愛犬が皮膚をかゆがったり、カビ臭いベタベタした皮脂がでて皮膚炎を起こしていることはありませんか?
犬を飼っていると、皮膚病に悩まされる愛犬の姿を見ることがあります。
その中でも、マラセチア皮膚炎は犬の皮膚病の代表的なものです。
ポイント
マラセチア皮膚炎は、マラセチアという酵母が皮膚上で過剰に増殖することが原因です。
幸い、マラセチア皮膚炎は適切なシャンプーを週に2回程度行うことによって治療が可能です。
本記事では、犬のマラセチア皮膚炎についての基本的なお話と、治療に適したシャンプーを紹介します。
犬のマラセチア性皮膚炎とは?
マラセチア性皮膚炎は、犬の皮膚に感染するカビの(真菌)感染症です。犬の皮膚にもともと存在するマラセチアという酵母が過剰に増殖することによって起こります。
マラセチアはダルマのような特徴的な形をしている酵母菌です。
マラセチア皮膚炎は、アレルギー体質の犬、ホルモンバランスの悪い犬、免疫力が低下している犬に多くみられます。
犬のマラセチア性皮膚病の原因
マラセチア性皮膚炎は、健康状態やアレルギー、ホルモンバランスの乱れ、シャンプー不足でゆ皮膚が不衛生になっているなど、さまざまな要因によって引き起こされることがあります。
犬のマラセチア皮膚炎の一般的な原因としては、以下のようなものがあります。
アレルギー
アレルギー、特に食物アレルギーのある犬は、マラセチア皮膚炎を発症しやすいと言われています。
アレルギー性皮膚炎によって皮膚のpH値が変化し、酵母が増殖するのに適した環境になってしまうからです。
ホルモンバランスの乱れ
クッシング症候群や甲状腺機能低下症などのホルモンバランスの乱れにより、皮膚環境が変化し、マラセチアが過剰に繁殖することがあります。
シャンプーをする習慣がない
定期的にシャンプーをしていない犬は、マラセチア皮膚炎を含む皮膚感染症を発症しやすくなります。
シャンプー不足により、汚れや古い角質が蓄積され、酵母が繁殖するのに適したな環境となります。
犬のマラセチア性皮膚病の症状
マラセチア性皮膚炎は、犬にさまざまな症状を引き起こします。
かゆみ・ひっかき
マラセチア性皮膚炎を発症した犬は、強い痒みや後ろ足で皮膚をひっかくことが多く、脱毛や皮膚の損傷を引き起こすことがあります。
赤み・炎症
酵母が過剰に増殖すると、犬の皮膚、特に脇の下、股間、耳などの皮膚のひだのある部分に赤みや炎症が生じます。
脂っぽい肌、カサカサした肌
マラセチア性皮膚炎は、犬の皮膚が脂っぽくなったり、カサカサになったり、独特の臭いがします。
犬のマラセチア性皮膚病の診断
マラセチア性皮膚炎を診断するために、動物病院で皮膚を調べ、皮膚細胞診検査を実施します。
この検査では、皮膚の細胞やフケなどをテープなどで採取し、顕微鏡で調べ、マラセチアが存在するかどうかを確認します。
場合によっては、外注検査で皮膚培養検査を行うこともあります。
犬のマラセチア性皮膚炎の治療法
マラセチア性皮膚炎の治療には、シャンプーや薬物療法などの組み合わせが必要です。
ポイント
マラセチア性皮膚炎の治療で最も重要なことの1つは、マラセチアを退治することに特化した適切なシャンプーを使用することです。
シャンプーは、犬の皮膚から酵母や余分な皮脂を取り除き、マラセチア感染のリスクを減らします。
不適切なシャンプーの使用は、症状を悪化させ、かえって害を及ぼすことがあります。
シャンプー選びのポイント
犬のマラセチア性皮膚炎用のシャンプーを選ぶ際には、以下のようないくつかのポイントがあります。
有効成分
- ケトコナゾール
- クロルヘキシジン
- ミコナゾール
などの抗真菌・抗菌成分が配合されたシャンプーを探してみてください。
これらの成分は、マラセチアを死滅させ、さらなる感染を防ぐのに役立ちます。
pHバランス
犬の皮膚にとって理想的なpHバランスは、5.5~7.5です。
愛犬の皮膚の自然なpHレベルを乱さないように、pHバランスのとれたシャンプーを探しましょう。
無香料
香料入りのシャンプーは、愛犬の皮膚を刺激して症状を悪化させることがあるので、避けてください。
脂漏症の犬にはどんなシャンプーを使えばいい?
