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【獣医師解説】犬の膵炎の急性発作後の食事再開方法|回復期のステップ別ケア

「急性膵炎を乗り越えたけど、いつからご飯を再開していい?」「何から食べさせればいいの?」「また吐いたらどうしよう……」——膵炎の急性期を脱した犬の飼い主様にとって、食事の再開は最大の不安ポイントです。

食事の再開が早すぎると再発し、遅すぎると体力・筋肉量の低下につながります。
この記事では、膵炎回復期の食事再開の判断基準・ステップ・与えるべき食事・避けるべき食材・再発サインの見分け方を詳しく解説します。

この記事でわかること
・絶食期間の目安(24〜48時間)と現代の考え方
・食事再開のタイミングを判断するチェックリスト
・食事再開4ステップ(流動食→固形食)の詳細
・各ステップで与えるべき食材・量・回数
・再発サインのチェックリストと対応方法
・長期的な食事管理の考え方

急性膵炎治療中はなぜ絶食するのか

急性膵炎の治療では、「膵臓を安静にする」ために絶食が必要な時期があります。
食事が消化管に入ると膵酵素の分泌が刺激されるため、炎症が激しい時期に食事を与えると膵臓への刺激が増し、炎症が悪化するリスクがあります。

ただし、現在の獣医学では「完全絶食期間は必要最低限にする」という考え方が主流になっています。
特に食欲があり、軽症の場合は早期の食事再開が回復を助けることもあります。
絶食の長さは症状の重さ・嘔吐の有無・脱水の程度によって獣医師が判断します。

絶食期間の目安:24〜48時間

急性膵炎の一般的な絶食期間の目安は24〜48時間です。
ただしこれはあくまでも目安であり、症状の重症度によって大きく異なります。

症状の重症度絶食期間の目安栄養補給方法
軽症(嘔吐1〜2回・活動性あり)12〜24時間経口補水(水・電解質液)
中等症(繰り返す嘔吐・脱水)24〜48時間静脈点滴(入院管理)
重症(激しい腹痛・ぐったり)48〜72時間以上静脈点滴・場合によって経管栄養

重症例では長期の絶食が必要になりますが、72時間以上絶食が続く場合は栄養状態の悪化を防ぐため、経鼻チューブや食道チューブを使った経管栄養が検討されます。
いずれの場合も、食事再開の判断は担当獣医師が行います。

⚠️ 注意:自己判断での食事再開は禁物
「元気になったから大丈夫」と自己判断で食事を再開すると、症状が改善途中でも膵炎が再燃することがあります。
必ず獣医師から「食事再開OK」の指示をもらってから始めてください。

食事再開のサイン:いつ始めてよいか

食事再開の判断は必ず担当獣医師の指示に従ってください
目安として、以下のすべての条件が揃ってから食事再開を検討します。

食事再開OKのチェックリスト

チェック項目確認方法注意事項
嘔吐が止まっている最低12〜24時間は嘔吐なし1回でも嘔吐があった場合は再開を延期
痛みが改善している腹部を触っても嫌がらない祈りのポーズが続いている場合は再開不可
水を飲んで吐かない水を少量与えて30分観察水を吐く場合は食事再開を延期
元気が出てきた立ち上がる・自発的に動こうとするぐったりしている状態では再開しない
獣医師の許可が出た受診または電話で確認自己判断での再開は避ける

嘔吐・腹痛が続いている状態で食事を開始すると、膵炎が再燃するリスクがあります。
「早く食べさせてあげたい」という気持ちは理解できますが、焦りは禁物です。

食事再開4ステップ:詳細解説

以下は一般的な膵炎回復期の食事再開ステップです。
各ステップの期間・食材・量は、担当獣医師の指示に合わせて調整してください。

Step 1(食事再開前):水から始める

食事を再開する前に、まず「水を飲んで吐かない」ことを確認します。

方法:
・少量の水(スプーン1〜2杯分)を数回に分けて与える
・一度に大量に与えると胃が刺激される
・飲んで30〜60分、嘔吐がなければ次の段階へ
・嘔吐した場合は食事再開を延期し、獣医師に連絡

