
愛猫が糖尿病と診断されたけれど、まだ元気でご飯もよく食べている…。「治療しない選択肢もあるのかしら?」と悩む飼い主さんもいるかもしれません。しかし、猫の糖尿病は放置すると重篤な糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)という危険な状態に陥り、命に関わる合併症を起こします 。初期のうちは食欲もあり一見元気そうでも、進行すると神経障害が出たり、失明したり、最悪の場合命を落とすリスクもあるのです 。
早期発見と治療が何より重要だということは理解していただけたと思いますが、適切に治療を受けた糖尿病の猫はどれくらい生きられるのでしょうか? 実は、糖尿病と診断された猫ちゃんでも、早期診断と適切なインスリン治療、さらに食事管理や生活習慣の改善を行えば、寿命を大きく延ばせる可能性があります。ある研究では、糖尿病の猫の約63%が1年以上生存し、25%は3年以上、10%は5年以上生存しており、中には8年以上生きた猫も報告されています 。平均的な生存期間はおよそ2~3年程度とされますが 、実際には多くの猫が診断後3~8年以上も元気に生活しています 。これは適切な治療とケアによって糖尿病をコントロールできる証拠と言えるでしょう。
一方で、治療をしなかった場合の寿命は極めて短くなります。 治療を行わない状態では確実に病状が進行し、数ヶ月以内に命を落とす可能性が高いと指摘されています 。場合によっては糖尿病性ケトアシドーシスにより数日~数週間で急変することもあり、とある報告では治療しなかった猫の平均余命は約60日ほどだったとの情報もあります 。つまり「治療しない」という選択肢は猫の健康と幸せを考えると事実上ないと心得てください 。
糖尿病の初期症状から末期の状態(ケトアシドーシス)までの変化を正しく理解し、適切な対策と治療を行えば、愛猫の寿命を伸ばし生活の質(QOL)を維持することは十分可能です。今回は獣医師の視点から、猫の糖尿病について「治療しない選択はアリか?」という疑問への回答をはじめ、初期症状から末期症状までの変化、原因、治療法、寿命、そしておすすめの食事管理やフードに至るまで詳しく解説します。大切な愛猫のために、ぜひ参考にしてください。
治療しない選択はアリ?
結論から言えば、猫の糖尿病を治療せず放置する選択肢はおすすめできません。糖尿病とは本来、体が血液中の糖分(血糖)をうまく利用できなくなる病気です。インスリンというホルモンの不足や作用低下によって血糖値が高くなり、細胞はエネルギー源である糖を取り込めなくなります。
治療をしないまま放置すれば、血液中に過剰な糖が蓄積して様々な不調を引き起こします。具体的には多飲多尿、体重減少、脱水といった症状が現れ、さらに進行すると元気消失や意識障害など重篤な状態に陥ることもあります 。高血糖が長く続くことで、心臓病や腎臓病、感染症などの深刻な合併症を引き起こしうる点も見逃せません 。これらの合併症の中には命に関わるものもあり、治療をしない選択は愛猫の健康と幸せを守れない非常に危険な判断なのです。
確かに毎日のインスリン注射や食事管理など、糖尿病の治療は最初は大変に感じるかもしれません。しかし、適切なケアを続ければ猫ちゃんは糖尿病を抱えながらでも健康で快適な生活を送ることができます。近年はインスリンの注射器具も扱いやすいものが増え、また血糖値を自宅で測定するグルコースモニターの活用など、飼い主さんの負担を軽減する方法も広がっています。愛猫の命を守るため、治療から目を背けず前向きに取り組んでいきましょう。
糖尿病の猫にチュールはあげても良い?
