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【獣医師解説】猫の腎臓病(慢性腎臓病・CKD)完全まとめ|症状・食事・点滴・延命ケアを徹底解説

猫の腎臓病(CKD)は猫が罹患する病気の中で最も多いものの一つで、特に10歳以上のシニア猫では非常に高い発症率が報告されています。このページでは、猫のCKDについて症状・治療・食事・点滴・余命まで、獣医師監修のもと詳しく解説します。

猫の腎臓病(CKD)とは?なぜ猫に多いのか

猫の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、腎臓の機能が3か月以上にわたって持続的に低下した状態を指します。腎臓は老廃物のろ過・水分調節・血圧管理・造血ホルモン産生など生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。

猫はもともと砂漠起源の動物であり、腎臓が濃い尿を作るよう進化しています。この「腎臓に高い負荷がかかりやすい」構造が、猫がCKDになりやすい要因の一つと考えられています。また、猫は犬と比べて水をあまり飲まない傾向があり、慢性的な軽度脱水状態が腎臓にダメージを与えやすいとも言われています。

疫学的には、7歳以上の猫の約30〜40%、15歳以上では80%以上がCKDを持つという報告もあります。猫を飼う上で必ず知っておきたい病気です。

猫のCKDの主な原因

  • 加齢による腎臓の自然な老化
  • 慢性的な脱水
  • 歯周病・慢性感染症(腎臓への細菌の影響)
  • 高血圧(腎臓の血管障害)
  • 腎臓リンパ腫などの腫瘍
  • 遺伝的素因(ペルシャ・アビシニアンなどは多発性嚢胞腎のリスクあり)
  • NSAIDsなど腎毒性薬剤の長期使用

猫の腎臓病の初期症状|飼い主が気づきにくい変化

猫の腎臓病の怖いところは、初期段階ではほとんど症状が出ないことです。猫は体調不良を隠す本能があるため、飼い主さんが気づきにくいのが現状です。

初期に見られやすい変化

  • 水をよく飲むようになった(多飲)
  • トイレに行く回数が増えた・尿量が多い(多尿)
  • 尿の色が薄くなった
  • 体重が少しずつ減っている
  • 毛並みがやや悪くなった
  • 遊ぶ頻度が減った・じっとしていることが多くなった

「老化のせいかな」と思いがちな変化ばかりです。7歳以上の猫では年に1〜2回の健康診断(血液検査・尿検査)を必ず受けることが早期発見の鍵です。

中期〜末期の症状

  • 食欲不振・体重減少が顕著
  • 嘔吐・下痢(老廃物蓄積による消化器症状)
  • 口臭が強くなる(アンモニア臭)
  • 元気がなく寝てばかりいる
  • 毛並みが明らかに悪くなる(グルーミングをしなくなる)
  • 脱水(皮膚の弾力低下・目がくぼむ)
  • 貧血(歯茎・結膜が白くなる)

IRISステージ分類で理解する猫のCKDの進行度

猫のCKDもIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のステージ分類に基づいて管理されます。犬とは基準値が異なります。

ステージクレアチニン(mg/dL)SDMA(µg/dL)状態の目安
ステージ1<1.6<18腎機能低下の兆候あり、症状なし
ステージ21.6〜2.818〜25軽度腎機能低下、軽微な症状の可能性
ステージ32.9〜5.026〜38中等度、食欲低下・嘔吐など
ステージ4>5.0>38重度、尿毒症のリスク

SDMA(対称性ジメチルアルギニン)は腎機能が約25〜40%低下した段階で上昇し始めるため、クレアチニンが正常でもSDMAが高い場合は早期のCKDを示している可能性があります。

猫の腎臓病の治療法|薬・皮下点滴・食事療法

猫のCKDに対する治療の目標は、腎機能の低下速度を遅らせること、および症状をコントロールしてQOLを維持することです。

主な治療薬

  • リン吸着剤(炭酸ランタン、水酸化アルミニウム等):食事中リンの吸収を抑制し、高リン血症を防ぐ。
  • テルミサルタン(ARB):猫のCKDに対して承認されているタンパク尿抑制・降圧薬。腎保護作用が期待される。
  • 制吐薬(マロピタント等):嘔吐・食欲不振の緩和。
  • 胃酸抑制薬(ファモチジン・オメプラゾール):尿毒症性胃炎の緩和。
  • ダルベポエチン(人工エリスロポエチン):腎性貧血に対して使用。
  • カリウム補給:猫のCKDでは低カリウム血症が多く、筋力低下・背中の丸みの原因になる。
  • ラプロス(ベラプロスト):猫のCKD用に承認された血流改善薬。腎機能維持効果が報告されている。

輸液療法

脱水は猫のCKDを急速に悪化させるため、輸液管理は非常に重要です。入院時の静脈点滴のほか、ステージが進んだ場合は自宅での皮下輸液が推奨されます(詳細は「自宅皮下輸液」セクションを参照)。