脂漏症の治療をするには、抗脂漏シャンプーで頻繁に入浴させる必要があります。これらのシャンプーには通常サリチル酸などの成分が含まれています。
そして、痒みや皮膚炎などの症状が改善するまで週に2~3回、薬用シャンプーで全身を洗いましょう。
シャンプーをやさしくマッサージするように、10分ほど皮膚になじませた後に洗い流すことがポイントです。
獣医師おすすめ!マラセチア用の厳選シャンプー
犬のマラセチア性皮膚炎におすすめの獣医師が使うシャンプーをご紹介します。
マラセブシャンプー
マラサブシャンプーは、マラセチア(真菌)とブドウ球菌(細菌)を殺菌する成分(ミコナゾール、クロルヘキシジン)を配合し、皮膚上で増えすぎた菌を減らします。
また、特別に調整された低刺激性界面活性剤の力で菌増殖の原因となる過剰な皮脂分や汚れを効果的に洗い流します。
皮膚をいたわりながら酵母や細菌を死滅させることができることが特徴となるシャンプーです。
マラセキュアシャンプー
マラセキュアは、犬のマラセチア皮膚炎を治療する国産外用剤で、抗真菌成分のミコナゾール硝酸塩と殺菌消毒成分のクロルヘキシジングルコン酸塩をそれぞれ2%ずつ配合しています。
使い心地にこだわり、ボトルからの薬液の出しやすさ、泡立ち、脱脂力、すすぎやすさ、香り、洗い上がりまで、すべてにこだわって開発されています。
マラセキュアの副作用について
マラセキュアは犬のマラセチア皮膚炎の治療に有効なシャンプーとして広く用いられていますが、一部の犬には副作用が現れる場合があります。主な副作用と注意点を以下にまとめました。
粘膜への接触を避ける
マラセキュアは外用薬であり、粘膜面や耳、目には使用すべきではありません。
特に眼に入った場合は、速やかに水で洗い流し、異常が見られる場合は獣医師の診察を受けることが推奨されます。
中枢神経系への影響
マラセキュアの成分であるミコナゾール硝酸塩は、中枢神経系に影響を及ぼすことが知られています。
特に犬がシャンプーの泡を舐めたり吸い込んだりすると、バルビツレート誘発睡眠時間が延長されるリスクがあるため、使用時には犬の様子に十分な注意が必要です。
アナフィラキシー反応
人間での報告では、クロルヘキシジンを含む製品の使用によってアナフィラキシー反応が起きることが知られています。犬がマラセキュアを舐めたり吸い込んだ場合、同様の反応が起きる可能性があるため、十分な注意が求められます。
胃腸や呼吸器官の炎症
犬がマラセキュアの泡を舐めたり、吸い込んだりすることで、胃腸や呼吸器官に炎症を起こす可能性があります。
薬の相互作用
人間において、ミコナゾールとワルファリンの併用によるワルファリンの作用の増強が報告されています。このため、ワルファリンを投与されている犬にマラセキュアを使用する場合は、獣医師と相談が必要です。
基本的に気をつけてシャンプーをしていれば、副作用が出ることはありません。
ですが、使用中や使用後に犬に異常が見られる場合は、直ちに使用を中止し、獣医師の診察を受けましょう!