水分補給の選択肢:
・純粋な水(最も安全)
・低塩分の電解質補助液(ペット用)
・鶏ささみの茹で汁(薄いもの)——獣医師の許可がある場合のみ

ポイント
水すら飲めない・飲もうとしない状態が続く場合は、まだ回復が不十分です。
獣医師に相談して点滴での水分補給を継続することを検討してください。

Step 2(食事再開1〜3日目):流動食・少量から

水を問題なく飲めるようになったら、消化の良い食事を超少量から開始します。

Step 2で与える食事の条件:
・低脂肪(粗脂肪5%以下・乾物換算)
・消化率が高い(白米・鶏ささみ・白身魚など)
・シンプルな食材(複数の食材を混ぜない、最初は1種類)
・できるだけ柔らかい形状(ペースト・お粥状)

推奨される食事例(Step 2):

食材調理法脂肪分(乾物換算)与える量(10kg犬の1回分)
白米おかゆ7〜10倍がゆ(柔らかく炊く)約1〜2%大さじ1〜2杯(最初)
鶏ささみ(皮なし)ゆでてほぐす・ペースト状約4〜5%小さじ1〜2杯(最初)
タラ(白身魚・骨なし)ゆでてほぐす約2〜4%小さじ1〜2杯(最初)
消化器処方食(ウェット)そのまま・水で薄めても可製品による(低脂肪タイプ選択)規定量の1/4〜1/3

与える量の目安:
Step 2では通常の1日分の1/4〜1/3量を、3〜4回に分けて与えます。
一度に大量に与えると消化管に負担がかかります。

例:10kg犬で1日の維持量が200g程度の場合
・Step 2では1日合計50〜70g
・1回に12〜18g(大さじ1〜2杯程度)を3〜4回に分ける

Step 3(食事再開4〜7日目):徐々に量を増やす

嘔吐・下痢・食欲低下などの異常がなければ、2〜3日かけて徐々に食事量を増やします。

日数1日の給与量(通常量比)1日の食事回数観察ポイント
再開1〜2日目1/4〜1/3量3〜4回嘔吐・食欲・便の状態
再開3〜4日目1/3〜1/2量3〜4回同上+元気・活動性
再開5〜6日目1/2〜2/3量3回同上+体重変化
再開7日目以降通常量3回(維持)同上

この間も1日の食事を3〜4回に分けて与え続けます。
回数を多く・量を少なくすることで膵臓への刺激を分散させることが重要です。

Step 4(1〜2週間後):膵炎対応フードへの移行

消化のよい食事で問題なく過ごせるようになったら、膵炎に適した処方食(低脂肪消化器サポート食)への移行を開始します。

移行は10〜14日かけて徐々に行います

期間回復期食(手作り等)新処方食観察ポイント
1〜3日75%25%新フードへの適応確認
4〜6日50%50%便の状態・食欲
7〜10日25%75%体重・元気
11日〜0%100%長期管理へ

処方食に切り替える際に下痢・嘔吐が出た場合は、移行のペースを遅らせて様子を見てください。

回復期に与えるべき食材・避けるべき食材

回復期に推奨される食材

食材脂肪分(乾物換算)調理法注意点
白米約1〜2%お粥(7〜10倍)消化が良い。塩・調味料なし
鶏ささみ(皮なし)約4〜5%茹でてほぐす皮を必ず除く
鶏むね肉(皮なし)約5〜7%茹でてほぐすささみと同様・皮なし必須
タラ約2〜4%茹でる・蒸す(骨除去)骨を完全に取り除く
カレイ・ヒラメ約3〜5%茹でる・蒸す(骨除去)白身魚は低脂肪で回復期に最適
かぼちゃ(加熱)約1〜2%蒸す・電子レンジ加熱食物繊維があるが過剰は便緩める
さつまいも(加熱・皮なし)約1〜2%茹でる・マッシュ糖質が高いため少量に

回復期間中は絶対に避けるべき食材

回復期間中は特に以下の食材は絶対に与えないでください。

避けるべき食材リスク代替食材
豚肉(全般)脂肪が多く膵炎再発の最大リスク鶏ささみ・白身魚
鶏皮・鶏もも肉皮下脂肪が非常に多い鶏ささみ(皮なし)
サーモン・サバ・ぶり脂の多い青魚で脂肪過多タラ・カレイなど白身魚
チーズ・乳製品全般乳脂肪が高く膵臓への負担大なし(回復期は与えない)
揚げ物・油炒め油脂が大量で即再発リスクゆでる・蒸す調理法のみ
ナッツ類極めて高脂肪なし(与えない)
市販おやつ(一般品)脂肪含量が不明・高脂肪が多い成分確認済みの低脂肪品のみ

