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犬の泌尿器疾患

【獣医師解説】犬の泌尿器トラブル|症状・原因・検査・治療・費用・予防策まで

愛犬が何度もトイレに行く、おしっこの色がおかしい、漏らしてしまう――こうした泌尿器のサインに気づいたとき、何が起きているのかをきちんと知ることが重要です。
犬の泌尿器トラブルは膀胱炎・尿路結石・腎臓病など多岐にわたり、早期発見・早期対応が予後を左右します。
この記事では症状の種類から原因・検査・治療法・費用・予防策まで、獣医師がわかりやすくまとめました。

犬の泌尿器とは?構造と役割を知ろう

💡 ポイント

犬の泌尿器系は腎臓・尿管・膀胱・尿道で構成されています。腎臓は血液をろ過して老廃物を取り除き、尿として排出する最重要臓器です。泌尿器の健康は全身の健康と直結しており、尿のトラブルは腎臓病・感染症・結石・腫瘍など様々な疾患のサインである可能性があります。日頃から排尿の状態を観察することが早期発見につながります。

犬の泌尿器系は、体内の老廃物を排出し、水分バランスを保つために欠かせない臓器群です。
主に「腎臓・尿管・膀胱・尿道」の4つで構成されており、それぞれが連携して機能しています。

腎臓(じんぞう)

腎臓は左右に1つずつある小さな豆形の臓器で、血液をろ過して尿を作ります。
老廃物の排泄だけでなく、血圧の調整やホルモンの産生、カルシウム・リンのバランス管理など、多岐にわたる役割を担っています。
腎臓の機能が75%以上失われてから初めて症状が現れるため、「沈黙の臓器」とも呼ばれます。

ポイント
腎臓は血液をろ過して尿を作るだけでなく、血圧調整・ホルモン産生・カルシウム管理など多様な役割を担っています。機能が75%以上失われてから症状が現れる「沈黙の臓器」だからこそ、定期的な検査が重要です。

尿管・膀胱・尿道

腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に蓄えられます。
膀胱は伸縮性のある袋状の臓器で、ある程度尿が溜まると排尿の信号が脳に送られます。
尿道は膀胱から体外へ尿を排出する通路であり、オスは長く細い構造のため尿道結石が詰まりやすく、メスは短くて太いため細菌が侵入しやすい特徴があります。

犬の主な泌尿器疾患

💡 ポイント

犬の泌尿器疾患で最も多いのは①尿路感染症(UTI)②膀胱炎③尿石症(ストルバイト・シュウ酸カルシウム)④慢性腎臓病(CKD)⑤前立腺疾患(未去勢の雄犬)です。疾患によって治療法・食事管理が大きく異なるため、症状だけで自己判断せず、必ず獣医師の診断を受けることが重要です。

泌尿器疾患は犬にとって非常に身近な病気です。
特に以下の4つは発症頻度が高く、早期発見・早期治療が重要です。

膀胱炎(ぼうこうえん)

細菌・ウイルス・結石などが原因で膀胱に炎症が起こる病気です。
メスに多く、頻尿・血尿・排尿痛が主な症状として現れます。
抗生物質による治療が基本ですが、再発を繰り返すケースも少なくありません。
詳しくは犬の膀胱炎の症状と治療をご覧ください。

尿石症(にょうせきしょう)

尿路にミネラルが結晶化した「尿石(結石)」が形成される病気です。
ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)とシュウ酸カルシウムが2大結石で、ストルバイトは療法食で溶かすことができます。
尿道に結石が詰まると尿閉(尿が全く出ない状態)を引き起こし、命に関わります。

前立腺炎・前立腺肥大

去勢していないオス犬に多い疾患で、男性ホルモンの影響で前立腺が肥大・炎症します。
排尿困難・血尿・排便困難などの症状が現れます。
去勢手術が最も効果的な予防・治療法です。

慢性腎臓病(CKD)

腎臓の機能が徐々に低下していく進行性の病気で、中高齢犬に多く見られます。
多飲多尿・食欲低下・体重減少・嘔吐などが主な症状です。
早期発見のためには、年1〜2回の定期的な血液検査・尿検査が不可欠です。

このセクションのまとめ
・膀胱炎:メスに多く、頻尿・血尿・排尿痛が主症状。抗生物質で治療
・尿石症:ストルバイトは療法食で溶解可能。シュウ酸カルシウムは手術が必要
・前立腺炎:去勢していないオス犬に多い。去勢手術が最も有効な予防法
・慢性腎臓病:7歳以上の犬は年2回の検査を推奨

症状チェックリスト:こんなサインに気をつけて

⚠️ 注意

以下の症状が見られたらすぐに動物病院を受診してください:①何度もトイレに行くが尿が出ない(尿閉塞の可能性・特に雄犬は緊急)②血尿が出た③尿に強い臭いや濁りがある④急激に水を大量に飲むようになった⑤尿が全く出ない。特に①と⑤は数時間以内に生命の危険につながる緊急事態です。

