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【獣医師解説】犬の肝臓の数値が高い原因と余命への影響|ALP・ALT・GGT別の見方と食事・治療法

愛犬の血液検査で「肝臓の数値が高いです」と言われると、どうしても不安になりますよね。でも、まずは落ち着いてください。

肝臓の数値が高くなる原因は非常に多岐にわたり、必ずしも深刻な肝臓病を意味するわけではありません。ステロイド薬の投与や他の臓器の疾患が原因で、肝臓の数値が二次的に上昇することも非常によくあることです。

この記事では、獣医師の視点から「犬の肝臓の数値が高い」ときに飼い主さんが知っておくべきこと──ALP・ALT・AST・GGTの見方、数値が上がる原因、緊急受診が必要なサイン、食事・治療法の選び方──をすべて網羅して解説します。ぜひ最後まで読んで、愛犬のケアに役立ててください。

ポイント
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、初期段階ではほとんど症状が出ません。血液検査で異常を発見できたことは、早期対応のチャンスです。焦らず、正確な情報をもとに行動しましょう。

犬の肝臓の役割と「沈黙の臓器」の意味

肝臓は体の中で最も大きな臓器であり、生命を維持するために欠かせない非常に多くの役割を担っています。人間でも犬でも、肝臓は「体内の化学工場」とも呼ばれる重要な臓器です。

肝臓がどれだけ重要か、まずその機能から理解しておきましょう。

肝臓の主な機能(6つ)

① 栄養素の代謝・貯蔵
食事から吸収されたタンパク質・脂質・糖質を分解・再合成します。余分なブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に蓄えられ、血糖値が下がったときにエネルギーとして放出されます。ビタミンA・D・B12や鉄などのビタミン・ミネラルも肝臓で貯蔵されます。

② 有害物質の解毒
体内で発生するアンモニア(タンパク質代謝の副産物)を尿素に変換して無毒化します。また食品添加物、薬物、細菌が産生する毒素なども肝臓で処理され、胆汁や尿中に排泄されます。

③ 胆汁の生成と分泌
脂肪の消化吸収を助ける「胆汁」を肝臓は絶えず生成しています。胆汁は胆嚢で濃縮・蓄えられ、食事のたびに十二指腸へ分泌されます。肝臓の機能が低下すると胆汁分泌が滞り、黄疸や消化不良の原因となります。

④ タンパク質(アルブミン)の合成
血液中に存在するアルブミン(血液の浸透圧を保つタンパク質)の多くは肝臓で合成されます。肝機能が著しく低下するとアルブミンが不足し、血液中の水分が血管外に漏れ出して腹水や浮腫の原因になります。

⑤ 血液凝固因子の合成
出血を止めるために必要な凝固因子(フィブリノゲンやプロトロンビンなど)は肝臓で作られます。肝機能が低下すると凝固因子が不足し、傷口からの出血が止まりにくくなります。

⑥ 免疫機能・ビリルビン代謝
古くなった赤血球が壊れると生じるビリルビン(黄色い色素)を肝臓が処理し、胆汁中に排泄します。肝臓が正常に機能しないと、ビリルビンが血中に蓄積して黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)を引き起こします。

このセクションのまとめ
肝臓は代謝・解毒・胆汁生成・タンパク合成・凝固因子産生・ビリルビン処理という6大機能を担う体の要です。しかし予備能力が非常に高いため、70〜80%の機能が低下するまで症状が現れません。だから「沈黙の臓器」と呼ばれるのです。

なぜ「沈黙の臓器」と呼ばれるのか

肝臓は非常に大きな「予備能力(リザーブ)」を持っています。正常な肝臓の70〜80%が破壊されるまで、ほとんどの場合で症状が現れないと言われています。

つまり、「愛犬が元気に見えている」状態でも、肝臓はすでに相当なダメージを受けている可能性があるのです。だからこそ、定期的な血液検査による早期発見が非常に重要になります。

⚠️ 注意
「食欲があって元気そうだから大丈夫」は肝臓病に限っては当てはまりません。初期〜中期の肝臓病は元気・食欲が保たれていることが多いため、定期検査で数値の推移を追うことが大切です。

血液検査の読み方|ALP・ALT・AST・GGT・総ビリルビンの正常値と意味

「肝臓の数値が高い」と言われたとき、具体的にどの数値がどう高いのかを理解することが大切です。血液検査には複数の肝臓関連項目があり、それぞれ意味が異なります。

ポイント
肝臓の血液検査項目には「肝細胞の破壊を示す酵素(ALT・AST)」と「胆汁の流れを示す酵素(ALP・GGT)」があります。どちらが上昇しているかによって、病態の方向性が変わります。

肝臓関連血液検査項目の一覧表

項目名正常値(目安)主な由来上昇時に疑うこと
ALT(GPT)10〜100 U/L肝細胞(犬では肝特異性が高い)肝炎・脂肪肝・肝細胞障害
AST(GOT)15〜55 U/L肝細胞・筋肉・赤血球肝炎・筋肉疾患・溶血
ALP(アルカリフォスファターゼ)23〜212 U/L胆管・骨・腸・肝臓(ステロイド誘導性)胆汁うっ滞・クッシング・ステロイド投与・骨疾患
GGT(γ-GTP)2〜10 U/L胆管上皮・腎臓胆汁うっ滞・胆管炎・肝炎
総ビリルビン(T-Bil)0〜0.3 mg/dL赤血球の代謝産物(肝で処理)重度の肝障害・胆道閉塞・溶血性貧血
アルブミン(Alb)2.6〜4.0 g/dL肝臓で合成低下時→慢性肝不全・低栄養
BUN(血中尿素窒素)9.2〜29.2 mg/dLタンパク代謝(肝で尿素合成)低下時→肝不全・門脈シャント
コレステロール(TCHO)130〜280 mg/dL肝臓で合成・代謝高値→胆汁うっ滞・クッシング、低値→肝不全