回復期の食事管理:具体的な1日の例

10kgの犬(中型犬)の場合・食事再開2日目の例

時間内容観察
朝7時白米おかゆ+ほぐし鶏ささみ合計15〜20g食べ方・嘔吐の有無
昼12時白米おかゆ+ほぐしタラ合計15〜20g食欲・便の状態
夕方17時白米おかゆ+ほぐし鶏ささみ合計15〜20g元気・腹部の状態
夜20時白米おかゆのみ10〜15g夜間の様子

1日合計55〜75g程度。
通常の維持量200gの約1/3〜1/4に相当します。

ポイント:1回の量より食事回数を優先する
膵炎回復期は「1回の量を少なく・回数を多く」が基本原則です。
1回に多く食べさせると消化管・膵臓への刺激が集中し、再発リスクが高まります。
1日3〜4回(できれば4回)に分けることが回復を助けます。

膵炎再発サインのチェックリスト

食事を再開した後、以下のサインが出た場合は膵炎が再燃している可能性があります。
早期発見・早期対応が回復を大きく左右します。

緊急度:高(すぐに動物病院へ)

⚠️ 以下の症状が出たらすぐに受診してください
・繰り返す嘔吐(2〜3回以上)
・激しい腹痛(触られを嫌がる・体を丸める・祈りのポーズ)
・ぐったりして動かない
・38℃以下の低体温または39.5℃以上の高体温
・腹部が膨れ上がる
・急激な食欲低下(全く食べない)

緊急度:中(翌日以内に受診・経過観察)

症状考えられる原因対応
軽度の嘔吐(1回)食事の量が多すぎた・胃の刺激1食分を減らして様子見。続くなら受診
軟便・下痢消化器の回復途中・食材の変化食材をよりシンプルに。2日続く場合は受診
食欲にムラがある回復途中・膵炎の軽い不快感記録して獣医師に報告
体重が増えない・減る栄養不足・消化吸収の問題給与量の見直し・獣医師に相談

観察記録シート:食事再開後の1日チェック

食事再開後は以下の項目を毎日記録しておくと、受診時に非常に役立ちます。

  • □ 食事の内容・量・食事回数
  • □ 嘔吐の有無(回数・時間・内容)
  • □ 便の状態(固さ・色・回数)
  • □ 体重(毎日同じ時間に測定)
  • □ 元気・活動性(散歩できるか・自発的に動くか)
  • □ 腹部の触感(張り・痛み)
  • □ 水の飲み方(増えた・減った)

長期的な食事管理:回復後の生活

低脂肪食は「一時的」ではなく「ずっと」続ける

膵炎から回復した後も、基本的に低脂肪食の継続が推奨されます
一度膵炎を起こした犬は再発リスクが高く、「もう治ったから以前の食事に戻す」は危険です。

処方食に移行した後の食事管理の基本原則:
・処方食(低脂肪消化器サポート)を継続する
・粗脂肪が12%以下(乾物換算)のフードを選ぶ
・おやつも低脂肪(10%以下)のものに限定する
・定期的な血液検査(cPL・一般血液検査)で膵臓の状態をモニタリングする

食事回数は1日2〜3回が基本

急性期が過ぎても、1日の食事回数は2〜3回を継続することが推奨されます。
1回あたりの量を少なくすることで膵臓への刺激を分散できます。

体重管理の重要性

肥満は膵炎の再発リスクを高めます。
適正体重を維持することが長期的な健康管理の鍵です。
毎月体重を測定し、増加している場合はカロリー量を見直してください。

このセクションのまとめ
・絶食期間の目安は24〜48時間(重症例は72時間以上)
・食事再開前に嘔吐停止・痛み改善・水分摂取確認の3点チェックが必要
・再開時は1/4量から始め、3〜4回に分けて少量ずつ与える
・Step2→3→4と段階的に量を増やし、1〜2週間で通常量に戻す
・再発サイン(繰り返す嘔吐・腹痛・ぐったり)が出たらすぐに受診
・回復後も低脂肪食の継続が基本

