愛犬の血液検査で「肝臓の数値が高いです」と言われると、どうしても不安になりますよね。でも、まずは落ち着いてください。
肝臓の数値が高くなる原因は非常に多岐にわたり、必ずしも深刻な肝臓病を意味するわけではありません。ステロイド薬の投与や他の臓器の疾患が原因で、肝臓の数値が二次的に上昇することも非常によくあることです。
この記事では、獣医師の視点から「犬の肝臓の数値が高い」ときに飼い主さんが知っておくべきこと──ALP・ALT・AST・GGTの見方、数値が上がる原因、緊急受診が必要なサイン、食事・治療法の選び方──をすべて網羅して解説します。ぜひ最後まで読んで、愛犬のケアに役立ててください。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、初期段階ではほとんど症状が出ません。血液検査で異常を発見できたことは、早期対応のチャンスです。焦らず、正確な情報をもとに行動しましょう。
犬の肝臓の役割と「沈黙の臓器」の意味
肝臓は体の中で最も大きな臓器であり、生命を維持するために欠かせない非常に多くの役割を担っています。人間でも犬でも、肝臓は「体内の化学工場」とも呼ばれる重要な臓器です。
肝臓がどれだけ重要か、まずその機能から理解しておきましょう。
肝臓の主な機能(6つ)
① 栄養素の代謝・貯蔵
食事から吸収されたタンパク質・脂質・糖質を分解・再合成します。余分なブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に蓄えられ、血糖値が下がったときにエネルギーとして放出されます。ビタミンA・D・B12や鉄などのビタミン・ミネラルも肝臓で貯蔵されます。
② 有害物質の解毒
体内で発生するアンモニア(タンパク質代謝の副産物)を尿素に変換して無毒化します。また食品添加物、薬物、細菌が産生する毒素なども肝臓で処理され、胆汁や尿中に排泄されます。
③ 胆汁の生成と分泌
脂肪の消化吸収を助ける「胆汁」を肝臓は絶えず生成しています。胆汁は胆嚢で濃縮・蓄えられ、食事のたびに十二指腸へ分泌されます。肝臓の機能が低下すると胆汁分泌が滞り、黄疸や消化不良の原因となります。
④ タンパク質(アルブミン)の合成
血液中に存在するアルブミン(血液の浸透圧を保つタンパク質)の多くは肝臓で合成されます。肝機能が著しく低下するとアルブミンが不足し、血液中の水分が血管外に漏れ出して腹水や浮腫の原因になります。
⑤ 血液凝固因子の合成
出血を止めるために必要な凝固因子(フィブリノゲンやプロトロンビンなど)は肝臓で作られます。肝機能が低下すると凝固因子が不足し、傷口からの出血が止まりにくくなります。
⑥ 免疫機能・ビリルビン代謝
古くなった赤血球が壊れると生じるビリルビン(黄色い色素)を肝臓が処理し、胆汁中に排泄します。肝臓が正常に機能しないと、ビリルビンが血中に蓄積して黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)を引き起こします。
肝臓は代謝・解毒・胆汁生成・タンパク合成・凝固因子産生・ビリルビン処理という6大機能を担う体の要です。しかし予備能力が非常に高いため、70〜80%の機能が低下するまで症状が現れません。だから「沈黙の臓器」と呼ばれるのです。
なぜ「沈黙の臓器」と呼ばれるのか
肝臓は非常に大きな「予備能力(リザーブ)」を持っています。正常な肝臓の70〜80%が破壊されるまで、ほとんどの場合で症状が現れないと言われています。
つまり、「愛犬が元気に見えている」状態でも、肝臓はすでに相当なダメージを受けている可能性があるのです。だからこそ、定期的な血液検査による早期発見が非常に重要になります。
「食欲があって元気そうだから大丈夫」は肝臓病に限っては当てはまりません。初期〜中期の肝臓病は元気・食欲が保たれていることが多いため、定期検査で数値の推移を追うことが大切です。
