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【獣医師解説】犬の膵炎に与えていいおやつ・ダメなおやつ一覧|低脂肪おやつの選び方

「膵炎になってからおやつを一切禁止にしたけど、少しくらいあげてもいい?」「低脂肪のものなら大丈夫?」——膵炎の犬を飼っている飼い主様からよく聞く疑問です。

結論から言うと、膵炎の犬でも適切なおやつを選べば与えられます
ただし、選び方を間違えると膵炎の再発・悪化につながります。
この記事では、獣医師が推奨できるおやつの条件・具体的なOKおやつとNGおやつ・与え方の注意点を徹底解説します。

この記事でわかること
・膵炎の犬に与えてよいおやつの条件(脂肪分・素材)
・OKおやつ一覧と各食材の脂肪%
・NGおやつ一覧(脂肪%付き)と絶対に避けるべき理由
・市販おやつの脂肪分チェック方法
・手作りおやつレシピ2〜3例
・与え方・頻度の正しいルール

なぜ膵炎の犬は食事・おやつ管理が必要なのか

膵臓は食事中の脂肪・タンパク質・炭水化物を消化するための酵素(膵酵素)を分泌する臓器です。
通常、これらの酵素は十二指腸に分泌されてから活性化しますが、何らかの原因で膵臓の中で活性化してしまうと、膵臓自体を消化してしまいます。
これが膵炎です。

高脂肪食は膵酵素の過剰分泌を刺激する最大のリスク因子のひとつです。
脂肪の多い食事やおやつを食べると、膵臓はより多くの酵素を分泌しようとして負担が増し、炎症が再燃・悪化しやすくなります。

特に膵炎の既往がある犬は、一度ダメージを受けた膵臓が過敏な状態になっているため、健康な犬よりもはるかに少ない脂肪量でも症状が再燃することがあります。
「少しくらいなら大丈夫」という認識が、実は大きなリスクにつながります。

⚠️ 注意
膵炎の急性発作後は、獣医師から「食事再開OK」の指示が出るまで、おやつを含む一切の食事を与えないことが原則です。
「かわいそう」という気持ちがあっても、少量のおやつが再発のトリガーになることがあります。

膵炎の犬に与えてよいおやつの条件

膵炎の犬にとって安全なおやつの条件は以下の3つです。

  1. 低脂肪であること:脂肪分が10%未満(乾物換算)が目安。
    できれば5%以下が理想。
    慢性膵炎・再発リスクの高い犬は3%以下を推奨する獣医師も多い。
  2. 消化しやすいこと:消化負担が少ない素材・形状。
    生より加熱処理したもの・細かく刻んだものが消化に優しい。
  3. 余分な添加物・調味料が含まれないこと:人工香料・着色料・食塩・砂糖が少ないもの。
    シンプルな素材のものを選ぶ。

さらに1日のカロリーの10%以内に抑えることが基本です。
おやつで余分なカロリー・脂肪を摂取すると、主食の栄養バランスも崩れます。

乾物換算とは?計算方法を解説

ウェットタイプのおやつ(水分が多い食材)は、水分が含まれている分だけ脂肪%が低く見えます。
正確な比較のためには、水分を除いた「乾物換算」で脂肪%を計算することが必要です。

乾物換算の計算式:
乾物換算脂肪% = 表示脂肪% ÷ (100% ─ 水分%) × 100

例:水分78%、脂肪2%と表示されているウェットフードの場合
乾物換算脂肪% = 2 ÷ (100 ─ 78) × 100 = 約9.1%
ドライフードで表示の9.1%相当の脂肪量が含まれていることになります。

ポイント
市販のドッグおやつはドライタイプが多く、表示の脂肪%がほぼそのまま乾物換算の値に近くなります。
ウェットタイプ・半生タイプは必ず乾物換算で計算してから判断してください。

与えてもよいおやつ(OKリスト)詳細解説

自家製おやつ(安全で手軽)