結論として、糖尿病の猫ちゃんに「CIAOちゅ~る」など甘いおやつは極力与えない方が良いです。理由はシンプルで、チュールをはじめ市販の猫用おやつ(特にペースト状のおやつやセミモイストフード)には糖質が多く含まれ、血糖値を急激に上昇させてしまう成分が多いからです 。糖尿病の管理には血糖値の安定が重要ですが、高糖分のおやつはせっかくの治療効果を妨げ、病状をさらに悪化させる可能性があります。
「おやつを全くあげてはいけないの?」と心配になるかもしれませんが、糖尿病の猫でも与え方と内容に注意すればおやつを楽しめる場合もあります。例えば、チュールの代わりに無塩で茹でたササミやササミジャーキーといった高タンパク・低炭水化物のおやつがおすすめです 。市販でも糖質オフの療法食用おやつが販売されていることがありますので、かかりつけ獣医師と相談しながら安全なおやつを選んであげましょう。ポイントは「糖分が少なく高タンパク」であることと、「与えすぎない」ことです。
糖尿病の管理下では基本的におやつはご褒美程度に留め、普段の食事でしっかり栄養管理をすることが大切です。どうしてもチュールをあげたい場合は、療法食のトッピング程度に少量だけ混ぜるなど工夫し、愛猫の状態をよく観察してください。いずれにせよ、高糖分のおやつは血糖コントロールの大敵ですので、与えないのが無難と言えるでしょう。
糖尿病の初期症状・末期症状
猫の糖尿病でまず注意すべき初期症状は、典型的には次のようなものがあります。
- 多飲・多尿:水を大量に飲み、おしっこの量や回数が増える(トイレの砂が早く濡れるようになる)。
- 食欲亢進と体重減少:食欲はあるいはむしろ増えているのに、体重が減っていく。
- 元気消失や軽い後肢のふらつき:なんとなく元気がなく寝ている時間が増えたり、足腰が弱ったように見える。
これらの初期症状は一見加齢や他の要因とも区別がつきにくく、見逃されがちです。しかし「水を異常に飲む/尿が増えた」「食べているのに痩せてきた」という場合は糖尿病を疑う重要なサインです 。なぜ多飲多尿になるかというと、体内で余った糖分を尿から排泄するために腎臓がフル稼働し、水分を多く必要とするからです 。この時点では猫自身は比較的元気に見えることも多いですが、着実に体内では異常が進行しています。
やがて適切な治療が行われず高血糖の状態が続くと、糖尿病は重度の段階(末期症状)へ移行します。特に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)**と呼ばれる状態に陥ると、以下のような深刻な症状が現れます 。
- 嘔吐・食欲廃絶:胃腸の動きも低下し、吐いたり全く食べなくなる。
- 著しい脱水と虚弱:皮膚の張りがなくなるほど脱水し、極度に弱って寝たきりになる。
- 呼吸の異常:呼吸数が増え、進行すると**深くゆっくりした呼吸(クスマウル呼吸)**になります 。これは体が酸性に傾いた血液を改善しようとする代償的な呼吸です。
- アセトン臭(フルーツが腐ったような甘酸っぱい臭い)の呼気:吐く息がケトン体由来の独特な甘い臭いを帯びます 。
- 体温低下と昏睡:身体が冷たくなり、反応が鈍く昏睡状態に陥ることもあります。
さらに猫では特徴的な症状として、後ろ足の麻痺・衰弱が挙げられます。高血糖が長期間続くことで**糖尿病性ニューロパチー(神経障害)が起こり、後肢の筋力低下や感覚障害によりかかとを床につけて歩く(蹠行〈しょこう〉)**姿勢になることがあります 。いわゆる「後ろ足を引きずる」「ふらふらして踏ん張れない」といった状態で、中~末期の糖尿病に見られる特徴的な所見です。適切な治療で血糖コントロールが改善すれば徐々に回復する可能性もありますが 、この症状が出るほど進行している場合は早急な治療が必要です。
要点: 猫の糖尿病では初期症状の段階で気づき対処することが理想ですが、万一末期の症状(ケトアシドーシスや神経症状)が出てしまった場合でも、一刻も早い集中治療が生死を分けます。初期から末期までの症状の変化を飼い主が正しく理解し、少しでも異変に気付いたら速やかに動物病院で受診することが、愛猫の命を守る鍵となります。
ケトアシドーシス(DKA)とは?
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)とは、糖尿病が十分に管理されていない場合に起こる致死的な代謝性障害です。インスリンが極端に不足するか効かなくなることで、体の細胞がエネルギー源として糖を利用できなくなった状態を指します。エネルギーに飢えた細胞は代わりに脂肪を分解して生命維持を図りますが、その際に発生するケトン体が体内に蓄積し、血液が酸性(アシドーシス)に傾いてしまいます。この結果、電解質バランスも崩れて全身の臓器機能が障害され、治療しなければ急速に致命的となるのです 。
DKAに陥る典型的な原因は、長期間にわたり糖尿病が放置され高血糖状態が続くことです。しかし、それだけではありません。既にインスリン治療中の糖尿病の猫でも、例えば感染症や膵炎、心疾患、外傷、歯周病、過度のストレス、他のホルモン疾患(クッシング症候群や甲状腺機能亢進症など)といった二次的要因でインスリンの効果が低下(インスリン抵抗性)し、DKAを発症することがあります。要するに、糖尿病+何らかの負荷要因が重なったときにDKAは起こりやすいのです 。
