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【獣医師監修】犬の食物アレルギーの症状と原因|痒み・下痢・嘔吐の見分け方

犬の食物アレルギーは、食事中のタンパク質に対して免疫系が過剰反応することで起こります。皮膚のかゆみ・下痢・嘔吐のいずれかが続く場合、食物アレルギーを疑う必要があります。本記事では症状の見分け方から原因アレルゲン、診断・治療の流れまでを獣医師監修のもとわかりやすく解説します。

犬の食物アレルギーとは何か

食物アレルギーとは、食事に含まれる特定のタンパク質に対して免疫系が誤って「敵」とみなし、炎症反応を引き起こす状態です。犬の皮膚疾患の中では珍しくない疾患であり、アトピー性皮膚炎に次いで多い皮膚の過敏反応とされています。

重要な特徴として、季節を問わず年間を通じて症状が続く点があります。花粉や環境アレルゲンによる皮膚炎は季節性を示すことが多いのに対し、食物アレルギーは季節に関係なく症状が現れます。これが診断の手がかりのひとつになります。

発症年齢に制限はなく、生後6ヶ月の子犬から10歳以上のシニア犬まで、どの年齢でも発症する可能性があります。ただし、研究によると症例の約60〜70%が3歳未満での発症とされており、若い年齢での発症が比較的多い傾向があります。

主な症状:皮膚症状と消化器症状

皮膚症状(最も多い)

食物アレルギーを持つ犬の大多数は、まず皮膚症状を示します。主な症状は以下の通りです。

  • 強いかゆみ(引っかく・噛む・こする行動)
  • 耳介の赤み・腫れ(耳炎を繰り返す場合は要注意)
  • 目の周り・口の周りの赤み
  • 脇の下・内股・足先のかゆみと赤み
  • 蕁麻疹・湿疹・皮膚の肥厚
  • 慢性的な脱毛

発症部位として特徴的なのは、耳・顔周り・脇の下・内股・足先の5か所です。これらの部位に年間を通じてかゆみが続く場合、食物アレルギーの可能性を強く疑う必要があります。

消化器症状

皮膚症状のみならず、約10〜15%の症例では消化器症状が同時に現れます。

  • 慢性的な下痢または軟便
  • 頻繁な嘔吐
  • 排便回数の増加(1日3回以上)
  • 体重減少
  • 食欲の変動

消化器症状のみで皮膚症状がない場合でも食物アレルギーの可能性はあります。特に嘔吐・下痢が慢性的に繰り返される場合は、獣医師による診察が必要です。

原因となるアレルゲン上位

犬の食物アレルギーの原因として特定されたアレルゲンの内訳を、複数の研究をまとめると以下のような傾向が見られます。

アレルゲン割合(概算)
牛肉約34%
乳製品約17%
鶏肉約15%
小麦約13%
大豆約6%
羊肉約5%
トウモロコシ約4%

注目すべき点は、牛肉・乳製品・鶏肉という一般的なドッグフードの主原料が上位を占めることです。長期間同じフードを与えていると感作(アレルギーの素地が形成されること)が起こりやすくなるとも言われています。

食物アレルギーと他の皮膚疾患の見分け方

かゆみの原因は食物アレルギーだけではありません。アトピー性皮膚炎・ノミアレルギー・疥癬(かいせん)など複数の疾患が同様の症状を示します。以下のポイントが鑑別の参考になります。

特徴食物アレルギーアトピー性皮膚炎ノミアレルギー
季節性なし(年間)あり(悪化季節あり)夏〜秋に多い
発症年齢制限なし1〜3歳が多い制限なし
消化器症状あり得るなしなし
食事変更の効果ありなしなし

食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は同時に存在することも多く、その鑑別は除去食試験なしでは困難です。詳細は犬のアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの違いをご参照ください。

診断の流れ:除去食試験が基本

食物アレルギーの診断のゴールドスタンダードは除去食試験です。血液検査(IgE検査)も行われますが、食物アレルギーに対する感度・特異度は低く、陰性でも食物アレルギーを否定できません。