最も安全で膵炎の犬に適しているのは、シンプルな食材を使った手作りおやつです。
市販品と違い、脂肪量・添加物を完全にコントロールできます。

食材与え方脂肪分の目安(乾物換算)注意点
鶏ささみ(皮なし)ゆでてほぐす・薄切り約4〜5%塩・調味料不使用。茹で汁も少量なら可
鶏むね肉(皮なし)ゆでてほぐす約5〜7%皮を必ず除く。皮つきは脂肪が3倍以上になる
タラ(白身魚)ゆでる・蒸す(骨なし)約2〜4%揚げ物・焼き魚(油使用)は不可
カレイ蒸す(骨なし)約3〜5%干物は塩分が高いため不可
かぼちゃ(加熱済み)マッシュ・小さく切る約1〜2%少量から。甘さがあるため与えすぎ注意
さつまいも(加熱・皮なし)小さく切る・マッシュ約1〜2%糖質が多いので少量に。1日5g程度が目安
にんじん(加熱済み)薄切りにして茹でる約1〜2%消化しやすいよう加熱して与える
りんご(皮なし・種なし)薄切り・少量約1〜2%糖質があるため与えすぎ注意。種は毒性あり絶対に除く
ブルーベリー生または冷凍解凍・1粒ずつ約2〜3%抗酸化作用も。1日3〜5粒が目安
バナナ(少量)小さく切る約2〜3%糖質・カロリーが高いため少量に留める
じゃがいも(皮なし・加熱済み)茹でてマッシュ約1〜2%芽・緑色部分は除く。バター・塩は使わない

市販おやつ(低脂肪タイプ)

市販のドッグおやつを使う場合は、以下の基準を満たすものを選んでください。

製品タイプ脂肪分目安膵炎への適性選ぶ際の注意
鶏ささみジャーキー(低脂肪)3〜8%△〜○脂肪%を必ず確認。皮なし・無添加タイプを選ぶ
白身魚ジャーキー(タラ等)2〜6%塩分チェック必須。食塩無添加が理想
野菜チップス(素焼き)1〜5%油で揚げたタイプは脂肪が激増するため要注意
低脂肪ドライフード小粒5〜10%△〜○1日のカロリー10%以内に収める
クッキー・ビスケット系10〜20%以上×バター・乳製品を使うものが多く避けるべき

市販おやつの脂肪分チェック方法

市販のドッグおやつを購入する前に必ず確認すべき情報を整理します。

パッケージの成分表示の見方

ドッグフード・おやつのパッケージには「保証成分値」または「分析値」として栄養成分が記載されています。
確認すべきは以下の項目です。

  1. 粗脂肪(脂質):この数値が最重要。
    ドライタイプは表示値がほぼ乾物換算値になる。
    10%未満、できれば5%以下を選ぶ。
  2. 水分:ウェットタイプは乾物換算が必要(前述の計算式を使用)
  3. 原材料名:先頭に記載されているものが量の多い素材。
    主原料が鶏・魚・野菜であることを確認する。
    豚・ラム・チーズ・卵が主原料に含まれる場合は脂肪が高い可能性。
  4. 添加物欄:人工保存料(ソルビン酸・BHA・BHT)・着色料の有無を確認。
    無添加・天然素材が理想。

脂肪分チェックの実例

製品例(一般的なタイプ)表示脂肪%乾物換算脂肪%膵炎犬への適否
鶏ささみジャーキー(ドライ)4%約4〜5%〇 少量なら可
鶏むねジャーキー(ドライ)6%約6〜7%△ 少量なら可
豚耳ガム(ドライ)15%約17%× 絶対NG
チーズおやつ(ドライ)22%約22%以上× 絶対NG
サーモンジャーキー(ドライ)12%約13%× 脂肪が高い
タラジャーキー(ドライ)3%約3〜4%〇 良い選択肢
ウェット鶏おやつ(水分70%)3%(表示)約10%△ 乾物換算で確認を
ポイント:成分表示がないおやつは選ばない
成分表示がないおやつ・人間用のおやつは脂肪含量が不明なため与えないことが原則です。
「犬用」と書いてあっても保証成分値が記載されていない製品は避けてください。

絶対に与えてはいけないおやつ(NGリスト)詳細

以下のおやつは膵炎の犬に与えると再発・悪化のリスクが高いため、絶対に避けてください。

脂肪分が高いもの(膵炎再発リスク大)