退院後の食事再開:時間軸別詳細プロトコル

入院治療を終えて帰宅した後の食事管理は、特に重要な時期です。
以下に、退院後の時間軸別の具体的な食事管理プロトコルを示します。

退院直後〜72時間:超低負荷フェーズ

退院直後は病院での治療が終わったとはいえ、膵臓はまだ完全には回復していません。
この段階では「膵臓に最小限の刺激しか与えない」ことが最優先です。

時間帯与えるもの量(10kg犬の目安)頻度チェックポイント
退院直後(0〜12時間)新鮮な水のみ50〜100mlずつ2〜3時間おき水を吐かないか確認
12〜24時間白米おかゆのみ(10倍粥)大さじ1〜1.5杯(15〜20g)4〜6時間おき(3〜4回)嘔吐・腹痛・食欲
24〜48時間白米おかゆ+ほぐし鶏ささみ(少量)おかゆ15g+ささみ5g4〜5時間おき(4回)便の状態・食欲・元気
48〜72時間おかゆ+ささみまたは白身魚合計25〜35g / 1回4〜5時間おき(4回)体重・腹部の状態
⚠️ 退院直後に絶対にやってはいけないこと
・「おかえり」のご褒美におやつを与える
・「かわいそうだから」と普通のフードを与える
・退院前と変わらない食事を「少量なら大丈夫」と判断する
退院後72時間は膵炎が再燃しやすい最も危険な時期です。

退院3〜7日目:漸増フェーズ

72時間問題なく過ごせたら、食事量を徐々に増やしていきます。
この段階では食事の内容も少し多様化できますが、まだ低脂肪・高消化率のものに限ります。

日数食事内容量(通常維持量比)1日の回数追加できる食材
3日目おかゆ+たんぱく質源通常量の30〜35%4回タラ・カレイなど白身魚
4〜5日目おかゆ+たんぱく質源+野菜少量通常量の40〜50%3〜4回にんじん・かぼちゃ(加熱)
6〜7日目処方食(ウェット)との混合開始も可通常量の50〜60%3回消化器処方食(低脂肪)を少量混合

退院1〜2週間目:移行フェーズ

1週間を問題なく過ごせたら、処方食(低脂肪消化器サポート食)への本格的な移行を開始します。
この段階では消化器機能がある程度回復しているため、より多様な食材を組み合わせられます。

期間回復食の割合処方食の割合1日の量(通常量比)観察ポイント
8〜10日目75%25%60〜70%処方食への適応・下痢の有無
11〜13日目50%50%70〜80%便の状態・食欲・体重
14日目25%75%80〜90%元気・活動性

退院1ヶ月後:安定管理フェーズ

1ヶ月が経過すると、多くの場合は食事管理が軌道に乗ってきます。
この時点での確認事項と長期管理への移行ポイントをまとめます。

確認項目目標の状態問題がある場合の対応
体重退院時比で5%以内の変動(安定)減少中→給与量増加。増加中→カロリー調整
便の状態週5〜7日のうち80%以上が正常便脂肪便が続く場合→EPI検査を検討
血液検査(cPL)200µg/L未満(正常域)高値持続→食事内容の見直し・薬物療法の検討
食欲毎食安定して食べている食欲にムラがある場合→フードの変更や分量調整
活動性短距離の散歩ができる元気がない場合→栄養不足または慢性化のサイン
1ヶ月経過後の定期通院スケジュール
・退院後1ヶ月目:血液検査(CBC+生化学+cPL)
・退院後3ヶ月目:血液検査+腹部エコー
・退院後6ヶ月目:血液検査+体重確認
・以降:3〜6ヶ月ごとに血液検査・年1〜2回のエコー
この定期検査スケジュールを守ることが、再発の早期発見につながります。

再発リスクの評価方法——5つの指標でリスクレベルを把握する

食事再開後の大きな不安のひとつが「また再発しないか」です。
以下の5つの指標を定期的に評価することで、再発リスクを把握し、早めに対策を取ることができます。

1. cPLスコア(膵炎専用血液検査)

Spec cPL値意味推奨アクション
200µg/L未満正常域・膵炎活動なし現状維持。3〜6ヶ月後に再検査
200〜400µg/L境界域・軽度の膵炎活動食事管理の徹底・1〜2ヶ月後に再検査
400µg/L以上膵炎活動中・再燃の可能性薬物療法の開始・エコー検査を追加

2. 体重変化スコア

体重変化リスク評価推奨アクション
1ヶ月で±2%以内低リスク(安定)現状維持
1ヶ月で2〜5%の減少中リスク(栄養不足の可能性)給与量増加・栄養評価
1ヶ月で5%以上の減少高リスク(EPI・慢性化のサイン)至急受診・TLI検査・血液検査
1ヶ月で5%以上の増加(急増)中リスク(肥満→膵炎リスク増加)カロリー削減・脂肪%確認