※正常値は検査機関・機器によって異なります。担当獣医師の検査結果票の基準値をご確認ください。

ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の見方

ALTは「肝細胞障害の最も鋭敏な指標」です。犬では肝細胞に非常に多く含まれるため、肝細胞がダメージを受けると速やかに血液中に漏れ出します。

ALTは犬において肝臓特異性が高い(人間のALTより肝臓由来が多い)ため、ALTが上昇している場合は「肝細胞が何らかのダメージを受けている」可能性が高いと考えます。

ただし、程度によって意味が変わります。正常値の2〜3倍程度の軽度上昇なら、一過性のストレスや軽微な炎症のことも多いです。5倍以上の持続的な上昇、あるいは急激な上昇(数百〜数千U/L)は急性肝細胞壊死などの重篤な状態を示唆する場合があります。

ポイント
ALTの半減期は約2〜3日です。治療開始後にALTが急速に下がれば「肝細胞の新たな傷害が減っている」サインです。逆にALTが下がってもAST・ALPが高いままの場合は、別の問題が続いている可能性があります。

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の見方

ASTはALTと同様に肝細胞の破壊で上昇しますが、筋肉・赤血球にも含まれるため、肝臓特異性はALTより低いです。

ALTとASTが両方高い場合は肝臓由来の可能性が高まります。一方、ALTが正常でASTだけが高い場合は、筋肉疾患(多発性筋炎、横紋筋融解症など)や溶血(赤血球の破壊)を疑う必要があります。

ASTの半減期はALTより短い(12〜22時間)ため、急性障害ではASTが先に上がり、先に正常化することもあります。

ALP(アルカリフォスファターゼ)の見方

ALPは犬において非常に特徴的な動きをする酵素です。ALPには「肝臓型」「骨型」「腸型」「胎盤型」などのアイソザイム(同じ酵素の異なる形)があり、犬の場合は肝臓型に加えて「ステロイド誘導性ALP」というアイソザイムが存在します。

このステロイド誘導性ALPが曲者で、外から投与したステロイド薬(プレドニゾロンなど)や、体内で過剰産生されるコルチゾール(クッシング症候群)によって著しく誘導されます。そのためALPだけが非常に高い場合(例:500〜5000 U/L)は、まずクッシング症候群やステロイド投与歴を確認することが大切です。

ALP上昇が示す可能性:胆汁うっ滞(胆嚢炎・胆石・胆泥症)、クッシング症候群、ステロイド投与、甲状腺機能低下症、肝臓腫瘍、成長期の子犬(生理的上昇)などが挙げられます。

GGT(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)の見方

GGTは胆管上皮に多く存在する酵素で、胆汁うっ滞の指標として有用です。ALPと並行して上昇することが多く、ALPが高くGGTも高い場合は胆管・胆嚢系の問題を強く示唆します。

GGTはALPに比べてステロイドによる影響が少ないため、「ALPだけが著しく高い」ケースでGGTが正常であれば、ステロイド誘導性である可能性が高まります。逆にGGTも上昇していれば、胆道系の疾患がより疑われます。

総ビリルビン・アルブミン・BUNの意味

総ビリルビン(T-Bil)は、赤血球が壊れた際に生じる黄色い色素で、肝臓で処理されて胆汁中に排泄されます。これが上昇(黄疸)すると、肝機能の重篤な低下か胆道閉塞、または溶血性貧血を示します。

アルブミン(Alb)の低下は肝臓の「合成機能」の低下を意味します。慢性肝炎が末期の肝硬変・肝不全に近づくと低アルブミン血症が現れ、腹水や浮腫の原因となります。

BUN(血中尿素窒素)の低下も肝機能低下のサインです。肝臓はアンモニアを尿素に変換しますが、この機能が低下するとBUNが下がり、代わりに血中アンモニアが上昇して肝性脳症(神経症状)を引き起こします。

このセクションのまとめ
ALT・ASTは「肝細胞が壊れているか」、ALP・GGTは「胆汁の流れが悪くないか」を示します。ビリルビン・アルブミン・BUNは「肝機能がどれほど低下しているか」の総合指標です。これら全体を組み合わせて読むことが大切です。

犬の肝臓の数値が高くなる原因一覧

肝酵素が上昇する原因は大きく「原発性(肝臓自体の病気)」と「二次性・反応性(他の疾患の影響)」の2種類に分けられます。統計的には犬では二次性の方が多いとも言われています。

ポイント
肝酵素が高い=肝臓病とは限りません。ステロイド薬を飲んでいる犬や、クッシング症候群の犬は肝臓そのものが正常でもALPが著しく高くなることがあります。原因の特定が治療の第一歩です。