DKAになってしまうと、前述したように激しい嘔吐や脱水、昏睡状態に陥り、緊急集中治療が必要です。入院のうえ点滴による輸液や電解質補正、迅速なインスリン投与など積極的な治療が行われます 。幸いにも治療が間に合えば回復できるケースもありますが、状態が重い場合は予断を許しません。DKAを防ぐには、日頃から糖尿病を適切に管理し、併発症に気を配ることが何より重要です。「少し元気がないけど様子を見よう」が命取りになることもありますので、糖尿病の猫ちゃんが嘔吐してご飯を食べない、水も飲まないといった症状を見せたらすぐに受診してください。
猫の糖尿病の原因
猫ちゃんが糖尿病になる原因にはいくつかの要因が考えられます。主なものを順に見ていきましょう。
- 遺伝的要因
- ある程度の遺伝的素因が関与すると考えられています。例えばイギリスやオーストラリアの調査では、**バーミーズ(ビルマ猫)**など特定の猫種で糖尿病の発症リスクが高いことが報告されています 。親から子への体質的な影響で発症しやすい猫ちゃんがいる可能性があります。ただし、犬のように明確な遺伝疾患としての糖尿病は猫では稀であり、多くの場合は後述する環境要因が重なって発症します。
- 肥満
- 肥満は猫の糖尿病最大の危険因子です。太り過ぎになるとインスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性が増す)ため、血糖を十分に下げられなくなります。ある研究では、肥満の猫はそうでない猫に比べ糖尿病発症リスクが約4倍に高まるとの報告もあります 。現代の室内飼育環境では運動不足とカロリー過多で肥満傾向の猫が増えており、それが糖尿病増加の一因と考えられます。
- 食事
- キャットフードの内容も発症リスクに影響します。猫は本来肉食動物で、高タンパク・低炭水化物の食事に適応しています。しかし炭水化物(糖質)たっぷりのフードばかり与えていると、血糖値が慢性的に高くなりやすく、膵臓のインスリン分泌に負担をかけます。特におやつの与えすぎにも注意が必要です。先述のチュールやクリスピータイプのトリーツを頻繁に与えていると、栄養バランスの崩れや肥満につながり、それが引き金となって糖尿病を誘発してしまいます。日頃から高タンパク・低炭水化物の良質なフードを選び、間食は控えめにすることが予防につながります。
- 運動不足
- 十分に体を動かさない生活も糖尿病のリスクを高めます。運動は血糖値を下げるのに役立つインスリンの作用を高める効果があります。逆に運動不足だとエネルギー消費が少なく肥満になりやすいだけでなく、インスリン抵抗性も上昇しがちです。完全室内飼いの猫ちゃんは特に、毎日遊んであげたりキャットタワーを活用するなどして適度な運動習慣をつけてあげると良いでしょう。
- 年齢・性別
- 一般に中高齢(7歳以上)の猫で糖尿病は増加します 。加齢に伴い代謝機能や膵臓の予備能が低下するためです。また去勢済みの雄猫はホルモンバランスや食欲の変化で太りやすく、糖尿病になりやすい傾向があります 。実際、**「中高齢の去勢オスで肥満体型」**という猫ちゃんは糖尿病ハイリスク群といえるでしょう。もちろん若くてメスの猫でも糖尿病になるケースはありますが、特にリスクの高い属性として念頭に置いてください。
以上が主な原因要因です。まとめると「遺伝的な素因」に「肥満や不適切な食事・運動不足」といった生活習慣要因が加わり、特に中高齢の去勢オスでそれらが重なると発症しやすい、という図式です。 日頃から愛猫の体重管理に気を配り、適切な食事と運動で健康的な生活を送らせることが糖尿病予防の鍵になります。
猫の糖尿病は治るって本当?
「猫の糖尿病は治らない病気」と思われがちですが、実は適切な治療と管理により“治ったかのような状態”になること(寛解)が十分にあり得ます。特に猫の糖尿病のほとんどは人でいう2型糖尿病に分類され、膵臓からのインスリン分泌能力がまだ残っているケースが大半です 。言い換えれば、猫の糖尿病は最初からインスリンが全く出なくなる1型(自己免疫型)とは異なり、インスリンの効きづらさ(抵抗性)と分泌低下が混在した状態なのです 。
このタイプの糖尿病では、治療開始時に外部からインスリンを適切に補充し血糖値をコントロールすることで、膵臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)の機能を回復させられる可能性があります 。高血糖が続くと“グルコース毒性”でβ細胞が疲弊してしまいますが、血糖値を正常化してあげれば膵臓が再びしっかり働き出し、自前のインスリンで血糖を維持できる状態に持ち込めることがあるのです。この現象がいわゆる**「寛解」**であり、飼い主さんから見れば「糖尿病が治った!」と思える状態です。
ただし、寛解は誰にでも必ず起こるわけではありません。寛解に持ち込めるかどうかは発見時の病状の重さや治療開始の早さ、適切なインスリン量の調整、肥満の解消など様々な要因に左右されます 。一般的に早期に治療を開始した猫ほど寛解率が高いとされ、報告によって異なりますが約30~50%程度の猫でインスリン治療が一時的に不要な状態(寛解)になったとのデータがあります 。実際、速やかな治療開始で約1/3の猫が寛解を達成した**との報告もあり 、決して稀なことではありません。
大切なのは、「治ったかどうか」より「いかに上手にコントロールするか」です。たとえ完全にインスリンが不要にならなくとも、適切な治療により健康な猫と変わらない生活を送ることは十分可能です 。糖尿病は長期管理が前提の慢性疾患と捉え、焦らず根気よく向き合ってあげましょう。結果的に寛解すればラッキーくらいの気持ちで、油断せず日々のケアを続けることが重要です。
猫の糖尿病は寛解するの?
