愛犬の肝臓の数値(ALTやALP)が高いと聞かされたけど、どうしたらいいの?
と心配ではありませんか?
この記事では、肝臓の役割、肝疾患の末期症状、そして肝臓の数値を下げるための食事について、獣医師の視点から詳しく解説します。
肝臓の数値の種類
肝臓の機能を評価するために、いくつかの血液生化学検査が用いられます。
特に、肝酵素の活性を示す指標として、以下の4つの値が一般的に用いられます。
ALP(アルカリフォスファターゼ)
ALPは主に肝臓や骨に存在し、数値の上昇は肝細胞や胆道系の障害、特に胆汁のうっ滞を示すことが多いです。
他には高齢犬で起こるクッシング症候群と呼ばれるホルモン病でALPが非常に高い値になることがあります。
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
ALTは肝臓に主に存在する酵素で、肝細胞が破壊されると血液中に放出されます。
そのため、ALTの値が高いと、肝細胞の損傷を示すことが多いです。
GGT(ガンマグルタミルトランスフェラーゼ)
GGTも肝臓に主に存在する酵素で、特に胆道の障害を示します。
胆嚢炎や胆管炎により、胆道が塞がったり炎症を起こした場合などに上昇します。
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
ASTは肝臓だけでなく、心筋、筋肉、腎臓、脳など体全体に広く分布しています。
したがって、ASTが上昇すると、これらの臓器のどこかに問題があることを示す可能性があります。
肝数値上昇の原因となる病気
犬の肝疾患は、多くの場合、特定の血液検査値の上昇とともに発見されます。
以下に、いくつかの主要な疾患とそれらに関連する数値の変化を示します。
肝臓の炎症または感染症
肝臓の炎症または感染症(例えば、肝炎)は、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の値を大幅に上昇させる可能性があります。
これは、肝臓細胞が損傷を受けていることを示します。
胆石症または胆道閉塞
胆石症または胆道閉塞は、ALP(アルカリフォスファターゼ)とビリルビンの数値を上昇させます。
これらは肝臓が胆汁を正常に処理できないときに増加します。
肝硬変または肝不全
肝硬変や肝不全は、肝臓の合成機能が低下するため、アルブミン(Alb)の値を低下させる可能性があります。
また、これらの疾患はAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の上昇を引き起こすこともあります。
肝臓が担う3つの役割
では犬の体の肝臓の役割を3つに分けて説明しましょう。
体をきれいにする
肝臓は体内に入った有害物質や毒素を取り除く役割を果たします。
これは、大きな化学工場のようなもので、体が正常に機能するためには欠かせない役割です。
エネルギー管理
肝臓は、体がエネルギーを適切に管理するための中心的な役割を果たします。
これは食物から取り入れた栄養を、体が必要とする形に変えることを含みます。
血液の製造
肝臓は血液中のタンパク質を作る働きもあります。これには、血液を凝固させるためのタンパク質も含まれています。
肝疾患で起こる4つの末期症状
肝臓が病気になり、肝数値が上がり、末期の状態になると犬の体には4つの症状が見られます。
出血傾向
肝疾患を患っていると、血が止まりにくくなります。
というのも、止血に関わる凝固因子は肝臓で合成されるため、肝疾患では血液凝固異常を示すことがあるのです。
また、凝固因子の活性化に必要なビタミンKが吸収されるためには胆汁酸が必要ですので、肝疾患によって胆道閉塞と呼ばれる状態だとビタミンKが吸収できにくくなり、さらに出血しやすくなります。
黄疸
肝臓が健康でない場合、体のいくつかの部分、特に目の白い部分が黄色く見えることがあります。
これを黄疸と呼びます。
神経症状、肝性脳症
肝疾患による高アンモニア血症が原因となる神経症状を、肝性脳症といいます。
重度の肝不全では尿素回路の機能が低下して高アンモニア血症となり、門脈体術環シャントでは吸収したアンモニアが直接全身に流れ、高濃度のアンモニアが脳へ悪影響を及ぼします。
また、肝疾患では空腹時低血糖も起こしやすいので、低血糖による発作を引き起こすこともあります。
腹部の膨張(腹水)
肝臓が正常に機能しないと、腹水が溜まることで腹部が膨らむことがあります。
腹水は、肝硬変など重度の肝疾患では門脈血がうっ滞し、腹水となります。
また他にも、タンパク合成障害のために低アルブミン血症になると、豚質浸透圧の低下によってや腹水が貯留します。
犬の肝臓の数値を下げるにはどうすればいい?
肝臓の数値が高いと診断された場合、その対策はその症状の重さと原因によります。
軽度の数値の上昇であれば、食事の変更から始めることをお勧めします。
しかし、数値が大幅に上昇している場合や他の症状が現れている場合、より積極的な治療が必要となるかもしれません。
軽度の数値上昇に対する対策
肝臓に負担をかける可能性のあるフードを食べている場合、肝臓の数値が若干高くなることがあります。
このような場合、高品質のタンパク質、低脂質、高繊維の食事に変更することで、肝臓の負担を軽減し、数値を正常化することが可能です。
重度の数値上昇に対する対策
ALTやALPの数値が1000や2000を超えている、またはビリルビンが上昇し黄疸が出ている場合、これは重篤な状態を示している可能性があります。
食事の変更だけでは対応できません。そのような場合は、以下のような治療が必要となります。
医薬品の使用
肝臓の炎症を抑制し、肝臓の細胞を保護するための抗炎症薬や抗生物質などが用いられます。
輸液療法
重度の脱水症状が見られる場合や、肝臓の機能が大幅に低下している場合は、輸液療法が行われることがあります。
これにより、体内の電解質バランスを正常化し、体内の毒素を排出します。
肝臓の数値を下げる3つの食事の条件
肝臓の数値を下げるための食事には、3つの重要な条件があります。
高品質のタンパク質
タンパク質は体を構成する重要な栄養素ですが、質が重要です。
高品質なタンパク質は、肝臓が上手に機能するために必要です。
低脂質
肝臓は体内の脂肪を処理するための臓器で、機能が低下すると脂肪の処理がうまくできなくなります。
その結果、体内に余分な脂肪が蓄積し、さらに肝臓の機能を低下させる恐れがあります。
そのため、肝疾患のある犬には、低脂質のフードを与えることがおすすめです。
必要なビタミンの補給
肝臓の機能を支えるためには、ビタミンEやビタミンKなど、いくつかのビタミンが必要です。
これらのビタミンは、肝臓の健康を維持し、肝臓の数値を下げるのに役立ちます。
本記事のまとめ
本記事では、犬の肝疾患とその数値の特徴について説明しました。
その中で特に、肝疾患の犬の食事がその健康状態に大きな影響を与えることを強調しました。
軽度の肝機能数値上昇の場合、食事の改善が最初の一歩となります。
これには、肝臓に負担をかける可能性のある食事から、肝臓の機能を支える食事に切り替えることが含まれます。
低脂質、高品質なタンパク質、必要なビタミンとミネラルを含むフードがおすすめです。
しかし、肝機能数値が大幅に上昇したり、ビリルビン値が上昇して黄疸が見られるなど、重篤な状態の場合は、食事だけでなく、他の治療も必要となる可能性があります。
犬の肝疾患は、適切な管理とケアにより、その生活の質を大きく向上させることが可能であるということを覚えておきましょう。