食材・おやつ脂肪分の目安(乾物換算)NGの理由
チーズ(各種)25〜35%以上乳脂肪が非常に高く膵炎の最大リスク食材のひとつ
豚耳ガム15〜20%皮下脂肪が多く含まれる。与えた後に急性発作を起こす事例多数
牛革ガム(ラムスキック等)5〜15%脂肪分が不明なものが多く、消化にも時間がかかる
サーモンおやつ・鮭とば10〜20%脂の多い青魚。Ω3脂肪酸は良質だが量が問題
ナッツ(全般)40〜70%以上極めて高脂肪。マカデミアナッツは毒性もある
バター・マーガリン80〜100%ほぼ脂肪のみ。膵炎犬に与えてはならない
ベーコン・ハム・ソーセージ30〜50%高脂肪+高塩分。最悪の組み合わせ
鶏皮・鴨肉40〜60%皮下脂肪が非常に多い
煮豚・チャーシュー20〜35%豚バラを使うことが多く脂肪・調味料ともに危険
揚げ物(フライ類)油を含め20〜40%以上油脂が大量に含まれる。即座に膵炎を悪化させるリスク

犬に有害な食材(膵炎に関係なく危険)

食材有害成分・リスク症状
タマネギ・ネギ・ニンニク・ニラチオ硫酸塩(有機ジスルフィド)溶血性貧血・嘔吐・虚弱。粉末・乾燥品も危険
チョコレート・カカオテオブロミン嘔吐・下痢・けいれん・心臓への影響・死亡リスク
ブドウ・レーズン・干しぶどう未解明の毒性成分急性腎不全。少量でも命に関わる
キシリトール含有食品キシリトール急激な低血糖・肝臓障害。ガム・歯磨き粉に注意
アボカドペルシン嘔吐・下痢・心臓障害。果肉だけでなく皮・種も危険
マカデミアナッツ未解明の毒性成分筋肉の震え・後肢の麻痺・嘔吐・高体温
生の豚肉旋毛虫(Trichinella)寄生虫感染。十分な加熱で無効化できる
コーヒー・紅茶・緑茶カフェイン・タンニン嘔吐・下痢・心拍増加・けいれん
⚠️ 注意:「少し」でも危険なケースがある
ブドウ・キシリトール・チョコレートなどは「少量なら大丈夫」ということはありません。
体重に関係なく、少量でも致命的な影響を与えることがあります。
誤食した場合は直ちに動物病院に連絡してください。

急性膵炎治療中のおやつについて

急性膵炎の治療中(発症から回復初期)はおやつを含む一切の食事を控えることが基本です。
膵臓を「安静」にするため、絶食期間が設けられることが多くあります。

主治医から「食事再開OK」の指示が出るまでは、おやつも含めて何も与えないことが原則です。
「少しくらいなら」という気持ちが再発につながることがあります。

急性膵炎が重症の場合、入院中に静脈点滴で栄養を補給することがあります。
この期間は胃・腸・膵臓を完全に休ませることが最優先です。
退院後も、担当獣医師から「どの食材をどのくらいから始めてよいか」の指示をもらってから開始してください。

慢性膵炎・膵炎回復期のおやつの与え方

慢性膵炎の管理中・回復期においておやつを与える場合の原則は以下の通りです。

  • まず主食(低脂肪・消化のよい処方食)をしっかり食べられていること
  • 1日のカロリーの10%以内に抑える
  • 一度に大量に与えない(少量を複数回に分ける)
  • おやつを与えた後、嘔吐・食欲低下・腹部の張り・元気消失などが出ないか観察する
  • 新しい食材を試す際は1種類ずつ少量から始める

体重別・1日のおやつカロリー上限の目安

体重1日の維持カロリー目安おやつの上限(10%)ささみ換算の目安量
3kg(小型犬)約200〜250kcal約20〜25kcal約20〜25g
5kg(小型犬)約290〜360kcal約30〜36kcal約30〜35g
10kg(中型犬)約480〜600kcal約48〜60kcal約50〜60g
20kg(中型犬)約800〜1000kcal約80〜100kcal約80〜100g
30kg(大型犬)約1100〜1300kcal約110〜130kcal約110〜130g