前述のように、猫の糖尿病は寛解(インスリン治療が不要な安定状態)する可能性があります。実際にインスリン治療と食事療法を適切に行った結果、ある日を境にインスリンを打たなくても血糖値が安定し、そのまま投薬なしで管理できている猫ちゃんもいます。この状態を**「寛解」と呼びます。寛解に入った猫は見た目上は糖尿病が治ったように見えますが、注意したいのは寛解=完全治癒ではない**ことです。
寛解した猫でも、再発(再度の高血糖悪化)のおそれがあります 。統計では、一度寛解した猫のうち約30~40%はその後1年以内に糖尿病が再燃するとの報告もあります 。寛解は「膵臓が休息を経て一時的に持ち直した状態」に過ぎず、元々糖尿病になった素因(肥満や体質)が残っていれば、また何かの拍子に膵臓の働きが落ちてしまう可能性があるのです。したがって寛解できた場合でも、定期的な健康チェックと血糖値・尿糖のモニタリングは継続する必要があります 。また食事管理や適度な運動など、再発防止の生活習慣ケアも引き続き大切です。
寛解を目指す上で強調したいのは、インスリン治療を疎かにしないことです。中には「インスリンを打ち続けるのは可哀想」「自然に治らないか」と考えてしまう方もいますが、それでは寛解のチャンスは遠のきます。寛解に至る猫の多くは、初期治療でしっかりインスリン投与と糖コントロールがなされたケースです 。適切な治療こそが膵臓を休ませ、寛解に導く近道と言えます。焦らず治療を続け、主治医と相談しながら減量や食事療法も併行することで、愛猫に寛解の可能性をプレゼントしてあげましょう。
糖尿病の診断について
猫が糖尿病かどうかは、血液検査と尿検査で比較的簡単に診断できます。典型的には以下のような検査を行います 。
- 血液検査
- 血糖値を測定し、高血糖(空腹時で300mg/dL以上など)が持続しているか確認します。またフルクトサミン値という指標を測ることもあります。フルクトサミンは過去2~3週間の平均血糖値を反映するため、一時的なストレス上昇なのか慢性的な高血糖なのかを判断できます。猫は病院で興奮すると血糖値が一時的に上がることがあるため、フルクトサミンの測定が診断の助けになります。
- 尿検査
- 尿中に糖が出ていないか(尿糖の有無)を調べます。通常、腎臓は血糖が160~200mg/dL以上になると余分な糖を尿中に排泄し始めます。そのため尿糖陽性であれば高血糖が強く疑われます。また糖尿病がある程度進行すると尿中にケトン体も検出されることがあり、重症度の判断に役立ちます。
- 身体検査
- 上記症状の有無の確認や、体重測定・脱水の評価など全身状態のチェックも行います。肥満度や筋肉量の減少具合などから、既往期間の推定や他疾患の鑑別も考慮します。
上記の検査で持続的な高血糖+尿糖が確認されれば、まず糖尿病と診断して間違いありません 。ただし、まれに他の病気(例えば急性膵炎や甲状腺機能亢進症など)でも一時的に高血糖・尿糖が見られることがあるため、必要に応じてさらなる検査をすることもあります。
糖尿病と診断された後は、その猫に最適な治療プランを立てるための検査も行います。例えば、インスリンの効きを悪くする併発症の有無を探るためレントゲン検査や腹部超音波検査で内臓(肝臓・腎臓・膵臓・副腎など)をチェックすることがあります。慢性膵炎やクッシング症候群、あるいは腫瘍性疾患の存在が分かれば治療方針に加味されます。また、治療開始後も定期的に血糖値のカーブ測定やフルクトサミン値チェックを行い、インスリン量の調整や食事管理の評価をしていきます。
ポイント: 飼い主さんにとってはまず「糖尿病かどうか」を知ることが重要ですが、確定診断自体はそれほど難しくありません。多飲多尿や体重減少に気づいたら早めに検査し、糖尿病と分かったら適切な治療と併発症のケアに繋げる――これが理想的な流れです。早期発見・早期治療が寿命にも大きく関わりますので、「シニアだから仕方ない」と様子を見ずに、ぜひ早めの受診を心がけてください。
糖尿病の余命・寿命 ~治療しないという選択肢~
糖尿病の猫ちゃんの寿命は、適切な治療を受けるか否かで大きく異なります。 治療をきちんと受けた場合、前述したように平均で約2年前後、生存期間中央値18か月程度とも報告されていますが 、管理次第では5年以上生きるケースも珍しくありません 。実際、ある大規模調査では糖尿病の猫の約63%が1年以上、25%が3年以上生存しており 、中には10年近く天寿を全うした例もあることが示されています 。治療を継続しケアを徹底すれば、糖尿病と付き合いながら幸福に高齢期を過ごすことも十分可能なのです。