脂漏症にオススメのシャンプー
脂漏症では、マラセチアのシャンプーとは異なり、脱脂効果の強い成分の入ったシャンプーを使用します。
シャンプーの目的は余分な角質を取り除くことです。
皮膚が改善するまで週に2回、かつそれを2~3週間あるいはそれ以上続ける必要があります。
愛犬の治療への反応によっては、シャンプーの頻度が週に1回になることもあります。
以下に獣医師オススメのシャンプーをご紹介します。
ビルバック 犬猫 ケラトラックス ペプチドシャンプー
ケラトラックスには、サリチル酸が含まれています。サリチル酸には殺菌・抗菌効果と角質柔軟作用があり、皮脂に発生する菌の繁殖を防ぎ、脂っぽい皮脂を落とすことで、皮膚環境を改善します。
また、サリチル酸が角質層へ浸透することで角質が軟化し、脂漏症を悪化させる角質を除去しやすくなります。
ケラトラックスはベタベタの脂ぎった脂漏が出ている場合にオススメです!
ビルバック 犬猫用 セボダーム 乾性脂漏症シャンプー
セボダームは乾燥し、パサパサのフケのような脂漏が出ており、かさついた皮膚をしっかりと洗い上げる低刺激性のシャンプーです。
ビルバックが独自開発したスフェルライトという徐放技術に加え、キトサンサクシナミドを配合してありますので皮膚や被毛に潤いを与え、長時間にわたり清潔に保ち、また様々な損傷などから守る働きがあります。
セボダームは皮膚や被毛に優しく、また石鹸成分も含んでおりませんので毎日でも御使用になれます。
セボダームはカサカサのフケのような乾性脂漏が出ている場合にオススメです!
犬のマラセチア性皮膚炎に対するシャンプーの正しい使用方法について
犬のマラセチア性皮膚炎を治療するためにシャンプーを使用する場合は、以下の手順で行います。
- ステップ1:愛犬の皮膚や被毛をぬるま湯で十分に洗い、汚れを落とします。
- ステップ2:シャンプーをしっかり泡立てて、愛犬の被毛に塗ります。
- ステップ3:シャンプーを愛犬の被毛に5~10分ほど放置します。
- ステップ4:ぬるま湯で犬の被毛をよくすすぎます。
- ステップ5:タオルやドライヤーで愛犬の被毛を乾かします。
マラセチア皮膚炎にオススメの厳選サプリメント
マラセチア性皮膚炎のケアとしてシャンプー、痒み止めとサプリメントを併用すると、より愛犬の皮膚の状態は良くなることがあります。
以下にエビデンスのある成分を用いた獣医師厳選の皮膚用サプリメントをご紹介します!
【獣医師監修】うちの皮膚サポート サプリメント
うちの皮膚サポートは、
- コラーゲンペプチド
- 米麹
- DHA
- ビタミン
など皮膚の健康維持を支えるサポート成分を9種類も配合されているサプリメントです。特にコラーゲンはマラセチア皮膚炎の愛犬にとって非常に重要な成分で、マラセチア皮膚炎の犬は慢性的なコラーゲン不足になっていることもわかっています!
ドライフードやウェットフードなどの毎日のご飯に混ぜてあげてください。そして、保存料・着色料・甘味料・発色剤・増粘安定剤不使用の無添加サプリメントのので安心です。
アンチノール
アンチノール プラスは、犬や猫の関節、皮膚・被毛、心血管、腎臓、神経・認知機能などの全身の健康を守るサプリメントです。特に皮膚には多くの動物病院で効果が認められているため、皮膚科の獣医師さんが必ずといってもいいくらい処方するサプリメントです。
アンチノールの何が良いのかというと、良質なオメガ3脂肪酸を含んでいるため、マラセチア皮膚炎でのかゆみを抑える効果や皮膚のバリア機能の修復なども期待できるサプリメントです。
以前は動物病院でしか購入できませんでしたが、今年になってネットでも購入できるようになったため、ネットで購入する方がお得です。
マラセチア皮膚炎で使用する痒み止め
痒み止めとしてステロイド、アポキル、サイトポイントなどの痒み止めが用いられます。ただし、副作用が出ることもあるため、適切な使用方法を守ることが重要です。
私の1番のイチオシの痒み止めはサイトポイントです!
