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犬の肝臓疾患

【獣医師解説】犬の慢性肝炎・肝臓病の食事療法|肝臓を守るドッグフードの選び方

「肝臓の数値が高いと言われた」「慢性肝炎と診断されたけど、何を食べさせればいい?」「療法食に変えたほうがいいの?」——犬の肝臓病は血液検査で偶然発見されることも多い疾患です。
食事療法は薬物治療と並んで肝臓病管理の根幹であり、何を食べさせるかで病気の進行が大きく変わります。
この記事では、獣医師が解説する「犬の肝臓病・慢性肝炎における食事療法の全知識」を徹底的にまとめました。
肝臓のタイプ別の食事方針、制限すべき栄養素の理由、おすすめ療法食、手作り食の注意点、肝臓数値の見方まで、実践的な内容をお届けします。

ポイント
この記事でわかること:肝臓病の病態別食事方針・制限栄養素の理由・療法食の選び方・手作り食の注意点・肝臓数値(ALT・ALP・GGT)の見方

犬の肝臓病における食事療法の目的

💡 ポイント

食事療法は肝臓病管理の根幹です。「残存肝機能の最大活用」「悪化要因の除去」「体重・筋肉量の維持」の3点が目標です。薬物治療と並行して、食事内容を最適化することで病気の進行を大きく左右できます。

肝臓は消化・代謝・解毒・タンパク質合成・ホルモン代謝・ビタミン貯蔵など500種類以上の機能を持つ「体の工場」です。
肝臓が障害されると、アンモニアなどの有毒物質が蓄積し、必要な栄養素の代謝が崩れ、免疫機能が低下します。
食事療法の目的は以下の3点に集約されます。

  1. 残存する肝機能を最大限活かす:消化しやすく、肝臓への代謝負担が少ない食事を選ぶ
  2. 悪化要因を取り除く:銅・特定の毒素・高脂肪食など肝臓にダメージを与えるものを避ける
  3. 体重・筋肉量を維持する:十分なカロリー・適切なタンパク質で体力を保つ
⚠️ 注意
「肝臓病だから低タンパク・低脂肪」と一律に判断するのは誤りです。病態によって食事方針は異なります。まず診断を確定させることが最重要です。

肝臓病のタイプ別:食事方針の違い

⚠️ 注意

「肝臓病だから低タンパク・低脂肪」という一律の判断は危険です。銅蓄積性肝炎と慢性肝炎では食事方針が全く異なります。必ず獣医師による病態の確定診断を行ってから食事を選んでください。

「肝臓病」は単一の病気ではなく、原因・病態によって食事方針が大きく異なります。
診断なしに一律の食事制限をすることは適切でありません。
まず獣医師による原因特定(追加血液検査・超音波・必要に応じて肝生検)を行ってください。

病態特徴食事の最優先ポイント
慢性肝炎(銅蓄積なし)肝臓の慢性炎症・線維化良質な低〜中脂肪食・十分なタンパク質
銅蓄積性肝炎特定犬種で銅が過剰蓄積銅の制限が最重要
肝性脳症アンモニアが脳に影響タンパク質の質を選ぶ・植物性タンパク優先
脂肪肝(肝臓脂肪症)肝臓に脂肪が蓄積低脂肪・適正カロリー・少量多頻度
門脈体循環短絡(肝シャント)肝臓を経由しない異常血流タンパク質制限・植物性タンパク優先
胆嚢疾患(胆泥・胆嚢炎)胆汁うっ滞・胆嚢ポリープ低脂肪食・胆汁の流れをサポート

肝臓病で制限すべき栄養素の理由

💡 ポイント

肝臓病で注意が必要な栄養素は「銅(銅蓄積性肝炎の場合)」「脂肪(肝脂肪症・脂質代謝異常の場合)」「ナトリウム(腹水・浮腫がある場合)」の3つです。病態に合わせた制限が重要で、不要な制限はかえって体力を奪います。

銅の制限:銅蓄積性肝炎の中核的治療

銅蓄積性肝炎(ウェスティ・ラブラドールレトリバー・ダルメシアン・ベドリントンテリア・スカイテリア・ドーベルマンなどに多い)では、食事中の銅を積極的に制限することが治療の根幹です。
なぜ銅が問題になるのか。銅は通常、胆汁を通じて体外に排泄されますが、これらの犬種では排泄メカニズムに遺伝的な欠陥があり、肝臓に銅が蓄積します。
蓄積した銅はフリーラジカルを産生し、肝細胞に酸化的ダメージを与えて慢性炎症・線維化を引き起こします。

ポイント
銅蓄積性肝炎の治療では、食事による銅制限に加えて、銅キレート薬(ペニシラミン・トリエンチン)やモリブデン酸アンモニウムなどの薬物療法も併用されることがあります。食事変更だけでは不十分なことも多いため、必ず獣医師の指示に従ってください。

タンパク質の制限:肝性脳症がある場合のみ

「肝臓病にはタンパク質制限」という情報が広まっていますが、これは正確ではありません。
タンパク質の制限が必要なのは肝性脳症(アンモニアが脳に影響して意識障害・行動異常を起こす状態)が見られる場合に限られます。
肝性脳症がない段階でのタンパク質制限は、筋肉量の低下・免疫機能の低下・低アルブミン血症のリスクを高め、かえって状態を悪化させる可能性があります。
慢性肝炎の多くでは、適切な量・質のタンパク質は維持または増量すべきです。