数値が高くなる原因・疾患の一覧表

分類主な原因・疾患主に上昇する酵素特徴・補足
原発性肝疾患慢性肝炎(特発性)ALT・AST↑犬で最多の肝疾患。中高齢に多い
急性肝炎・急性肝不全ALT・AST著増↑↑感染症・中毒・薬物が原因に
脂肪肝(肝脂肪症)ALT・ALP↑肥満・食欲不振・糖尿病に続発
銅蓄積性肝炎ALT↑(慢性)ベドリントンテリア等に多い遺伝性
肝硬変・肝線維症ALT・ALP↑(末期は低下も)慢性肝炎の末期。不可逆性
肝細胞がん・肝腫瘍ALP・ALT↑単発なら外科切除で長期生存も
門脈シャントALT↑・胆汁酸↑先天性は若齢犬に多い
二次性・反応性ステロイド薬投与ALP著増↑↑最も多い原因の一つ。休薬で改善
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)ALP著増↑↑コルチゾール過剰によるステロイド誘導性ALP
甲状腺機能低下症ALP・コレステロール↑代謝低下による脂質異常
糖尿病ALP・ALT↑高脂血症→肝脂肪症の流れ
膵炎ALT・ALP↑隣接臓器の炎症が波及
重度歯周病・全身感染症ALT・ALP↑菌血症・毒素が肝臓にダメージ
心不全(うっ血肝)AST・ALT↑肝臓への血流鬱滞による障害
リンパ腫・全身性腫瘍ALP・ALT↑肝臓浸潤・転移による上昇
薬物・毒物フェノバルビタール(抗てんかん薬)ALP・ALT↑長期投与で肝酵素誘導が起こる
NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)ALT↑特に高用量・長期投与でリスク
キシリトール・タマネギ・ブドウ等ALT著増↑↑犬に有毒な食品による急性肝障害
青カビ・カビ毒(アフラトキシン)ALT著増↑↑カビの生えた食品・ドッグフードに注意

ステロイドと抗てんかん薬による肝酵素上昇について

犬においてALPが非常に高い(正常の5倍以上)場合、ステロイド薬(プレドニゾロン、デキサメタゾンなど)の投与が最も多い原因の一つです。これは「ステロイド誘導性肝症(Hepatopathy)」と呼ばれ、薬剤自体が肝臓の酵素産生を促進するためで、肝細胞が壊れているわけではありません。

ステロイドを使用中の犬で肝臓の数値が高くなることは非常によくあることで、多くの場合は投薬中止後に改善します。ただし長期投与の場合は「ステロイド肝症」という病態が形成され、肝臓が腫大(腫れる)することがあります。

フェノバルビタール(てんかん治療薬)も長期投与でALP・ALTを上昇させます。これは薬物代謝酵素の誘導が起こるためで、モニタリングのため定期的な血液検査が推奨されます。

⚠️ 注意
「数値が高いから」と自己判断でステロイドや薬を中断するのは危険です。必ず担当獣医師と相談の上で薬の調整を行ってください。

軽度・中等度・重度の判断基準と緊急受診が必要なサイン

肝臓の数値がどの程度高いかによって、対応の緊急度が変わります。ここでは数値の程度と症状を組み合わせた判断の目安を解説します。

重症度別の目安

重症度ALT・ASTの目安症状推奨される対応
軽度正常値の2〜3倍ほぼ無症状1〜3ヶ月後に再検査・原因精査
中等度正常値の3〜10倍食欲低下・元気消失が出始める追加検査(エコー等)・治療開始の検討
重度正常値の10倍以上黄疸・嘔吐・神経症状など緊急精査・入院治療が必要

※ALP単独上昇(ALT正常)の場合はこの限りではありません。ステロイドや骨疾患でALPのみ著増することがあります。

今すぐ病院へ!緊急受診が必要なサイン

以下の症状が一つでも現れた場合は、できるだけ早く(当日中に)動物病院へ連絡・受診してください。

🚨 緊急受診が必要なサイン
  • 白目・歯茎・皮膚・耳の内側が黄色い(黄疸)
  • 急激な食欲廃絶(丸1日以上まったく食べない)
  • 嘔吐・下痢が続いて止まらない
  • お腹が膨らんでいる(腹水の可能性)
  • ふらつき・けいれん・意識がもうろうとしている(肝性脳症の可能性)
  • 異常な出血(歯茎・皮膚の点状出血・血尿・血便)
  • 口から血を吐く
  • 急に起き上がれない・立てない

これらの症状は肝機能の高度な低下、または重篤な肝疾患(急性肝不全・重症の胆道閉塞・肝性脳症など)を示唆している可能性があります。夜間・休日であれば夜間救急動物病院への受診を検討してください。

✅ チェックリスト:次回受診までに準備すること
  • 現在与えているフード・おやつのリスト(メーカー・成分表を写真撮影)
  • 現在服用中の薬・サプリメントの名前と用量
  • 症状が出た時期・頻度・内容のメモ
  • 最近の体重の変化(増加・減少)
  • 直近の血液検査結果票(他院での検査結果も含む)

肝臓病の種類別解説

「肝臓病」と一口に言っても、原因・病態・治療法・予後は疾患によって大きく異なります。ここでは犬に多い主要な肝臓病を種類別に詳しく解説します。

1. 慢性肝炎(特発性慢性肝炎)

犬で最も多い肝臓の病気です。明確な原因が特定できない(特発性の)慢性的な肝臓の炎症で、長期間にわたって肝細胞が破壊・線維化(瘢痕組織への置換)が進行します。

好発犬種・年齢: コッカースパニエル、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマン、スタンダード・プードルなどで多いとされますが、いずれの犬種でも発症します。中高齢(5歳以上)での発症が多いです。

症状: 初期はほぼ無症状。進行すると体重減少・食欲低下・多飲多尿・嘔吐・下痢・腹水などが現れます。末期には黄疸・出血傾向・神経症状(肝性脳症)が出ます。

診断: 血液検査(ALT・AST持続上昇)、腹部超音波検査、確定診断には肝臓の針生検(組織検査)が必要です。組織検査によって炎症の程度・線維化の進行度・銅蓄積の有無などを確認します。