一方、治療を受けない(あるいは不十分な)場合の余命は極端に短くなります。糖尿病が進行して腎不全やケトアシドーシスを起こすと命に直結し、特に神経症状(後肢麻痺や発作など)が現れた場合は余命がごく短いことを示唆します 。実際、治療を行わなかった糖尿病猫の平均余命は約60日との報告もあり 、放置すれば数週間~数ヶ月で命を落とす可能性が高いのです 。これは決して大袈裟な表現ではなく、インスリンが完全に不足した状態では身体機能が維持できないため起こる当然の帰結と言えます。
以上を踏まえれば、「治療しないという選択肢はない」というのが獣医療の現場での共通見解です 。治療費や手間の問題で悩むお気持ちは理解できますが、治療しなければ猫が確実に苦しみ命を落としてしまいます。それは猫にとっても飼い主さんにとっても不幸な結末でしょう。どうしても治療が難しい事情がある場合は、主治医に相談すれば費用を抑える工夫や在宅ケアのアドバイスをもらえることもあります。また、思い切って里親さんや保護団体に託すという選択肢もゼロではありません。いずれにせよ、糖尿病と分かった以上は何らかの形でケアをしてあげることが、飼い主としての責任と言えるでしょう。
一方で、適切な治療を受けた場合の寿命について補足すると、平均2年程度というデータだけを見ると「短いのでは?」と感じるかもしれません。しかしこれはあくまで統計上の中央値であり、例えば先述のとおり約10%の猫は5年以上、1.4%は8年以上生存しています 。治療開始が遅かったり他の病気を抱えていたケースも含めて平均すると2~3年という数字になっていますが、早期発見・厳密な管理を行えばそれ以上に長生きできる可能性は十分にあるのです 。実際、プロトコール次第では半数以上の猫が4年以上生存したとの報告もあります 。要は飼い主さんの努力と愛情次第で寿命は大きく伸ばせるということです。
まとめると: 糖尿病と診断されても、それは「余命わずか」という意味では決してありません。適切な治療とケアで寿命をまっとうさせてあげられる可能性は高いのです。一方、治療を放棄すれば寿命は確実に縮みます。愛猫の健康と長生きを願うなら、一日でも早く治療を始め、根気強く向き合っていくことが何よりも大切です 。
糖尿病の治療法
猫の糖尿病治療の基本は「インスリン療法」と「食事療法」の二本柱です。それに加えて適度な運動や合併症のケアなどを組み合わせ、総合的に血糖コントロールとQOL維持を目指します 。順に詳しく見ていきましょう。
インスリン療法
現在、インスリン注射は糖尿病治療において不可欠と言えます。猫では飲み薬(経口血糖降下薬)が効きにくく、やはり足りないインスリンを外から補ってあげるのが確実だからです 。治療開始時は獣医師が猫の状態に応じて適切なインスリン製剤と投与量を決めます。一般的に1日2回の皮下インスリン注射(12時間おき)から始めるケースが多いです 。インスリンには様々な種類(効果の持続時間や強さの違い)があり、猫ではプロタミン亜鉛インスリン(PZI)やグラルギン製剤などの長時間型がよく用いられます。
飼い主さんはまず注射の方法を指導してもらい、自宅で毎日決められた時間にインスリンを打つことになります。最初はハードルが高いように思えますが、極細の針を使用するため猫は意外とケロッとしており、慣れればスムーズにできる方がほとんどです。インスリン注射の目的は血糖値を適正範囲に維持し、合併症を防ぐこと 。治療開始後は定期的に血糖値の経過をチェックし、必要に応じてインスリンの量を調整していきます。
近年ではフリースタイルリブレなど皮下に装着する血糖測定センサーを利用し、自宅でリアルタイムに血糖変動を把握できるケースも増えています。そうしたデバイスの活用や、日誌をつけての観察により、適切なインスリン量の調節が行われます。インスリンは効きすぎると低血糖を起こすため、獣医師の指示通りに投与し、様子がおかしい時はすぐ相談しましょう。なお、2023年以降猫用の経口血糖降下薬(SGLT2阻害薬)が海外で承認され話題になっています 。これはベラグリフロジン(商品名センベルゴ等)という新薬で、インスリン注射を使わずに血糖管理を行う試みです 。研究では一定の有効性が示されましたが 、適応できる症例が限られる(DKA歴や併発症がない初期の猫のみ)ことや長期の安全性が未確立なことから 、現状では広く使われるには至っていません。やはり現時点ではインスリン注射が糖尿病猫の治療の主役である点に変わりはありません。
食事療法
食事の管理も糖尿病治療の要です。基本方針は**「高タンパク・低炭水化物」の食事に切り替えること 。具体的には、獣医師処方の糖尿病管理用療法食(ドライフードやウエットフード)を与えるのが一般的です。これらのフードはタンパク質を強化し、炭水化物源に消化吸収の穏やかな穀類(例:大麦など)を使うなど、食後血糖の急上昇を抑える工夫がされています 。また食物繊維**が多く含まれており、胃腸での糖吸収をゆっくりにすることで血糖値の安定に役立ちます 。