脂質の過剰摂取を避ける理由

高脂肪食は消化の際に膵臓を過剰に刺激し、また肝臓への代謝負担を増やします。
特に脂肪肝・高脂血症を合併している場合、高脂肪食は病態を直接悪化させます。
ただし脂質は必須の栄養素であり、極端な制限は不要です。
乾物換算で脂肪8〜15%程度(低〜中程度の脂肪含量)が一般的な目安とされています。

ビタミンAの過剰補充は禁止

ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、過剰摂取すると肝臓に蓄積して肝毒性を引き起こします。
特にレバーはビタミンAの含有量が非常に高いため、肝臓病の犬には与えないことが原則です。
市販のビタミンAサプリメントを肝臓病の犬に自己判断で与えることは絶対に避けてください。

このセクションのまとめ
・銅蓄積性肝炎:銅制限が最重要(レバー・貝類・豆類・全粒穀物を避ける)
・タンパク質制限:肝性脳症がある場合のみ。ない場合は制限不要
・脂質:過剰摂取を避ける(低〜中脂肪、乾物換算8〜15%)
・ビタミンA:過剰補充は肝毒性のリスクあり(レバー・サプリ注意)

タンパク質:制限より「質」が重要

💡 ポイント

最新の研究では、肝臓病の犬に対して過度なタンパク制限は推奨されていません。むしろ筋肉量を維持するために「消化しやすい良質なタンパク質(卵・魚・鶏肉)」を適切量与えることが重要です。ただし肝性脳症がある場合は例外です。

肝性脳症がある場合でも、タンパク質を極端に制限するより「アンモニア産生が少ない質の良いタンパク質」に切り替えることが推奨されています。
アンモニアは腸内細菌がタンパク質を分解する際に産生されますが、タンパク質の種類によって産生量が異なります。

タンパク質の種類アンモニア産生量肝臓病での推奨度具体的な食材
乳製品タンパク低い推奨コテージチーズ・低脂肪ヨーグルト
卵タンパク低い推奨ゆで卵・スクランブルエッグ
白身魚タンパク低〜中推奨タラ・カレイ・ヒラメ(塩なし)
植物性タンパク(大豆等)状況による豆腐(銅蓄積性肝炎では避ける)
鶏肉(白身)許容鶏むね・ささみ(皮なし)
赤身肉高い制限牛肉・豚肉
内臓類高い避けるレバー・腎臓・心臓

炭水化物:血糖の安定化と肝臓グリコーゲンの補給

💡 ポイント

肝臓病の犬では糖代謝が乱れやすく、低血糖を起こすリスクがあります。消化しやすい炭水化物(白米・さつまいも・かぼちゃ)を適量与えることで血糖を安定させ、肝臓のグリコーゲン貯蔵を助けます。

肝臓はグリコーゲン(糖の貯蔵形)を蓄える重要な臓器ですが、肝機能が低下するとグリコーゲン貯蔵量が減り、血糖値が不安定になりやすくなります。
消化の良い炭水化物を複数回に分けて与えることで、血糖値を安定させ、肝臓への負担を減らすことができます。
1日の食事を4〜6回に分けて与える「少量多頻度給餌」が肝臓病の犬に推奨されます。
絶食時間を短くすることで、肝臓が脂肪酸をエネルギー源として大量動員することを防ぎます。

炭水化物の種類消化率推奨度特記事項
白米(炊いたもの)高い推奨銅含量も少ない。消化に優しい
じゃがいも(茹で)高い推奨皮なし・塩なし
さつまいも(茹で)中〜高推奨食物繊維源としても有効
玄米・全粒穀物銅蓄積性肝炎では避ける銅含量が高い

肝臓に良い食材・NG食材一覧

⚠️ 注意

肝臓に厳禁の食材:タマネギ・ニンニク(溶血性貧血の原因)、キシリトール(低血糖・肝障害)、アルコール、生の豚肉、カフェイン。これらは極微量でも重篤な肝障害を引き起こす可能性があり、絶対に与えないでください。

肝臓に良い食材(積極的に取り入れたいもの)

食材肝臓への効果注意点
鶏むね肉・ささみ(皮なし)低脂肪・高タンパク・銅が少ない塩分・調味料を使わず加熱
白身魚(タラ・カレイ・ヒラメ)低銅・高消化率タンパク刺身でなく加熱して与える
卵(ゆで・スクランブル)良質タンパク・抗酸化成分1日1〜2個程度(サイズによる)
コテージチーズ(低脂肪)アンモニア産生が少ないタンパク源乳糖不耐症の犬には少量から
白米(炊いたもの)消化が良い・低銅調味料なし
かぼちゃ(加熱)抗酸化ビタミン・食物繊維種・皮は除去
さつまいも(加熱)消化しやすい炭水化物・食物繊維少量から。高カロリーなので肥満注意
ブロッコリー(加熱)抗酸化成分・解毒経路サポート少量。大量はNG

肝臓病の犬に与えてはいけない食材(NGリスト)

