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犬の糖尿病

【獣医師監修】犬の糖尿病と白内障の関係|失明リスクと目のケア

犬の糖尿病を発症した場合、白内障の発症率は非常に高く、糖尿病犬の75〜80%が発症するという報告があります。進行が速く、1〜2日で急激に視力を失うケースもあります。この記事では糖尿病性白内障のメカニズム、失明リスク、治療法、目のケアを獣医師監修のもと解説します。

糖尿病と白内障の関係:なぜ発症するのか

高血糖が続くと、水晶体内に「ソルビトール」という糖アルコールが蓄積します。ソルビトールは浸透圧を上げて水晶体内に水分を引き込み、水晶体を構成するタンパク質(クリスタリン)の構造を変化させます。この結果、水晶体が白く濁る「白内障」が発生します。

犬の水晶体はこのソルビトール蓄積メカニズムに特に敏感であるため、人よりも白内障の進行が速く、場合によっては数日〜数週間で両眼が失明状態に陥ることがあります。

糖尿病性白内障の特徴

  • 両眼性:片眼だけでなく、ほぼ必ず両眼に発症する
  • 進行が極めて速い:数日〜数週間で完全失明に至ることがある
  • 糖尿病診断後早期から発症:診断後6ヶ月以内に50%以上が発症するという報告もある
  • 若い犬でも発症:老齢性白内障と違い、若い犬でも糖尿病があれば発症する

白内障の進行ステージ

ステージ所見視力
初期(未熟白内障)水晶体の周辺部が薄く濁り始めるほぼ正常
中期(成熟白内障)水晶体全体が白く濁る明暗の区別のみ
末期(過熟白内障)水晶体が液状化・縮小。炎症が強くなるほぼなし

糖尿病性白内障は初期から成熟への進行が非常に速いため、初期に気づいた時点で速やかに眼科専門医への受診が必要です。

白内障の治療法:外科手術が唯一の根治治療

白内障の根治治療は外科手術(超音波乳化吸引術)のみです。濁った水晶体を超音波で砕いて吸引し、人工レンズを挿入します。成功率は高く、多くの症例で視力が回復します。

手術の条件

  • 全身麻酔に耐えられる全身状態であること
  • 血糖値がある程度コントロールされていること
  • 網膜機能が残存していること(術前の網膜電図検査で確認)
  • 過熟段階で炎症が強い場合は手術のリスクが高まる

手術費用の目安

白内障手術は眼科二次診療施設で行われることが多く、片眼で15〜30万円程度が目安です(施設・症例によって異なります)。

手術を行わない場合の管理

手術を選択しない場合や手術適応がない場合は、以下の点に重点を置いた管理を行います。

  • 血糖値コントロールの継続:白内障の進行を可能な限り遅らせる
  • 白内障に伴う眼内炎症(ぶどう膜炎)の管理:点眼薬で炎症を抑える
  • 生活環境の整備:視力低下に合わせて家具の配置を変えない、障害物を減らすなど

失明した犬の生活の質

犬は嗅覚・聴覚が非常に発達しているため、失明しても生活の質を維持できることが多いです。住み慣れた環境では自信を持って行動できるようになります。以下の工夫が有効です。

  • 家具の配置を変えない
  • 危険な段差や障害物を取り除く
  • 声かけを増やしてコミュニケーションを維持する
  • においや音を使ったトレーニングを続ける

白内障の予防:血糖値管理が最重要

糖尿病性白内障を予防する最も重要な方法は、血糖値を安定してコントロールすることです。血糖値が常に管理目標範囲(80〜180mg/dL)に保たれていれば、白内障の発症・進行を遅らせることができます。

血糖値管理については犬の糖尿病の血糖値管理、食事療法については犬の糖尿病に良い食事・フード選びをご参照ください。糖尿病の症状全般については犬の糖尿病の症状チェックリストも確認しておいてください。

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よくある質問

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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