食事療法で大切なのは、飼い主さんと猫双方のストレスを減らすことです。糖尿病用フードに変えた途端、猫が食べなくなってしまっては元も子もありません。幸い、各メーカーから嗜好性を工夫した療法食が出ていますので、猫ちゃんの好みに合うものを主治医と相談して選びましょう。「カリカリ派」「ウエット派」など好みに応じ、ドライとウェットを組み合わせても構いません。また、一日の給餌スケジュールも重要です。インスリン注射をする場合、必ず食前にご飯を食べさせてから打つ必要があります 。一般的には朝夕12時間ごとに決まった量の食事を与え、その直後~30分以内にインスリンを投与するというサイクルになります 。猫によっては一度に食べきれない場合もあるので、その子に合ったやり方(例:少量ずつ何度かに分けて食べさせる等)を獣医師と相談してください。
注意したいのは、おやつや人間の食べ物を与えないことです。せっかく療法食で糖質制限しても、間食で台無しになっては意味がありません。どうしてもおねだりされたら、前述のように高タンパクのおやつ(ササミなど)を少量与えるにとどめましょう 。そして新鮮な水をいつでも飲めるようたっぷり用意しておくことも大事です (糖尿病の猫は尿量が多く脱水しやすいため)。食事療法を根気よく続けることで、インスリンの効きも良くなり血糖コントロールが安定してきます。
体重管理と運動
肥満の猫ちゃんの場合、減量も治療の重要な一環です。太りすぎているとインスリン抵抗性が高くなり、投与しても効果が出にくくなります。獣医師の指導のもと、安全に適正体重までダイエットさせましょう 。療法食はカロリー計算もしやすいので、指示通りの量を守って与えます。急激な減量は肝リピドーシス(脂肪肝)を引き起こす危険があるため、時間をかけてゆっくりと落としていくのがポイントです。運動も無理のない範囲で取り入れ、消費エネルギーを増やす工夫をします。例えば1日10分でもいいのでおもちゃで遊んであげる、家の中に上下運動できる環境を作る(キャットタワーや棚を活用)などが効果的です。適度な運動は血糖を下げる手助けにもなりますし、猫ちゃんの気分転換にもなります。
定期検診とモニタリング
糖尿病の管理には定期的な獣医師の診察が欠かせません。一般的に治療開始直後は1~2週間ごとに通院し血糖値の推移を確認、インスリン量を調整します。その後状態が安定したら少なくとも3~6ヶ月に一度は検診を受け、フルクトサミン値や臨床症状からコントロール状態を評価してもらいましょう 。また、自宅での日々の観察記録も重要です。毎日の食事量・水の飲み量・尿量、態度の変化などをメモしておくと、ちょっとした悪化のサインに早く気付けます。場合によっては家庭で簡易血糖測定器を使い、定期的に血糖を測って記録する方法もあります。これらの情報を主治医に共有しながら治療を最適化していくことで、愛猫のQOLを高い水準で維持することができます。
インスリン注射の回数について
猫のインスリン注射は通常1日2回行うのが標準的です 。多くのインスリン製剤は効果が約12時間程度持続するため、朝晩の2回投与で24時間血糖をカバーします。投与間隔や回数は使うインスリンの種類や猫の反応によって調整され、稀に1日1回や、逆に効果が切れやすい場合は3回に分けるケースもありますが、基本は朝夕2回と考えてください。
インスリンを打つ際のポイントは「食事とタイミングを合わせる」ことです。低血糖を防ぐため、必ず注射の前に食餌を与え、ある程度食べたことを確認してから注射します 。理想的には食後30分以内**くらいのタイミングで注射すると良いでしょう(インスリンの効果発現に少し時間がかかるため)。ただし、家庭で血糖値測定が難しい場合には、主治医が指示した単位量を時間通り打つのが原則です。「今日は食欲がないから打たない」など独断で変更せず、迷ったら獣医師に相談しましょう。
インスリン治療中に気を付けたいのが低血糖発作です。インスリンが効きすぎたり、寛解に近づいて必要量が減少しているのに投与を続けたりすると、血糖が下がり過ぎてしまうことがあります 。低血糖になるとふらつき、けいれん、昏倒など命に関わる症状が出ます。そのような時は慌てず、ガムシロップや蜂蜜、水に溶かした砂糖など即吸収される糖分を口の中に少量塗ってあげてください 。これは応急処置として有効で、回復が見られたら速やかに動物病院に連れて行きましょう。日頃から低血糖の兆候(落ち着きがなく鳴く、よだつく、ふらつく等)を把握しておき、万一に備えて砂糖水等を用意しておくと安心です。