食材避ける理由特記事項
レバー(牛・豚・鶏)銅・ビタミンAが非常に多い銅蓄積性肝炎では特に厳禁
貝類(かき・ホタテ・あさり)銅含量が非常に高い銅蓄積性肝炎では厳禁
豆類・大豆製品(納豆・味噌等)銅含量が高い豆腐は比較的少ないが銅蓄積性肝炎では注意
全粒穀物・ふすま・玄米銅含量が高い銅蓄積性肝炎では白米・精製穀物に切り替え
きのこ類(しいたけ等)銅含量が高い少量でも銅蓄積性肝炎では避ける
ナッツ類(カシュー・アーモンド)銅・脂肪が多いマカデミアナッツは犬に毒性あり
タマネギ・ネギ・ニンニク犬に有毒(溶血性貧血)肝臓病に限らず全ての犬に与えてはいけない
ブドウ・レーズン犬に腎毒性あり腎臓への毒性が確認されている
チョコレートテオブロミン毒性心毒性・神経毒性あり
キシリトール含有食品犬に肝毒性・低血糖ガム・飴・一部の食品に含有
アルコール類直接的な肝毒性微量でも与えてはいけない
高脂肪の揚げ物・脂身脂肪肝・膵炎悪化リスク胃腸・肝臓への負担が大きい
⚠️ 注意
銅蓄積性肝炎の犬では、一般的に「健康に良い」とされる食材(レバー・貝類・豆腐・きのこ・ナッツ)が病態を悪化させる可能性があります。「健康食材=安全」という思い込みは禁物です。

おすすめ療法食4選:肝臓病の犬に適した処方食

💡 ポイント

肝臓病用の処方食は獣医師処方が必要ですが、科学的根拠に基づいて設計されており、自己判断での市販フードより安全性が高いです。ヒルズのl/d、ロイヤルカナンの肝臓サポート、ピュリナのHPが代表的な選択肢です。

肝臓病用の処方食は、適切なタンパク質・低銅・消化の良い炭水化物・低〜中脂肪という条件を考慮して設計されています。
市販の一般フードでは対応が難しい栄養管理を実現するため、重篤な肝臓病の犬には処方食の使用を強く推奨します。

ヒルズ プリスクリプション ダイエット l/d(肝臓ケア)

肝臓病の研究実績が豊富な処方食です。
低銅設計・高消化率タンパク・中程度の脂肪含量で設計されており、肝性脳症の予防・管理にも適した植物性タンパクの比率が高い配合となっています。
ドライとウェットの両タイプがあります。
参考価格(目安):ドライ 約3,500〜5,000円(1.5〜2kg)

ロイヤルカナン 肝臓サポート

低銅設計・高消化率の動物性タンパク・嗜好性が高い処方食です。
食欲が低下している肝臓病の犬でも食べやすい配合で、食欲不振の改善にも効果的です。
ドライ・ウェット・リキッドタイプがあり、重篤な食欲不振時にはリキッドタイプが選択肢になります。
参考価格(目安):ドライ 約3,800〜5,500円(1.5〜2kg)

ロイヤルカナン 肝臓サポート スペシャル

通常の肝臓サポートよりさらに低タンパク・低銅設計の処方食です。
肝性脳症を合併している犬・より厳格なタンパク管理が必要な犬に適しています。
食欲管理が困難な重篤例にも対応できます。

ネスレ ピュリナ NF 腎臓機能ケア(腎臓・肝臓の複合管理)

肝臓病に腎臓病を合併している場合は、腎臓疾患用処方食との兼ね合いが必要になります。
この場合は必ず獣医師の指示のもとで最適な処方食を選択してください。
自己判断での選択は、一方の臓器への対処がもう一方を悪化させる可能性があります。

ポイント
処方食はいずれも動物病院の処方・指示のもとで使用するものです。オンラインや市販でも入手可能な場合がありますが、病態に合わない処方食の使用はかえって状態を悪化させる可能性があります。必ず獣医師に相談してから使用してください。

手作り食を選ぶ場合の詳細な注意点

⚠️ 注意

手作り食は栄養バランスの管理が非常に難しく、肝臓病の犬には特にリスクが高いです。どうしても手作りをしたい場合は、必ず獣医師または獣医栄養士の監督下でレシピを作成し、定期的な血液検査で栄養状態を確認してください。

手作り食は食材の完全なコントロールができる反面、栄養バランスの調整が非常に難しく、不適切な手作り食が病態を悪化させた例も報告されています。
手作り食を選択する場合は、以下の点を厳守してください。

手作り食の基本ルール

  • 必ず獣医師または獣医栄養士の監修のもとでレシピを作る:個人がインターネットで調べたレシピを使用しない
  • タンパク質・銅・亜鉛・カルシウム・リンのバランスを確認する:特に銅と亜鉛は拮抗するため、亜鉛の適切な補充も必要
  • ビタミンAの過剰補充を絶対に避ける:レバー・ビタミンAサプリの単独過剰補充は禁止
  • ビタミンE・Cなどの抗酸化ビタミンは適切量を含む:肝臓の酸化的ダメージ軽減に役立つ
  • 定期的な血液検査でモニタリングを継続する:手作り食開始後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月後を目安に