3. 便の状態スコア

便のスコア状態リスク評価
スコア1〜2硬すぎ・水分不足水分摂取の確認
スコア3〜4(理想)正常便・適度な硬さ低リスク
スコア5軟便食事内容の見直し
スコア6〜7下痢・水様便2日以上続く場合は受診
黄色・油っぽい脂肪便(ステアトレア)EPI合併の疑い→TLI検査

4. 食欲スコア(飼い主評価)

食欲の状態リスク評価対応
毎食完食している低リスク現状維持
週1〜2回の食べムラ中リスク食事の温度・量・内容を見直す
2日以上の食欲低下高リスク受診してcPL・血液検査
完全な食欲廃絶緊急すぐに受診

5. 総合再発リスクスコア

以下の項目に該当するものにチェックして合計点を確認してください。

リスク因子点数
過去1年に膵炎の急性発作を2回以上経験した2点
過去1年に膵炎の急性発作を1回経験した1点
ミニチュアシュナウザー・ヨークシャーテリア等の高リスク犬種1点
肥満(理想体重の10%以上超過)2点
処方食以外のフードを与えている1点
脂肪分の高いおやつ(チーズ・豚耳等)を与えている2点
cPLが200〜400µg/L(境界域)1点
cPLが400µg/L以上(高値)3点
高脂血症(血液検査で脂質が高い)2点
糖尿病・クッシング・甲状腺機能低下症を合併している2点
合計スコア再発リスク評価推奨されるアクション
0〜2点低リスク現状の管理を継続。6ヶ月ごとの定期検査
3〜5点中リスク食事・おやつの見直し。3ヶ月ごとの検査に頻度を上げる
6点以上高リスク至急獣医師に相談。食事の大幅見直し+薬物療法の検討
再発リスクを下げるための最優先アクション
食事管理の徹底:処方食(低脂肪消化器サポート)への切り替えと継続
体重管理:肥満を解消し、理想体重±5%以内を維持する
定期検査:3〜6ヶ月ごとのcPL検査で「見えない炎症」を早期発見する
記録を続ける:食欲・便・体重を日々記録し、変化を早期に察知する

手作り回復食の具体的なレシピ

レシピ1:鶏ささみのお粥(回復期1〜3日目向け)

材料(10kg犬・1日分):
白米(乾燥)20g、鶏ささみ(皮なし)30g、水300ml

作り方:
①白米と水を鍋に入れ、ふたをして30〜40分弱火で煮る(10倍がゆ)
②別の鍋でささみを茹でてほぐし、細かくする
③お粥にほぐしたささみを混ぜる
④冷ましてから4等分し、1日4回に分けて与える

カロリー:約100〜120kcal / 脂肪分:約3〜5%(乾物換算)

レシピ2:白身魚と野菜のスープ(回復期4〜7日目向け)

材料(10kg犬・1日分):
タラ(骨なし)50g、にんじん20g、白米(炊いたもの)50g、水200ml

作り方:
①タラをお湯で茹でて骨を完全に除き、ほぐす
②にんじんを小さく切って柔らかく茹でる
③炊いた白米・タラ・にんじん・水を鍋に入れて一煮立ちさせる
④冷ましてから3〜4等分して与える

カロリー:約150〜180kcal / 脂肪分:約3〜4%(乾物換算)

よくある飼い主様の疑問

「食べないのに食事再開と言われたがどうすればいい?」

回復期の犬は食欲が低下していることが多く、「食べてくれない」という悩みはよくあります。
以下のことを試してみてください。

  • 食事を少し温める(人肌程度)と香りが出て食欲を刺激する
  • 食器の位置・高さを変える(首が痛い場合、高さが重要)
  • 少量をスプーンやシリンジで口の近くに持っていく
  • それでも食べない場合は獣医師に相談(食欲増進薬の選択肢も)

「いつになったら通常の食事に戻せる?」

急性膵炎の場合、通常は2〜4週間で段階的に通常量・処方食に移行します。
ただし「通常の食事に戻す=膵炎前の食事に戻す」ではありません。
再発予防のため、以後は低脂肪食を基本とした食生活に切り替えることが必要です。

回復期の体重管理と栄養状態の確認

急性膵炎の回復期は、膵臓への負担を減らすと同時に、体力・筋肉量の低下を防ぐバランスが重要です。
絶食・減食期間が長引いた場合は特に、栄養状態の回復に注意が必要です。