血液検査の読み方|ALP・ALT・AST・GGT・総ビリルビンの正常値と意味
「肝臓の数値が高い」と言われたとき、具体的にどの数値がどう高いのかを理解することが大切です。血液検査には複数の肝臓関連項目があり、それぞれ意味が異なります。
肝臓の血液検査項目には「肝細胞の破壊を示す酵素(ALT・AST)」と「胆汁の流れを示す酵素(ALP・GGT)」があります。どちらが上昇しているかによって、病態の方向性が変わります。
肝臓関連血液検査項目の一覧表
| 項目名 | 正常値(目安) | 主な由来 | 上昇時に疑うこと |
|---|---|---|---|
| ALT(GPT) | 10〜100 U/L | 肝細胞(犬では肝特異性が高い) | 肝炎・脂肪肝・肝細胞障害 |
| AST(GOT) | 15〜55 U/L | 肝細胞・筋肉・赤血球 | 肝炎・筋肉疾患・溶血 |
| ALP(アルカリフォスファターゼ) | 23〜212 U/L | 胆管・骨・腸・肝臓(ステロイド誘導性) | 胆汁うっ滞・クッシング・ステロイド投与・骨疾患 |
| GGT(γ-GTP) | 2〜10 U/L | 胆管上皮・腎臓 | 胆汁うっ滞・胆管炎・肝炎 |
| 総ビリルビン(T-Bil) | 0〜0.3 mg/dL | 赤血球の代謝産物(肝で処理) | 重度の肝障害・胆道閉塞・溶血性貧血 |
| アルブミン(Alb) | 2.6〜4.0 g/dL | 肝臓で合成 | 低下時→慢性肝不全・低栄養 |
| BUN(血中尿素窒素) | 9.2〜29.2 mg/dL | タンパク代謝(肝で尿素合成) | 低下時→肝不全・門脈シャント |
| コレステロール(TCHO) | 130〜280 mg/dL | 肝臓で合成・代謝 | 高値→胆汁うっ滞・クッシング、低値→肝不全 |
※正常値は検査機関・機器によって異なります。担当獣医師の検査結果票の基準値をご確認ください。
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の見方
ALTは「肝細胞障害の最も鋭敏な指標」です。犬では肝細胞に非常に多く含まれるため、肝細胞がダメージを受けると速やかに血液中に漏れ出します。
ALTは犬において肝臓特異性が高い(人間のALTより肝臓由来が多い)ため、ALTが上昇している場合は「肝細胞が何らかのダメージを受けている」可能性が高いと考えます。
ただし、程度によって意味が変わります。正常値の2〜3倍程度の軽度上昇なら、一過性のストレスや軽微な炎症のことも多いです。5倍以上の持続的な上昇、あるいは急激な上昇(数百〜数千U/L)は急性肝細胞壊死などの重篤な状態を示唆する場合があります。
ALTの半減期は約2〜3日です。治療開始後にALTが急速に下がれば「肝細胞の新たな傷害が減っている」サインです。逆にALTが下がってもAST・ALPが高いままの場合は、別の問題が続いている可能性があります。
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の見方
ASTはALTと同様に肝細胞の破壊で上昇しますが、筋肉・赤血球にも含まれるため、肝臓特異性はALTより低いです。
ALTとASTが両方高い場合は肝臓由来の可能性が高まります。一方、ALTが正常でASTだけが高い場合は、筋肉疾患(多発性筋炎、横紋筋融解症など)や溶血(赤血球の破壊)を疑う必要があります。
ASTの半減期はALTより短い(12〜22時間)ため、急性障害ではASTが先に上がり、先に正常化することもあります。
ALP(アルカリフォスファターゼ)の見方
ALPは犬において非常に特徴的な動きをする酵素です。ALPには「肝臓型」「骨型」「腸型」「胎盤型」などのアイソザイム(同じ酵素の異なる形)があり、犬の場合は肝臓型に加えて「ステロイド誘導性ALP」というアイソザイムが存在します。