手作り食の基本レシピ例(参考)

※ 以下は一般的な参考例です。必ず獣医師・獣医栄養士に個別に確認してください。

  • 鶏ささみ(皮なし):全体の30〜40%
  • 白米(炊いたもの):全体の35〜45%
  • かぼちゃ・さつまいも・にんじん(加熱):全体の15〜20%
  • コテージチーズ(低脂肪):少量
  • サプリメント(獣医師指示のもとでビタミン・ミネラル補充)
⚠️ 注意
手作り食だけでは必須ミネラル・ビタミンが不足することが多いです。特にカルシウム・ビタミンD・マンガン・ヨードなどは手作り食で意識的に補わないと欠乏します。獣医師・獣医栄養士による栄養設計が必須です。

サプリメントについて:獣医師処方品を優先する

⚠️ 注意

市販の肝臓サプリメントには品質のばらつきがあります。ウルソデオキシコール酸(UDCA)・SAMe・ミルクシスル(シリマリン)などは効果が研究されていますが、用量・製品選びは必ず獣医師に相談してください。自己判断での大量投与は逆効果になることがあります。

以下は動物病院で処方されることがある肝臓保護サポートです。
市販品の自己判断使用は推奨しません。 病態・投与量・他の薬との相互作用を考慮して使用する必要があります。

サプリメント作用エビデンスレベル備考
SAMe(S-アデノシルメチオニン)肝臓の解毒経路(グルタチオン合成)をサポート中〜高獣医師処方品が推奨(Denosyl等)
シリマリン(ミルクシスル)肝細胞保護・抗酸化・抗炎症作用市販品は品質のばらつきが大きい
ウルソデオキシコール酸(UDCA)胆汁流改善・肝細胞保護中〜高医薬品として処方。自己判断では使用しない
亜鉛(Zinc)銅吸収の抑制・抗酸化中(銅蓄積性肝炎で有用)銅蓄積性肝炎の補助療法として活用
ビタミンE抗酸化・肝細胞保護適切量の補充が推奨される場合あり

食欲不振への対応:2日以上食べない場合はすぐ受診

⚠️ 注意

肝臓病の犬が2日以上何も食べない場合は緊急受診が必要です。空腹状態が続くと「肝リピドーシス(脂肪肝)」へ進行するリスクがあります。特に肥満気味の犬では急速に悪化することがあるため、食欲不振のサインを見逃さないようにしましょう。

肝臓病が進行すると食欲が低下することがよくあります。
食欲がないまま放置すると、体脂肪を大量に動員して「脂肪肝(肝臓脂肪症)」を二次的に引き起こすリスクがあります。
特に肥満気味の犬では、2〜3日の絶食で重篤な肝臓脂肪症が起こることがあるため注意が必要です。

食欲を引き出す工夫

  • ウェットフードや温めた食事(人肌程度・37℃前後)で香りを立てる
  • 少量多頻度(1日4〜6回)で与える
  • コテージチーズや低脂肪の鶏スープ(玉ねぎなし)を少量混ぜる
  • 処方食が嫌いな場合は許可された食材をミックスして段階的に移行する
  • 食事の器・場所・温度を変えてみる

2日以上食べない場合の対処

  • 必ず動物病院を受診する
  • 食欲促進薬(ミルタザピン・カプロモレリンなど)の処方を検討してもらう
  • 重篤な場合は胃チューブや経腸栄養の導入が検討されることもある

肝臓数値(ALT・ALP・GGT)の見方と食事との関係

💡 ポイント

ALTは肝細胞の障害を示す指標、ALPは胆管・骨・副腎皮質疾患の指標、GGTは胆汁うっ滞の指標です。食事変更後に数値が改善しているかを確認するため、食事変更から4〜8週間後に再検査することを獣医師に相談しましょう。

肝臓病のモニタリングには定期的な血液検査が不可欠です。
主な肝臓関連数値の見方を理解しておくことで、食事管理の効果をより適切に評価できます。

検査項目正常範囲(目安)何を示すか食事との関連
ALT(GPT)10〜88 U/L肝細胞の障害・壊死の指標。最も肝臓に特異的食事改善・銅制限で改善することがある
ALP23〜212 U/L胆汁うっ滞・肝臓疾患・骨疾患・ステロイド投与でも上昇ステロイド投与中は高値が続くことがある
GGT1〜10 U/L胆管疾患・胆汁うっ滞の指標。ALTより胆道系を反映胆汁うっ滞改善で低下することがある
ビリルビン0〜0.3 mg/dL黄疸の指標。高値で皮膚・粘膜が黄色くなる重篤な胆汁うっ滞・肝不全で上昇
アルブミン2.5〜3.5 g/dL肝臓の合成機能の指標。低値は重篤な肝不全サイン適切なタンパク質供給で維持を目指す
胆汁酸絶食時0〜5 μmol/L肝機能の最も鋭敏な指標のひとつ食後2時間値が特に重要(門脈短絡の検出)
アンモニア0〜50 μg/dL肝性脳症の診断・モニタリングに使用タンパク質の質・量の調整で低下を目指す
ポイント
「ALTが改善した」だけでは完全回復とは言えません。アルブミン・胆汁酸・アンモニアを組み合わせて総合的に評価することが重要です。食事変更後、数値が改善するまでには4〜12週間かかることがあるため、焦らず継続してください。