回復期の体重変化の目安

体重の変化考えられる原因対応
1週間で5%以上の体重減少絶食・減食による筋肉量低下給与量を見直す・獣医師に相談
体重が増えない(食べているのに)消化吸収の低下・EPI合併消化器検査・酵素補充の検討
体重が順調に回復している正常な回復食事内容を維持・Step4へ

回復期に観察すべき栄養状態のサイン

  • 被毛の状態:艶がなくなる・抜け毛が増えるのは栄養不足のサイン
  • 筋肉量:背骨・肋骨が浮き出てきた場合はタンパク質が不足している可能性
  • 粘膜の色:口の中の粘膜が白っぽい場合は貧血・低アルブミン血症の疑い
  • 皮膚の張り:皮膚をつまんで戻りが遅い場合は脱水のサイン

膵炎回復期の水分補給と水分摂取量のモニタリング

膵炎の回復期において、適切な水分補給は非常に重要です。
脱水は膵炎を悪化させるリスクがあり、十分な水分摂取が回復を助けます。

犬の1日に必要な水分量の目安

一般的に、犬が1日に必要とする水分量は体重1kgあたり約50〜70mlとされています。
ただし回復期・暑い時期・運動量が多い場合はこれ以上必要なことがあります。

体重1日の最低限の水分量回復期の目安
3kg約150ml約200〜250ml
5kg約250ml約300〜350ml
10kg約500ml約600〜700ml
20kg約1000ml約1200〜1400ml

水をあまり飲もうとしない場合は、食事に少し水分を混ぜる(スープ状にする)と水分摂取を促せます。
ただし食事の脂肪分が増えないよう注意が必要です。

膵炎回復期に知っておきたい合併症

急性膵炎の回復過程で、以下の合併症が起きることがあります。
症状を観察する際の参考にしてください。

膵外分泌不全(EPI)

膵臓のダメージが大きい場合、消化酵素の産生が著しく低下する「膵外分泌不全(EPI)」を合併することがあります。

EPIのサイン:
・食べているのに体重が減る
・便が黄色・油っぽい・量が多い(脂肪便)
・おなかが空きやすく・食欲が旺盛になる
・便が泡状・悪臭が強い

EPIが疑われる場合は「TLI(血清トリプシン様免疫活性)」という検査で確認できます。
EPIは消化酵素補充療法(パンクレアチンの投与)で管理できます。

糖尿病の合併

膵炎でインスリンを産生するβ細胞が傷ついた場合、糖尿病を発症することがあります。

糖尿病のサイン:
・水をよく飲む(多飲)
・おしっこの量が増える(多尿)
・体重が落ちる
・元気がない

回復期に多飲多尿が見られた場合は血糖測定・尿検査を受けてください。

回復後の生活と再発予防のための注意事項

急性膵炎から回復した後も、再発を防ぐための生活習慣の見直しが必要です。

再発予防のための生活習慣

項目具体的な対策
食事管理低脂肪食(乾物換算12%以下)を生涯継続。おやつも低脂肪のものに限定
体重管理適正体重を維持。肥満は膵炎の最大リスク因子のひとつ
食事の回数1日2〜3回(少量を複数回)。1回に大量に与えない
テーブルフード人間の食事(残飯)を与えない。特に揚げ物・肉の脂身は厳禁
定期検査3〜6ヶ月ごとの血液検査(cPL含む)と年1〜2回のエコー
急変時の対応嘔吐・腹痛・ぐったりが出たら翌日待たずに受診
このセクションのまとめ
・回復期は体重変化・栄養状態・水分摂取を毎日観察する
・EPIや糖尿病の合併症に注意し、サインを見逃さない
・回復後も低脂肪食・定期検査・体重管理を生涯継続する
・テーブルフード(人間の食事)は絶対に与えない
・急変(嘔吐・腹痛・ぐったり)が出たら早めに受診する

獣医師解説

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  • この記事を書いた人
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DrVets

国公立大学獣医学科卒業。臨床経験10年以上。犬・猫の慢性疾患(腎臓病・膵炎・消化器疾患・内分泌疾患)と食事管理を専門とする現役獣医師が、科学的根拠に基づいた情報を監修しています。当サイトの全記事は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)・世界小動物獣医師会(WSAVA)等のガイドラインに準拠して監修しています。

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