愛犬がストルバイト結石と診断されたとき、真っ先に気になるのが「食事はどうすればいいの?」という疑問ではないでしょうか。
ストルバイト結石は適切な療法食によって溶かすことができる、数少ない結石のひとつです。
この記事では獣医師がおすすめする療法食4選と、療法食選びのポイント・注意点をわかりやすく解説します。
ストルバイト結石とは?犬に多い尿石の基本知識
💡 ポイント
ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石は犬の尿石症で最も多いタイプの一つです。尿がアルカリ性(pH6.5以上)になりやすい環境で形成されます。特に尿路感染症(ウレアーゼ産生菌)が引き金になることが多く、細菌性膀胱炎を繰り返す犬で注意が必要です。雌犬・中高齢犬に多く見られる傾向があります。
ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)は、犬の尿路結石の中で最も多く見られるタイプの一つです。
犬の尿石症全体の約40〜50%を占めており、特にメス犬・若〜中齢犬に多い傾向があります。
ストルバイトはリン・アンモニウム・マグネシウムの3つのミネラルが尿中で結合して結晶化したものです。
ストルバイト結石ができる主な原因
ストルバイト結石の形成には主に以下の要因が関わっています。
・細菌性尿路感染症:細菌(特にウレアーゼ産生菌)が尿素をアンモニアに分解し、尿pHをアルカリ性に傾けることで結石が形成されやすくなります。
犬のストルバイト結石の約85%は細菌感染が背景にあります。
・食事中のミネラル過剰:マグネシウム・リン・タンパク質が多い食事は結石形成のリスクを高めます。
・水分摂取不足:尿が濃縮されるとミネラル濃度が高まり、結晶化しやすくなります。
・尿の停滞:頻繁に排尿できない環境では膀胱内でミネラルが析出しやすくなります。
ストルバイトは「溶かせる唯一の結石」
犬の尿路結石の中で、療法食によって溶かすことができるのはストルバイト結石だけです。
もう一つの主要結石であるシュウ酸カルシウムは食事療法では溶けないため、手術での除去が必要です。
ストルバイトであれば、適切な療法食と抗生物質(感染がある場合)で多くのケースが内科的に治療できます。
この点がストルバイト結石を早期発見・適切対処することの重要性を高めています。
ストルバイト結石は適切な療法食と抗生物質(感染がある場合)で内科的に治療できる、数少ない結石のひとつです。シュウ酸カルシウムは手術が必要なため、結石の種類を正確に診断することが重要です。
療法食で結石が溶ける仕組み
💡 ポイント
ストルバイト療法食は①尿pHを酸性(6.0〜6.5)に保つ成分②マグネシウム・リン・タンパク質の適切な制限③水分摂取促進(低ナトリウムでウェットフードが多い)の3つの仕組みで結石の溶解を促進します。通常4〜12週間の療法食で結石が溶解しますが、途中でやめると効果が出ないため、必ず獣医師の指示通りに継続することが重要です。
ストルバイト療法食が結石を溶かすメカニズムには2つの主要な作用があります。
1. 尿pHの低下(酸性化)
ストルバイト結石はアルカリ性の尿(pH 7.0以上)で形成・成長しやすく、酸性の尿(pH 6.0〜6.5)では溶解します。
ストルバイト療法食は尿酸化物質(DL-メチオニン・塩化アンモニウムなど)を配合し、尿を弱酸性に保つよう設計されています。
目標尿pHは5.9〜6.3程度で、この範囲に維持することで結石の溶解を促進します。
2. マグネシウム・リンの制限
療法食はストルバイトの構成成分であるマグネシウムとリンの含量を一般フードより大幅に制限しています。
マグネシウム含量は乾燥重量比で0.02〜0.07%程度が目安で、一般フードの1/3〜1/5以下に抑えられています。
さらに適切なタンパク質量・塩分量の設定により尿量を増やし、ミネラルを薄める効果もあります。
3. 水分摂取の促進
ウェットタイプの療法食は水分含量が約78〜80%と高く、食事と一緒に大量の水分が摂取できます。
尿量が増えることでミネラル濃度が下がり、結晶化・結石形成が抑制されます。
ドライタイプの療法食も有効ですが、別途十分な飲水が必要です。
・尿pHを5.9〜6.3(弱酸性)に保つことで結石を溶解する
・マグネシウム・リンを一般フードの1/3〜1/5以下に制限
・水分摂取を促進して尿中のミネラル濃度を薄める
・ウェットタイプは水分含量78〜80%で特に効果的
おすすめ療法食4選
💡 ポイント