※カロリーは個体の代謝・活動量・避妊去勢の有無によって異なります。
処方食を使用している場合は、その給与量に合わせて調整してください。

手作りおやつレシピ3選

膵炎の犬に安全な手作りおやつのレシピを3つ紹介します。
いずれも脂肪分が低く、消化しやすい食材だけを使用しています。

レシピ1:鶏ささみの茹でジャーキー

材料:鶏ささみ(皮なし)100g

作り方:
①ささみを薄く(3〜4mm)スライスする。
②沸騰したお湯で3〜5分茹でる。
③水気を切り、オーブントースターや電子レンジで乾燥させる(150度で30〜40分、または電子レンジ500Wで5〜8分様子を見ながら)。
④冷ましてから冷蔵庫で保存(3〜4日以内に使い切る)。

脂肪分:約4〜5%(乾物換算)
保存:冷蔵2〜3日、冷凍2週間。

ポイント
乾燥させすぎると硬くなるので注意。
高齢犬や歯が弱い犬はしっかり水分が残った「茹でただけ」の柔らかいタイプが食べやすいです。

レシピ2:かぼちゃと鶏ささみのやわらか蒸しケーキ

材料:かぼちゃ(皮なし・種なし)50g、鶏ささみ(皮なし)50g、白米(炊いたもの)50g

作り方:
①かぼちゃを小さく切り、電子レンジで加熱して柔らかくする。
②鶏ささみを茹でてほぐす。
③全ての材料をフードプロセッサーで混ぜ合わせ、シリコン型に入れる。
④蒸し器で15〜20分蒸す(または電子レンジで3〜4分)。
⑤冷ましてから1回分ずつ切り分けて保存。

脂肪分:全体で約3〜5%(乾物換算)
保存:冷蔵2日、冷凍1週間。

レシピ3:タラとにんじんの野菜スープ凍らせおやつ

材料:タラ(骨なし)50g、にんじん(加熱済み)30g、水100ml

作り方:
①タラを茹でて骨を完全に除き、ほぐす。
②にんじんを柔らかく茹でて小さく刻む。
③材料と水をミキサーで混ぜてスープ状にする。
④製氷皿に流し込み冷凍庫で凍らせる。
⑤1〜2個ずつおやつとして与える(冷凍のまま、または少し解凍して)。

脂肪分:約2〜3%(乾物換算)
保存:冷凍2週間。

夏場のおやつとして特に喜ばれます。
消化も良く、水分補給にもなります。

市販おやつブランド別比較テーブル——脂肪%・成分・価格で選ぶ

市販のドッグおやつは種類が多く、どれを選べばいいか迷ってしまいます。
以下に、膵炎の犬に適した低脂肪おやつのタイプ別比較を示します。
実際の商品を選ぶ際の参考としてください(脂肪%は類似製品の一般的な数値範囲です)。

鶏ささみ・白身魚系ジャーキー比較

製品タイプ主原料脂肪%(乾物換算目安)価格帯(100g当たり)膵炎適性注意点
鶏ささみジャーキー(皮なし・無添加)鶏ささみ100%3〜6%400〜800円○ 推奨「皮なし」「無添加」を必ず確認
鶏むねジャーキー(皮なし)鶏むね肉5〜8%350〜700円△ 少量可皮なしであることを確認
タラジャーキー・鱈スティックタラ2〜5%500〜1,000円◎ 最推奨食塩無添加タイプを選ぶ
タラ+野菜ミックスジャーキータラ・にんじん等3〜6%600〜1,200円複合素材なので全成分確認を
サーモンジャーキー10〜18%600〜1,200円× 不適良質な脂肪だが量が多すぎる
ラム肉ジャーキー羊肉8〜20%700〜1,500円× 不適部位によって脂肪差が大きい
豚耳ガム・豚皮ガム豚皮・豚耳15〜25%200〜600円× 絶対NG膵炎最大リスク食材のひとつ

野菜・果物系おやつ比較

製品タイプ主原料脂肪%(乾物換算目安)価格帯(100g当たり)膵炎適性注意点
さつまいもチップス(素焼き)さつまいも1〜3%300〜700円◎ 最推奨「素焼き」を確認。揚げタイプは不可
かぼちゃチップス(素焼き)かぼちゃ1〜3%400〜900円少量から試す
ブルーベリードライフルーツブルーベリー2〜4%500〜1,200円砂糖・添加物なしを確認。1日5粒以内
野菜ミックスドライにんじん・かぼちゃ等2〜5%400〜800円油脂・食塩が添加されていないか確認