治療: 原因に応じた治療(ステロイド・免疫抑制剤)、肝保護薬(ウルソデオキシコール酸、SAMe、シリマリンなど)、食事管理(低銅・高品質タンパク食)が柱となります。食事管理の詳細は慢性肝炎の食事管理ガイドをご覧ください。

ポイント
慢性肝炎は早期発見・早期治療が予後を左右します。定期的な血液検査でALTの変動を追うことで、悪化前に対応できます。

2. 脂肪肝(肝脂肪症)

肝細胞内に脂肪が過剰蓄積した状態です。犬では猫ほど深刻になりにくいですが、肥満・糖尿病・高脂血症・クッシング症候群・急激な食欲不振などに続発することがあります。

症状: 軽度では無症状のことが多い。重症化すると食欲低下・嘔吐・黄疸などが出ます。

診断: 超音波検査では肝臓が「高エコー(白っぽく見える)」になります。確定診断には肝生検が必要です。

治療: 原因の治療(肥満なら減量・糖尿病ならインスリン療法など)が最優先です。食事は低脂肪・高品質タンパク食が推奨されます。

3. 銅蓄積性肝炎(銅代謝異常)

肝臓に銅が異常蓄積することで起こる慢性肝炎の一形態です。遺伝的に銅の排泄能力が低い犬種(ベドリントンテリア、ウェストハイランドホワイトテリア、スカイテリア、ダルメシアン、ラブラドール・レトリーバー、コッカースパニエルなど)で問題になります。

発症機序: 銅は本来胆汁中に排泄されますが、遺伝的・後天的な異常で肝細胞内に蓄積します。蓄積した銅が肝細胞に酸化ストレスを与え、慢性炎症・壊死・線維化を引き起こします。

治療: 銅キレート剤(ペニシラミン・トリエンチンなど)の投与と低銅食が柱です。銅蓄積性肝炎では食事中の銅含有量の管理が非常に重要で、内臓肉(特にレバー)・シェルフィッシュ・豆類・ナッツ類などは避けます。銅蓄積性肝炎の詳細は犬の銅蓄積性肝炎ガイドをご覧ください。

⚠️ 注意
銅蓄積性肝炎の犬に手作り食を与える場合、レバー・貝類・豆類などは銅が多いため禁忌です。また、銅強化フードや一部のサプリメントも使用前に獣医師に確認が必要です。

4. 胆嚢粘液嚢腫・胆汁うっ滞

胆嚢内に粘液(ムチン)が異常蓄積し、ゼリー状になる病態を「胆嚢粘液嚢腫」といいます。進行すると胆嚢が破裂して腹膜炎になる危険があります。中高齢の犬(特にコッカースパニエル・シェトランドシープドッグ・ミニチュアシュナウザー)に多いです。

症状: ALP・GGT・コレステロールが高く、総ビリルビン上昇(黄疸)を伴うことも。嘔吐・腹痛・食欲不振などが見られます。

治療: 軽症であれば薬物療法(ウルソデオキシコール酸・低脂肪食)で管理しますが、胆嚢の破裂リスクがある場合は外科的な胆嚢摘出術が選択されます。

5. 門脈シャント

本来は腸から吸収された血液(栄養・毒素を含む)が門脈を通って肝臓に入り、解毒されてから全身に送られます。門脈シャントはこのルートをバイパスする異常血管が存在する病態です。

先天性(生まれつき)と後天性(慢性肝疾患や門脈圧亢進による代償性)があります。先天性は小型犬(ヨークシャーテリア・マルチーズ・シーズーなど)と大型犬(アイリッシュウルフハウンドなど)に多いです。

症状: 食後のふらつき・発作・よだれ・視力低下(肝性脳症症状)、発育不良、多飲多尿、尿路結石(尿酸アンモニウム結石)など。

診断: 空腹時・食後の血清胆汁酸測定が有用。血中アンモニア高値もサイン。門脈CT・超音波ドップラー検査でシャント血管を確認します。

治療: 軽症は低タンパク食・ラクツロース・抗生物質(アンモニア産生菌を抑制)などの内科療法。根治を目指す場合は外科的シャント閉鎖術が行われます。

6. 肝臓がん(肝細胞がん・転移性肝腫瘍)

犬の原発性肝腫瘍で最も多いのが「肝細胞がん(Hepatocellular Carcinoma)」です。多くは単発性(1つの大きな腫瘤)で、発見時に転移がなければ外科的切除で長期生存(中央値1,460日以上との報告)が期待できます。

一方、他臓器のがん(脾臓・消化器・乳腺・骨肉腫など)が肝臓に転移した「転移性肝腫瘍」では予後は原発巣の治療に依存します。リンパ腫が肝臓を侵した場合は化学療法が行われます。

症状・検査: ALPやGGTが高く、超音波検査で腫瘤を確認。腹部が膨らむ・元気消失・食欲低下・黄疸などが見られることもあります。確定診断には細胞診または組織検査が必要です。

このセクションのまとめ
肝臓病は「慢性肝炎」「脂肪肝」「銅蓄積性肝炎」「胆嚢粘液嚢腫」「門脈シャント」「肝腫瘍」など多種多様です。種類によって治療法・予後・食事管理の方針が大きく異なるため、超音波検査や生検による正確な診断が治療の出発点となります。

肝臓病の治療法

肝臓病の治療は原因・病態・重症度によって異なりますが、大きく「原因の除去」「薬物療法」「食事療法」「外科療法」の4本柱で構成されます。

ポイント
肝臓病の治療において最も重要なのは「原因の特定と除去」です。ステロイド性であれば投薬の見直し、クッシング症候群であれば原疾患の治療、銅蓄積であれば低銅食と銅キレート剤が最優先となります。