ストルバイト療法食は必ず獣医師の処方・推薦に基づいて選択してください。市販の「尿ケア」フードと処方療法食は成分管理の精密さが異なります。療法食の効果を最大化するために、療法食以外の食べ物(おやつ・人間の食べ物)を与えないことが重要です。複数の犬を飼っている場合は、他の犬の食事を食べないよう管理しましょう。
獣医師が処方するストルバイト対応療法食の中から、特に実績・信頼性の高い4製品を紹介します。
いずれも動物病院での処方が必要な製品です。
1. ロイヤルカナン ユリナリーS/O
世界でも最も処方実績の多いストルバイト・シュウ酸カルシウム両対応の療法食です。
尿相対密度を下げる「尿希釈効果」を追求した独自の処方が特徴で、溶解期・予防期の両方に使用できます。
ドライ(小粒・中粒・大粒)・ウェット(パウチ・缶)と豊富なラインナップがあります。
目標尿pH:5.9〜6.3。溶解期間の目安は1〜3か月(結石のサイズによる)です。
犬の嗜好性が高く食いつきが良い点も評価されています。
2. ヒルズ プリスクリプション・ダイエット c/d マルチケア
ストルバイト・シュウ酸カルシウム・尿酸塩・シスチンの4種類の結石を予防できる多目的尿石症療法食です。
特にストレスが関与する無菌性膀胱炎(FIC様症状)にも対応したc/dストレスバージョンもあります。
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)が配合されており、膀胱粘膜の炎症を抑える作用も期待できます。
ドライ・ウェットの両形態があり、ウェットは水分補給の面で特に効果的です。
目標尿pH:5.9〜6.3。結石の溶解には通常4〜12週間かかります。
3. ピュリナ プロプラン ベテリナリーダイエット UR Urinary St/Ox
ネスレ ピュリナが開発したストルバイト・シュウ酸カルシウム対応の処方食です。
高品質なチキンを主原料とし、尿酸化作用と水分摂取促進を両立した処方が特徴です。
ウェット缶のラインナップが豊富で、食欲が落ちた犬や水分摂取量を増やしたい場合に特に有用です。
タンパク質含量がやや高めで筋肉量を維持しやすいため、成長期を過ぎた活動的な犬に向いています。
目標尿pH:5.5〜6.5。溶解期間の目安は4〜8週間程度です。
4. ロイヤルカナン ユリナリーS/O ライト(肥満傾向の犬向け)
ストルバイト療法食の中でも、肥満傾向・体重管理が必要な犬に適した低カロリー版です。
標準のユリナリーS/Oと同等の尿路保護効果を持ちながら、カロリーを約20%カットした処方です。
避妊・去勢犬や運動量が少ない室内犬に多い「療法食を与えると太ってしまう」問題を解決します。
また、ロイヤルカナン ユリナリーS/O アジング7+(7歳以上向け)はシニア犬の腎機能にも配慮した処方です。
目標尿pH:5.9〜6.3。溶解期間はサイズにより異なりますが1〜3か月が目安です。
どの療法食が適しているかは犬の年齢・体重・他の疾患の有無によって異なります。必ず動物病院で処方してもらい、定期的なエコー検査で溶解の進行を確認しながら使用しましょう。
療法食を与える期間と注意点
⚠️ 注意
療法食を自己判断で中断しないでください。結石が溶解したと感じても、画像検査で確認するまでは療法食を継続する必要があります。また療法食への切り替えは7〜10日かけて段階的に行ってください(急な変更は消化器症状を引き起こします)。療法食開始後4〜6週間で再検査を受け、効果を確認することが推奨されます。
療法食を正しく使うためには、期間・方法・注意点をしっかり理解しておく必要があります。
溶解期(結石を溶かす期間)
療法食を開始してから1〜3か月でストルバイト結石が溶解するケースが多いです。
溶解の確認は定期的なエコー検査(1か月に1回が目安)で行います。
「症状が消えた=結石が溶けた」ではないため、自己判断で療法食をやめないことが重要です。
維持期(再発予防期間)
結石が消えた後も、再発予防のために療法食を継続することが推奨されます。
再発リスクが高い犬(感染性・多発性の既往あり)では生涯にわたる療法食継続が必要な場合があります。
維持期には予防用の「ユリナリーS/O マタービティ」や低塩分の「ユリナリーS/O LP」への切り替えも検討できます。
療法食を与える際の5つの注意点
・おやつ・人間の食べ物を与えない:ミネラルバランスが乱れ、療法食の効果が低下します。
・急な切り替えはしない:1〜2週間かけて徐々に旧フードから切り替え、消化器への負担を減らします。
・水を十分に飲ませる:療法食と併用して給水量を確保することが効果を高めます。
・複数頭飼いの場合は別々に給餌:他の犬が療法食を食べてしまわないよう注意が必要です。