定期的な血液検査によるモニタリングの重要性

💡 ポイント

肝臓病の食事管理中は3〜6ヶ月ごとの定期血液検査が推奨されます。数値の変化を追うことで、食事療法の効果を客観的に評価し、必要に応じて方針を修正できます。症状が安定していても検査を怠らないことが重要です。

食事変更後の効果を確認するために、定期的な血液検査が不可欠です。
主にALT・ALP・ビリルビン・アルブミン・胆汁酸・必要に応じてアンモニアをモニタリングします。

推奨モニタリング頻度(目安)

  • 食事変更・薬開始後4〜6週:最初の効果確認
  • 数値安定後:2〜3ヶ月ごと:継続的な管理
  • 長期安定後:3〜6ヶ月ごと:維持管理
  • 銅キレート薬使用中:腎機能・血球検査も追加
このセクションのまとめ
・ALT:肝細胞障害の指標。食事改善で改善することがある
・ALP:胆汁うっ滞・ステロイドでも上昇。単独では判断しない
・GGT:胆道疾患の指標
・アルブミン:肝機能の合成能力の指標。低値は重篤なサイン
・胆汁酸:肝機能の最も鋭敏な指標。食前・食後2時間で測定

犬種別の慢性肝炎発症リスクと遺伝的背景

💡 ポイント

銅蓄積性肝炎はウェストハイランドホワイトテリア・ベドリントンテリア・ダルメシアンなどで遺伝的な素因が報告されています。これらの犬種では若い頃からの定期的な肝臓検査と、銅が少ないフード選びが予防的に重要です。

慢性肝炎・銅蓄積性肝炎には明確な犬種的素因があります。
愛犬の犬種を把握することで、早期検査・予防的な食事管理を実施できます。
以下の犬種を飼っている方は、定期的な肝臓数値チェックを特に意識してください。

犬種発症リスクの種類特徴・注意点推奨スクリーニング開始年齢
ドーベルマン・ピンシャー慢性肝炎(銅蓄積を伴う場合あり)雌に多い。無症状で進行することが多く発見が遅れやすい。肝線維化・肝硬変に進展しやすい2〜3歳から年1回の血液検査
コッカースパニエル(アメリカン・イングリッシュ)銅蓄積性肝炎・慢性肝炎遺伝的な銅排泄障害。中年齢(4〜7歳)で発症することが多い。銅キレート治療が必要なケースが多い2歳から年1回の血液検査(銅値測定も推奨)
ラブラドール・レトリバー銅蓄積性肝炎ATP7A/B遺伝子変異との関連が研究されている。肥満が多い犬種のため脂肪肝との鑑別も重要3歳から年1回の血液検査
ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウェスティ)銅蓄積性肝炎最もよく研究されている銅蓄積性肝炎の犬種。肝生検で確定診断が推奨される2歳から年1回の血液検査
ベドリントン・テリア銅蓄積性肝炎(最重症型)COMMD1遺伝子変異。遺伝子検査で素因確認が可能。無治療では肝硬変・肝不全に至る子犬時から遺伝子検査推奨
ダルメシアン銅蓄積性肝炎・尿路結石尿酸代謝異常との合併が多い。低プリン食との兼ね合いも考慮が必要2歳から定期検査
スカイ・テリア銅蓄積性肝炎若齢(2〜4歳)で急性肝不全として発症することがある。予後が悪いケースも1歳から年1回の血液検査
サモエド慢性肝炎自己免疫性肝炎の可能性がある。ステロイド治療との食事管理の兼ね合いが重要3歳から年1回の血液検査
ポイント
上記の犬種を飼っている方は、症状がなくても年1〜2回の血液検査(ALT・ALP・GGT・アルブミン・胆汁酸)が推奨されます。肝臓病は症状が出る前に血液検査で発見されることが多く、早期発見が予後を大きく左右します。

ALT・ALP・GGT別のフード選択指針

血液検査の結果に応じて、フードの選択方針が変わります。
「数値が高い=同じ対応」ではなく、どの数値が、どの程度上昇しているかを獣医師と確認した上でフードを選択することが重要です。