日常生活の中で、以下のような症状が見られたら泌尿器トラブルを疑いましょう。

排尿に関するサイン

頻尿:1日に何度もトイレに行くが、少量しか出ない。
血尿:尿が赤みを帯びている、またはピンク色になっている。
排尿痛:排尿時に鳴いたり、うずくまったりする。
不適切排尿:いつもとは違う場所で粗相をする。
陰部なめ:排尿後に陰部を頻繁になめる行動が増える。

全身症状

多飲多尿:水をいつもより多く飲み、尿量も増える(腎臓病・糖尿病の疑い)。
食欲低下・元気消失:泌尿器の痛みや腎機能低下により体調が悪化する。
嘔吐・口臭:尿毒症が進行すると、アンモニア臭のある口臭が現れることがある。

緊急サイン:今すぐ受診が必要

以下の状態は生命に関わるため、24時間以内に動物病院を受診してください。
尿が全く出ない(尿閉):尿道結石や腫瘍による閉塞の可能性があります。
お腹が張って苦しそう:膀胱が破裂する危険があります。
ぐったりして立てない:腎不全・敗血症など重篤な状態が疑われます。
特にオス犬は尿道が細く閉塞しやすいため、数時間尿が出ない場合は緊急です。

⚠️ 注意
尿が全く出ない・お腹が張る・ぐったりして立てない場合は、命に関わる緊急事態です。特にオス犬は尿道が細く閉塞しやすいため、数時間尿が出ない場合はすぐに動物病院に連れて行ってください。

かかりやすい年齢・性別・犬種

💡 ポイント

泌尿器疾患のリスクが高い犬は①未去勢の雄犬(前立腺肥大・前立腺炎)②雌犬(尿路が短く細菌が入りやすい・膀胱炎リスク高)③シニア犬(腎機能低下・ホルモン変化)④ダルメシアン・イングリッシュブルドッグ・ミニチュアシュナウザー(遺伝的な尿石リスク)です。これらに該当する犬は定期的な尿検査を特にお勧めします。

泌尿器疾患にはリスクが高い犬のグループが存在します。
愛犬が当てはまる場合は、より注意深く観察しましょう。

性別によるリスク

メス犬は尿道が短いため細菌が侵入しやすく、膀胱炎を繰り返しやすい傾向があります。
去勢していないオス犬は前立腺疾患のリスクが高く、中高齢になると前立腺肥大が進行します。
またオス犬全般は尿道が細く長いため、尿石が詰まる尿道閉塞のリスクが高いです。

年齢によるリスク

若い犬(1〜5歳)では細菌性膀胱炎やストルバイト結石が多く見られます。
7歳以上のシニア犬では、慢性腎臓病・前立腺疾患・腫瘍性疾患のリスクが高まります。
10歳を超えたら、半年に1度のペースで血液検査と尿検査を受けることが推奨されます。

犬種によるリスク

以下の犬種は泌尿器疾患にかかりやすいとされています。
ダルメシアン:プリン体の代謝異常により尿酸塩結石ができやすい。
ミニチュアシュナウザー:シュウ酸カルシウム結石・ストルバイト結石の両方に注意が必要。
ビーグル・コッカースパニエル:膀胱炎・尿石症の発症率が高い。
ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー:膀胱腫瘍(移行上皮癌)のリスクが高い。

動物病院での検査と診断

💡 ポイント

泌尿器疾患の診断には尿検査が最も重要です。自宅で朝一番の尿(起床後1時間以内が理想)を清潔な容器に採取して持参すると、より正確な検査ができます。尿のpH・比重・タンパク質・血液・細菌・結晶の有無を調べることで、疾患の種類と重症度が把握できます。血液検査と合わせることで腎機能の状態も評価できます。

泌尿器疾患の診断には、以下の検査が一般的に行われます。

尿検査

尿のpH・比重・タンパク・ブドウ糖・潜血・沈渣(細菌・結晶・細胞)を確認します。
尿検査は最も基本的な検査で、多くの泌尿器疾患の手がかりが得られます。
自宅で採取した尿を持参する場合は、採取から2時間以内が目安です。

血液検査

BUN(尿素窒素)・クレアチニン・SDMAなどの腎機能マーカーを確認します。
SDMAは腎機能が40%低下した段階で上昇するため、クレアチニンより早期発見に有効です。

ポイント
SDMAは腎機能が40%低下した段階で上昇するため、従来のクレアチニン検査より早期に腎臓病を発見できます。年1回の定期検査にSDMA測定を組み合わせることをおすすめします。

画像検査(エコー・レントゲン)

超音波検査で腎臓・膀胱の形状や結石の有無を確認します。
レントゲンはシュウ酸カルシウム結石(白く写る)の検出に特に有効です。
ストルバイト結石はレントゲンに写りにくいため、エコーが主な検査法となります。

泌尿器疾患の治療費の目安

💡 ポイント

泌尿器疾患の治療費は疾患の種類と重症度によって大きく異なります。膀胱炎の軽症例では5,000〜20,000円程度、尿石症の外科手術では100,000〜300,000円以上、慢性腎臓病の長期管理では月10,000〜50,000円程度が目安です。ペット保険への加入(若い頃からの加入が有利)や緊急費用の積み立てを検討しておくと安心です。