処方食系・低脂肪トリーツ比較

製品タイプ脂肪%(乾物換算)価格帯特徴膵炎適性
ロイヤルカナン GI低脂肪 ドライ(おやつ代わりに少量)約7〜9%2,000〜3,500円/kg処方食の粒を少量おやつに流用。獣医師処方が必要
ヒルズ w/d 消化器・体重管理(おやつ代わりに少量)約8〜11%2,500〜4,000円/kg食物繊維が多く腸内環境にも配慮
市販低脂肪トリーツ(脂肪5%以下表示)5%以下500〜1,500円ペットショップで入手可能。ラベルの全成分確認が必須○(要確認)
市販品を買うときのチェックリスト
□ 成分保証値(粗脂肪)が記載されている
□ 乾物換算で脂肪10%未満(できれば5%以下)
□ 主原料が鶏・白身魚・野菜
□ 食塩・砂糖・人工保存料が無添加または極少量
□ 犬に有害な素材(ネギ類・ブドウ等)が含まれていない
□ 「皮なし」「骨なし」が明記されている(肉・魚の場合)

OK・NGおやつの「理由」を深く理解する

「なぜダメなのか」「なぜ大丈夫なのか」を理解することで、未知の食材に遭遇したときも正しく判断できるようになります。

脂肪が膵臓に悪い理由——メカニズムを解説

食事中の脂肪が腸内に入ると、体はコレシストキニン(CCK)というホルモンを分泌します。
CCKは膵臓に「消化酵素(リパーゼ)を大量に出せ」という信号を送ります。

健康な膵臓であれば問題ありませんが、すでに炎症を起こしている膵臓や慢性的にダメージを受けた膵臓では、この「酵素放出の命令」が過剰な負担となります。
特に脂肪の多い食事・おやつを一度に大量に食べると、CCKが急激に上昇し、膵炎の急性増悪(フレアアップ)が起きやすくなります

食材の脂肪含量CCKへの影響膵炎リスク
脂肪5%以下(乾物換算)軽微な刺激低い
脂肪5〜10%中程度の刺激やや高い(量を抑えれば許容)
脂肪10〜20%強い刺激高い(特に膵炎既往犬には危険)
脂肪20%以上非常に強い刺激非常に高い(急性発作の直接原因になりうる)

チーズがNGな理由——具体的な成分を見る

「少量なら」という声をよく聞きますが、チーズの脂肪含量を確認すると厳しさがわかります。

チーズの種類脂肪%(乾物換算)比較(鶏ささみ)
プロセスチーズ(一般的)約28〜33%鶏ささみの約7倍
カマンベールチーズ約30〜35%鶏ささみの約8倍
チェダーチーズ約35〜38%鶏ささみの約9倍
カッテージチーズ(低脂肪)約6〜12%比較的低いが膵炎犬には依然リスク

たとえカッテージチーズの低脂肪タイプでも、慢性膵炎の犬には与えることを推奨しない獣医師が多いです。
乳製品全般は消化負担が高く、膵臓への刺激が強いためです。

ナッツがNGな理由——脂肪量の衝撃

ナッツの種類脂肪%特記事項
マカデミアナッツ約75%毒性あり(未解明の成分)。少量で神経症状・高体温を引き起こす
くるみ約65%カビが生えると毒性が増す
アーモンド約56%消化しにくい・食道閉塞リスクも
ピーナッツ(無塩・生)約47%膵炎犬には絶対不可

鶏ささみがOKな理由——詳細な栄養プロフィール

鶏ささみ(皮なし)は膵炎の犬に最も適したタンパク源おやつとされています。
その理由を数値で確認します。

栄養素鶏ささみ(乾物換算)評価
タンパク質約90〜93%非常に高く筋肉量維持に優れる
脂肪約3〜5%非常に低く膵臓への負担が最小
カロリー(100g当たり生)約105〜110kcal低カロリー
消化率90%以上消化器への負担が少ない