薬物療法

ウルソデオキシコール酸(UDCA)
胆汁の流れを改善し(利胆作用)、肝細胞保護・抗炎症効果を持つ薬剤です。慢性肝炎・胆汁うっ滞・胆嚢粘液嚢腫など幅広い肝疾患で第一選択薬の一つとして使われます。副作用は比較的少なく、長期投与が可能です。

SAMe(S-アデノシルメチオニン)
肝臓の解毒機能に必要なグルタチオン(抗酸化物質)の産生を促進するサプリメント的な薬剤です。肝細胞保護・抗酸化作用があり、慢性肝炎や薬物性肝障害の補助療法として使われます。

シリマリン(ミルクシスル由来)
天然のフラボノイド系化合物で、肝細胞膜の安定化・抗酸化・抗炎症作用があります。サプリメントとして広く使われており、慢性肝炎の補助療法として評価されています。

ステロイド・免疫抑制剤
自己免疫性慢性肝炎(免疫介在性肝炎)と診断された場合は、プレドニゾロンなどの免疫抑制療法が行われます。ただし、ステロイドは正常な犬でもALPを上げるため、投与中のモニタリングが重要です。

銅キレート剤(ペニシラミン・トリエンチン)
銅蓄積性肝炎に対して使用されます。体内の銅と結合して尿中への排泄を促進します。長期投与が必要で、定期的な血液検査による管理が必須です。

ラクツロース
腸内のpHを下げて、アンモニア産生菌の活動を抑制する下剤です。門脈シャントや重度の肝不全による高アンモニア血症・肝性脳症の管理に使われます。

抗生物質(メトロニダゾル・アモキシシリン等)
腸内細菌によるアンモニア産生を抑えるために使用します。また細菌性胆管炎・肝炎の治療にも用いられます。

外科療法

以下の場合に外科的介入が検討されます。

肝臓腫瘍の切除: 単発性の肝細胞がんでは外科的切除(肝葉切除術)によって長期生存が期待できます。
胆嚢摘出術: 胆嚢粘液嚢腫や胆嚢破裂リスクの高い胆石症・胆嚢炎では胆嚢を外科的に摘出します。
門脈シャント閉鎖術: 先天性門脈シャントに対して、シャント血管をアメロイドコンストリクターなどで徐々に閉塞させる手術が行われます。

補助療法・支持療法

重篤な肝臓病では入院・点滴による支持療法(脱水補正・電解質管理・輸液療法)が必要です。低血糖が見られる場合はブドウ糖の補給も行います。また腹水が重篤な場合は腹水穿刺による除去が行われることもあります。

肝臓病に良い食事・NG食事の完全版

食事は肝臓病の管理において非常に重要な位置を占めます。ただし「何が良くて何がNGか」は、肝臓病の種類・重症度・個体の状態によって異なります。ここでは一般的な指針をまとめます。

ポイント
肝臓病の食事管理の原則は「肝臓への負担を減らす」「肝臓の回復を助ける」「合併症(高アンモニア血症・黄疸・腹水)を予防する」の3点です。市販の肝臓療法食を活用することで、この原則を効率よく実践できます。

肝臓病の犬に推奨・注意が必要な食材・栄養素(表)

分類食材・栄養素判定理由・注意点
推奨高品質な植物性タンパク(大豆・豆腐など)動物性より分岐鎖アミノ酸が多く、アンモニア産生が少ない
推奨鶏のむね肉・ささみ(加熱済み)低脂肪・高品質タンパク源。加熱して無塩で与える
推奨白米・うどん(消化の良い炭水化物)消化負担が少なく、エネルギー源として有用
推奨さつまいも(加熱済み・適量)食物繊維・抗酸化物質・低脂肪。ただし銅蓄積性肝炎では少量に抑える
推奨かぼちゃ(加熱済み)βカロテン・食物繊維が豊富。消化に優しい
推奨卵(加熱済み)消化性の高いタンパク源。高アンモニア血症の犬では量に注意
要注意赤身肉(牛・豚)鉄・銅が多めで銅蓄積性肝炎では量を制限。脂身は取り除く
要注意魚(白身魚は◎、脂の多い青魚は△)白身魚(タラ・タイ)は低脂肪で優秀。サバ・イワシは脂肪量に注意
NGレバー・内臓肉銅・鉄・ビタミンAが過剰。特に銅蓄積性肝炎では厳禁
NG脂肪の多い食品(豚バラ・揚げ物・チーズ等)脂肪の過剰摂取は肝臓に負担。膵炎を誘発するリスクも
NGタマネギ・ニンニク・ネギ類犬には有毒(溶血性貧血→肝障害を引き起こす)
NGブドウ・レーズン急性腎障害・肝障害を引き起こす可能性あり
NGキシリトール(ガム・スナック等)急性肝不全を引き起こす危険な毒物
NGアルコール・カフェイン含有食品肝臓での代謝に大きな負担をかける
NG塩分・スパイスの多い人間の食べ物腎臓・肝臓・消化器系すべてに負担

タンパク質の考え方:制限か、品質か

「肝臓病の犬はタンパク質を制限すべき」という考え方が以前はありましたが、現在の獣医栄養学では「タンパク質の量より質を重視する」が主流です。

タンパク質はそもそも肝細胞の修復・再生に不可欠な栄養素です。闇雲に制限すると低栄養状態になり、肝臓の回復を妨げることがあります。

ただし、門脈シャントや重度の肝不全により高アンモニア血症がある場合は、アンモニアを多く産生する動物性タンパク(特に内臓肉・赤身肉)を制限し、植物性タンパク(大豆・豆腐)や卵を主体にした食事が推奨されます。

