内障対策に役立つサプリメント

白内障の進行を遅らせることを目的とした様々な犬用のサプリメントが販売されています。

これらのサプリメントには、
セレン、ビタミンE、 ルテイン、アスコルビン酸(ビタミンC)などの抗酸化物質が含まれています。

以下にオススメのサプリメントをご紹介します。

アイショットクリア

アイショットクリアは、ビタミンEの約1000倍といわれる強力な抗酸化作用をもつアスタキサンチンと、アントシアニンを多く 含むブルーベリーを主成分とする犬および猫用抗酸化サプリメントです。

アスタキサンチンは、自然界に存在する天然の色素で、赤色を呈するカロチノイドの一種です。 サケやイクラ、タイ、エビなどの赤みがアスタキサンチンです。 ビタミンEと並ぶ優れた抗酸化成分で「史上最強のカロチノイド」と言われています。 アスタキサンチンは強い抗酸化作用を持ち、さらに血液脳関門を通過できる数少ない物質です。 そのため活性酸素がたまりやすい脳や眼まで成分が届きます。

ブルーベリーは目の健康によいといわれている色素の「アントシアニン」(ポリフェノールの一種)が多く含まれています。 アイショットクリアには、アントシアニンの含有量が多いビルベリーが使用されています。

楽天でアイショットクリアを最安値で購入する

パナキュアルテインM

パナキュアルテインは、マリーゴールドから抽出したルテインやゼアキサンチン、トマトから抽出したリコピンなどのカロチノイドを含有するワンちゃん用のサプリメントです。

カロチノイドには強い抗酸化作用があり、大切なワンちゃんの眼の健康を守ります。

楽天でパナキュアを最安値で購入する

Duo One Eye C

Duo One Eye Cは、愛犬や愛猫の眼(水晶体)の健康維持を考えたプロアントシアニジンとクルクミノイド含有のサプリメントです。

プロアントシアニジンは、水溶性で強力な抗酸化作用を持つポリフェノールで、白内障の予防作用、デトックス作用(便臭軽減作用)等が報告されています。ヨーロッパでは、血管の若さを保つ医薬品として承認されています。

クルクミノイドはターメリック(ウコン)に含まれる黄色の色素で、最近の研究では白内障進行予防効果に関する報告があります。

その他にもアスタキサンチン、ビタミンE、ビール酵母なども含有されています。

楽天でDuoOneを最安値で購入する

白内障で使用する目薬について

現在、白内障の治療に一般的に使用される点眼薬は、ピレノキシン製剤のライトクリーンなどがあります。

これらの点眼薬は、白内障を完全に治すのではなく、症状の進行を抑制する効果が主となります。 

特に加齢性の初期段階の白内障に対しては、点眼薬が処方されることが多いです。

しかしながら、犬の白内障に対しても、目薬は一定の効果がありますが、症状を完全に緩和させたり回復させたりすることはできません。

症状がまだ進行していない場合は、目薬の使用が選択肢として考慮されますが、白内障を根本的に治療するためには、外科的治療が必要となることが一般的です。

楽天でライトクリーンを確認する

白内障の予防法

ほとんどの場合、白内障を予防することは難しいですが、以下のような対策を行い、早期発見することが重要です。

まず、愛犬の目を定期的にチェックしてください。その際、目に濁りが見られた場合や以前よりも視力が低下していると感じた場合には、動物病院へ行きましょう。

また、白内障は遺伝することが多いので、可能であれば愛犬の両親の病歴をあらかじめ調べておいた方が良いでしょう。

そして既に基礎疾患として、糖尿病などの白内障を引き起こす可能性のある疾患がある場合は、特に注意が必要です。

【関連記事】

✔︎ 犬の糖尿病について以下の記事で総まとめしています。

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

-サプリメント, 犬の眼疾患, 高齢犬の病気