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犬の糖尿病

【獣医師監修】犬が水をよく飲む・尿が多い原因|糖尿病・腎臓病・クッシングの見分け方

愛犬が急に水をよく飲むようになった場合、それは重大な病気のサインかもしれません。犬の「多飲多尿」の原因は糖尿病・腎臓病・クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)など複数の疾患が考えられます。1日の飲水量が体重1kgあたり90ml以上なら「多飲」の目安です。この記事では各疾患の見分け方と対処法を解説します。

多飲多尿とは何か

「多飲多尿」とは、1日の飲水量と尿量が異常に増加した状態をいいます。重要なポイントは「水をよく飲むから尿量が多い」のではなく、「尿として水分が多く排出されるため、喉が渇いて水をよく飲む」という順序です。つまり多尿が先に起こり、補償的に多飲が生じます。

多飲の判定基準

1日の飲水量が体重1kgあたり90ml以上の場合、多飲と判断します(例:体重5kgの犬で450ml以上)。日頃から飲水量を測定しておくと、異変に早く気づけます。

多飲多尿を引き起こす主な疾患

1. 糖尿病

血糖値が高くなると、余分な糖を尿として排出しようとする作用が働き、大量の尿が出ます。その結果として多飲が生じます。

糖尿病に特徴的なサイン

  • 食欲が増しているのに体重が減っている
  • 尿に甘い臭いがする(尿糖の影響)
  • 目が白く濁ってきた(白内障)
  • 後ろ足が弱ってきた

糖尿病の詳細については犬の糖尿病の症状チェックリストをご参照ください。

2. 慢性腎臓病

腎臓の機能が低下すると、尿を濃縮する能力が失われ、薄い尿を大量に排出するようになります。高齢犬での多飲多尿では慢性腎臓病が最も多い原因の一つです。

慢性腎臓病に特徴的なサイン

  • 徐々に体重が減る(急激ではなく緩やか)
  • 食欲が低下している
  • 嘔吐・口臭(アンモニア臭)がある
  • 高齢犬(8歳以上)に多い

3. 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎からコルチゾールが過剰に分泌される疾患です。コルチゾールには利尿作用があるため多飲多尿が起こります。糖尿病と合併することも多い疾患です。

クッシング症候群に特徴的なサイン

  • お腹がぽっこりと大きくなる(腹部膨満)
  • 筋肉が落ちて足が弱くなる
  • 被毛が薄くなる・左右対称の脱毛
  • 食欲が非常に旺盛になる

4. 子宮蓄膿症(未避妊メス犬)

未避妊のメス犬が発情後1〜2ヶ月以内に多飲多尿を示す場合、子宮蓄膿症(子宮内に膿が溜まる病気)の可能性があります。これは命に関わる緊急疾患です。

5. その他の原因

  • 高カルシウム血症(腫瘍などに伴う)
  • 肝臓疾患
  • 腎盂腎炎
  • 多飲多尿症(尿崩症)
  • 薬剤の影響(ステロイド投与中など)

疾患の見分け方:症状の比較

特徴糖尿病慢性腎臓病クッシング症候群
食欲増加(初期)→減少(末期)低下著明な増加
体重変化急激な減少緩やかな減少腹部膨満が目立つ
被毛の変化ツヤが失われるツヤが失われる左右対称の脱毛
特有の症状白内障・甘い尿臭嘔吐・アンモニア口臭腹部膨満・筋肉低下
好発年齢7歳以上8歳以上6歳以上

動物病院での検査

多飲多尿の原因を特定するために、以下の検査が行われます。

  • 血液検査:血糖値、腎機能(BUN・クレアチニン)、肝機能、電解質
  • 尿検査:尿比重(尿の濃さ)、尿糖、尿タンパク
  • ホルモン検査:クッシング症候群が疑われる場合(コルチゾール測定)
  • 超音波検査:腎臓・副腎・子宮の状態確認

受診すべきタイミング

以下のいずれかに気づいたら1週間以内に動物病院を受診してください。

  • 1日の飲水量が体重1kgあたり90ml以上に増えた
  • トイレシートの使用量が急に増えた
  • 室内でのおもらしが増えた
  • 体重の急激な変化がある

多飲多尿は多くの場合、重大な疾患のサインです。「老犬だから仕方ない」と判断せず、早期に検査を受けることをお勧めします。

糖尿病と診断された場合のインスリン治療については犬のインスリン投与の量と頻度を、食事管理については犬の糖尿病に良い食事・フード選びをご参照ください。

愛犬の療法食選びにお悩みの飼い主様は、おすすめ療法食ランキングもあわせてご確認ください。

よくある質問

  • この記事を書いた人
院長

院長

国公立獣医大学卒業→→都内1.5次診療へ勤務→動物病院の院長。臨床10年目の獣医師。 犬と猫の予防医療〜高度医療まで日々様々な診察を行っている。

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