検査項目・状況考えられる病態フード選択の優先事項避けるべき食材・成分
ALT単独上昇(100〜500 U/L程度)肝細胞の炎症・軽度障害消化の良い低〜中脂肪食。タンパク質は維持。抗酸化成分(ビタミンE・C)補充高脂肪食・揚げ物・添加物の多い市販おやつ
ALT高値(500 U/L以上)重篤な肝細胞障害・急性肝炎獣医師処方の肝臓用処方食。消化率が高く肝臓負担が少ないもの。少量多頻度給餌内臓類・高銅食材・高脂肪食材全般
ALP単独上昇(ステロイド誘発性)ステロイド性肝障害ステロイド投与が続く場合は低脂肪食。カロリー制限も考慮(ステロイドによる過食・体重増加の防止)高脂肪食・高カロリー食。銅含量の多い食材
ALP・GGT両方上昇胆汁うっ滞・胆嚢疾患・胆管炎低脂肪食が最優先。脂肪10%以下(乾物換算)を目標。胆汁の分泌・流れを促す少量多頻度給餌高脂肪食・揚げ物・脂身の多い肉。食事を長時間抜く
GGT単独高値(ALTは正常〜軽度)胆管疾患・胆嚢炎・一部薬剤の影響低脂肪食の継続。胆汁酸検査も追加して肝機能を総合評価高脂肪食・定期的な食事スキップ
アルブミン低値(2.5 g/dL未満)肝合成能低下・重篤な肝不全タンパク質の供給量を確保(肝性脳症がなければ)。高消化率のタンパク源(卵・白身魚・コテージチーズ)を優先タンパク質の過度な制限。低カロリー食(タンパク質が分解されるため)
アンモニア高値・肝性脳症の症状肝性脳症植物性・乳製品タンパク優先。タンパク質の「量よりも質」を重視。獣医師処方の肝臓用処方食(タンパク制限設計)赤身肉・内臓類・高タンパク食材を大量に与えること
このセクションのまとめ
・ALT高値→肝細胞障害:低〜中脂肪・高消化率の処方食を検討
・ALP・GGT両高値→胆汁うっ滞:低脂肪食が最優先
・アルブミン低値→タンパク質確保(肝性脳症なければ)
・アンモニア高値→タンパク質の質を変更(植物性・乳製品優先)

低タンパク vs 高タンパク:最新エビデンスで解説

💡 ポイント

最新のガイドライン(2023年WSAVA)では、肝性脳症がない限り低タンパク食は推奨されていません。むしろ適切なタンパク質摂取が筋肉量を維持し、長期予後を改善します。「肝臓病=低タンパク」という古い常識はアップデートされています。

「肝臓病=低タンパク食」という考え方は、以前の診療ガイドラインで広まりましたが、現在のエビデンスはこれを否定する方向に動いています。
2020年代の研究では、肝性脳症を伴わない慢性肝炎・肝硬変の患者(人間・犬ともに)において、タンパク質制限が予後を悪化させる可能性が示されています。

低タンパク食の問題点(肝性脳症がない場合)

  • 筋肉量の低下(サルコペニア):肝臓病の犬はもともと筋肉量が低下しやすい。低タンパク食はこれをさらに悪化させる
  • 免疫機能の低下:タンパク質は免疫グロブリン合成に必要。不足すると感染症への抵抗力が下がる
  • 低アルブミン血症の悪化:アルブミンはタンパク質から合成される。タンパク質不足がアルブミン低下を招く
  • 回復力の低下:肝細胞の再生にはタンパク質が必要。制限すると肝臓の修復能力が落ちる

高タンパク食の問題点(肝性脳症がある場合)

  • アンモニアの産生増加:腸内細菌がタンパク質を分解する際にアンモニアが産生される。肝臓で処理できないアンモニアが脳に影響を与える
  • 肝性脳症の悪化:意識障害・行動異常・昏睡のリスクが増加する

現在の推奨アプローチ

最新エビデンスに基づく推奨
・肝性脳症がない慢性肝炎:タンパク質は「制限しない」か「適切量を維持」
・肝性脳症がある場合:タンパク質の「量を制限」するより「質を変える」(植物性・乳製品タンパク優先)
・どちらの場合も:タンパク質の過度な制限より、消化率の高い質の良いタンパク源を選ぶことが重要
・参考文献:WSAVA Nutritional Guidelines(2021)、Journal of Veterinary Internal Medicine(2019)
タンパク質方針適応となる病態目標タンパク質量(乾物換算)推奨タンパク源
維持〜やや増量(高消化率)肝性脳症なし、慢性肝炎、銅蓄積性肝炎(銅制限のみ実施)乾物換算18〜25%(通常の犬と同等〜やや低め)卵・白身魚・鶏ささみ・コテージチーズ
中等度制限+質の変更軽度〜中等度の肝性脳症乾物換算14〜18%(処方食レベル)植物性タンパク・コテージチーズ・卵優先
低タンパク(獣医師指示のもとで)重篤な肝性脳症・肝不全乾物換算12〜16%(専用処方食)処方食(ロイヤルカナン肝臓サポートスペシャル等)

1日の食事プランサンプル(体重別)

以下は参考例です。必ず獣医師・獣医栄養士に個別の指示を仰いでください。
使用するフードによってカロリー・栄養成分が異なるため、以下は考え方の目安として参照してください。

体重5kgの犬(慢性肝炎・肝性脳症なし)の1日の食事例

体重5kg 参考例
1日カロリー目標:約250〜300 kcal(維持エネルギー要求量の90%程度)

【午前(朝食)】鶏ささみ茹で 40g + 白米炊いたもの 60g + 茹でかぼちゃ 20g
【午後(昼食)】ロイヤルカナン肝臓サポート(ウェット)1/2缶
【夕方(夕食)】鶏ささみ茹で 40g + 白米炊いたもの 60g + 茹でさつまいも 20g
【就寝前(補食)】コテージチーズ(低脂肪)大さじ1