⚠️ 注意
タンパク質制限・食事内容の変更は、必ず担当獣医師や獣医師・認定ペット栄養管理士への相談のうえで行ってください。肝臓病の種類によって推奨される食事が異なります。

食事回数・食べさせ方のコツ

肝臓病の犬には1日2〜3回の分食が基本です。一度に大量に食べると肝臓への代謝負担が集中します。少量ずつ複数回に分けて与えることで、消化への負担を分散できます。

食欲不振が続く場合は、フードを少量の温水でふやかす・ウエットフードに切り替えるなど食べやすくする工夫をしながら、獣医師に相談して食欲増進薬(ミルタザピンなど)の使用も検討します。

療法食の選び方

肝臓病のある犬には、市販の「肝臓ケア用療法食(処方食)」の使用が推奨されることが多いです。療法食は獣医師の処方が必要なものと、一般販売されているものがあります。

ポイント
療法食は「低銅・中程度の高消化性タンパク・低脂肪・消化器負担が少ない炭水化物・抗酸化物質(ビタミンE・C・亜鉛)強化」という特徴を持つように設計されています。手作り食よりも栄養バランスが管理しやすいメリットがあります。

主な肝臓療法食の特徴比較

メーカー・製品名特徴タンパク源備考
ヒルズ プリスクリプション・ダイエット l/d低銅・高消化性・抗酸化物質強化大豆・卵・乳製品(植物性主体)銅蓄積性肝炎に特に適する
ロイヤルカナン 肝臓サポート消化性の高いタンパク・低脂肪・L-カルニチン配合加水分解タンパク主体食欲不振の犬にも食べやすい設計
パピー・アダルト向け低脂肪フード(市販)脂肪分控えめ・消化器に優しい鶏肉主体が多い軽度の肝酵素上昇・維持管理向け

療法食は「処方食」と「市販品」があり、処方食は原則として獣医師の診断・処方のもとで使用します。自己判断での変更・混合は避け、切り替え時は2〜1週間かけて徐々に移行させてください(消化器への急な変化を防ぐため)。

手作り食について

肝臓病の犬に手作り食を与えたいという飼い主さんは多いですが、栄養バランスの管理が難しく、特に銅・鉄・脂肪の過剰・不足が起こりやすいため、獣医師や認定ペット栄養管理士への相談なしに独自に行うことはリスクがあります。

手作り食を取り入れたい場合は、基本の食事は療法食をベースにし、一部に医師の指導のもとで認められた食材をトッピングするなどの形が安全です。

肝臓ケアに役立つサプリメント

肝臓の治療・管理において、サプリメントは薬物療法・食事療法を補助する役割を果たします。ただし「サプリを飲めば治る」ものではなく、あくまで補助手段として位置づけてください。

⚠️ 注意
サプリメントの中にも、犬に合わないものや過剰摂取でかえって肝臓に負担をかけるものがあります(例:過剰なビタミンA、鉄サプリ)。新しいサプリを始める前に必ず担当獣医師に相談してください。
サプリメント名主な作用エビデンス・備考
シリマリン(ミルクシスル)肝細胞保護・抗酸化・抗炎症犬の慢性肝炎での有効性が報告あり。比較的安全性が高い
SAMe(S-アデノシルメチオニン)グルタチオン産生促進・肝細胞保護処方薬として使用されることも多い。効果の根拠がある
ビタミンE抗酸化作用・肝細胞保護銅蓄積性肝炎などの酸化ストレス軽減に有用
亜鉛(Zinc)銅の吸収阻害・肝細胞保護銅蓄積性肝炎の長期管理に有用。過剰摂取は溶血のリスク
オメガ3脂肪酸(魚油)抗炎症・高脂血症改善慢性肝炎・脂肪肝の補助療法として有用。品質に注意

さつまいも・鶏肉など個別食材Q&A

「この食材は肝臓病の犬に与えて大丈夫?」という飼い主さんからよく寄せられる質問に、一つひとつ答えます。

Q. さつまいもは肝臓病の犬に良いですか?

さつまいもは肝臓病の犬に「適切な量と与え方であれば」おすすめできる食材の一つです。食物繊維・βカロテン・ビタミンC・ビタミンB6などを含み、低脂肪・消化に優しいという特徴があります。

注意点が3つあります。

必ず加熱してから与えてください。 生のさつまいもは消化しにくく、下痢・嘔吐の原因になります。茹でる・蒸す・焼くいずれかで加熱し、皮はむいて与えましょう。

肥満・糖尿病の犬は量を控えめに。 さつまいもは炭水化物が多く、過剰摂取は血糖値の上昇・体重増加につながります。おやつとして少量(体重10kgの犬なら1日20〜30g程度)にとどめてください。

銅蓄積性肝炎の犬は少量に抑えてください。 さつまいもにも微量の銅が含まれます。銅蓄積性肝炎では厳密な低銅食が必要なため、量の管理が重要です。

シュウ酸カルシウム結石を起こしやすい犬(ミニチュアシュナウザー・ビーグルなど)では、さつまいものシュウ酸塩が結石のリスクになる可能性があります。その場合は獣医師に相談のうえ量を決めてください。