というのもサイトポイントは副作用が少なく、長期投与も可能で痒みを抑える効果が非常に高いからです。以下でアトピー性皮膚炎で用いる痒み止めをご紹介します。
ステロイド
ステロイドは、皮膚炎の症状を軽減するために昔から使われる薬です。
ステロイドは炎症やかゆみを抑制する働きがあり、短期間で効果が現れることが特徴です。しかし、長期間の使用や高用量では副作用のリスクが高まるため、獣医師の指示に従って適切な使用が重要です。
一般的に使用されるステロイドにはプレドニゾロンがありますが、副作用としてマラセチアの増殖を助長する恐れがありますので、非常に強い炎症を伴わない限りはマラセチア皮膚炎で使用することはありません。
アポキル
アポキルは、アトピー性皮膚炎の痒みを効果的に抑える新しい薬で、オクラシチニブという成分が含まれています。
オクラシチニブは、免疫系に作用してアレルギー反応を抑える働きがあり、痒みを速やかに緩和します。アポキルは安全性が高く、副作用が比較的少ないとされています。ただし、長期投与の場合は定期的な健康チェックが必要です。
✔︎ 以下の記事でアポキルの効果や副作用について総まとめしています。
サイトポイント
アトピー性皮膚炎は、犬の皮膚が弱っていてアレルギー物質が侵入しやすくなる状態です。
これが原因で、犬の体の中で特定の物質(サイトカインと呼ばれる物質)が出てきて、かゆみや赤みを引き起こします。そんな犬のアトピー性皮膚炎に対して効果的な治療薬が「サイトポイント」です。
サイトポイントは、かゆみを引き起こす物質(IL-31というサイトカイン)を特定して働きを抑えることができる薬です。これにより、犬のかゆみが軽減され、掻いたり舐めたりする行動が減ります。
その結果、皮膚の状態が改善され、さらなるアレルギー物質の侵入が防くことができます。
サイトポイントの利点は、1回の注射で長期間(約4週間)効果が持続することです。副作用は比較的少ないとされていますが、獣医師の指示に従って適切な使用が必要です。
以下の記事でサイトポイントについて総まとめしています!
マラセチア皮膚炎におすすめの食事・フード
マラセチア皮膚炎に効果的なドッグフードは、以下のような成分が重要です。
良質なタンパク質
皮膚や被毛の健康を維持するために、消化吸収が良いタンパク質が必要です。
タンパク源としては、牛、鶏、または魚由来などである必要があります。
良質なタンパク質に含まれるアミノ酸は、犬の皮膚細胞の再生に役立ちます。
オメガ3およびオメガ6脂肪酸
抗炎症作用があり、皮膚のバリア機能を強化します。
これらの脂肪酸は、炎症を抑え、犬の皮膚と被毛を健康に保ちます。
亜鉛、ビタミンA、ビタミンE
皮膚の健康に役立ち、免疫機能をサポートします。亜鉛は、皮膚の健康を維持するために重要なミネラルです。
ビタミンAは、皮膚細胞の再生を促進する役割があり、ビタミンEは、皮膚の修復を促します。
これらの栄養素は、さつまいも、またはにんじんなどから取ることができます。
無添加・低アレルゲン
不必要な添加物やアレルギーを引き起こす成分を避けることが望ましいです。
特に、穀物、人工着色料、および防腐剤を含むドッグフードは避けた方が良いでしょう。
獣医師オススメの療法食
ヒルズ オールスキンバリア
ヒルズオールスキンバリアは、単一の動物性たんぱく質として卵を使用した栄養配合で健やかな皮膚を保ち、環境や食物アレルギーによるかゆみを管理するのに役立つよう調整された特別療法食です。
その他の治療法について
正しいシャンプーを使うことに加えて、犬のマラセチア性皮膚炎に対して、以下のような他の治療法を行うことがあります。
薬物療法
あまりにも重度なマラセチア皮膚炎の場合、抗真菌薬や抗菌薬を投与することがあります。
サプリメント
オメガ3脂肪酸やプロバイオティクなどのサプリメントは愛犬の免疫機能を改善し、皮膚のコンディションを整える作用があります。
まとめ
マラセチア性皮膚炎は、飼い主と愛犬の生活の質を落としてしまう皮膚病です。
しかし、正しいシャンプーと適切な治療で、マラセチア皮膚炎を改善させ、さらなる皮膚病を予防することができます。
シャンプーは、pHバランスが良く、無香料で、抗真菌・抗菌成分が含まれているものを選ぶことを忘れないでください。