インスリン注射の回数・量はあくまで主治医の指示を厳守してください。勝手に増減すると高血糖・低血糖の両面で危険があります。また、糖尿病が寛解した可能性がある時期(治療開始後数ヶ月で急に血糖が下がりやすくなる)は獣医師と密に連絡を取りながら注射量を調節します。一度寛解に入った猫でも、再発すればまた注射が必要になります。その場合も焦らず再開し、愛猫の状態に合わせてフレキシブルに対応していきましょう。
食事療法と糖尿病の猫が食べて良いもの・悪いもの
糖尿病の猫にとって「何を食べるか」は治療成否を左右する重大なポイントです。適切な食事管理により、インスリンの効きが良くなり血糖値が安定して寿命も延ばせることが分かっています 。そこで、糖尿病管理における理想的なフードの条件と、与えて良いもの・悪いものを整理しましょう。
糖尿病管理に適したフードの条件
- 高タンパク質:筋肉量の維持やエネルギー源確保のため良質なたんぱく質を豊富に含む。
- 低炭水化物:穀物など糖質の含有量が低く、血糖値を上げにくい処方になっている。
- 中~高繊維質:食物繊維により腸での糖吸収をゆっくりにし、食後血糖の急上昇を抑える。
- 適度な脂肪:エネルギー源として脂肪を利用しつつ、カロリー過多にならない範囲の含有量。
- 嗜好性が高い:猫がしっかり食べてくれる美味しさがある。
この条件を満たすものとして、前述の獣医師処方食(療法食)が最適です。例えばロイヤルカナンの「糖コントロール」やヒルズの「m/d」「w/d」などが代表的でしょう。特にロイヤルカナン糖コントロールは炭水化物源に大麦を使い糖吸収を緩やかにする工夫や、豊富な食物繊維、そして抗酸化物質の配合による健康維持サポートなど、糖尿病猫のための栄養バランスがしっかり考えられています 。これら専用フードは総合栄養食として設計されているので、基本的にはそれを主食に与えれば必要な栄養素は摂取できます。
与えて良いもの・悪いもの
- ◎ 与えて良いもの: 上記の糖尿病対応療法食(ドライ/ウェット)。高タンパクで低糖質の食材(調理した肉・魚(皮や脂は除く)など)をトッピング程度に用いるのは可。おやつは無糖・無塩の茹でササミ、フリーズドライのササミ、あるいは糖質オフ設計のおやつなどに限定する。基本は総合栄養食の範囲内で工夫し、どうしても市販フードを使う場合はエネルギー量と成分表示を確認して、炭水化物比率の低い高品質フードを選ぶ。
- × 与えてはいけないもの: 砂糖やシロップの入った食品全般(当然ですがNG)。市販のおやつ類(特にペースト状おやつ、半生タイプフード) 。人間の食べ物(菓子類は論外、果物や穀類も糖質が高く不可)。またミルクにも乳糖が含まれ糖質が高いので避ける。基本的に「甘みを感じるもの」「炭水化物が主成分のもの」は与えないようにする。
- ▲ 注意が必要なもの: ドライフードの食べ放題(フリー給餌)は避け、決まった量を決まった時間に与える。どうしても少量ずつしか食べない猫の場合はインスリン量に注意しつつ獣医師の指導で対処する。療法食以外の一般食を与える場合は炭水化物源に注意し、できれば獣医師に成分を見せて相談。サプリメント類は基本不要だが、ビタミンB群や抗酸化剤など補助的に使うこともあるので獣医師の助言を仰ぐ。
食事の与え方は毎日同じリズムで行い、猫の体に余計な負担をかけないことが大切です。できれば12時間おきに2回、それが難しければ朝夕+夜食少々など猫の習性に合わせても構いませんが、インスリン投与とのタイミングだけは気をつけましょう。しっかり食べてから注射することで低血糖を予防できます。また、水は新鮮なものをたっぷり用意し、いつでも飲めるようにしておきます 。
最後に、猫ちゃんによっては療法食を嫌がる場合もあります。その際は無理強いせず、獣医師と相談しながら嗜好性を高める工夫(レンジで温め匂いを立たせる、スープでふやかす等)をしましょう。それでも難しい時は、市販の高タンパク質フード+不足栄養素の補填など代替プランを立てる場合もあります。「絶対にこれしかダメ!」と決めつけず、愛猫がストレスなく食べてくれる方法を模索することも重要です。食べなければ治療になりませんから、根気よく試行錯誤してみてください。
糖尿病の猫に獣医師がおすすめするフード
代表的な糖尿病対応フードとして、ここではロイヤルカナン「糖コントロール」をご紹介します。獣医師の間でも広く使われている療法食で、その特徴は次の通りです 。
- 穏やかな炭水化物吸収: 炭水化物源に吸収速度の遅い大麦を使用し、食後の急激な血糖上昇を抑えます。高GI(グリセミック指数)の穀類を避けることで、血糖値がなだらかに推移するよう工夫されています。
- 豊富な食物繊維: 可溶性・不溶性双方の食物繊維がバランス良く含まれ、糖の吸収を緩やかにします。お腹が膨れて満腹感を得られるので、猫が過剰に食べたがらない効果も期待できます。