除去食試験の基本的な流れは以下の通りです。

  1. これまで食べたことのない「新奇タンパク質」フードまたは加水分解タンパクフードを選定
  2. 8週間、その食事のみを与える(おやつ・サプリ・チュアブル錠も禁止)
  3. 症状が50〜100%改善すれば食物アレルギーと推定
  4. 元の食事を再開して再燃(再チャレンジ試験)すれば確定診断

詳しい除去食試験のプロトコルについては犬の除去食・アレルギー対応フードの選び方もあわせてご覧ください。

治療と食事管理の基本

食物アレルギーの治療の基本は原因アレルゲンを含まない食事への切り替えです。薬物療法(ステロイド・アポキルなど)は症状コントロールに有効ですが、原因を取り除かない限り根本的な改善には至りません。

アレルゲンが特定できたら、そのタンパク質を含まないフードに完全移行します。市販のアレルギー対応フードを選ぶ際は、加水分解タンパクフードまたは新奇タンパクフードが選択肢になります。

アレルギー対応フードの詳細な選び方はアレルギー対応ドッグフードランキングをご参照ください。

発症しやすい犬種

以下の犬種は食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を発症しやすいとされています。

  • ラブラドール・レトリーバー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • コッカースパニエル
  • ジャーマンシェパード
  • シーズー
  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • 柴犬

これらの犬種を飼育している場合は、特に皮膚の状態や消化器症状に注意が必要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 食物アレルギーと食物不耐性は同じですか?

いいえ、異なります。食物アレルギーは免疫系が関与する反応であり、食物不耐性は免疫系とは無関係に消化酵素の不足などで起こる反応です。乳糖不耐症などが食物不耐性の代表例で、食物アレルギーとは区別されます。ただし、症状が重なる場合もあり、鑑別には除去食試験が有効です。

Q2. 子犬の頃から同じフードを与え続けると食物アレルギーになりやすいですか?

一般的に、同じタンパク質を長期間繰り返し摂取することでアレルギーへの感作が起こりやすくなると考えられています。ただし、これがすべての犬に当てはまるわけではなく、遺伝的素因も大きく影響します。心配な場合は獣医師に相談の上、フードのローテーションについてアドバイスを受けることをお勧めします。

Q3. 食物アレルギーは完治しますか?

原因アレルゲンを食事から除去することで症状が消失または大幅に改善するケースは多くあります。ただし、アレルギー体質自体が根本的に解消されるわけではないため、原因食材を再び与えると再燃する可能性があります。長期的には「アレルゲンを避け続けること」が管理の基本になります。

Q4. 市販のアレルギー対応フードだけで食物アレルギーは改善しますか?

市販のアレルギー対応フードでも症状が改善するケースはありますが、製造工程での微量混入(コンタミネーション)の可能性があるため、重度の場合は動物病院での療法食処方が推奨されます。症状が続く場合は自己判断せず、必ず獣医師の診察を受けてください。

Q. 食物アレルギーと食物不耐性は同じですか?

異なります。食物アレルギーは免疫系が関与する反応であり、食物不耐性は免疫系とは無関係に消化酵素の不足などで起こる反応です。鑑別には除去食試験が有効です。

Q. 子犬の頃から同じフードを与え続けると食物アレルギーになりやすいですか?

同じタンパク質を長期間繰り返し摂取することでアレルギーへの感作が起こりやすくなると考えられています。遺伝的素因も影響するため、心配な場合は獣医師に相談してください。

Q. 食物アレルギーは完治しますか?

原因アレルゲンを食事から除去することで症状が消失または大幅に改善するケースは多くあります。ただし、アレルギー体質自体が根本的に解消されるわけではないため、長期的には原因食材を避け続けることが管理の基本になります。

Q. 市販のアレルギー対応フードだけで食物アレルギーは改善しますか?

市販のアレルギー対応フードでも症状が改善するケースはありますが、製造工程での微量混入の可能性があるため、重度の場合は動物病院での療法食処方が推奨されます。

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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