このステロイド誘導性ALPが曲者で、外から投与したステロイド薬(プレドニゾロンなど)や、体内で過剰産生されるコルチゾール(クッシング症候群)によって著しく誘導されます。そのためALPだけが非常に高い場合(例:500〜5000 U/L)は、まずクッシング症候群やステロイド投与歴を確認することが大切です。
ALP上昇が示す可能性:胆汁うっ滞(胆嚢炎・胆石・胆泥症)、クッシング症候群、ステロイド投与、甲状腺機能低下症、肝臓腫瘍、成長期の子犬(生理的上昇)などが挙げられます。
GGT(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)の見方
GGTは胆管上皮に多く存在する酵素で、胆汁うっ滞の指標として有用です。ALPと並行して上昇することが多く、ALPが高くGGTも高い場合は胆管・胆嚢系の問題を強く示唆します。
GGTはALPに比べてステロイドによる影響が少ないため、「ALPだけが著しく高い」ケースでGGTが正常であれば、ステロイド誘導性である可能性が高まります。逆にGGTも上昇していれば、胆道系の疾患がより疑われます。
総ビリルビン・アルブミン・BUNの意味
総ビリルビン(T-Bil)は、赤血球が壊れた際に生じる黄色い色素で、肝臓で処理されて胆汁中に排泄されます。これが上昇(黄疸)すると、肝機能の重篤な低下か胆道閉塞、または溶血性貧血を示します。
アルブミン(Alb)の低下は肝臓の「合成機能」の低下を意味します。慢性肝炎が末期の肝硬変・肝不全に近づくと低アルブミン血症が現れ、腹水や浮腫の原因となります。
BUN(血中尿素窒素)の低下も肝機能低下のサインです。肝臓はアンモニアを尿素に変換しますが、この機能が低下するとBUNが下がり、代わりに血中アンモニアが上昇して肝性脳症(神経症状)を引き起こします。
ALT・ASTは「肝細胞が壊れているか」、ALP・GGTは「胆汁の流れが悪くないか」を示します。ビリルビン・アルブミン・BUNは「肝機能がどれほど低下しているか」の総合指標です。これら全体を組み合わせて読むことが大切です。
犬の肝臓の数値が高くなる原因一覧
肝酵素が上昇する原因は大きく「原発性(肝臓自体の病気)」と「二次性・反応性(他の疾患の影響)」の2種類に分けられます。統計的には犬では二次性の方が多いとも言われています。
肝酵素が高い=肝臓病とは限りません。ステロイド薬を飲んでいる犬や、クッシング症候群の犬は肝臓そのものが正常でもALPが著しく高くなることがあります。原因の特定が治療の第一歩です。
数値が高くなる原因・疾患の一覧表
| 分類 | 主な原因・疾患 | 主に上昇する酵素 | 特徴・補足 |
|---|---|---|---|
| 原発性肝疾患 | 慢性肝炎(特発性) | ALT・AST↑ | 犬で最多の肝疾患。中高齢に多い |
| 急性肝炎・急性肝不全 | ALT・AST著増↑↑ | 感染症・中毒・薬物が原因に | |
| 脂肪肝(肝脂肪症) | ALT・ALP↑ | 肥満・食欲不振・糖尿病に続発 | |
| 銅蓄積性肝炎 | ALT↑(慢性) | ベドリントンテリア等に多い遺伝性 | |
| 肝硬変・肝線維症 | ALT・ALP↑(末期は低下も) | 慢性肝炎の末期。不可逆性 | |
| 肝細胞がん・肝腫瘍 | ALP・ALT↑ | 単発なら外科切除で長期生存も | |
| 門脈シャント | ALT↑・胆汁酸↑ | 先天性は若齢犬に多い | |
| 二次性・反応性 | ステロイド薬投与 | ALP著増↑↑ | 最も多い原因の一つ。休薬で改善 |
| クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症) | ALP著増↑↑ | コルチゾール過剰によるステロイド誘導性ALP | |
| 甲状腺機能低下症 | ALP・コレステロール↑ | 代謝低下による脂質異常 | |
| 糖尿病 | ALP・ALT↑ | 高脂血症→肝脂肪症の流れ | |