猫の腎臓病フードの選び方|低リン・低タンパクの処方食

食事管理は猫のCKD治療において最も重要な柱のひとつです。適切な処方食を与えることで腎機能の低下速度を遅らせることが臨床的に示されています。

腎臓病フードの選択基準

  • 低リン:リン含有量が少ないこと(ドライフードで0.5%以下が目安)
  • タンパク質の適切な制限:猫は必須アミノ酸の必要量が犬より高いため、制限しすぎないことも重要
  • 高エネルギー密度:食欲低下で食べる量が減っても必要カロリーを補えるよう
  • オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)配合:抗炎症効果・腎保護作用が期待される
  • 塩分制限:高血圧合併例では特に重要

代表的な処方食

  • ロイヤルカナン 腎臓サポート(猫用)ドライ・ウェット・リキッド
  • ヒルズ k/d 猫用(ドライ・ウェット)
  • ピュリナ プロプラン NF 腎臓機能(猫用)

食欲が低下している猫に無理に処方食を与えると拒食が強まり、肝リピドーシス(脂肪肝)のリスクが上がります。まず「食べること」を最優先にしながら、徐々に切り替える戦略が重要です。

自宅皮下輸液の基礎知識|始めるタイミングと準備

猫のCKDがステージ3以上になると、自宅での皮下輸液(皮下点滴)を勧められることが多くなります。

皮下輸液の効果

  • 脱水状態の改善・維持
  • 老廃物(クレアチニン・BUN)の希釈効果
  • 電解質補給(カリウム補充など)
  • 食欲改善・嘔吐の軽減

自宅で行う手順の概要

獣医師に指導を受けた後、以下のような流れで行います。

  1. 輸液バッグ・輸液ライン・翼状針(バタフライニードル)を準備する
  2. 猫を安定した姿勢で固定する(タオルに包む・膝の上に乗せるなど)
  3. 肩甲骨の間〜背部の皮膚をテントのようにつまみ上げ、針を刺す
  4. 指定量(50〜150mL程度)を注入する
  5. 針を抜き、刺した部位を軽く押さえる

最初は怖く感じるかもしれませんが、動物病院で十分にトレーニングを受ければ多くの飼い主さんが習得できます。輸液量・頻度は獣医師の指示に従い、自己判断で増やさないようにしましょう。

猫の腎臓病の余命と緩和ケア

猫のCKDの余命はステージ・個体差・治療への反応によって大きく異なります。

  • ステージ2:適切な管理のもと数年単位で生活できるケースも多い
  • ステージ3:数か月〜2年程度が多いが、個体差が大きい
  • ステージ4:数週間〜数か月が多いが、治療により状態が改善することもある

緩和ケアの視点では「痛みや不快感を最小限にしながら、猫が好きなことを続けられる環境を作る」ことが最も重要です。日当たりの良い場所での日光浴・好きなフードの提供・飼い主さんとのスキンシップなど、猫の精神的安定を保つことも治療の一部です。

看取りに向けた準備

末期に近づいたとき、飼い主さんが直面する選択肢として「どこまで治療を続けるか」という問題があります。猫が治療を嫌がる・食欲が全くない・苦痛のサインが強い場合は、緩和ケアに切り替えることを獣医師と相談してください。安楽死という選択肢についても、獣医師にオープンに話し合うことができます。

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【専門家監修】猫の腎臓病 完全対策LP|診断から在宅ケアまで — より詳しいケア方法・Q&Aはこちらの特設ページをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 猫の腎臓病はなぜこんなに多いのですか?

猫はもともと砂漠起源の動物で腎臓に高い負荷がかかりやすい構造を持ち、水をあまり飲まない傾向があるため慢性的な脱水状態になりやすいことが主な要因とされています。加齢とともに発症率が急増し、15歳以上では80%以上という報告もあります。

Q2. 猫のCKDはどの段階から治療を始めればいいですか?

ステージ1から食事管理(リン制限)と定期モニタリングを開始することが推奨されます。ステージ2以上ではリン吸着剤の使用、タンパク尿がある場合はテルミサルタンなどの投薬も検討されます。

Q3. 猫が処方食を食べてくれません。どうすればいいですか?

急に変えると拒食になりやすいため、1〜2週間かけて少しずつ混ぜながら移行します。ウェットタイプの処方食・温めて香りを立てる・少量を頻回に与えるなどの工夫も有効です。食べないよりは食べることを優先し、主治医に相談しながら進めましょう。

Q4. 猫のCKDに有効なサプリメントはありますか?

オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は腎保護作用が期待されており、多くの獣医師が推奨しています。また、プロバイオティクス・プレバイオティクスが腸内細菌による老廃物産生を抑制するという報告もあります。ただしサプリメントは補助的なものであり、食事管理・投薬の代わりにはなりません。

Q5. 猫の腎臓病で皮下輸液を始めるべきタイミングはいつですか?

明確な基準はありませんが、一般的にステージ3〜4になると推奨されることが多いです。体重減少・食欲不振・元気の低下・脱水サインなどが出始めたら早めに獣医師に相談しましょう。

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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