Q. 鶏肉(ささみ・むね肉)は与えて良いですか?

はい、鶏のむね肉・ささみは肝臓病の犬に非常に適したタンパク源です。低脂肪・高品質タンパクで、消化吸収率が高く、肝臓への代謝負担が比較的少ない食材です。

与える際は、皮・脂肪部分は取り除き、塩・調味料は一切使わず、必ず十分に加熱(茹でる・蒸す)してから与えてください。加熱後に小さく刻むと食べやすくなります。

鶏もも肉は脂肪が多めなので、肝臓病の犬には量を控えるか、むね肉・ささみを優先してください。

Q. レバーは肝臓に良いから与えても良いですか?

「肝臓にはレバーが良い」というのは人間向けの話であり、肝臓病の犬に対しては基本的におすすめしません。

レバーには銅・鉄・ビタミンAが非常に豊富です。銅蓄積性肝炎の犬にはもちろん厳禁ですが、一般の慢性肝炎においても過剰な銅・鉄・ビタミンAは肝臓の酸化ストレスを高める可能性があります。

健康な犬であっても、レバーはおやつとして少量(体重10kgで週1〜2回、1回10〜20g程度)に抑えるべき食材です。肝臓病の犬は獣医師の指示がない限り避けるのが安全です。

Q. かぼちゃは肝臓に良いですか?

はい、かぼちゃは肝臓病の犬に適した食材の一つです。βカロテン(体内でビタミンAに変換)・食物繊維が豊富で、低脂肪・消化に優しいという特徴があります。茹でて種・皮を除き、適量(おやつとして体重10kgの犬で30〜50g程度)を与えてください。

Q. ヨーグルト・乳製品は与えて良いですか?

少量のプレーンヨーグルト(無糖・無添加)であれば、腸内環境の改善に役立ちます。ただし犬は乳糖(ラクトース)不耐症の個体が多く、大量に与えると下痢の原因になります。1日小さじ1〜大さじ1程度を目安にしてください。

チーズは脂肪分・塩分が高いため、肝臓病の犬には避けるか極少量にとどめてください。

Q. 豆腐は肝臓病の犬に良いですか?

はい、豆腐(木綿・絹ごし)は肝臓病の犬に非常に適した食材です。植物性タンパクで、動物性タンパクに比べてアンモニア産生が少なく、高アンモニア血症がある犬でも利用しやすいです。低脂肪で消化も良い。

ただし市販の豆腐には塩分が含まれている場合があるため、できるだけ塩分無添加のものを選ぶか、水にさらしてから与えてください。

Q. 犬用の市販おやつは与えて良いですか?

肝臓病の犬には、塩分・脂肪・添加物の少ない犬用おやつを選ぶことが大切です。原材料に内臓肉(レバー・ハツなど)・魚の内臓が多いものは銅・鉄が高い可能性があります。

おやつの量はカロリーの10〜15%以内に抑え、原材料を確認してから与えてください。迷った場合は「療法食以外は与えない」という選択も正しい判断です。

このセクションのまとめ
肝臓病の犬に推奨できる食材:鶏むね肉・ささみ(加熱・無塩)、白米・うどん、さつまいも(加熱・適量)、かぼちゃ、豆腐、白身魚。避けるべき食材:レバー・内臓肉、脂肪の多い肉・揚げ物、タマネギ・ブドウ・キシリトールなどの犬に有毒なもの。

定期検査のすすめ:どのくらいの頻度で検査するべきか

肝臓は「沈黙の臓器」ですから、症状が出てからでは手遅れになることがあります。定期的な血液検査が、肝臓病の早期発見・早期治療の最善策です。

ポイント
肝臓の数値が一度正常に戻ったとしても、再発・進行のリスクがあります。「治った」と安心せず、獣医師の指示に従って定期的なモニタリングを続けることが大切です。

推奨される定期検査の頻度

状況推奨検査頻度内容
健康な成犬(1〜7歳)年1回血液検査(一般・生化学)
シニア犬(7歳以上)年2回(半年に1回)血液検査+尿検査+腹部超音波(推奨)
肝酵素軽度上昇(治療前)1〜3ヶ月後に再検査血液検査で推移を確認・原因精査
治療中(慢性肝炎・投薬中)1〜3ヶ月に1回血液検査で薬の効果・副作用を確認
安定期(数値が正常範囲内)3〜6ヶ月に1回数値の維持・再上昇がないか確認
ステロイド・抗てんかん薬投与中1〜3ヶ月に1回薬剤性肝障害のモニタリング

腹部超音波検査の重要性

血液検査だけでは肝臓の構造的な変化(腫瘤・胆嚢の異常・腹水など)を確認できません。シニア犬・肝酵素が持続的に高い犬・治療中の犬では、腹部超音波検査を定期的に受けることを強くおすすめします。

超音波検査は痛みなく・麻酔なしで実施できる検査で、肝臓・胆嚢・脾臓・腎臓・膵臓などの状態を同時に確認できます。肝臓の大きさ・エコー輝度・腫瘤の有無・胆嚢の状態を把握するのに非常に有用です。

✅ 定期検査チェックリスト
  • 毎年1回以上(シニアは半年に1回)血液検査を受ける
  • 肝酵素が上昇した場合は、1〜3ヶ月以内に再検査を予約する
  • 治療中は担当獣医師の指示する頻度でモニタリングを続ける
  • 腹部超音波検査を年1〜2回受ける(シニア・治療中の犬)
  • フード・薬・サプリの変更は必ず獣医師に報告する

よくある質問(FAQ)7問

Q1. 犬の肝臓の数値が高いと寿命に影響しますか?

肝臓の数値が高いこと自体が直接寿命を縮めるわけではありません。大切なのは「なぜ高いのか」を特定して適切に対処することです。ステロイド薬が原因なら投薬調整で改善することが多く、軽度の慢性肝炎でも早期に治療・食事管理を始めれば長期的に良好な状態を維持できます。

一方、肝硬変や肝不全まで進行した場合は予後が厳しくなります。だからこそ「数値が少し高い」段階からの早期対応が非常に重要です。

Q2. ALPだけが高くてALTは正常ですが、心配ですか?