| 膵炎 | ALT・ALP↑ | 隣接臓器の炎症が波及 | |
| 重度歯周病・全身感染症 | ALT・ALP↑ | 菌血症・毒素が肝臓にダメージ | |
| 心不全(うっ血肝) | AST・ALT↑ | 肝臓への血流鬱滞による障害 | |
| リンパ腫・全身性腫瘍 | ALP・ALT↑ | 肝臓浸潤・転移による上昇 | |
| 薬物・毒物 | フェノバルビタール(抗てんかん薬) | ALP・ALT↑ | 長期投与で肝酵素誘導が起こる |
| NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬) | ALT↑ | 特に高用量・長期投与でリスク | |
| キシリトール・タマネギ・ブドウ等 | ALT著増↑↑ | 犬に有毒な食品による急性肝障害 | |
| 青カビ・カビ毒(アフラトキシン) | ALT著増↑↑ | カビの生えた食品・ドッグフードに注意 |
ステロイドと抗てんかん薬による肝酵素上昇について
犬においてALPが非常に高い(正常の5倍以上)場合、ステロイド薬(プレドニゾロン、デキサメタゾンなど)の投与が最も多い原因の一つです。これは「ステロイド誘導性肝症(Hepatopathy)」と呼ばれ、薬剤自体が肝臓の酵素産生を促進するためで、肝細胞が壊れているわけではありません。
ステロイドを使用中の犬で肝臓の数値が高くなることは非常によくあることで、多くの場合は投薬中止後に改善します。ただし長期投与の場合は「ステロイド肝症」という病態が形成され、肝臓が腫大(腫れる)することがあります。
フェノバルビタール(てんかん治療薬)も長期投与でALP・ALTを上昇させます。これは薬物代謝酵素の誘導が起こるためで、モニタリングのため定期的な血液検査が推奨されます。
「数値が高いから」と自己判断でステロイドや薬を中断するのは危険です。必ず担当獣医師と相談の上で薬の調整を行ってください。
軽度・中等度・重度の判断基準と緊急受診が必要なサイン
肝臓の数値がどの程度高いかによって、対応の緊急度が変わります。ここでは数値の程度と症状を組み合わせた判断の目安を解説します。
重症度別の目安
| 重症度 | ALT・ASTの目安 | 症状 | 推奨される対応 |
|---|---|---|---|
| 軽度 | 正常値の2〜3倍 | ほぼ無症状 | 1〜3ヶ月後に再検査・原因精査 |
| 中等度 | 正常値の3〜10倍 | 食欲低下・元気消失が出始める | 追加検査(エコー等)・治療開始の検討 |
| 重度 | 正常値の10倍以上 | 黄疸・嘔吐・神経症状など | 緊急精査・入院治療が必要 |
※ALP単独上昇(ALT正常)の場合はこの限りではありません。ステロイドや骨疾患でALPのみ著増することがあります。
今すぐ病院へ!緊急受診が必要なサイン
以下の症状が一つでも現れた場合は、できるだけ早く(当日中に)動物病院へ連絡・受診してください。
- 白目・歯茎・皮膚・耳の内側が黄色い(黄疸)
- 急激な食欲廃絶(丸1日以上まったく食べない)
- 嘔吐・下痢が続いて止まらない
- お腹が膨らんでいる(腹水の可能性)
- ふらつき・けいれん・意識がもうろうとしている(肝性脳症の可能性)
- 異常な出血(歯茎・皮膚の点状出血・血尿・血便)
- 口から血を吐く
- 急に起き上がれない・立てない
これらの症状は肝機能の高度な低下、または重篤な肝疾患(急性肝不全・重症の胆道閉塞・肝性脳症など)を示唆している可能性があります。夜間・休日であれば夜間救急動物病院への受診を検討してください。
- 現在与えているフード・おやつのリスト(メーカー・成分表を写真撮影)
- 現在服用中の薬・サプリメントの名前と用量
- 症状が出た時期・頻度・内容のメモ
- 最近の体重の変化(増加・減少)
- 直近の血液検査結果票(他院での検査結果も含む)
肝臓病の種類別解説