- 高タンパク質設計: 筋肉量の維持とインスリン感受性の向上のため、良質なたんぱく質を強化しています。糖尿病で痩せがちな猫でも筋肉を落としにくく、体力を保つ助けになります。
- 抗酸化成分配合: ビタミンEやC、ルテイン、タウリンなどの抗酸化物質が含まれ、糖尿病猫の免疫力維持と健康サポートに寄与します。慢性疾患である糖尿病に伴う細胞ストレスを和らげ、合併症リスク低減を目指しています。
このように「糖コントロール」は糖尿病の猫に必要な栄養バランスを追求したフードです。実際に臨床の現場でも多くの糖尿病猫がこのフードで血糖コントロール良好な状態を維持しています。
重要なのは高タンパク・低炭水化物であることと継続して食べられることです。価格については療法食ゆえ市販フードより高めですが、愛猫の健康への投資と考えてぜひ導入を検討してみてください。
なお、購入の際は動物病院や正規ルートを利用し、安価だからといって怪しいルートの並行輸入品などは避けましょう(保管状態による品質劣化の恐れがあります)。最近ではネット通販でも公式ショップがあり手に入れやすくなっています。療法食は基本的に獣医師の指導のもと与えるものですので、一度病院で相談してからスタートすると安心です。
まとめ
猫の糖尿病は、適切に対応すれば怖がる必要はない病気です。以下に本記事のポイントをまとめます。
- 治療をしない選択肢はない: 糖尿病の猫を無治療で放置すると高確率で命を落とします 。必ず治療を開始し、猫の健康と幸せを守りましょう。
- 初期症状に注意: 多飲多尿、食べているのに体重減少、といった初期症状を見逃さず、早めに受診することが寿命を延ばすカギです 。
- 末期症状は命の危険: ケトアシドーシスに陥ると嘔吐、昏睡、アセトン臭の呼吸、クスマウル呼吸などが見られ、迅速な救命措置が必要です 。後ろ足の麻痺(蹠行姿勢)は糖尿病性神経障害のサインなので注意してください 。
- 原因は肥満・高齢・去勢雄など: 肥満は糖尿病発症リスクを飛躍的に高めます。高齢や去勢オスも要注意。普段から適正体重維持とバランスの良い食事、運動習慣で予防に努めましょう。
- 寛解(インスリン不要な状態)は可能: 早期治療により約30~50%の猫で寛解が期待できます 。しかし再発も多いので、寛解後も定期的なチェックとケアは欠かせません。
- 治療法はインスリン+食事が基本: 毎日のインスリン注射と、高タンパク・低炭水化物の食事管理で血糖コントロールします 。適度な運動や減量も並行して行い、合併症を防ぎます。
- 寿命は治療次第で延ばせる: 治療をすれば平均2~3年、生存例は5年以上も多数あり 、糖尿病と付き合いながら長生きする猫も珍しくありません。逆に無治療では数ヶ月もたない可能性が高いです 。
- 飼い主さんの献身が重要: 毎日の注射や食事管理は大変ですが、愛猫のためにしっかり取り組めばそれに応えてくれるでしょう。糖尿病は二人三脚で管理する病気です。疑問や不安は主治医に相談し、ストレスを溜めず前向きにケアを続けましょう。
愛猫の糖尿病と向き合うのは決して楽なことではありません。しかし、正しい知識と適切なケアで猫ちゃんは今まで通りの生活を取り戻せます。糖尿病だからと悲観せず、「これからはご飯も生活も見直してもっと健康になろうね」という気持ちで支えてあげてください。飼い主さんの深い愛情と努力があれば、きっと愛猫も快適で幸せな猫生を送ることができるでしょう。
参考文献(論文・資料)
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- Niessen SJM, et al. Efficacy and safety of once daily oral administration of SGLT2 inhibitor velagliflozin compared with twice daily insulin injection in diabetic cats. J Vet Intern Med. 2024;38(4):2099-2119 .
- Gostelow R, et al. Frequency of diabetic remission, predictors of remission and survival in 174 cats with diabetes. J Feline Med Surg. 2015;17(3): 229-236
- Marta Vidal-Abarca (Vet). How Long Will a Cat With Diabetes Live Without Treatment? Catster (June 19, 2025) .