ALPのみの上昇でALTが正常な場合、最も多い原因はステロイド投薬またはクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)です。また成長期の子犬では骨の成長に伴って生理的にALPが高くなることもあります。

ただし、ALPが正常の5倍以上に達する場合や、GGTも同時に上昇している場合は胆嚢・胆管の問題(胆汁うっ滞・胆嚢粘液嚢腫)の可能性もあります。担当獣医師にどの酵素がどの程度高いかを確認し、必要に応じてクッシング検査や超音波検査を受けることをおすすめします。

Q3. 肝臓の数値が高い犬にサプリメントを与えても大丈夫ですか?

シリマリン(ミルクシスル)・SAMe・ビタミンEなどのサプリメントは、獣医師の指導のもとで使用する場合に肝細胞保護・抗酸化作用が期待できます。ただし、すべてのサプリが安全ではなく、鉄・ビタミンA・銅を多く含むサプリはかえって肝臓に負担をかける可能性があります。

新しいサプリメントを始める際は、必ず現在の治療に携わる獣医師に相談してから使用してください。

Q4. 肝臓の数値が一時的に高くなることはありますか?

はい、あります。激しい運動・ストレス・一時的な感染症・注射後・麻酔・手術後などでも一時的にALTやASTが上がることがあります。このような一過性の上昇は、原因が解消されれば数週間以内に正常化することがほとんどです。

「1回の検査で高かった」だけでは判断が難しいため、1〜2ヶ月後に再検査して「上昇が続いているか・下がったか」を確認することが重要です。

Q5. 犬が黄疸になっています。どうすれば良いですか?

黄疸(白目・歯茎・皮膚が黄色い)は肝臓の重篤な機能低下・胆道閉塞・溶血性貧血などを示すサインです。黄疸が確認できた場合は、その日のうちに動物病院を受診してください。緊急性が高い症状です。

黄疸の原因は肝臓だけでなく胆道・血液の問題(自己免疫性溶血性貧血など)でも起こります。血液検査・超音波検査で原因を特定し、それに応じた治療(輸液・利胆薬・ステロイド・手術など)が必要です。

Q6. 肝臓の数値が高い犬に与えてはいけない薬はありますか?

肝臓で代謝・解毒される薬剤は、肝機能が低下している場合に体内への蓄積が起こりやすくなります。特に注意が必要な薬剤として、以下が挙げられます。

・高用量・長期のNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬:カルプロフェン、メロキシカムなど)
・フェノバルビタール(長期投与で肝毒性のリスク)
・アセトアミノフェン(人間用の解熱鎮痛薬:犬に絶対厳禁)
・一部の抗生物質(クロラムフェニコールなど)
・高用量のステロイド薬(長期使用でステロイド肝症)

ただし、必要な治療薬を自己判断でやめることは危険です。「この薬は続けて大丈夫か?」という疑問は、必ず担当獣医師に相談してください。

Q7. 肝臓の数値が高い犬でも運動させて良いですか?

肝臓の数値が軽度に高い程度で、元気・食欲が保たれている場合は通常の生活・軽い散歩は問題ありません。ただし激しい運動はASTを上昇させる可能性があり、また体力消耗が大きい場合は控えめにした方が良い場合があります。

重度の肝臓病・肝不全・腹水がある場合は安静が基本です。どの程度の運動が適切かは、現在の状態・数値・症状を担当獣医師に相談して決めてください。

このセクションのまとめ
肝臓の数値が高いと判明したとき、まず大切なのは「なぜ高いのか」を正確に診断することです。原因によって治療・食事・サプリの方針はすべて異なります。自己判断で薬・食事・サプリを変更するのではなく、担当獣医師と連携して計画的に対応することが愛犬の肝臓を守ることにつながります。

まとめ:愛犬の肝臓を守るために飼い主ができること

この記事では、犬の肝臓の数値が高いときに知っておくべき情報を網羅的に解説しました。最後に要点を整理します。

✅ 飼い主さんに今日から実践してほしいこと
  • 「肝臓の数値が高い」と言われたら、まず何の数値がどの程度高いか確認する
  • 現在投与している薬・サプリを獣医師に伝え、薬剤性の可能性を確認する
  • 必要に応じて腹部超音波検査や追加の血液検査(クッシング検査・胆汁酸測定など)を受ける
  • 食事は低脂肪・高消化性を基本にし、肝臓療法食の使用を獣医師に相談する
  • レバー・タマネギ・ブドウ・キシリトールは絶対に与えない
  • シニア犬(7歳以上)は半年に1回の定期検査を習慣にする
  • 黄疸・神経症状・急激な食欲廃絶・腹水などの緊急サインが出たら即受診する

肝臓病は早期発見・早期対応で予後が大きく変わります。「少し高いだけだから」と放置せず、担当獣医師とともに原因を特定して適切な管理を続けることが、愛犬の長生きと生活の質(QOL)を守ることにつながります。

ご不安なことがあれば、ぜひ信頼できる獣医師に相談してください。このブログでも肝臓病・腎臓病・消化器病など犬の病気に関する情報を発信しています。他の記事もあわせてご覧ください。

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DrVets

国公立大学獣医学科卒業。臨床経験10年以上。犬・猫の慢性疾患(腎臓病・膵炎・消化器疾患・内分泌疾患)と食事管理を専門とする現役獣医師が、科学的根拠に基づいた情報を監修しています。当サイトの全記事は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)・世界小動物獣医師会(WSAVA)等のガイドラインに準拠して監修しています。

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