・腎臓病を併発している犬には適さない場合がある:ストルバイト療法食はリン・タンパク質が腎臓病用より高めのため、腎機能に問題がある犬は必ず獣医師に相談してください。
ストルバイト療法食はリン・タンパク質が腎臓病用より高めに設定されています。慢性腎臓病を併発している犬には適さない場合があるため、必ず獣医師の指示のもとで使用してください。
食後の尿pH測定法
💡 ポイント
自宅での尿pH測定には市販のpH試験紙(リトマス紙)を使用します。食後2〜4時間の尿が最も信頼性の高いサンプルです。ストルバイト管理中の目標pHは6.0〜6.5です。pH測定は療法食の効果確認と再発モニタリングに役立ちますが、pH測定だけで療法食の中止を判断せず、必ず獣医師の検査結果と合わせて判断してください。
自宅での尿pH測定は、療法食が正しく機能しているかを確認する簡便な方法です。
毎日の管理に取り入れることで、再発の兆候を早期にキャッチできます。
必要なもの
・pH試験紙(pH4〜8対応のもの):ドラッグストアや通販で購入可能(200〜500円程度)
・清潔な容器(使い捨て紙コップなど)
測定のタイミングと方法
・測定タイミング:食後4〜6時間後の尿が最も正確です(食後すぐや絶食中の尿は不安定)。
・採尿方法:散歩中やトイレシートにしゃがんだタイミングで容器に受け取ります。
・試験紙を尿に1〜2秒浸して取り出し、30秒後に比色表と比較します。
目標pH値と判断の目安
・目標値:pH 5.9〜6.3(弱酸性。療法食が正しく機能している状態)
・pH 6.5以上:アルカリ寄りで結石再形成のリスク。療法食の与え方(おやつ混入など)を見直す。
・pH 5.5以下:過度の酸性化。長期継続すると腎臓に負担。獣医師に相談。
目標尿pHは5.9〜6.3(弱酸性)です。この範囲を維持できているか月2〜3回pH試験紙でチェックすることで、再発の兆候を早期に発見できます。ただし定期的なエコー検査・尿検査の代替にはなりません。
月2〜3回の測定を継続し、目標範囲を外れたら早めに獣医師へ相談しましょう。
pH測定はあくまで目安であり、定期的なエコー検査・尿検査の代替にはなりません。
・測定タイミング:食後4〜6時間後の尿が最も正確
・目標pH:5.9〜6.3(弱酸性)
・pH 6.5以上:おやつ混入など療法食の与え方を見直す
・pH 5.5以下:過度の酸性化→獣医師に相談
・月2〜3回継続し、定期エコー検査と併用する
⚠️ 注意
療法食中にうんちが緩くなる・食欲が落ちるなどの症状が2〜3日以上続く場合、また尿が出にくい・血尿が増えた・ぐったりしているなどの症状が現れた場合は、すぐに獣医師に連絡してください。療法食の成分変更や別の治療法への切り替えが必要な場合があります。
よくある質問(FAQ)
Q. ストルバイト結石はどれくらいの期間で溶けますか?
A. 結石のサイズや数によって異なりますが、一般的に療法食開始から1〜3か月で溶解することが多いです。
小さな結晶・小さな結石であれば1か月未満で消失するケースもあります。
定期的なエコー検査で溶解を確認しながら、獣医師の指示に従って療法食を継続してください。
自己判断での中断は再発・拡大につながるため避けましょう。
Q. 療法食はずっと続けなければいけませんか?
A. 結石が消えた後も、再発予防のために継続が推奨されます。
ただし全ての犬が生涯継続が必要なわけではありません。
再発歴がない・感染が原因だった場合は、再発リスクに応じて予防用フードや一般食への移行が検討できます。
必ず獣医師と相談しながら判断してください。
Q. 療法食を食べてくれない場合はどうすればいいですか?
A. 急な食事変更は嗜好性の問題を起こしやすいため、1〜2週間かけて旧フードと混ぜながら徐々に切り替えるのが基本です。
それでも食べない場合は、同じブランドのウェットタイプに変更する・温めて香りを立てるなどの工夫を試みてください。
食欲が全くない・体重が著しく落ちる場合は早めに獣医師へ相談してください。
Q. 療法食を与えながら普通のおやつを少し与えてもいいですか?
A. 基本的には避けてください。
市販のおやつにはマグネシウム・リンが多く含まれているものがあり、療法食の効果(pH管理・ミネラル制限)を妨げます。
どうしても与えたい場合は、かかりつけ医に相談してOKが出たものに限り、ごく少量(1日のカロリーの10%以内)にとどめてください。
市販のおやつには療法食の効果を妨げるマグネシウム・リンが多く含まれているものがあります。療法食の効果を最大限に引き出すため、治療期間中はおやつを控えましょう。
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