※水は常に新鮮なものを十分に提供する

体重10kgの犬(慢性肝炎・肝性脳症なし)の1日の食事例

体重10kg 参考例
1日カロリー目標:約400〜480 kcal

【朝食(7時)】処方食ドライ(肝臓ケア)60g + 白湯をかけてふやかす
【昼食(12時)】白身魚(タラ)茹で 50g + 白米炊いたもの 80g + 茹でにんじん 30g
【夕食(17時)】処方食ドライ(肝臓ケア)60g
【補食(20時)】コテージチーズ(低脂肪)大さじ2 + ゆで卵1個(小)

体重20kgの犬(慢性肝炎・肝性脳症なし)の1日の食事例

体重20kg 参考例
1日カロリー目標:約700〜850 kcal

【朝食(7時)】処方食ドライ(肝臓ケア)100g + 白湯少量
【昼食(12時)】鶏ささみ茹で 80g + 白米炊いたもの 150g + 茹でブロッコリー 40g
【夕食(18時)】処方食ドライ(肝臓ケア)100g + 処方食ウェット 1/2缶を混ぜる
【補食(21時)】コテージチーズ(低脂肪)大さじ3 or 白身魚(タラ)茹で 60g
⚠️ 注意
上記はあくまで参考例です。肥満度(BCS)・活動量・病態の重症度・併用薬によってカロリー・栄養素の必要量は大きく変わります。必ず獣医師に個別の指示をもらい、定期的な体重測定・血液検査で評価してください。

薬物療法と食事の相互作用

⚠️ 注意

一部の薬(フェノバルビタール・NSAIDs・ステロイドなど)は肝臓に負担をかける可能性があります。これらの薬を服用中の場合は、定期的な肝臓数値のモニタリングを特に注意して行い、食事内容を獣医師と相談してください。

肝臓病の治療では薬物と食事が密接に関わります。
薬の効果を最大化し、副作用を最小化するために、薬の種類に応じた食事の注意点を理解しておきましょう。

ウルソデオキシコール酸(UDCA・ウルソ)

胆汁酸製剤の一種で、胆汁の流れを改善し、肝細胞保護作用・免疫調整作用も持ちます。
慢性肝炎・胆汁うっ滞・銅蓄積性肝炎などに広く使われています。

  • 食事との関係:食事と一緒に(または食直後に)投与することで吸収が高まります。空腹時投与では効果が落ちる場合があります
  • 注意点:高脂肪食と同時摂取すると胆汁分泌が過剰になる可能性があります。低脂肪食との組み合わせが推奨されます
  • 食材との相互作用:特定の食材との相互作用は報告されていませんが、食事の規則性を保つことが薬効の安定につながります

SAMe(S-アデノシルメチオニン)

肝臓の解毒経路(グルタチオン合成・メチル化反応)をサポートするサプリメント。
獣医師処方品(Denosyl等)が推奨されます。

  • 食事との関係空腹時投与が推奨されます(食事前1〜2時間、または食後2時間以上あける)。食事と一緒に与えると吸収率が大幅に低下します
  • 注意点:SAMeはグルタチオン産生を高めるため、抗酸化ビタミン(E・C)を一緒に補充するとより効果的です
  • 食事との組み合わせ:ビタミンE含有食(植物油を含む食事)の適切な摂取を合わせて行うと抗酸化効果が高まります

ビタミンE(トコフェロール)

脂溶性抗酸化ビタミン。肝細胞の酸化的ダメージを軽減し、銅による酸化ストレスの軽減にも役立ちます。

  • 食事との関係脂溶性ビタミンのため、脂質を含む食事と一緒に摂取すると吸収が高まります。極端な低脂肪食では吸収率が低下する可能性があります
  • 注意点:過剰摂取(特に他の脂溶性ビタミンと組み合わせた場合)は有害になる可能性があります。獣医師指示の用量を守ってください
  • 食材との相互作用:ビタミンE豊富な食材(ひまわり油・小麦胚芽油)も参考になりますが、油脂の過剰は高脂肪食になるため注意が必要です

銅キレート薬(ペニシラミン・トリエンチン)

銅蓄積性肝炎の治療に使われる薬です。体内の銅と結合して尿中への排泄を促します。

  • 食事との関係必ず空腹時に投与してください(食事の30分〜1時間前)。食事と一緒に投与すると食事中のミネラルと結合し、薬効が著しく低下します
  • 注意点:ペニシラミンは亜鉛・鉄とも結合します。薬の長期使用中は亜鉛欠乏・鉄欠乏のモニタリングが必要です
  • 食事との組み合わせ:銅制限食との組み合わせで最大の効果を発揮します。銅含量の低い処方食(ヒルズ l/d 等)と組み合わせてください

ステロイド(プレドニゾロン等:自己免疫性肝炎に使用)