泌尿器疾患の治療費は病状・治療法によって大きく異なります。
あくまで参考値ですが、以下の目安を知っておくと安心です。

尿検査のみ:1,000〜3,000円程度
細菌性膀胱炎(内科治療):1〜3万円(抗生物質2〜4週間分含む)
ストルバイト結石(療法食で溶解):2〜6万円(療法食代を含む)
尿道閉塞(カテーテル処置):3〜8万円
膀胱結石摘出手術:10〜25万円
慢性腎臓病(長期管理):月1〜3万円(定期検査・薬代含む)

ペット保険に加入していれば、手術費用の50〜70%が補償される場合があります。
泌尿器疾患は再発・慢性化しやすいため、保険加入を検討しておくと安心です。

このセクションのまとめ
・尿検査のみ:1,000〜3,000円程度
・細菌性膀胱炎(内科治療):1〜3万円
・ストルバイト結石(療法食):2〜6万円
・尿道閉塞(カテーテル):3〜8万円
・膀胱結石摘出手術:10〜25万円
・慢性腎臓病(長期管理):月1〜3万円

日常でできる泌尿器疾患の予防策

⚠️ 注意

泌尿器疾患の最大の予防は「十分な水分摂取」です。1日に体重1kgあたり約50〜60mlの水分摂取が目安です。ウェットフードの活用・食事へのぬるま湯追加・循環式給水器の設置が効果的です。また長時間のトイレ我慢は膀胱炎・結石のリスクを高めます。外出時間が長い場合は、ペットシーツの活用やお散歩の頻度増加を検討しましょう。

泌尿器疾患の多くは、日常の生活習慣を見直すことで予防・再発防止が期待できます。

1. 十分な水分摂取を促す

水分摂取量が増えると尿量が増え、細菌や結晶が膀胱内に溜まりにくくなります。
水皿の数を増やす、ウェットフードを取り入れる、流水タイプの給水器を使うなど工夫しましょう。
1日の理想的な飲水量は体重1kgあたり約50〜60mlが目安です。

ポイント
1日の理想的な飲水量は体重1kgあたり約50〜60mlが目安です。水皿を複数設置したり、流水タイプの給水器を活用することで飲水量を増やすことができます。

2. 食事管理(療法食・ミネラルバランス)

尿石症の犬にはマグネシウム・リン・カルシウムが制限された療法食が有効です。
市販のフードの中にはミネラル含量が高いものもあるため、成分表示を確認する習慣をつけましょう。
手作り食を与える場合は獣医師への相談が必須です。

3. トイレ環境を整える

排尿を我慢させると膀胱炎のリスクが高まります。
室内犬には清潔なトイレを複数設置し、いつでも排尿できる環境を維持しましょう。
散歩での排尿機会を1日2〜3回確保することも大切です。

4. 定期健診と尿検査

症状が出る前に定期的な検査を受けることが早期発見の鍵です。
成犬は年1回、シニア犬(7歳以上)は年2回の尿検査と血液検査を受けましょう。

5. 去勢・避妊手術の検討

去勢手術はオス犬の前立腺疾患リスクを大幅に低減します。
メス犬の場合も、避妊手術後はホルモンバランスが変わり、尿漏れ(ホルモン反応性尿失禁)が起きる場合があるため、獣医師と相談しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 犬が頻繁にトイレに行くが尿が少ししか出ません。すぐ病院に行くべきですか?

A. はい、できるだけ早めに受診することをおすすめします。
頻尿で少量しか出ない状態は、膀胱炎・尿石症・尿道炎などのサインです。
特にまったく尿が出ない場合は緊急事態であり、数時間以内に動物病院へ連れて行ってください。

⚠️ 注意
頻尿で少量しか出ない状態が続く場合、特にまったく尿が出ない場合は数時間以内に動物病院へ。放置すると腎臓や膀胱に深刻なダメージを与える危険があります。

Q. 犬の尿が赤いのですが、どんな病気が考えられますか?

A. 血尿の原因としては、膀胱炎・尿石症・前立腺疾患・膀胱腫瘍・腎臓病などが考えられます。
一時的な血尿でも、繰り返す場合や他の症状を伴う場合は早めに受診しましょう。
尿を採取してから2時間以内に動物病院に持参すると検査がスムーズです。

Q. シニア犬の多飲多尿は老化のせいですか?

A. 老化だけで多飲多尿になることは少なく、慢性腎臓病・糖尿病・クッシング症候群などの可能性があります。
「歳だから仕方ない」と放置せず、血液検査・尿検査で原因を調べることを強くおすすめします。
早期に発見できれば、食事管理や投薬で進行を遅らせることができます。

Q. 泌尿器疾患の予防にはどんなフードが良いですか?

A. 総合栄養食として適切なミネラルバランスに調整されたフードを選ぶことが基本です。
尿石症の既往がある犬には、獣医師が処方する療法食(ロイヤルカナン・ヒルズなど)が最も確実です。
水分補給を促すためにウェットフードや水分量の多いフードを取り入れることも有効です。

獣医師解説

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  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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