「皮なし」という条件が重要です。
鶏皮の脂肪含量は100gあたり約42〜50gで、ささみの脂肪(約1g/100g)の40〜50倍にもなります。
皮を1枚つけるだけで、脂肪管理が崩れてしまいます。

おやつを与える際の全体的な注意事項

食後の観察が最も重要

新しいおやつを与えた後は必ず30分〜1時間観察してください。
以下のサインが出た場合は、そのおやつを与えるのをやめ、症状が続く場合は動物病院に連絡してください。

  • 嘔吐(1回でも注意)
  • 腹部の膨張・硬さ
  • 食欲の急激な低下
  • 元気の喪失・ぐったりする
  • 前脚を伸ばしてお尻を上げる「祈りのポーズ」
  • 背中を丸めて動かなくなる

おやつのローテーションと記録

どのおやつを与えたか、どんな反応だったかを記録しておくと、体調変化の原因特定に役立ちます。
「おやつ日記」として簡単なメモを残しておくことをお勧めします。

トレーニングへの活用

膵炎の犬でも、コマンドトレーニングやリハビリのご褒美としておやつを活用できます。
ただし小さくちぎって少量ずつ使い、1日の上限を超えないよう注意してください。
鶏ささみを細かくちぎったものがトレーニング用おやつとして特に適しています。

膵炎の犬のおやつに関するよくある誤解

誤解1:「犬用おやつ」なら何でも安全

「犬用」と書いてあっても、脂肪含量が高い製品は数多くあります。
健康な犬には問題なくても、膵炎の犬には与えてはいけないおやつが多数存在します。
必ず成分表示を確認することが不可欠です。

誤解2:「ナチュラル」「無添加」なら安全

「ナチュラル」や「無添加」は脂肪含量の低さを意味しません。
豚耳ガム・鹿肉・サーモンなどのおやつは天然素材でも高脂肪のものがあります。
成分表示の確認は「ナチュラル」製品でも必須です。

誤解3:野菜なら何でも安全

犬に食べさせてはいけない野菜があります。
タマネギ・ネギ・ニラ・ニンニクなどネギ属は必ず避けてください。
また、生の野菜は消化が悪いため、必ず加熱してから与えてください。

誤解4:少量なら高脂肪おやつも大丈夫

膵炎の既往がある犬は特に膵臓が敏感になっています。
「少量のチーズ」でも急性発作が再燃した事例があります。
「少し」という認識よりも「与えない」判断が重要です。

このセクションのまとめ
・膵炎の犬でも低脂肪(10%未満・乾物換算)のおやつは与えられる
・自家製(茹でた鶏ささみ・白身魚・加熱野菜)が最も安全
・市販品は必ず成分表示で脂肪%を確認する
・急性期はおやつを含む一切を禁止
・新しいおやつは1種類ずつ少量から試し、与えた後は必ず観察する
・NG食材(チーズ・豚耳・ナッツ・ブドウ等)は膵炎に関係なく危険なものも多い

まとめ:膵炎の犬のおやつ選びの基本原則

膵炎の犬のおやつ選びで最も大切なことは「脂肪分の管理」です。

OKおやつの条件をおさらいします。
・脂肪分10%未満(乾物換算)、できれば5%以下
・消化しやすい加熱処理済みの食材
・添加物・調味料が少ないシンプルな素材
・1日のカロリーの10%以内の量

最もお勧めなのは「茹でた鶏ささみ」「茹でた白身魚(タラ・カレイ)」「加熱したかぼちゃ・にんじん」など、シンプルな自家製おやつです。
これらは脂肪が低く、安全に与えられます。

おやつは愛犬とのコミュニケーションの大切な時間でもあります。
適切な選択をすることで、膵炎の犬でもおやつを楽しめます。
ただし、急性発作後の回復期は必ず獣医師の指示に従ってください。

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  • この記事を書いた人
アバター

DrVets

国公立大学獣医学科卒業。臨床経験10年以上。犬・猫の慢性疾患(腎臓病・膵炎・消化器疾患・内分泌疾患)と食事管理を専門とする現役獣医師が、科学的根拠に基づいた情報を監修しています。当サイトの全記事は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)・世界小動物獣医師会(WSAVA)等のガイドラインに準拠して監修しています。

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