「肝臓病」と一口に言っても、原因・病態・治療法・予後は疾患によって大きく異なります。ここでは犬に多い主要な肝臓病を種類別に詳しく解説します。
1. 慢性肝炎(特発性慢性肝炎)
犬で最も多い肝臓の病気です。明確な原因が特定できない(特発性の)慢性的な肝臓の炎症で、長期間にわたって肝細胞が破壊・線維化(瘢痕組織への置換)が進行します。
好発犬種・年齢: コッカースパニエル、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマン、スタンダード・プードルなどで多いとされますが、いずれの犬種でも発症します。中高齢(5歳以上)での発症が多いです。
症状: 初期はほぼ無症状。進行すると体重減少・食欲低下・多飲多尿・嘔吐・下痢・腹水などが現れます。末期には黄疸・出血傾向・神経症状(肝性脳症)が出ます。
診断: 血液検査(ALT・AST持続上昇)、腹部超音波検査、確定診断には肝臓の針生検(組織検査)が必要です。組織検査によって炎症の程度・線維化の進行度・銅蓄積の有無などを確認します。
治療: 原因に応じた治療(ステロイド・免疫抑制剤)、肝保護薬(ウルソデオキシコール酸、SAMe、シリマリンなど)、食事管理(低銅・高品質タンパク食)が柱となります。食事管理の詳細は慢性肝炎の食事管理ガイドをご覧ください。
慢性肝炎は早期発見・早期治療が予後を左右します。定期的な血液検査でALTの変動を追うことで、悪化前に対応できます。
2. 脂肪肝(肝脂肪症)
肝細胞内に脂肪が過剰蓄積した状態です。犬では猫ほど深刻になりにくいですが、肥満・糖尿病・高脂血症・クッシング症候群・急激な食欲不振などに続発することがあります。
症状: 軽度では無症状のことが多い。重症化すると食欲低下・嘔吐・黄疸などが出ます。
診断: 超音波検査では肝臓が「高エコー(白っぽく見える)」になります。確定診断には肝生検が必要です。
治療: 原因の治療(肥満なら減量・糖尿病ならインスリン療法など)が最優先です。食事は低脂肪・高品質タンパク食が推奨されます。
3. 銅蓄積性肝炎(銅代謝異常)
肝臓に銅が異常蓄積することで起こる慢性肝炎の一形態です。遺伝的に銅の排泄能力が低い犬種(ベドリントンテリア、ウェストハイランドホワイトテリア、スカイテリア、ダルメシアン、ラブラドール・レトリーバー、コッカースパニエルなど)で問題になります。
発症機序: 銅は本来胆汁中に排泄されますが、遺伝的・後天的な異常で肝細胞内に蓄積します。蓄積した銅が肝細胞に酸化ストレスを与え、慢性炎症・壊死・線維化を引き起こします。
治療: 銅キレート剤(ペニシラミン・トリエンチンなど)の投与と低銅食が柱です。銅蓄積性肝炎では食事中の銅含有量の管理が非常に重要で、内臓肉(特にレバー)・シェルフィッシュ・豆類・ナッツ類などは避けます。銅蓄積性肝炎の詳細は犬の銅蓄積性肝炎ガイドをご覧ください。
銅蓄積性肝炎の犬に手作り食を与える場合、レバー・貝類・豆類などは銅が多いため禁忌です。また、銅強化フードや一部のサプリメントも使用前に獣医師に確認が必要です。
4. 胆嚢粘液嚢腫・胆汁うっ滞
胆嚢内に粘液(ムチン)が異常蓄積し、ゼリー状になる病態を「胆嚢粘液嚢腫」といいます。進行すると胆嚢が破裂して腹膜炎になる危険があります。中高齢の犬(特にコッカースパニエル・シェトランドシープドッグ・ミニチュアシュナウザー)に多いです。
症状: ALP・GGT・コレステロールが高く、総ビリルビン上昇(黄疸)を伴うことも。嘔吐・腹痛・食欲不振などが見られます。
治療: 軽症であれば薬物療法(ウルソデオキシコール酸・低脂肪食)で管理しますが、胆嚢の破裂リスクがある場合は外科的な胆嚢摘出術が選択されます。
5. 門脈シャント
本来は腸から吸収された血液(栄養・毒素を含む)が門脈を通って肝臓に入り、解毒されてから全身に送られます。門脈シャントはこのルートをバイパスする異常血管が存在する病態です。