自己免疫性肝炎の治療に使われるステロイドは、食事管理が特に重要です。

  • 食事との関係:ステロイドは食欲増進・体重増加・筋肉分解・血糖値上昇を引き起こします。低脂肪・低カロリー食(維持エネルギーの80〜90%程度)でコントロールすることが推奨されます
  • 注意点:ステロイド誘発性高脂血症が起こることがあるため、脂肪含量が低い食事が重要です
  • 食材との相互作用:ステロイドはナトリウム貯留を引き起こす場合があります。塩分の多いおやつ・加工食品は避けてください
薬剤名投与タイミング食事との組み合わせ注意点相性の良い食事スタイル
UDCA(ウルソ)食直後推奨高脂肪食と組み合わせない低〜中脂肪の処方食
SAMe空腹時(食事前後2時間あける)食事と一緒に与えると吸収率が大幅低下朝食前or就寝前に空腹で投与
ビタミンE食事と一緒が吸収率高極端な低脂肪食では吸収低下少量の良質な脂質を含む食事と一緒に
銅キレート薬(ペニシラミン等)必ず空腹時(食前30〜60分)食事中のミネラルと結合し薬効が低下低銅処方食との組み合わせが必須
プレドニゾロン食後が推奨(胃刺激軽減)食欲増進・体重増加に注意低脂肪・カロリー制限食
シリマリン(ミルクシスル)食事と一緒でも空腹時でも可特定の相互作用は少ない低〜中脂肪の処方食と組み合わせ可

処方食ブランド比較テーブル(ヒルズ・ロイヤルカナン・ピュリナ)

肝臓病用の主要な処方食ブランドを比較します。
栄養成分は製品ロットや改訂によって変更されることがあるため、最新情報は各メーカーの公式情報や動物病院でご確認ください。

製品名メーカータンパク質(乾物換算)脂肪(乾物換算)銅管理カロリー(kcal/100g)特徴・向いている病態
ヒルズ l/d(犬用)ヒルズ約16〜18%約10〜14%低銅設計(銅蓄積性肝炎に対応)約350〜380 kcal慢性肝炎・銅蓄積性肝炎・肝性脳症の予防に広く対応。植物性タンパク比率が高い
ロイヤルカナン 肝臓サポートロイヤルカナン約18〜22%約12〜16%低銅設計約370〜400 kcal嗜好性が高く食欲不振の犬にも食べやすい。ウェット・リキッドタイプもあり
ロイヤルカナン 肝臓サポートスペシャルロイヤルカナン約14〜16%(より低タンパク)約12〜14%低銅設計約350〜370 kcal肝性脳症・重篤な肝不全・より厳格なタンパク管理が必要なケースに
ピュリナ NF 腎臓機能ケアネスレ ピュリナ約14〜16%約11〜14%銅管理設計あり約340〜370 kcal肝臓・腎臓の複合管理に。肝腎合併症の犬に検討(獣医師相談必須)
ピュリナ HA 加水分解タンパクネスレ ピュリナ約16〜20%約10〜13%低銅設計あり約360〜390 kcalアレルギー・IBDを合併した肝臓病の犬に。加水分解タンパクで消化負担を軽減
ヒルズ l/d(ウェット缶)ヒルズ約15〜18%(乾物換算)約9〜12%(乾物換算)低銅設計約380〜420 kcal(乾物換算)食欲不振の犬・ドライを嫌がる犬に。水分補給にも役立つ。ドライと混合して使いやすい

処方食選択のポイント

  • 銅蓄積性肝炎(ウェスティ・コッカースパニエル等):銅制限が明確に設計されたヒルズ l/d またはロイヤルカナン肝臓サポートを優先
  • 肝性脳症がある:ロイヤルカナン肝臓サポートスペシャル(タンパク質がより低く設計)
  • 食欲不振が強い:ロイヤルカナン(嗜好性が高い)またはウェットフードタイプを検討
  • 腎臓病を合併:ピュリナ NF またはヒルズ l/d(腎臓への配慮も含む)→必ず獣医師に確認
  • アレルギーを合併:ピュリナ HA(加水分解タンパク)を検討
⚠️ 注意
処方食は動物病院での処方・指導のもとで使用するものです。ネット通販でも入手可能ですが、病態に合っていない処方食の使用は状態を悪化させる可能性があります。必ず獣医師に相談した上で使用してください。また、栄養成分は定期的に変更されることがあるため、最新情報は各メーカーや動物病院でご確認ください。

まとめ:「肝臓病」の原因を確認してから食事を選ぶ

肝臓病の食事療法に「万能な正解」はありません。
銅蓄積性肝炎なのか・肝性脳症があるのか・脂肪肝なのかによって、最優先に対処すべき栄養素が変わります。
まず診断を確定させ、原因に応じた食事管理を獣医師と相談しながら進めることが最も重要です。

  • 銅蓄積性肝炎 → 銅制限が最優先。レバー・貝類・豆類・全粒穀物を避ける
  • 慢性肝炎(銅蓄積なし) → タンパク質は適切量維持。低〜中脂肪食
  • 肝性脳症あり → タンパク質の「質」を選ぶ。植物性・乳製品・卵優先
  • 脂肪肝 → 低脂肪・少量多頻度・絶食を避ける
  • 全タイプ共通 → 処方食の検討・定期的な血液検査・獣医師との連携

獣医師解説

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DrVets

国公立大学獣医学科卒業。臨床経験10年以上。犬・猫の慢性疾患(腎臓病・膵炎・消化器疾患・内分泌疾患)と食事管理を専門とする現役獣医師が、科学的根拠に基づいた情報を監修しています。当サイトの全記事は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)・世界小動物獣医師会(WSAVA)等のガイドラインに準拠して監修しています。

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